ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
さて、こちらは佐倉楓子と高坂賢のカップル。高校の卒業式を終えて四月から、大学に進まず就職するのでその前にどこかへ出かけようという話になった。
「楓子はどっか行きたいところある?」
「えっとねぇ…沖縄行きたいなあ」
「そっか。じゃ明日旅行会社に行くか」そして準備を整えた二人は飛行機で沖縄へ飛び立った。
宿泊先のホテルに着いた二人は荷物を置くと早速海へ繰り出す。同じ事を考える人は多いのか、海水浴場は賑わっていた。
脱衣場で着替える二人、以前は自分の体型が太めというコンプレックスを持っていた楓子だが(そもそも転校するハメになった原因もそこにある)詩織に諭されてから己に自信を持つようになり、いつもより露出の高い水着を新調してこの日が初のお披露目である。
「どうしたの?」珍しく呆けている賢の顔を覗き込む楓子、
「スマン、見惚れてた」隠し事が下手な賢は正直に告白する。
「ヤダ、恥ずかしい。こっち見ないで!」
「何で?可愛いのに。まあ、他の男に見せるのはあまり気が進まないが」意外に独占欲の強い賢だった。
「もう、知らないモン!」ソッポを向く楓子、そこに自分達と同年代くらいの地元の人間らしき少年がいた。肌は浅黒く、手に銛を持っている。
「ここって漁場じゃないよな、あのままだと監視員に取り押さえられるぞ」賢が心配した通り少年は監視員二名に捕まって銛を取り上げられていた。激しく抵抗しているところに彼の祖父らしい、やはり浅黒い肌の老人が少年達の元へ詰めよってきた。
「スマンのう、この子は生まれつき声が出せんもんで。祖父の儂からよーく言って聞かせるから勘弁してもらえんか?」老人の取りなしでようやく少年は解放された、しかし老人をキッと睨み付けると何処へともなく走り去っていった。
その様子を何となく見つめていた賢と楓子だったがせっかく沖縄に来たのだからと、気を取り直して海を目一杯楽しんだ。
その夜、賢と楓子はベッドで散々R-18…な事をしてそのまま眠りについていたがコツコツと音がして目を覚ました。誰かが窓に石を投げている、窓を開けて下を見ると昼間の少年がこちらを見上げていた。賢達の部屋は三階にあるので直接昇ってはこられなかったんだろう、楓子は困った表情で
「何だか気味が悪い、私達に用があるならフロントを訪ねたらいいのに」しかし賢には彼が密かにコンタクトを取りたい理由がおぼろ気ながら解った。彼の背中には鋏だけで赤井ほむらくらいの大きさがある蟹がうかんでいる、つまり彼もまたスタンド使いだったのだ。
〈俺の名はカイ、言いたい事は伝わっているようだな〉少年はスタンドを介してホテルから出てきた賢に話しかけた。
「お前もスタンド…その背に存在する者の事だが、ナゼ俺もそうだと解った?」
〈背中の
「何をだ?」
〈この海の珊瑚が密猟者達に狙われている、今まで色んな人に頼んだが誰も口の利けない俺に協力などしてくれない。爺さんもやるだけ無駄と言って取り合ってくれなかった、最早こうして唯一まともに話せるお前しか頼れるヤツはいないんだ〉
「分かった、約束はできないが努力はしよう」
朝になり、朝食を摂りながら賢は楓子に事情を全て打ち明ける。
「ゴメンな、せっかくの旅行だったのに」俯いて詫びる賢に楓子は
「いいよ、むしろそういう事なら助けてあげて。だって私、そんな賢が好きなんだモン」
「ありがとう、楓子」
その後、賢と少年、カイがどうなったかはあまり語る必要もないだろう。密猟者はファイト・クラブとストームブリンガーにメッタクソにボコられた挙げ句沖縄県警に逮捕されて、最後は有罪判決を受けた。事件も解決して賢と楓子も沖縄を去っていく、帰りの飛行機で改めて楓子に侘びと感謝の言葉を告げる賢がいた。
「この埋め合わせは今度必ずするよ」
「今度っていつ?」
「そうだなあ、新婚旅行で?」
「え?嘘?もうプロポーズ?!」慌てふためく楓子に
「最初からそのつもりで付き合ってるぞ」恥じらう様子もなく宣言する賢。そんな二人を乗せた飛行機を地上から感慨深げにカイが見上げていた。
[注釈1]この頃、熱中症という言葉はありませんでした。
オリジナル・スタンドの[ファイト・クラブ]、名前の由来はブラピ主演の同名映画のタイトルから、クラブの意味とスペルは違いますが(笑)。