ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです   作:越後屋大輔

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暴食のベルゼブブ編、完結します。


第6話異世界のスタンド使い 後編

 ジェシー・クロニカルのスタンド、ベルゼブブがハーパータウンを襲う。地面はその歯で抉られて建物は尾でなぎ倒される、街の人々は何が起こったのか理解できずただ顔を歪めて逃げ惑うが誘導する者がいないのでパニック状態だ。

 そこに一陣の風が吹き人々が一斉にどこかへ消えた、空を見上げると雲に乗ったサルが鉄棒を手にベルゼブブに立ち向かっている。

 「何だあれ?」

 「えっと、確か…」

 「どうして孫悟空が?」

 「もうメチャクチャよぉ!」唖然とする忍達に孫悟空が大声で告げる。

 「街の人達は近くの山に避難させた、後はこのバケモンをぶっ潰すだけだ!」

 「あのサル君は味方のようじゃな」ジョセフが呟く。この辺の判断は流石、年の功と言うべきか。

 

 「癪だけどジジイの勘が当たったわね」

 「ちょっと!何なの?!どうして街が壊れていくの?」ソフィアが激昂する、スタンドはスタンド使いにしか見えない。視認できるのは恐らくジョセフしかいないし、理解しているのもスタンドの知識がある忍の2人だけと思われた。

 「ハーミット・パープル!」蔦のようなスタンドでとりあえずベルゼブブの動きを封じるジョセフ、忍は右の頬に手を当てると平沢唯に変身した。

 「ファイヴ・ディメイション!」腕だけのスタンドを出現させる。実は忍、誰かに変身するとその特性もコピーできる能力も持っている。

 

 忍に引き摺り出されたのは高校2年生に成長した神幸太と中学生になった宮内れんげだった、元の姿に戻った忍はこの2人に簡単に事情を話す。

 「獣機、展開!」幸太はスタンド使いではない、マリネラはパタリロ国王が開発した新型パワードスーツ『パタフィニット・ストラトス』通称PSの操縦士を育成するPS学園の生徒だ。尚、纏っている『獣機』は彼に与えられた専用機である。

 「彼はスタンド使いではなかろう、闘いようがないぞ」ジョセフが忍に詰め寄るが

 「その心配はないわよジジイ、あの子スゴく耳がいいから」実際幸太はこれまで見えない敵や攻撃に対して聴力をフルに使い、闘って勝利を治めてきた。

 「ウチはサポートするん!C&Cファクトリー!」れんげはあのゴン○君にそっくりなスタンドを出すと

 「ペイントするん!」スタンドがベルゼブブに色を塗り始めた、見えないハズの姿がジョセフ以外の人々の目にも露になる。

 「ジェット釘パンチ‼」高速のパンチを食らわす幸太、素手でも戦車を破壊できる上に最新鋭の兵器の力が加わったら相手はたまったモンじゃない。そこにルカも加勢する、魔法で何度も燃やして凍らせて如意棒で叩きまくる。

 「サル君、そいつを攻撃しても本体、使い手を捕らえなければ意味ないぞい!」ジョセフが空を見上げルカに進言する。

 「そういう事なら…!」ルカは懐から金属のリングを取り出すとジェシーに投げつける、見事ジェシーにスッポリと被さりその頭を締め付ける。

 「ウォォォーッ!い、痛い痛い!頼む、こいつを外してくれぇー!」ジェシーが痛みを覚えるとベルゼブブはあっという間に消え失せた、あまりの痛さに踞る事しかできない。

 「ムリだ、そいつは一度ハマったら最後。一生外れないぜ、精々痛みに耐えて生きるんだな」地上に降りてきたルカが冷たく言い放つ。

 (まさに孫悟空の緊箍児じゃな)

 (本来はこいつがハメられる側よね)感心すべきか呆れるべきかジョセフと忍は複雑な心境で嘆息した、その他の面子はただただ口を開けてポカーンとしている。

 

 「うう、私はこの程度で諦めたりせんぞ。ベルゼブブ!このクレイグ国の全てを暗い尽くせ‼」ジェシーは自棄になって再びベルゼブブを暴れさせようとした、そこに柔らかい暖かな光が射す。

 「ルカさん、大丈夫ですか?」様子を伺いにきた大輔がルカに駆け寄る、その背中に女性型のスタンドを宿していた。

 「大輔君?何でこの世界で知り合いに度々出会うのかしら?」

 「ン?君の背にあるのは……スタンドかの?」ジョセフが大輔に問う。

 「さあ、僕にもよく分からないんです。さっきいきなり現れたんですけど」

 「嬢ちゃんには見えるかの?」ジョセフはれんげに顔を向ける。

 「見えるん」簡潔に答えるれんげ。

 「ジジイとれんちょんだけ見えるって事はスタンドに間違いないわね」スタンドを理解している3人が冷静に語り合う中、ベルゼブブは全く動く素振りも見せない。

 「オイ!どうしたベルゼブブ!」ジェシーはベルゼブブを奮起させようとするが大輔のスタンドに抱き締められるとみんなの前から姿を消した、最早ジェシーに希望は何一つ残されていなかった。

 

 ジョセフの指示で再び唯に変身した忍は仗助をこの世界に引っ張り込み、事情を説明して街の修復作業をさせる。

 「異世界にスタンド使いがでるとはな」修復しながら呟く仗助、忍は1つの疑問をぶつける。

 「仗助、アンタ今回はやけに聞き分けがいいわね。普段なら一言くらい文句が出そうなモンだけど」

 「そうだよな、俺も自分で妙だと思うぜ。けどよホレ、越後屋の店主もスタンド使いだったろ」

 「それがどうかしたの?」

 「あのスタンドに見つめられると気が静まるっつーか、腹が立たねえんだ」

 「なるほど、そういえばあの死神(つら)も最後は泣きながら警察に連れていかれたわね」ジェシーは警察に連行されながら自らの行いを悔いる発言を涙を流しながら繰り返していたという。

 「スタンド使いの悪行を粛正して戦意を無くさせるスタンドか、そうじゃな……」ジョセフは1人、考え込んでいた。

 

 「それじゃアンタは元の世界に帰る気はないんだな」匠は向かい合ったルカの問いに穏やかだがハッキリと返事をする。

 「ええ。むしろこちらの世界の方が私の(しょう)に合っていると思います」

 「なら僕らがどうこう言うべきじゃありませんね、帰りますかルカさん」

 「オウ!邪魔したな」ルカは大輔と觔斗雲に乗ってこの世界を後にした。

 

 余談であるが大輔のスタンドはジョセフの命名で「アメイジング・グレイス(大いなる恩寵)」と名付けられた。

 

 

 

 

 

 




この次は闘いません、もう少しだけお付き合い下さい。

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