もし、特車二課に凄い人がいたら…   作:シャト6

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第8話

長い待機任務から解放され、俺達第2小隊は第1小隊と入れ替わりで非番になった。今回は、第1小隊が1週間の待機任務。先週は俺達だったから、1週間は非番だ。まぁ、緊急出動要請があれば、非番でも出動するんだけどな。そして、今日も非番なんだが、俺は特車2課に向かっている。

 

「今日の夜だったよな。第1小隊の新しい機体が来るのは」

 

俺はその機体を見に向かっている。要するに野次馬だ。けど、おそらくあいつらも来てるだろうな。こういうのは絶対見逃さない連中だし。そして、絶対に遊馬と太田の奴は来るだろうな。さて、特車2課に到着しハンガーを覗くと、案の定第2小隊の連中が勢揃いしていた。

 

「やはり来ていましたか皆さん」

 

俺は、アルフォンスにワックス掛けをしてる野明の場所に集まる。

 

『……』

 

あれ?反応がないんだけど。

 

「えっと…皆さん」

 

遊馬「えっと、あの!どど、どちら様でしょうか!」

 

皆に押されながら、遊馬が俺にそう聞いてくる。どちら様って…

 

「あっ!」

 

コイツらがビビってた理由。そっか!俺、普段着だから、サングラスかけてたわ。それで気づかないしビビってるのか。

 

「ああ、すみません。私ですよ、私」

 

俺はかけてたサングラスを外して、普段仕事の時にしてる伊達眼鏡をかける。

 

『あああああああ!!!!』

 

ようやく俺と分かり、全員が声を出す。

 

山崎「な、直江さんだったんですか」

 

進士「ボ、ボク…心臓止まるかと思いました」

 

野明「私も」

 

遊馬「皆だらしねぇな」

 

野明「そういう遊馬だって、翼さんが来たとき足震えてたじゃん」

 

遊馬「うっ…」

 

図星を言われ遊馬も怯む。

 

野明「ところで、何で皆いるの?」

 

香貫花「野次馬よ」

 

野明「むっ。私がアルフォンス磨いてるとこ見てて面白いわけ!」

 

遊馬「アホかお前は」

 

「野明さん、私達が来た理由は、今夜新しく第1小隊に試験的に配属される新型レイバーがくるんですよ」

 

野明「ええっ!!あっ」

 

野明は驚き、持ってたワックスを落とす。ま、香貫花が見事キャッチしたがな。

 

香貫花「噂じゃ、イングラムより優秀らしいわよ」

 

野明「し、知らなかった」

 

遊馬「ま、向こうの方が新しい分だけスペックは上だろうな」

 

シバ「来たああああああああ!!」

 

するとシゲが叫びだす。

 

シバ「来た来た来た来た来た!来たよ~!!」

 

どうやら噂の新型レイバーが到着したみたいだな。俺達は邪魔にならない様に上から見学する事にした。

 

榊「満員御礼だな。よ~し!シート外して電源ぶちこめ!すぐに初期設定始めるぞ!!」

 

そして起き上がりシートが剥がされた。

 

遊馬「すげ~!これがあのSRXー70か」

 

野明「外見だけじゃ凄いかどうか分かんないや」

 

香貫花「オプション装備は42mオートカノン」

 

太田「なに!?イングラムが負けとるじゃないか!!」

 

香貫花の説明に、太田は叫ぶ。

 

香貫花「それだけじゃないわ。肩にラインメタル、MK-22を改修した20mバルカン砲一門。軍用レイバーでも相手にできそうね。充分に凄いんじゃないかしら?」

 

遊馬「詳しいな」

 

進士「で、警察用のレイバーに、そんな装備必要なんでしょうかねぇ?」

 

太田「あって邪魔にはならん!!」

 

装備の事について、トリガーハッピーの太田は叫ぶ。

 

「太田さん。私達は警察官です。はっきり言って、私から言わせれば、最早これは軍用装備です。先程太田さんは、あって邪魔にはならないと言いましたが、正直言って警察にそこまでの装備はいりません。そもそも、日本の場合は、余程の事がない限り、発砲する事はありません」

