ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
三月も中旬を迎えた今日、来月からひびきの高校に入学する私はどんなところかと様子を見に来た。校門の前に立って深呼吸を一つ吐いたら一瞬クラッとして足がもつれた、慌てて体勢を整えようとしたら在校生かな?一人の男子に体を支えられた。
「大丈夫?」え?ヤダ、イケメン!急に顔が熱くなった私はしどろもどろになって
「あ、ハ、ハイ平気です。ありがとうございました先輩」
「先輩?」そうか、私まだ入学してないんだっけ。
「わ、私来月からここに通う新入生なんです。今日は見学に」
「アッハッハ、そういう事か」笑い方も爽やかな人だ、でもどっかでみたような顔なんだよね。
「オーイ忍!」忍?この人が?う~ん、段々思い出してきた。アレ、って事は?
「すいません、お名前教えてもらえますか?」私はなるべく冷静なフリをして尋ねる。
「藤崎忍だが」やっぱりー‼私、タイムスリップしちゃったみたい。取り繕うように頭を下げてその場を後にしたけど、これから先どうしよう。
ポケットに財布があったので硬貨の中から平成11年以前に発行されたモノを探す、あの人が高校生なら私がタイムスリップした今は平成12年だからそれ以降のお金は使えないモンね。この時代はスマホもネットもないけどコンビニはある、正直お腹も空いたから近くのフ○ミ○で水とサンドイッチを買ってそれで空腹を満たす。
やがて夜になり辺りも暗くなる、帰る場所など当然ない私は河川敷に腰を下ろして途方にくれる。それにしてもこの街って私から見て30年くらい過去だよね、それにしちゃ未来と殆ど変わってない。それが妙に安心する、勿論元の時代に戻れる保証はないから不安は拭えないけど。
「あ~これこれ君、未成年が一人で何をしているのかね?」やけに逞しい和装姿のお爺さんが私に話しかける、一見怖いがよく見ると暖かい目をしていた。
「何か訳アリのようじゃな、この年よりでよければ話してみなさい」優しい言葉をかけられた途端涙が溢れる私、自分に起きた事を正直に話す。信じてもらえなくてもこの際構わないと、その時はナゼかそう思った。
「なるほどのぉ」お爺さんは突拍子もない私の話を真剣に聞いてくれた。
「うむ、それなら元の時代に戻れるまでワシの親類の子という名目で高校に通うといいじゃろう」えっ信じてくれたの?お爺さん、普通なら頭のおかしい子供だって病院かどっかに連れてくモンじゃないの?
「君が嘘つきか妄想に取り付かれているかは目を見れば分かる、おそらく本当なんじゃろう。さ、もう夜も遅い。ワシの家に来なさい」私はお爺さんに保護された。後になって解ったんだけどこのお爺さんこそ当時のひびきの高校校長、爆裂山和美さんだった。
新入生としてひびきの高校に入学した私は早速忍さんに改めて先月のお礼を述べに二年一組の教室に行った。
「気にすんな」って忍さんは言ってくれた。そういえばこの頃はまだ、本性隠してたんだよね。こうしてみると本当格好いいなぁ、勿論未来でも素敵な人だけどね。
放課後になって私は校長の許可をもらってから入部届を手に、陸上部のドアを叩いた。部室には陽ノ下光さんがいて
「ウン、一緒に頑張ろっ」と笑顔で受け取ってくれた、やっぱりこの人も素敵な女性だな。
何だかんだで一学期があっという間に過ぎていって夏休みも近いある日、あの悪名高い坂城匠が私に妙な話を持ちかけてきた。
「やあ、夏休みの宿題に困ってない?」こいつの企みは知っている、宿題代行の見返りにそいつとの援交を斡旋しているんだよね。
「キャーッ、痴漢!変態!」私はワザと大声を上げて坂城に濡れ衣を着せてやる。案の定バツが悪くなって逃げ出した、ざまーみろ。
陸上部の夏合宿最後の日、忍さんと光さんが二人っきりで夕涼みをしているのに出くわす。気づかれないよう遠くから見守っていると三月の時と同じ目眩がした、踏みとどまろうと足を地につけたと思ったらベッドからゴロンと転がり落ちた。
「あれぇ、夢?」どうやらこの五ヶ月間の出来事は私、藤崎蛍が見ていた夢だったみたい。フライパンでお玉を叩く音が私の部屋に響く、パパが私を起こしに部屋に入ってきたようだ。
「蛍ちゃん、春休みだからっていつまで寝てるの?雪ちゃんはもう朝ごはんすませたわよ」
「…忍さん?」
「何で父親を名前で呼ぶのよ?」パパが呆れ顔で私を見下ろす、因みに雪ちゃんとは10才下の妹(五才)だ。
「パパ」私は藤崎忍、自分の父親を見つめる。
「何よ?」怪訝な顔で聞いてくるパパ。
「蛍起きたの?だったらリビングに降りて来なさい」階下からママこと藤崎光、旧姓陽ノ下光が二階にあるこの部屋に上がってきてパパの隣に立つ。
「パパ、ママ、私二人が大好き‼」二人の首に思いっきり抱きつく、するとヨタヨタと両手両足で二階に上がってきた雪が
「おねーたん、ユキは?」
「雪も大好きだよぉ」妹をギュッと抱っこする、今日も私達藤崎家は仲良し一家だ。