ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
第1話出会い
高校時代の友人、藤崎忍が結婚したという話を本人から聞かされた高坂賢。
「そっか、おめでとう」
「フフッありがと、一足先に失礼するわね」話し方はこんなだがこの友人は歴とした男だし、相手も正真正銘の女性である。彼と彼女は幼馴染みで高校時代も同じ仲良しグループの中で共に過ごした、賢も途中からその内の一人に加わったのだった。
「考えてみりゃ不思議な縁だよなぁ」それまで忍達とは単なるクラスメートでしかなかったのに、と賢はあの頃を回想する。
小学校から野球一筋だった賢はひびきの高校に入学後も野球部に所属した、ある日先輩部員に頼まれライン引きを片付けに部室の用具置き場に入ると人の気配がした。ガタッ、ガラガラドッシャーン!何かが落ちる物音がしてそこに行ってみると一人の女子が尻餅をついていた、その周りにはバットやボールが無造作に転がっている。
「オイ君、大丈夫か?つーか君、誰?」
「き、今日から野球部のマネージャーになった一年二組の佐倉楓子です。よろしくお願いします」何とか立ち上がって賢に頭を下げて挨拶する楓子。
「あ、よろしくって、それより怪我してないか?」
「ハイ、この通りピンピンしてます」
「そうか、それなら良かった。あ、俺は野球部員の一年三組高坂賢。同じ一年だから敬語とかいらないよ」これが後に夫婦になる二人の最初の出会いであった。
それから賢は放課後の部活が楽しみになった。部に女子マネがいるのは単純に嬉しいし楓子は可愛い、正直出会った時から一目惚れしていた賢。練習にも自然と熱が入る、そんなある日監督からショッキングな事実を伝えられた。
「あ~、諸君らに残念なお知らせがある。実は我がひびきの高校野球部は今年度の全公式戦に出場できなくなった」うちひしがれる部員一同、特に三年生の中には啜り泣く選手もいた。
ナゼこんな事になったか、三年部員の一人、四ッ谷甲二が幾つかの他校で金銭の強制搾取、いわゆるカツアゲを行っていたのが明らかになったのが原因だった。しかも発覚したのは被害者の告発ではなく四ッ谷自身が非番の警察官にカツアゲを働いたのがきっかけだったらしい、当然その場で逮捕され学校や高野連にも通達があった。ひびきの高校は本年度中の公式戦に出場停止処分が下された、二年並びに一年の部員は四ッ谷を恨むと共に現三年生の雪辱をきっと晴らすと心に誓った。
その年のクリスマス、賢は情報通として知られる一組の坂城匠から電話で遊園地に行かないかと誘われた。
急いで仕度を済ませてやってきたが坂城には遅いといわれた、よりによって走れば○び太より鈍足のこいつに…。腹を立てて上から見下ろすように坂城を睨むと一緒にきていた女子二人に気付いた、同じクラスの水無月琴子と密かに思いを寄せている楓子だった。
「それじゃまずジェットコースターに乗ろう、高坂、お前はどっちの娘と乗る?」賢には勿論一択しかない。
「あー楽しかったぁ」楓子はジェットコースターに大満足したようだ。坂城は
「こ、こんなにスピード出るなんて…き、聞いてない…」バタン!目を回してそのまま倒れこみ、遊園地のスタッフの手で医務室に運ばれていった。
「それじゃ次は観覧車に乗りましょ」ナゼか水無月が仕切り始めた、坂城は放っておくつもりらしい。
観覧車には三人で一基のゴンドラに乗る事になった、上空からの景色を楽しんでる最中水無月は二人に妙な話を始めた。
「あなた達は恋と友情、どっちを選ぶ?」賢も楓子もあまりに藪から棒な質問に戸惑う。
「私は友情かな?恋は何度も出来そうだけど友情は一度終わったらどうしようもない気がする」
「俺は恋をとるな。友情は誠意の問題だけど恋はそれだけじゃ上手くいかないと思う」二人の意見は違っていた。
「そう。ありがとう。変な事聞いてご免なさい」水無月はそう言うと再び窓からの景色を眺めていた。
数日後、公式戦には出場出来ないものの野球部は来年に向けて練習を続けている。今年最後の練習が終わり部員達はそれぞれの帰途についた、明日は元旦で部活は休みだ。
年が明けた。賢が自宅で寛いでいると玄関に誰かが来たらしい、親戚の年始回りかと思って応対にでたら楓子が晴れ着姿で現れた。
「エヘ、新年明けましておめでとう。高坂君」
「さ、佐倉さん?あ、明けましておめでとう」焦りまくる賢。
「これから初詣に行かない?」楓子に誘われて嬉しさと恥ずかしさでおかしなテンションになる。
「あ、ああも、勿論行きき…イヤ行くよ」そして二人で神社にやってきた。賽銭箱に小銭を投げ入れ手を合わせてお祈りする。
(もっと佐倉さんと仲良くなれますように…)賢は神様にお願いした。
「何をお願いしたの?」楓子に問われると賢は釈明するように
「人に話すと叶わないそうだから、内緒にしとくよ」と、答えた。この後引いたおみくじでは楓子は大吉、賢は小吉という結果が出た。
そして四月、新学期。二年生になってクラスこそ楓子と一緒にはなれなかったものの、遂に野球部の公式戦出場停止処分が解かれた。
「高坂君、やっと試合できるよ!やったね!」嬉しさのあまり、賢に飛び付いてきた楓子。驚いた賢は咄嗟に抱き止めるが、勢いあまって抱き合う格好で講堂の床に倒れる。
「いやぁ、若いってのはいいのう」講堂の舞台から見ていた爆裂山校長が二人を見て豪快に笑う。
「アラ、お熱い事」どこからかオカマの呟く声が聞こえた気がしたが周りにそれらしき人物はいない、しかしこれこそが後に親友となる藤崎忍との初の邂逅だった。