第1小隊と待機任務を交代してから3日、その間は特に大きな出動命令もなく、いつも通り外の草刈りをしたり、皆で夕食の釣りをしたりとする日が続いてる。そして今、俺は夕食作りの為、野明と香貫花の3人で料理をするところだ。
野明「今日もハゼの唐揚げかぁ」
香貫花「仕方ないわよ。飽きるのも分かるけどしょうがないじゃないの」
ハゼとくれば唐揚げ。これが特車2課の料理だ。だが今回は違う。
「いえ野明さん。今回は唐揚げではありませんよ」
香貫花「あら?唐揚げ以外にどんな料理をするのかしら?」
「はい。今回はひろみさんから貰った卵と…これです」
俺は横にあるゴボウを2人に見せる。
「ウチのご近所さんから、ごぼうをいただいたんですよ。ですので、今日の夕食は“はぜの柳川風鍋”にしようと思います」
香貫花「柳川風鍋?」
そっか。香貫花は柳川鍋を知らないのか。
「柳川風って事ですが、本来はハゼではなくドジョウを使うんですよ。それが柳川鍋なんです」
野明「ドジョウの方も美味しいんだよ」
香貫花「へ~」
ま、味は変わらないから、気に入ればドジョウの方も食えるだろうよ。さて、じゃあ始めるとするか。
「それではまず、ごぼうを皮を剥いてささがきにします。そして水に晒してアクを抜きます」
手本を見せる形で、野明と香貫花にやり方を見せる。
「まずはここまでをお願いします」
「「は~い(了解)」」
そして2人は、俺のを見よう見真似で、ごぼうをささがきにしていく。野明はまあまあだが、香貫花は包丁に苦戦してる感じだな。ま、随分と細かい作業だしな。
「香貫花さん、あまり肩に力をいれなくても大丈夫ですよ」
香貫花「だけど、思ったより硬いのよ」
「ですので、こんな感じにすれば…」
俺は香貫花の背後に回り、手を持って一緒に動かす。
「こんな感じですよ。思ったほど力をいれなくても切れるでしょ?」
香貫花「///」
「香貫花さん?」
香貫花「あ、ああ!ごめんなさい。こんな感じね」
すると香貫花は、先程とは違いスムーズにごぼうをささがきにしていった。
野明「……」
「ん?どうかしましたか野明さん?」
手を止めて、俺と香貫花を見てた野明に話しかける。何かあったか?
野明「だだ、大丈夫です!」
「そうですか?」
ま、本人が大丈夫って言うなら大丈夫だろう。
「さて、ごぼうが終わったら次はハゼの下処理から始めます。ハゼは砂泥底を好むので、魚体を覆うヌメリに泥が含まれている事があります。ですので、まず多めの粗塩を振ります」
ボールの中にあるハゼに、粗塩を振りかける。
「そして指先でハゼを揉んで水で洗います。それを2~3回繰返し、キッチンペーパーで拭き取ります。取り合えずこれで第一段階終了です。まずはここまでお願いします」
「「はい!(分かったわ)」」
そして2人は、先程俺が見せた行程で同じ様に残りのハゼを処理していく。
「では次ですが、ここが大変です。これだけの数のハゼを捌きます。ハゼの内蔵を取り出しますが、何分量もそうですが小さいので、気をつけて作業してくださいね」
そして俺達は、黙々と整備士と第1、第2小隊の連中分のハゼの内蔵を取り出した。数十分後、ようやく全ての下処理が終わった。
野明「疲れた~!」
香貫花「そうね。流石に疲れたわね」
「お2人ともご苦労様です。捌いたハゼに熱湯をかけて、すぐに冷水で冷やします。その後残ったヌメリを包丁で取って…」
俺は大きめの浅い鍋を数個用意し、鰹節でとったダシ、醤油、みりん、酒、ごぼうを入れ次に捌いたハゼを放射線状にいれていく。
「そして中火で暫く加熱します」
暫く中火で煮立てて、ごぼうに火が通った事を確認する。
「ごぼうに火が通れば火を止め、溶き卵を流し入れ、三つ葉を上に乗せて蓋をして完成です」
野明「うわ~!いい匂い♪」
香貫花「とても美味しそうね」