 

太田「だ、だが…」

 

「前から言いたかったのですが、太田は向こうでいうトリガーハッピー、乱射魔ですよ。犯罪者でも、日本では人としての扱いが普通です。犯罪者だからといって、無闇に発砲する必要はありません。その事をよく考えて下さい」

 

そう言い残して、俺はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……』

 

翼が去った後、誰1人喋らなかった。特に話題の中心である太田は、翼の言葉にショックを受けていた。

 

遊馬「ま、まぁ気にするな太田」

 

野明「そ、そうですよ太田さん」

 

進士「これから反省すればいいんですから」

 

山崎「そ、そうですよ」

 

香貫花「……」

 

他の連中は太田を励ますが、香貫花だけは黙っていた。

 

野明「香貫花も何か言ってあげなよ」

 

香貫花「何故?翼の言う通りじゃない。警察官としての誇りとかは見習うわ。だけど、何でもかんでも撃ちたがる癖は、はっきり言ってあげなきゃ本人の為にならないわよ。悪いけど、私も翼の意見に賛成よ」

 

そして香貫花も行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、第1小隊は早速新型レイバーで出撃したらしい。だが、隊長室から出てきた榊さんの様子が変だ。

 

「榊さん、何かありましたか?」

 

榊「直江か。なに、少し後藤さんから頼まれごとでな」

 

「頼まれごと?」

 

榊「ああ。あの新型レイバーだが、後藤さん曰くどうも胡散臭いらしいんだよ。そもそもメーカー側の条件がよすぎるんだ」

 

「条件…ですか?」

 

榊「そうだ。正式導入決定までは無料貸し出し。メンテまでメーカーが受け持つらしい。そして、昨日出動してメーカー側の連中がメンテに来たそうだが、シゲから言わせれば、連中の目的はディスクのコピーらしい」

 

「ディスクのコピー…行動パターンデータですか」

 

その言葉を聞いて、俺はその結論にたどり着く。

 

榊「ああ。後藤さんも同じことを言ってたな」

 

「となると、そのメーカー…トヨハタオートが怪しいですね」

 

榊「……」

 

俺の言葉に、榊さんは何かを考え出す。

 

「榊さん?」

 

榊「直江、トヨハタオートの事は篠原の倅かシゲに聞いてみろ。何かを分かるかも知れねぇぞ?」

 

「分かりました」

 

俺は屋上から、下にいるシゲの所に向かった。

 

「シゲさん」

 

シバ「あれ?翼ちゃん、どったの?」

 

「いや、SRX-70のメーカー、トヨハタオートについて聞きたいんですよ」

 

シバ「トヨハタオート?何でまた」

 

「榊さんから聞きましたが、トヨハタオートの連中がろくに整備もしなかったと聞いて」

 

シバ「あ~そうそう」

 

「そして、連中の狙いはディスクのコピー…行動パターンデータ」

 

シバ「間違いないね。後、トヨハタオートだけど、はっきり言ってトヨハタオートだけじゃ、あんな物作るのは難しいと思うよ」

 

新型レイバーに付いてる、バルカン砲を見る。

 

シバ「あくまで俺の知り合いに聞いた話だけど、トヨハタオートじゃなくて、シャフト・エンタープライズが関わってるらしいんだよ」

 

「シャフト・エンタープライズといえば、爪楊枝からスペースシャトルまでという、多国籍企業ですよね?」

 

シバ「そうそう。で、今回はトヨハタオートとシャフトとの共同開発って事になってるけど、殆どがシャフトが作り、トヨハタはシャフトの隠れ蓑に過ぎないって、業界内では有名な話なんだよ」

 

「なるほど…だったら、行動パターンデータを欲しいと思っているのは」

 

シバ「シャフト・エンタープライズだろうねぇ。上の連中は何を考えているのやら」

 

「……」

 

すると、上からしのぶが降りてきてそのまま外に出ていった。

 

シバ「南雲隊長、どうしたんだろう?」

 

「…シゲさん」

 

シバ「ん?」

 

「第1小隊が前まで使ってた、97式改って使えるんですか?」

 

