ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
幼馴染みで恋人の陽ノ下光との結婚を決めた藤崎忍、二人で互いの両親へ挨拶に行く。その際
「光(ちゃん)が男の子だったらよかったのに」と言い出したBL脳全開のそれぞれの母親が他の家族から総スカンを食らう等すったもんだはあったが、何とか無事に済ませて現在一緒に暮らす家に帰宅した。
その夜忍は夢を見た。あれは小学生の頃、ひびきの市から引っ越す少し前。学校から帰ってきた忍はランドセルを家に置いて近所の河川敷をブラブラと歩いてたら、そこに女の子が一人で地面に向かってゴソゴソ何かをしていた。
「何してるの?」女の子に声をかける。
「お花さんを植えてるの」女の子が答える。
「一緒にやっていい?」
「ええ」忍と女の子は土を掘って花の苗を植えた。
「これで綺麗なお花さんが咲きます」
「うん」
「この事は3人だけの秘密ですよ」
「わかった~」
「私とあなたとケロケロでべそちゃんだけの秘密だからね、絶対絶対ですよ」そこで目が覚める。
「懐かしい夢だったわ、つーかあの娘どっかで見たような気がするのよね。どこだったかしら?あれより未来なのは確かなんだけど……」隣でまだ寝息を立てている光を起こさぬようにベッドから出ると朝食の支度にとりかかる、その内昨夜の夢など頭から抜けていってしまった。
脚本家の白雪美帆は依頼のあった新作ドラマの仕事が一段落すると久し振りに外へ散歩にでかけた、季節は秋を迎えて気温も少しずつ下がっている。
「キャッ!」一陣の風が吹く。それはひんやりと冷たくこれからの季節を物語っているようだった、冷えそうな体を庇いながらふと幼い日の思い出が蘇る。今から16年程前に名前も知らない男の子と二人でひびきの市の河川敷に植えた花の苗。あれは無事に根付いたのだろうか?一度思いだしたら気になって仕方がない。美帆はひびきの市に向かう電車に乗る為、駅へと走る。さっきまで冷えていた体が心なしか暖まっているのを感じた。
その頃、件の河川敷では美帆の双子の妹で売り出し中の女優白雪真帆が端役で出演するドラマのロケが行われていた。
「はい、シーン23、彼女が彼の元へ駆け寄って行くところ。ヨーイ、アクション!」監督の掛け声に合わせて芝居を始める主演俳優達だったが女優が走り出した途端、真帆がいきなり大声で叫ぶ。
「ダメェーッ」当然撮影は中止になる。
「カットカット‼ちょっと白雪ちゃん、突然どうしたのよ?」監督はオネェだった。
「ハッ!す、すいません。その足下の花が踏まれそうになってつい……」
「花?まあ可愛らしいわね」
「君ぃ、新人が撮影止めちゃ困るよ」真帆に文句を言おうとしたADを監督が逆に叱責した。
「貴方ね、花とて生きてるのよ。それにどんな視聴者がどう見てるか解らない、この花を踏んづけた事でクレームもありうるわよ。白雪ちゃんよく気づいてくれたわ」余談だがこのドラマが放送された後、真帆は世間の注目を集め人気女優の仲間入りを果たすがその理由がこのエピソードに関係しているかは定かでない。
撮影は終わり、役者もスタッフも帰って真帆だけが残っていた。そこに美帆がやってきた、再び冷たい風が吹いて双子に襲いかかった、この日はたまたまパンツルックだった真帆と動きやすいからとスウェットの上下で出歩いていた美帆。
「スカートじゃなくてよかったですね」とひとりごちる美帆に
「姉さん、もっとお洒落したら?」真帆が苦笑いすると
「アラ、お二人さん。仲がいいわね」美帆の高校時代の同級生で、真帆とも親しい藤崎忍がそこにいた。
「藤崎さん、こちらにご用なんですか?」以前ひびきの市には住んでいないと聞いていた美帆の質問に
「不動産屋に寄ってきた帰りよ、今回はいい物件がなかったけど」
「物件?家でも買うの?」真帆も尋ねてきた。
「店よ、あちし自分でカフェを開くつもりなの、その為のお金を今日まで必死に貯めてたのよ」
「そうなんですか、開店したら知らせて下さいね。初日に伺います」
「姉さん、初日に行くなら開店前に知らせてもらわないと…」
「双子漫才?」
「違うわよ!」自分で突っ込んで吹き出してしまった真帆、その後3人で一頻り一緒に笑う。
「それでアンタ達は何してんのよ?」今度は忍から質問する。
「私は昔を思い出して、まだ小学生の頃でしたが」
「あ~そうだった、姉さんあの辺に花の苗植えてたっけ」急に美帆の顔が真っ赤になる。
「な、何で真帆ちゃんが知ってるんですか?あれは私と、一緒に花の苗を植えた男の子だけの秘密だったのに!」
「母さんから聞いてるわよ、大体小学生じゃ秘密にするのも限界があるでしょ」正論である。
「あっ!」忍が何かを思い出したように声を上げる。
「それ、あちしじゃない?美帆ちゃん、確かあの時カエルのぬいぐるみ抱えてたわよね」
「え、そ、そうだったんですかぁ?」急に焦り始めた美帆。
「そういえば今朝、夢で見たわ。さっきまで忘れてたのよ」まさかの再会に戸惑う美帆と意外な繋がりにボー然とする真帆、ナゼか機嫌のいい忍。
「姉さん、もう帰ろう。寒くなってきたわよ」気がつくと夕方になっていた。
「じゃ二人共ウチに来ない?他にも話したい事、色々あるし」という訳で白雪姉妹は忍の家に招待されて思い出話に花を咲かせた、河川敷のあの花は微笑みを浮かべているようだった。
締め方が今一つですな、もっと綺麗に終わらせたかった。
(;ー_ー)