「運んでいる間に、卵もいい感じになると思いますし、そろそろ運びましょうか」
俺達は全員分の料理を運び、放送を流した。今回は第1小隊、第2小隊、整備員全員がいるので、結構な時間になった。
野明「あ!来た来た」
全員がゾロゾロとハンガーに集まってくる。隊長やしのぶも来ている。
遊馬「野明、随分と遅かったな?唐揚げそんなに時間かかったのか?」
太田「またハゼの唐揚げか」
シバ「贅沢言わないの」
進士「そうですよ太田さん」
山崎「ここでは、食べられるだけ有り難いんですから」
各々が、今日の夕食であろう唐揚げの事で話している。だが今日は違うんだよなぁ。
香貫花「安心しなさい。今日はハゼの唐揚げじゃないわよ」
『えっ?』
シバ「じゃあ、一体何を食わせるの?」
野明「フッフッフ…今日の夕食は…じゃ~ん!」
テーブルに置いてある鍋の蓋を開ける。
『おおおおおおおおおおっ!!!!!!』
「今日の夕食は、ハゼの柳川風鍋です」
野明「私達も、最近唐揚げばかりで飽きてたねって話をしててさ」
香貫花「それを見越して、翼は別のメニューを考えてたみたいなの」
「ええ。ひろみさんから新鮮な卵と近所の人からお裾分けで貰ったごぼうがありまして、だったら柳川風鍋を作ろうと思ったんです」
『うおおおおおお!!!!』
俺の言葉に、皆が雄叫びを上げる。やっぱり皆唐揚げ飽きてたんだな…
「それでは皆さん、手を合わせて下さい」
俺の言葉に全員が手を合わせる。
「「「いただきます」」」
『いただきます!』
それを合図に、全員が凄い勢いで柳川風鍋に箸を伸ばしていく。
遊馬「旨い!」
シバ「やっぱ翼ちゃんサイコー!!」
太田「ガツガツ!バクバク!モグモグ!」
進士「ホント直江さんの料理は凄いですね」
山崎「ええ。僕、直江さんの料理が楽しみになってますよ」
第2小隊の連中は、いつも通りに食べている。
後藤「ホント、相変わらず色々出来るねぇ」
南雲「だけど、ハゼの柳川風鍋は驚いたわ」
榊「普通はドジョウだが、これはこれで旨いな」
3人も気に入っていただいたようで。
「いかがですか?」
俺は3人に話しかける。
後藤「ん?旨いよ。ってか、直江が作るモンで不味かった事ないもん」
南雲「そうね。だけど…女として負けた気がするわね」
後藤「しのぶさん、直江相手だから仕方ないって」
「人を変な風に言わないで下さいよ」
後藤「だってそうでしょ?料理は旨いわ、生身でレイバーと戦えちゃうわ、そう思っちゃうでしょうに」
「生身っていっても、あれは対レイバー用に開発された刀を使ってるからですよ」
とまぁ、口ではそう言うが、俺…いや、俺を含めた家族、家系は普通の人間からしたらおかしい集団なんだよな。正直言って、俺達直江家はレイバー相手に生身で戦えるし破壊もできる。けど、一応そこは、政府や軍も協力して開発したので対処できるって事にしてる。因みに1本で、イングラムが2機造れるほどの金額らしい。そして、その刀は日本中で俺しか使用できないのだ。
(直江家の連中なら誰でも扱えるがな)
しかし、どうしても対レイバー用になると、従来の刀より重くなる。何故か俺は普通の刀くらいにしか重さは感じず、そのお陰であれは俺専用になったのだ。因みに、メンテに必要な金額は、リボルバーキャノン24発分の値段らしい。
榊「あれを使わないにこしたことはないからな」
南雲「そうですね」
後藤「だけど、他の連中が知った時の反応が気になるねぇ」
榊「そうか?どうせ、初めて見たときの俺達みたいな反応だろうよ」
南雲「そうですね。けど、バレるまではこの秘密を知ってるのは私だけよ」ボソッ
しのぶよ、そうまでして他の連中より上にいたいのか?見ろよ、隊長どころか榊さんまで引いてるぞ。けどまぁ、何はともあれ、夕食も無事に作り終わってホッとした。野明と香貫花も、自分達が作ったハゼの柳川風鍋を美味しそうに食べていた。では俺も…うん、旨い♪