シバ「97式改?当然毎日メンテしてるから、すぐに使えるけど。それがどうしたの?」

 

「いえ、すぐに使えるならいいんです。情報ありがとうございました」

 

俺はシゲにお礼を言い、外に出て行ったしのぶの所に向かった。しのぶは、握り拳を作り、力一杯握っていた。

 

(やれやれ。しのぶの奴も面倒な性格してるな)

 

俺はゆっくりとしのぶの横に立つ。

 

南雲「直江君」

 

「お疲れ様です。取り合えずこれを」

 

俺は持ってたハンカチを渡す。うっすらとだが、涙を浮かべてたからな。

 

南雲「…ありがとう」

 

「いえ」

 

南雲「……」

 

「……」

 

そして暫く沈黙が続く。

 

南雲「ウチの小隊が、まさかあんな風に使われようとしていたなんて」

 

「シャフト・エンタープライズが、こんな手を使うとは思いませんでしたけど」

 

南雲「ねぇ、翼君…私、どうしたらいいのかしら」

 

そう言いながら、しのぶは俺に寄りかかる。

 

南雲「上は私達の言ったことを憶測としか思ってくれない」

 

「……」

 

南雲「このまま黙って、上の意向に従うしかないのかしら」

 

「…そうですね。でしたら、こういうのはどうですか?」

 

俺はあることを言い、それを課長に話したらと言う。するとしのぶは、少し驚いた顔をした後、笑いだした。

 

南雲「あははは!確かに、それなら頭の固い上の連中も意見を変えそうね」

 

「ええ。いい案でしょう♪」

 

南雲「ホントね。ありがとう。その案使わせてもらうわ」

 

すると警報が鳴り響く。

 

『港区、海南町にて402発声!第1小隊出動せよ!繰り返す!海南町にて402発生!』

 

「出動ですね」

 

南雲「そうね。それじゃあ、行ってくるわ」チュッ

 

しのぶは別れ際に、俺にキスをしてハンガーに走っていった。

 

「ったく、急にするなよな。香貫花とかに見られてねぇからよかったけどよ」

 

キスされた唇を触りながら、走っていくしのぶを眺めていた。その後、俺達第2小隊にも出動命令が出されたが、到着してみると、既に鎮圧されていたのだった。そしてその日の夜、雨が降る中メーカーの連中が新型レイバーを回収しに来た。さて、意味あるか分からんが、一応牽制しておくか。

 

「あ、ちょっと待って下さい」

 

俺は買った缶コーヒーを持って、回収しに来たメーカーの連中に渡す。

 

「雨の中御苦労様です。宜しければ」

 

「これはわざわざ、ありがとうございます」

 

手前の方に座ってる男に渡す。この男は、回収しに来た時に舌打ちしてた奴だな。

 

「あ、それと…」

 

俺は他の連中に見えないように男のネクタイを掴む。

 

「例え上の決定だろうが、今度またこんな事を考えやがったら、テメェら全員生きて帰れると思うなよ?テメェらの上司にそう伝えな」

 

「わ、分かりました」

 

「…なら宜しい♪」

 

俺は笑顔になり、掴んでたネクタイを離す。そして男はビビって、そそくさと走り去った。

 

「ま、あれだけ言っとけば少しはマシになるだろうよ」

 

そして俺は、外で野明達に止められてた太田の様子を見に行く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後藤「しかし、よく上の決定を覆せたね」

 

南雲「ええ。課長達にあることを提案したのよ」

 

後藤「あること?」

 

南雲「教えてほしい?」

 

後藤「教えないって言わないでね」

 

南雲「秘密は守れる?」

 

後藤「口も固い方だよ」

 

南雲「実はね…」

 

南雲は、翼から言われた事を上司に言い、翼の考え通り新型レイバーをメーカーに返すことに成功した事を後藤に話す。

 

南雲「新型レイバーの操縦者を、太田巡査にするって言ったのよ。直江君の提案でね」

 

後藤「あらら。アイツも思いきった事を考えたもんだねぇ」

 

翼の提案に、後藤は呆れつつ感心していたのだった。

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