ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
さて、甲子園予選地区大会が開幕。隣街ながら県境を挟んでいる為、きらめき高校とひびきの高校は本選までは対戦相手として当たる事はない。
既に本選に駒を進めていたひびきの高校野球部一行はこの日、きらめき高校の地区大会決勝戦を見にきていた。
コールド勝ちで甲子園本選を決めたきらめき高校。一応陣中見舞いくらいしてこいと顧問に言われて、きら高のベンチへ向かう賢と一年生ながらレギュラー入りした磯野カツオの二人。
「高坂君」楓子に呼び止められる賢。
(そっか。佐倉さん、きら高でも野球部のマネージャーやってたんだっけ)
「佐倉さん、甲子園本選進出おめでとう」ここは素直に讃えておく。
「うん。ひび高も甲子園進出だね、おめでとう。」二人の間に邪魔が入る、きら高野球部エースの飯塚
「やあ、君だね」いきなりなんだこいつ?イラッとした賢に飯塚は鼻につく物言いで話し続ける。
「佐倉君が君の事を素晴らしいプレーヤーだとベタ誉めだったのでね、一度会ってみたいと思っていたのさ。まあ、地区大会の試合をみた限りでは確かに聞いていた通りの素晴らしいプレーヤーだったよ」
「それはどうも」
「まあ、精々本選で僕をガッカリさせないでくれたまえ。行こうか、佐倉君」高飛車な態度の飯塚だったがその頭上に竹刀が落ちる。
「痛たたたた…藤崎君じゃないか、何をするんだい?」飯塚を竹刀で叩いたのは藤崎詩織だった。
「それはこっちのセリフよ!ひび高にそんな大きな態度とってると後で従兄弟にイヤミ言われるの私なのよ!」
(あ~。そういや去年、家にお邪魔したな。藤崎の従姉妹だっけ?)
「そうなの?忍君ってそんなイメージないけど」
(ちょっと待て、何であいつの方が親しげな呼ばれかた…あ、名字が一緒だからか。落ち着け俺)
「ええ、もうネチネチネチネチと。ホンットに陰険なんだから」不貞腐れたように語る詩織、その間磯野はきら高の別の選手と対面していた。
小学生の草野球チームでそれぞれキャプテンを務めていた磯野カツオと剛田武。中学に入りチームメイトが次々と野球から去っていく中、二人は本格的に野球を始めた。
「中島と西原はサッカーに転向したか」
「仕方ねえよ、無理は言えねえ。野比や骨川はどうしてる?」
「のび太はアーチェリーで才能を発揮してる、スネ夫は特進クラスに入って勉強浸けの毎日らしいぜ」
「そっか、もう俺達二人だけか」
「磯野」
「何だ?」
「本選で当たったら容赦しないぜ」
「ああ、俺もだ」
「そん時まで負けんなよ」
「お前こそ」こちらは誰の邪魔も入らず爽やかに別れていった。
トーナメント表では双方両端に名前がエントリーされていたので色んな意味で因縁深いこの二校が当たるのは決勝戦まで持ち越しとなった、そして常勝校を圧倒して遂に激突するきらめき高校VSひびきの高校。
八回まで両校無失点、無得点のまま最終局面を迎える。そして九回表、一アウトノーランナーで迎えるひびきの高校の攻撃。
「四番、ショート。高坂君」アナウンスが響きバッターボックスに立つ賢、エース飯塚の第一球。
カッキーン‼打たれたボールの飛距離はどんどん伸びてホームラン、この試合初の得点が入った。
賢に続くバッターは三振を取られいよいよ九回裏、きらめき高校の攻撃となった。ツーアウトノーランナー、後一人押さえればひびきの高校が優勝する。
「三番、サード。剛田君」こちらも宿命の対決。一年生にしてひび高のエース磯野カツオとこちらも期待の一年生、強打者剛田武。第一球はボール、続いて第二球。これは当たった、しかし風の煽りもあってか飛距離はさほど伸びず外野フライ。ひびきの高校の甲子園優勝が決まった、観客席は一瞬だけ凍りついたがすぐに喚声で沸き上がった。
「「ありがとうございました‼」」互いに礼を交わす二校はそれぞれのベンチへ戻っていった。
控え室にむかう途中で楓子が賢を待っていた。
「優勝おめでとう」
「佐倉さん…」かける言葉が見つからない賢。
「私、ひびきのが優勝したのが、それにいい試合が出来た事が嬉しいの。きらめきのみんなは泣いてたけどとっても満足そうだった。また来年にむけて頑張れるから」
「なんていうか…ありがとう」
「でも私、やっぱりドジなのかな?」
「え?」
「最後、バッターボックスに立った時、私高坂君を応援しちゃった。きらめきのマネージャー失格だね」涙をうかべたまま泣き笑いで話す楓子。
「フッフッフッ、流石佐倉君が見込んだチームだ。言い訳はしないよ、僕達の完敗だ」再び飯塚がしゃしゃり出てきた。
「イヤ、勝負は時の運、次は負けるかもしれん」賢なりに相手に敬意を表する。
「貴様に格好いいセリフは言われたくないね、でも素直に受けとめておくよ。佐倉君、行こうか」と一旦は楓子と消え去った飯塚だったがすぐに賢の元へ戻ってきて
「佐倉君の事はしっかり捕まえておかないとダメだよ、そうしないと僕があっという間にかっさらっていくからね。フッフッフ、じゃあな」今度こそ本当に帰っていった。
「お前に言われるまでもないぜ、飯塚」賢は一人そう呟いた。