太田達と交代する為、1号機をデッキアップする。
野明『は〜あ〜。私のパトちゃん、誰も見てくれないんだ』
ま、今連中は湾内にいるクジラの事に集中してるからな。アルフォンスを移動する。
「バカ野郎!そんなとこに突っ立ってると見えないだろうが‼」
野明『はいはい。太田さん、交代の時間ですよ…太田さん?』
大田からの反応がない。弐号機を見ると、怒りを抑えており機体ごと震えていた。
「何やってんだ!早く退けよ!」
「そこどけ!見えないぞ!」
太田『…納税者…相手は納税者…相手は納税者…』
あ〜、我慢でいっぱいいっぱいだな。
『この税金ドロボー!』
太田『なんだと‼』
海の方を見ると、ボートに乗った男二人が、拡声器を持って話していた。
『表裏主義の環境破壊者共目!自然を蹂躙するだけしといて、今更クジラの救出なんて片腹痛いぞ〜!お前達の存在は悪であ〜る!己に恥り、バビロンプロジェクトに鉄槌をぶ狼藉であ〜る‼‼』
あ〜あ〜。今の太田には火に火薬を打ち込む行動だな…
太田『こ…この思想犯が〜‼‼』
すると太田は拳銃を取り出す。それを見た野次馬達は逃げて行く。
山崎「いけない!」
遊馬『太田!落ち着け!』
ひろみは太田の前に立ち塞がる。
山崎「太田さん!」
太田「山崎!そこをどけ!峰打ちじゃああ‼‼‼」
銃に峰打ちもないだろあのバカ!
『撃てるもんなら撃ってみろ〜!』
太田「撃ったろうじゃないかあああ‼‼‼」
遊馬「太田!止めろ‼」
しかし、遊馬の言葉も虚しく、大田は発泡した。幸い、相手に当たらず誰にの怪我人は出なかった。
「「う、撃ちやがったな!覚えてろ〜!」」
…こりゃ大田達、帰ったら始末書もんだな。
香貫花「…ホント貴方達と組んで良かったって思うわ」
野明『アハハ…』
そして夕方、ひろみのアイデアで、ザトウクジラの歌を水中レイバーから流し、見事に東京湾から出て行ったのだった。翌日、俺達は普段通りの勤務に戻った。
野明「おはようございま〜す」
「「「おはようございます」」」
香貫花「おはよう」
「おはようございます。野明さん」
野明「おはよう翼さん。遊馬早いじゃん」
遊馬「これこれ」
野明「な〜る」
太田「ウチの扱いが殆ど無いではないか!」
野明「ひろみちゃんの事載ってないの?一番の功労者なのに」
確かにその通りだな。
山崎「いいんです、別に」
遊馬「そんな事ないよ。テレビつけようよ。きっとどこかでやってるんじゃないか?」
香貫花「そうね」
遊馬の提案でテレビをつける。すると丁度テレビにクジラが映っている。
野明「やってるやってる〜♪」
ん?何だか様子が…
キャスター『見えますでしょうか?昨日救出対策本部により、湾岸に連れ出された筈のクジラですが、本日早朝、再び戻って来た所を発見されました』
その言葉を聞いて、全員がひっくり返った。太田に限っては何故か飛んでいた…そして、またクジラ救出に駆り出されると思ったが、3日が経ち政府決定等もあり、クジラ救出は終了した。
後藤「っと言う事で、本日から通常勤務に戻る」
『ええっ!?』
後藤「ま、久し振りに暇になった事だし、溜まっていた報告書、早く提出してもらいたいなぁ」
そう言い残し、後藤は隊長室に戻っていった。それから1週間が過ぎた。俺達第二小隊は、クジラがいる湾岸来ている。
野明「あ〜いるいる!ちっちゃくてカワイイ〜」
遊馬「おい野明、俺にも見せろよ!」
野明「ん〜やだよ〜」
