ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです   作:越後屋大輔

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大人になったあの娘が登場します。


第21話サーカス団、クリスマスにやってくる 前編

 ~メイ視点~

 土曜日の『洋食のねこや』で赤の女王様に文化祭での出来事を説明したら

 「全く、妾はお前専属の執行官ではないのだぞ」とお叱りを受けた。

 「女王様、わたくしもそれは重々承知いたしております。しかしこの伊知割椎奈、こちらの法では裁ききれない大悪党。是非とも貴女様の手で断罪していただきたく存じます」メイは平身低頭して赤の女王様にお願いする、やがて女王様はため息を1つ吐かれると

 「ではこやつは妾が預かってやろう。ナニ、奴隷代わりぐらいにはなるじゃろう」ビーフシチューを食べ終えた女王様はそうおっしゃると伊知割を引き摺ってご自身の住まわれる山へと連行なされた、メイもこれでやっと肩の荷が降りたのだ。

 

 ~衣音視点~

 文化祭が終わり今年も終わりが近づいてくる、同時にクラスから大学やら企業に受かっただの受からなかっただのという声も聞こえる。俺も大学を幾つか受験したけど合格発表はどこも3月1日、卒業式を過ぎてからだというので最近はヤキモキした気持ちを抱えっぱなしだ。

 「あんまり根を詰めるなよ、衣音」

 「1年くらい浪人してもいいからね」ウチの両親は2人共大学に行った経験がないせいか気遣ってそう言ってくれる、ありがたいと感じる一方で俺の中で変な意地やプライドなんかがごちゃ混ぜになってそれが却って腹立たしくもある。

 「まあ受験は大変だよなぁ、俺も去年の今頃はそんな感じだったし」日曜日のSunnylightで久し振りに会った圭介さんへ俺が愚痴をこぼしていると相変わらずここでバイトを続けている塩原さんがコーヒーのお代わりを持ってきた。

 「穂刈君は進学するのね、私も一流(いちながれ)を受験するけど勝算はあるの?」

 「今は何とも言えないな。塩原さんと違って俺、元々成績良くないし」実は彼女、学年でも常に10位以内の成績をキープしている。1年の頃は援交しかけて忍さんに叱られていたのに……別に学習能力と節操は関係ないけどそれにしても変われば変わるモンだな。

 

 Sunnylightを出て自宅へ戻ろうと電車に乗りつり革に捕まる、途中でパーカーのフードが妙にモゾモゾするのを感じて思わず振り払う。するとそこから何かが飛び降りて目の前に座っていた女の子の膝に着地した、それは1匹のリスざるだった。

 「コラ!ダメでしょう、ひなぎく。すいませんウチの子が」リスざるの飼い主らしき女の子が俺に謝ってきた、つーかひなぎくって、名前からしてメスなのか?

 「構わんよ、実害もないし」

 「いえ、そういう訳には。そうだ!これ受け取って下さい」そう言って女の子は俺に1枚のチケットを渡す、そこには『タケヒロサーカスクリスマス特別公演』と記されていた。

 「12月24日に開催されるんです、是非来て下さい」って事はこの娘も関係者なのかな?

 「あっ申し遅れました。私、野咲葵と言います。当日は楽屋にもいらして下さい」

 「ありがとう、この日は空けとくよ」やがてウチの最寄り駅に着いたので先に電車を降りた俺、野咲葵ちゃんか……結構可愛かったな。

 その後チケットをよく見ると1枚で2名様ご利用とあった、さて誰を誘おうかな?

 

 ~その晩、?視点~

 11月最後の日曜日の夜、人づてに聞いたお店に来た。あの人とはずっと会ってないから今夜、20数年ぶりの再会になる。私の事覚えているかな?

 「いらっしゃいませ」カウンターからあの人の声がした、素敵な年齢の重ね方をしていて老けた印象はない。

 「ご無沙汰してます。忍さん」

 「アラ、すみれちゃん?まあ綺麗になっちゃって」忍さんは相変わらずだった、不思議とホッとする。

 「お久し振りです忍さん」恭しく挨拶をする私に忍さんは椅子を勧めてくれた。

 「何か呑む?奢るわよ」

 「ありがとうございます、ではモヒートを頂けますか?」私はサーヴされたカクテルで舌を潤しつつ、他のお客さんに応対している忍さんの手が空くのを待つ。

 

 「で、ここへは何をしに?まさか暇だったから寄ったって訳でもないでしょ」流石に察しがいいのね、私はハンドバッグから1枚のチケットを差し出す。

 忍さん達に出会った頃は下火になっていた私達のサーカス団だったが琴吹グループの傘下に上手く入る事ができて今は充分な来客と収益を得られている。その頃、父のストレリッチアこと本名タケヒロが亡くなり私は団長を受け継いだ。

 「そう、先代はお亡くなりに……申し訳ないけどあちしは見に行けないのよ、この日は店もかきいれ時だしね。でもせっかくだからこのチケットは妻と娘で使わせてもらうわね」そう言ってチケットを収める忍さん、私はモヒートを呑み干すとお礼を述べてSunnylightを後にした。

 

 ~視点なし~

 時は約20年前、風の噂でタケヒロサーカスが廃業すると聞いた藤崎忍は妻の光と教師である彼女の教え子達を連れて最後の公演を観に来ていた。公演終了後、帰ろうとしたら1人客席から消えている。テントの周りを捜索していると

 「忍さん!光さん!」すみれが忍達の元へ駆け寄ってきた、隣にはさっきから捜していた琴吹紬がいる。

 「サーカス団を廃業しなくて済みます、大企業が資金援助して下さるんです!」

 「ホント?よかったじゃない!」光はすみれを抱き締め共に喜びを分かち合う、他の誰にも気取られないように忍は紬に耳打ちした。

 「アンタ、何したのよ?

 「そんな大した事は。父に『欲しいモノがある』っておねだりしただけです

 「おねだりして買えるモンじゃないでしょ(呆)

 

 ~そして現在に戻る~

 「まあ、今思えば結果オーライよね」閉店したSunnylightで1人後片付けをしながら忍は苦笑した。

 

 

 

 

 




クリスマス公演は次回に。さてどうしよう
(ー_ー;)
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