ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです   作:越後屋大輔

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『異世界へ家族旅行』編最終回です。


第9話置き土産のメモと意外な食材(最終回)

 ツバメでは秋に向けて本格的な和菓子作りに取りかかる。『マンサナ』を作るには薄皮を剥いたフディーアをマンサナ(林檎)の皮を煮出した煮汁で色付けして薄い円形にする、続いて中身には柔らかく煮て賽の目切りにしたマンサナの実を裏漉ししたカモテ(さつまいも)に混ぜて球形にして円形のモノで包みながら型どっていく。

 「やっぱり忍さんみたいにリアルで綺麗な形には中々なりませんね」忍は隣で次々と見事なマンサナを作っていく、作業のスピードもその出来映えも匠達とは雲泥の差である。自分の手元にある不格好なマンサナに嘆息する匠、一方ロランドとルナは自作のデコボコなマンサナを眺める。匠同様虚しそうなロランドと真剣な眼差しのルナに匠は

 「少し休みましょう、お茶請けも沢山ありますからね」勿論自分達の作った失敗作の山の事である。

 

 「細かい上に手間のかかる作業っすね」

 「でも工作みたいで面白いです」何せ形成する機械も着色料もこの世界にはないので全てが手作業である、やや閉口気味のロランドに対してルナは楽しそうに仕事をしていた。

 「大丈夫、ようは慣れよ。このくらい出来ればあちし抜きでも秋本番にはお客に出せるレベルのモノが作れるわ」忍達の異世界旅行も終わる時が近付いていた。

 

 「フム、建物はこんなモンでよかろう」ジョセフは財産のホンの一部をこの世界で換金するとハーパータウンにある空き家を買い取り修繕して新たに『ジョースター商会』を立ち上げた。屋根には日本から運んだ……正確には唯に与えた中継用のオフィスの一室に運ばれたソーラーパネルをファイヴ・ディメイションでこちらへ送らせてそれを取り付けてある。

 「これならパソコンも使えるからの、当面はワシ1人で商会を回していけるぞい」

 「ジジイ……」ジョセフの行動力に忍はすっかりげんなりしていた。

 「タイプライターに似ておるのう」

 「文書だけでなく図面も描けるの。しかも計算まで?嘘でしょ!」サバスとソフィアはパソコンに興味津々で試しに少しだけ触れてみたがこの世界人基準ではあまりに複雑だったのか、途中で投げ出してしまった。

 (流石にネットとかはできないわね)

 (え、そうなんですか?)

 (電波が飛んでないもの、当然でしょ。つーか出来たら困るわ、この世界の理が崩壊するもの)

 (あのう、このままジョセフさんにいていただいて大丈夫でしょうか?)

 (その辺は任せといて、ジジイにも弱点はあるわ)匠と声を潜めて会話する忍はリサリサやスージーQが転生している事は伏せてそう伝える、そしてこの世界で一週間を楽しく過ごした藤崎、穂刈両家族は日本へ帰っていった。

 

 後日、ロランドの父で漁師のディエゴが匠に頼まれた品を持ってツバメを訪ねてきた。

 「どうもディエゴさん、いつもありがとうございます」

 「いいって事よ、タクミさんには倅が世話んなってるからな。それよりこんなモン一体何に使うんだ?まさか食うつもりじゃあるまいし」ディエゴの問いを匠はある意味見事に裏切った。

 「いえ、食べるんですよ。とはいえ鮮度が良くないとムリですがね」驚きの発言にポカーンとするディエゴの目の前でロランドは手を振って見せる。

 「親父?オーイ」

 

 ディエゴに持ってきてもらったのはティブロン(サメ)の切り身だった、帰る前の忍に一応作り方を聞いたらメモを残していってくれたので実践しようと考えたのだ。

 ティブロンの切り身を包丁で叩いて細かくして同じ状態にした他の白身魚、卵、ニャム(やまいも)セボーリャ(玉ねぎ)のみじん切り等を混ぜて楕円形にまとめる、それをコルザ(菜種)油できつね色になるまで揚げれば完成だ。

 「こちらがティブロン肉入りのさつま揚げです、火傷には気をつけてお召し上がり下さい」

 「まさかティブロンを料理しちまうとはなあ、俺ら漁師にとっちゃ百害あって一理なしだってのによ」先程のディエゴの反応でお分かりだと思うがこの国では食べる習慣なぞ当然ない、稀に漁師の船が襲われる際に闘いこそするがトドメを刺した死体は潮の流れに任せっぱなしが現状である。

 「私達の住んでいた場所ではこうした加工食品にされてましたね、特に尻尾の料理は高級品でそれこそ一流店でないと食べられない代物でした。先日、故郷の友人がこちらに遊びに来た時に作り方を教わったんです」

 「まあ、タクミさんが作るからには大丈夫だろうが」といってディエゴはさつま揚げをパクつく。

 「うおっ!何だこりゃ?旨メェ‼」

 「全然生臭くないし甘めの味付けが魚の味に負けてないっす!」相伴に預かっていたロランドも絶賛した。

 「クゥーッ!こいつは酒が欲しくなっちまう、でもここは喫茶店だしなぁ」

 「それじゃ何か入れ物を用意しますからお持ち帰りになって下さい」

 「しかしそれじゃせっかくアツアツのこのサツマーゲが冷めちまうぞ」

 「心配いりません。これは冷めても美味しく食べられるモノですし、サッと炙ればまたアツアツの状態で食べる事もできます」

 「おう!そいつはありがてえ、、そんじゃ残りはカミさんや漁師仲間達で遠慮なく食わせて貰うぜ!」ディエゴはさつま揚げを入れた大皿を喜び勇んで持って帰っていった。

 

 その晩、駅宿舎は久し振りに匠とニャーチの2人だけになった。

 「ふにゃ~、何か一気に淋しくなったのなあ…」寝付けないのか匠に寄り添い珍しく愚痴を溢すニャーチ。

 「そうだね、でもまた会えるよきっと」ニャーチの頭を優しく撫でるとふと忍からもらった手紙の内容が頭をよぎる。自分達がこちらに来てから日本も結構様変わりしたようだ、思い出されるのはかつて同じ街で同じ時を過ごした友人達。

 「名古屋の連中は元気なんでしょうか?もう何年も会ってませんが我々を覚えていてくれてますかね?」とはいえ今の匠はこの世界で生きていくと決めている。首を振って頭から雑念を追い払うと静かに微睡みやがて目が閉じられていった。

 

 

 




それでもジョセフはしぶとく居座る(笑)。
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