遊馬「ちょっとだよちょっと!」
遊馬はそう言い、野明から双眼鏡を奪う。
遊馬「おお!見える見える!」
後藤「俺にも見せてちょうだい」
『えっ?』
後藤は遊馬から双眼鏡を受け取りクジラを見る。
後藤「お〜。なるほどね〜」
香貫花「隊長。子鯨が発見されて以来、急に中止を批判する声が高まっているそうじゃありませんか」
後藤「その事だけどね、明日から、ウチがクジラの救出活動にあたる」
野明「え〜!ホントですか隊長!ひろみちゃん良かった」
遊馬「ちょっと待って下さい。海上の事は、ウチの管轄じゃないですよ?」
後藤「…なあ、ウチが外から、どういう見方をされてるか、今更言うまでもないだろう?」
「あ〜、そういう事ですか」
野明「えっと、落ちこぼれ、寄せ集め、はみ出し者、金食い虫、無駄飯喰らい」
「野明さん、そこまで言ってて悲しくありませんか?」
野明「…言っててそう思いました」
後藤「ま〜、そんなもんだ」
遊馬「だったら尚更…」
後藤「まぁ聞け。つまりね、ウチは端から期待されていない訳。他の組織がやってまた失敗するよりは、期待されていない我々の方がさぁ」
そうなるわな。
遊馬「それじゃあ、言い訳の為だけにウチに任せるって事ですか?」
後藤「そういう事になるかなぁ」
太田「人を馬鹿にするにも程があるよ!目にもの見せてくれようじゃありませんか‼」
「ええ。太田さんの言う通りですね」
後藤「うん。目にもの見せちゃおうか!」
そして、何処から引っ張ってきたか分からないくらい、ボロボロのレイバーが登場する。
野明「うっわ〜!ボッロ〜‼」
進士「そう言わないで下さいよ。海上保安庁が廃棄処分したのをシゲさん達が徹夜で直してくれたんですから」
遊馬「こんなんで本当に大丈夫なの?」
さあな。いつの間にか周りにはテレビ局や野次馬が集まっていた。
野明「ひろみちゃん‼頑張ってえ‼‼」
今回レイバーに乗り込んでいるのはひろみだ。シゲさん達のおかげで、ギリギリだが乗り込めるようになっている。俺達に手を降ると、そのまま海の中に入っていった。俺達もヘリと高速艇に乗り込み、ひろみの後を追い掛ける。俺はヘリを操縦するので隊長と進士と一緒だ。
香貫花『こちら高速艇。準備OK!』
後藤「よ〜し、いいぞ。そのまま待機」
香貫花『前方500m!目標確認!』
山崎『こちらも確認しました。音を出します!』
そして作戦が始まった。
後藤「こちらヘリ。まだクジラに動きなし」
山崎『もう少し、クジラに接近してみます』
遊馬『無理するなひろみちゃん!子供を産んで気が立ってる筈だ‼』
山崎『分かってます……だああああああ‼‼‼』
すると突然、ひろみから呻き声が上がる。
後藤「どうした!山崎‼」
野明『ひろみちゃん!大丈夫??』
山崎『だ、大丈夫です!』
後藤「機体は動くか?」
山崎『はい!…ああ!?』
後藤「どうした!?」
山崎『スピーカーが…外部スピーカーが激突のショックで!』
「それはまずいですね…」
山崎『駄目です!音が出ません‼』
香貫花『仕方ないわ。今日はもう中止するしかないわ』
「こればかりは…」
すると、再びクジラの鳴き声が聞こえた。
野明『あれ?ひろみちゃん直ったの??』
「あれは…もう一頭ザトウクジラが」
沖の方を見ると、ザトウクジラが親子のクジラに近づいて行く。
進士「あ、クジラが…」
3頭のクジラは、無事に沖へと帰っていった。やれやれ。ホント人騒がせなクジラだぜ…