ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
甘兎庵の看板娘、宇治松千夜が祖母の指示で他所の喫茶店に修行に行ったと聞いた保登心愛(以下ココア)は自分の居候先かつバイト先であるラビットハウスにてオーナーの娘の香風智乃(以下チノ)に事情を問いただす。
「ねぇチノちゃん、お婆さんが千夜ちゃんを送り込んだ喫茶店って知ってる?」
「よく知ってますよ。そこの店長は10年くらい前、このラビットハウスで働いてましたから」
「そんな!恩を仇で返すような真似を……」もう一人のバイト、天々座理世(以下リゼ)は拳銃にマガジンをセットする。
「別に仇になってません。お店があるのは違う街だし、父も全て知った上で雇ってましたから。辞めた時は名残惜しかったようですが」チノの父、タカヒロが店に出てきて会話に入ってくる。
「技術、センス共に素晴らしかったからね。後10才も若ければチノの婿にと……」
「お父さん!」言いかけてチノにバッサリ切られる。
一方甘兎庵は今日も水無月琴子目当てに通う中年や老齢の男性客が訪れる。中には
「琴子さん、好きです❤」
「再婚してくれー」
「余生を共に」
「介護して下さい」とあまり上手くないプロポーズをしてくる
千夜は件の喫茶店Sunnylightを訪れて、店長の藤崎忍からあれこれ接客指導を受けている。
「じゃ明日から仕事してもらうわね、あちしは休暇をとるから……夕子!」
「あ~ハイハイ」忍と同年代の女性店員が厨房から出てきた、忍は二人を引き合わせる。
「副店長の朝日奈夕子、明日は彼女の指示に従ってちょうだい」
「朝日奈夕子よ、よろしく」
「宇治松千夜です、よろしくお願いします」初対面の大人には流石にボケはかまさない千夜だった。
翌日、千夜はSunnylightでの初仕事をこなす、玄関やテーブル、床の掃除を済ませて飲み物の準備をしているとこの日最初のお客が訪れた。
「千夜ちゃ~ん、様子を見にきたよぉ」ココアだった、チノとリゼも一緒だった。
「いらっしゃいませ、みんなワザワザありがとう。ゆっくりしていって」お冷やを持ってきた千夜がそう告げて去っていく、早速メニューを開くココア。
「アレ?何かフツー……」甘兎庵独特の奇妙な名のついたモノはなかった。
「身内の店じゃないし店長さんが許さないだろ」至極真っ当な突っ込みをかますリゼ。
「中身はウチのお店とも違いますね」元雇い主の娘であるチノは微妙に複雑な表情を浮かべている。
「いらっしゃいませぇ」別のお客がきたようだ、年の頃は忍や夕子と同じくらいで赤ん坊を抱っこ紐と腕で抱えている。
「私が行くから」夕子が千夜を制止してその女性の元へ歩み寄る。
「もう大丈夫なの?美緒っち」忍や夕子の旧友の一人、如月美緒(旧姓。現在はペンネーム)である。一ヶ月程前に轢き逃げ事故に遭い瀕死の重症を負った彼女だが、ある方法で奇跡的に回復していた。
「はい、おかげ様でスッカリ元気になりました」
「頑張ったのはウチの店長だけどね、後はマリネラ国王のおかげか」
「そうですね。ところで注文していいですか?」
「あ、そうか。ゴメンゴメン、何にする?」
「昔みたいにオムレツサンドと…コーヒーは止めておきましょう、紅茶をお願いします」
「はい、少々お待ちを」千夜やココア達には理解できない会話をしていた二人だが最後は夕子が態度を接客モードに切り替えて厨房に消えていった。
この日はもう一人、馴染みのお客がやってきた。幾つか町を隔てた場所にあるオフィス街の一角に構える、ねこやという洋食屋の店主である。
「店長の忍君はいないのかい?」千夜に問う店主。
「今日は休暇を摂ってます、何かご用でしょうか?」
「イヤ、大した話じゃない。夜に電話するからいいよ」そしてコーヒーとパスタを頼み、給されたモノを食べながら
(彼の指導がいいのか、前より味が良くなってる気がするな。俺もウカウカしてられんぞ)そんな事を考えていた。
しばらく経ってココア達は千夜が甘兎庵に戻ってきたと聞いてすぐに訪ねると、そこには小林○子張りの電飾付きのハデな和装コスプレをした千夜がいて友人達を出迎えた。
「忍君でも矯正するのは無理だったみたいね」
「むしろ反動で前より酷くなっちまったよ」琴子と千夜の祖母は虚しそうにため息を吐いた。