ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
年末、宮内家の居間にて。れんげが葉書を数えていた、年賀状を書くつもりのようだ。
「ひい、ふう、みい……」
「ん?れんげ何してんの」帰省していた次姉のひかげが尋ねる。
「年賀状なん。なっつんにこまちゃんにほたるん、駄菓子屋にこのみ姉……」毎日のように顔を合わせている友人達の名を上げるれんげ。
「後はしのぶんと軽音部のみんなと、それに仗助のおっちゃんにも送るん」
「あの人、姉ちゃん達と年一緒だぞ。おっちゃんとか言うなよ、しかし年賀状ね。最近書いてないなあ」こたつで寛ぎポテチを齧り呟く。
「ちゃんと書かないとダメなん」
「東京に戻ったら電波届くし、メールで送ればいいっしょ」相変わらず面倒臭がりなひかげである。
「そうなんなー」れんげはクレヨンを手に、何やら真剣な顔で葉書に向き合う。
「来年何年なん?」れんげに問われたひかげは干支を暗唱する。
「子、丑、寅、卯……戌だね」
「ワンちゃんなんなー」
「ところで、絵描くの?その年賀状に」
「当たり前なん、年賀状には絵描くん」
「いや、れんげクレヨンなくてもスタンドとやらで絵が描けるって話きいたけど」
「あれはいざって時しか使わないん、普段はちゃんと手で描くのん」
「なんかなー、れんげは時々変な絵とか描くからなぁ。いつだったか私の似顔絵描いてもらった時も……私が真ん中でポツンと立っていて、周りを無数の目が囲んでるみたいな絵描いてたじゃん」
「ウチ、そんなの描いたん?」首をかしげるれんげだがハッとして手をポンと叩くと
「思いだしたん、『苦悩』の事なんな」
「そんなタイトルだったのか、人の似顔絵をそんなテーマで描かないでくれよ」
「心配しなくていいのん、ちゃんと可愛いワンちゃんの絵にするん」
「ホントかぁ?どれちょっと見せて」
「ダメなん!描いてる途中の絵は見せないん!」れんげは庇うように葉書を腕で隠すがそれがひかげのイタズラ心に火をつけてしまったようだ。
「えーいいじゃん、減るモンじゃなし」
「完成したら見せるからそれまで待つのん!」
「たった1人の妹がどんな絵描くか、お姉ちゃん心配なんだよ。だからぁ、ホレ出しなよ。えへへへ」どこのエロ親父かと言いたくなるようなニヤケ顔で迫るひかげ。
「ひか姉、悪役みたいな感じなん」れんげにはエロ親父に見えなかったらしい。
「そんなに見たいん?」
「おう、見たい見たい」
「じゃー手をこうやって、そすんさー!って言うん」両腕を蟷螂のように構えるとひかげに真似するように促す。
「はい、そすんさー」ひかげは気だるそうに気の抜けた『そすんさー』をみせる。
「それじゃダメなん、そんなんじゃそすんさーに聞こえないん!もっと大きな声でそすんさーを呼ぶん!」ひかげはまたもれんげの妄言かと思いながらも
「そすんさー!」と律儀に付き合う。
「で、そのまま空高く飛んでいったら教えてあげるん」
「できるか!絶対最初っから見せる気なかったろ、ってかそすんさーって誰だよ」
「そすんすの使い手なん、人は彼らをこう呼ぶん。そすんさー……」
「ウン、説明の甲斐あって全く分からん。まずそすんすが分からないんだけど」ひかげは立ち上がると居間を出ていく。
「なんか白けちゃった、昼寝でもしてこようっと」と言いつつ隣の部屋から双眼鏡を持ち出してコッソリ覗き見を企むがそこには冷たい視線を向けるれんげがいた、ひかげの行動を見抜いていたらしい。
「嘘ウソ、イヤ、マジで」
「(いらり)、双眼鏡で覗こうとしてもダメなん、ウチはひか姉の事ならお見通しなのん」そして再び年賀状を手に取るれんげ。
(チィ、そこまで見せたくないか。こうなったら仕方ない!)
