ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
高校二年生の冬、この年末年始にかけての北海道旅行を計画していた詩織と公人は伊集院家のクリスマスパーティーが終わり帰宅してそれぞれの自室でその仕度を整えていた。
「いよいよ明日ね」出かける前日に公人と電話で話す詩織。
「そうだな、お互い両親に気づかれないといいが…」一応親公認のカップルではあるが、二人っきりで旅行するのは流石に許可が降りる訳がない。
「明日はお姉ちゃんにアリバイ作ってもらうから。途中で別れればいいんだし」
「沙織さんに?却って不安な気も…」
「大丈夫よ、万が一バレてもお姉ちゃんに逆らえる人類なんていないから」部屋の中は寒いにも関わらず公人のこめかみから一筋の汗が流れていった。
次の日、飛行機から北海道の地へ降り立った二人は予約していたホテルにチェックインを済ませると、早速札幌市時計台を見に行った。
「これが北海道のシンボル、札幌の時計台か」
「ライラックの花が咲いてる時にくればもっと素敵だったのにな」
「春に来られれば良かったな」
「仕方ないわよ。それに私、公人君と一緒なだけで充分満足よ」
「そ、そうか?」照れ臭さからドギマギして声が上擦る公人。
「あ、明日はどこへ行こうか?」彼なりに精一杯冷静に(出来てないが)話を切り出す。
「そうね。雪まつりの会場予定地に行きましょう」翌日、雪像が建立されていく様子を見物する。
「雪まつり本番もいいけどこうやって少しずつ仕上がっていくのを見るのも楽しいな」
「確かに普通は地元の人以外、あまり見ない光景よね」この日は12月31日。二人はホテルで夜を迎え年明けを待つ、カウントダウンをしながら時計の秒針が時を刻むのをじっと見ていた。
「「3、2、1、0!」」2001年が明けた。
「明けましておめでとう、公人君」
「明けましておめでとう、詩織」互いに新年の挨拶を済ますと二人の唇がどちらからともなく吸い寄せられるように近づいていき…気がついたら朝になっていた。
~ここから忍視点~
好雄達との初詣から帰宅して改めて家族であちらの藤崎家に新年の挨拶に訪ねたら伯父、即ち詩織ちゃんの父親がやけに青褪めていた。
「詩織ちゃんが出かけたっきり連絡がない?(そりゃそうよね)」好雄から公人と旅行に行った事は聞いていたわ、大方二人でイチャイチャしながら北海道を満喫しているのね。だが本音は口に出さず
「大丈夫よ伯父さん。詩織ちゃんしっかりしているし、警察なりどっかから連絡きた方が問題でしょ」口先三寸で言いくるめておいたわ、奥から伯母もでてきて
「沙織も一緒なのよ、余程の事がなければ無事に帰ってくるわ」アラ、沙織さんが?ハハーン、アリバイ作りに協力といったところかしら。姉を利用するとは、詩織ちゃんもしたたかね。
「詩織さん達は二人っきりで北海道旅行か。いいなぁ」正月二日、陸上部の練習日の帰りに光ちゃんがあちしに洩らす。
「何だよ、うらやましいのか?」
「だって北海道だよ、私も忍君と二人っきりでどこか行きたいよ」この娘、そんなに北海道が好きなのかしら?
「え?途中から聞き取れなかったけど」
「ううん、何でもないよ」修学旅行の時もだけど最近光ちゃんってばあちしに隠し事が多くない?
~視点なし~
一方、クラーク博士の銅像を眺めていた詩織と公人の耳にドスンドスンと重い音が響く。どうも足音のようだが尋常な音の大きさではない、そして二人の目の前に三メートルはありそうなイエティが姿を現す。
「詩織、逃げろ!」公人は詩織を避難させる為、少しでも足止めしようとイエティへ果敢に挑む。だが当然勝てるハズもなく、イエティの力で握られてほぼ氷の塊と化した硬い雪玉を投げつけられてまさに死にかけていた。
「ダメだ殺られる!もうおしまいなのか?!」
「う~ん、その程度じゃまだ詩織ちゃんは任せられないなぁ」公人に襲いかかるイエティの太い腕を難なく受け止める沙織がいた。
「ヨイショッと」明らかに自分の十倍の重さがありそうなイエティを軽々と持ち上げてひっくり返した、そして頬に二、三発ビンタを食らわすとイエティは息絶えた。
「公人君、大丈夫?怪我してるじゃない!」
「俺は大丈夫。それより沙織さんは?」
「お姉ちゃんがあれくらいで怪我なんてしないわよ!化け物なんだから!」せっかく助けに来たのに妹に思いっきり悪態をつかれて落ち込む沙織。
「お姉ちゃん?違うの!頭に血が登ってつい…ね」
「詩織ちゃんは私より彼氏のが大事なんだ…もういいもん」地面にノの字を書きながらイジケる沙織を二人でなんとか宥める詩織と公人だった。
後にこの話を聞いた忍は
「UMA殺しちゃダメでしょ」と人知れず呟いたという。
この時点では忍もまだカミングアウトしてないので地の文以外は男言葉で話してます(笑)。