ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです   作:越後屋大輔

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原作を知ってる人にも知らない人にも「何のこっちゃ?」ですよね。


第2話忍の腕試し

 ハーパータウンの駅舎の宿直室。匠はここで妻のニャーチとちょっとした訳アリで預かっている少女、ルナの3人で暮らしている。ねこやこと『異世界食堂』へ通じる扉はこの部屋に現れる、彼にとってねこやはむしろ元いた世界になるのだが。

 

 扉を開けてねこやへ赴いた匠は藤崎、穂刈の2家族を出迎える。

 「こんにちは匠さん、今回はよろしく」この中で唯一人面識のある茜が最初に挨拶して夫と子供、忍達を紹介する。

 「手紙は何度もやりとりしているけどお会いするのは初めてよね、あちしが藤崎忍よ。お世話になるわね」

 「改めまして黒金匠です。それでは我が家に、といっても駅舎内ですが…ご案内します」匠について扉をくぐるとそこは150年くらい前の西洋風な街並みだった。駅舎内だけあって目の前では蒸気機関車が煙を上げている、その様子に穂刈家の子供の衣音(いおん)は男の子のせいか大はしゃぎだ。

 「おとーさん、おかーさん汽車らよ、汽車」

 「ホラ、危ないぞ」純一郎はベランダから乗り出している息子を抱えあげると自分達に用意された部屋へ引き取る。

 「忍ちゃん、私達も部屋に行こうよ」光に促され忍も愛娘、蛍と手を繋ぎつつ穂刈家の隣にある部屋のドアを開ける。

 

 「ウニャーッ、いらっしゃいなのな!」部屋には猫の亜人がいた。

 「あーっ初めましてなのなっ、ニャーチはニャーチなのな!」初めて亜人に出会いポカーンとする光に対して忍は

 「匠さんの奥さんね、あちしは藤崎忍。こっちは妻の光と娘の蛍よ」到って冷静に対応する、ねこやで働いていたので亜人とかにも慣れっこだった。

 「それじゃごゆっくりなのな、あっお隣にもご挨拶してくるのなーっ!」風のように去っていくニャーチ、やがて壁越しに聞こえてくる声から、穂刈家も同じリアクションを示したと思われた。但し、夫と妻の反応は藤崎家と真逆だったみたいだが。

 

 「コンロなんかもあっちとは使い勝手が違うのね」

 「何もかも手作業ですから。要は慣れですね」匠と忍は営業の終了した『ツバメ』で夕食の支度をしている。この店のキッチンのコンロは忍達から見て一昔前のガスレンジタイプだ、それでも匠曰く

 「随分便利になりましたよ。最近まで調理には薪で火を付けるロケットストーブを使ってましたから」つくづく現代日本の文明のありがたさを実感する忍であった。

 

 この日は従業員で匠を師匠と慕うウサギ亜人のロランドと、駅売店を切り盛りしている狐亜人のフィデルも一緒に夕食を摂る手筈になっていた。2人は喧嘩友達なのかテーブルについていてもゴチャゴチャ言い合っていたが

 「ロランドお兄ちゃんもフィデルお兄ちゃんもお客様の前ですよ、もっとお行儀良くしないと。私より小さい子もいるんですからね!」それを制したのは意外にもまだ10才のルナである、妹分に叱られショボンとする2人。それはさておき、料理が完成した。

 匠が作ったのは海老のクリームスープとツバメのメニューとしても定番であるトルティーヤ、子供達には食後にパンケーキも用意されている。

 一方忍が出したのはさつま揚げに焼き鳥、肉じゃがといったいわゆる'和食'が中心だった、但し味付けは和風ではない。これまでの匠との手紙のやり取りでこの世界に自分が味噌や醤油持ち込むのは不適切と判断した為だ、代わりにパプリカで作ったマッサというポルトガルの調味料を使用している。ロランド、フィデル、ルナは見慣れない料理に目を見張るがそれも最初の一口まで。食べ始めたらその若さも手伝って食欲が止まらない、こちら側の人間も最初こそ怪訝な表情を浮かべたが食べてみてその美味しさに満足したようだ。

 「喜んでもらえて何よりだわ」平静を装いつつも内心でホッと胸を撫で下ろす忍。

 「これらの料理にマッサをお使いになるのは意外でした、後で作り方を教えていただけますか?」マッサ自体はこちらの世界の調味料なので匠も存在は知っていたが自分で作った事はなかったので教えを請う。

 「いいわよ、つっても大して難しくもないけど。赤ペミエント(パプリカ)を塩漬けにして2、3日置いておくだけよ。後でレシピをメモって渡すわね」この世界は昔のスペインを彷彿させるし、パプリカも普通に流通しているからマッサがあっても不自然じゃないだろうと考えた忍は匠の申し出を快諾した。

 

 しばらくすると駅長も合流した、大きなボトルを持っている。

 「せっかくなら皆さんと一杯呑ろうと思いまして。いかがですかな?」大人達(主に忍と純一郎)は誘いに乗る事にした。

 子供達をルナ達青春組に任せて大人達は酒を酌み交わす、肴はさっきの料理で充分だ。

 「そういえばタクミ殿、ソフィア嬢がローゼスシティからこのハーパータウンにお客様をお招きするそうですぞ。その際是非このツバメでおもてなししたいとおっしゃるのだが」

 「そうなんですか?」匠が返すと駅長は声を落として

 「あちらからいらした皆さんには申し訳ありませんが……」言いかけた駅長に手を付きだし黙らせる忍。

 「面白そうじゃない。あちしも一口乗らせてもらうわよ」そう言って悪戯っ子のように微笑む忍、一体何をするつもりなのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、(『異世界駅舎の喫茶店』の原作を知らない人には)謎のソフィア嬢が登場します。
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