「いざ実力行使!身動き取れない間に見せてもらうぜ!」れんげの背中に回り羽交い締めにするひかげ。だが
「なーっ!絵は描き終わるまで絶対みせないーん‼」
「わっ!顔にしがみつくな!」全身を翻して体勢を変えたれんげはひかげを仰向けに押し倒してその上に馬乗りになる。
「C&Cファクトリー!」ひかげには見えないゴン○君型のスタンドを浮かび上がらせる。
「のののののののののーっん‼」スタンドによる激しい連続の鎖骨突きがひかげを襲う。
「わあーった!分かったから鎖骨突き止めーい!(ひょっとしてこれがスタンドってヤツか?見えない分、余計怖いんだけど‼つーか今がいざって時な訳?)」れんげの攻撃が止む。
「ホントに見ないんな、見たらまたそすんすするん」
「さっきのがそすんすかよ……」
散々ドタバタ劇を繰り広げたがようやく年賀状を描き終えたれんげ。
「出来たん」
「ん?じゃもう見てもいいんだよね」
「オッケーなのーん」
「さあて、どんな変な絵描いてるのかなあ?」
「失礼な、ちゃんと可愛いワンちゃん描いたん」れんげの絵を見たひかげの感想は
「ん~、まあ確かに犬。あれ?不細工だけど意外に普通だ」
「だから言ったん、ちゃんと可愛く描いたのん!」
年が明けた正月2日、一穂とひかげに連れられて忍の元にやってきたれんげ。
「忍さん、光。明けましておめでとう」
「おめでとうございまーす!(お年玉っ、お年玉っ♪)」
「しのぶん、明けましたーん」
「みんないらっしゃい、よく来たわね」
「明けましておめでとう。さ、みんな入って」忍と光は宮内3姉妹を家の中へ招き入れる、この2人実は昨年秋に入籍したばかりの新婚夫婦である。
「れんちょんハイ、お年玉」
「これは私から」忍も光もれんげにポチ袋を渡す。
「ありがとなーん」
「来て早々スマンねぇ」一穂が手を合わせて礼を述べる。
「一穂達はゆっくりしていって、あちしはれんちょんを仗助のところへ連れてくわ。さあ、れんちょん乗って」忍の自動車で千葉のSPW日本支部へ向かう。
「スゴいトコなんなー」社屋ビルに入って待合室に案内された2人、れんげはキョロキョロしている。
「よう、明けましておめでとよ」この日は髪をリーゼントではなくオールバックにした仗助が忍達を出迎えた。
「それじゃ約束のお年玉な」仗助もれんげにポチ袋を渡す。
「ありがとなーん。そうだ、ウチおっちゃんに年賀状描いてきたん」れんげは懐から葉書を取り出して仗助に差し出す。
「年賀状って手渡しするモノだっけか?」苦笑いして受けとる仗助。
「何言ってんのよ、アンタらに一般の郵便物が届けられるハズがないじゃない」忍がピシャリと突っ込む。表と裏、どっちの社会にも顔が利くSPW財団故に敵対する存在も数多く命を狙う輩も決して少なくない。その為葉書1枚であっても財団や彼らの自宅には直接届けられる事はなく、それ以外はX線や様々な検査を受けてようやくこのビルに運ばれる。
「ウン?アッハッハッハ!」年賀状を裏返して爆笑する仗助。
「何がおかしいのよ?確かにれんちょんの絵にしては普通っぽいけど」藤崎家には今朝早くれんげからの年賀状がごく普通に届いていたので既に見ていた忍が怪訝な顔で仗助の手元を覗く。
「イヤ、だって酉年は去年だぜ」
「ハア?何言って……あっ。ちょっと仗助、その年賀状逆さまよ」
「ウン?」逆さまと言われた年賀状の向きを一旦直してもう1度逆さまに見る、互いに顔を見合わせる忍と仗助がいた。
\M/
(ё)
∩.エ.∩
こちらが絵文字で描いたイメージイラストです、何せ筆者に絵心がないモンで……その辺は勘弁して下さい。
本文左下に絵文字で年賀状のイメージを載せています。れんげが描けばもっと上手いんですが、上下の隙間をないモノとして想像して頂けるとありがたいです。