ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
第1話新任!
四月。陽ノ下光は今日から高校教師としての第一歩を踏み出す、赴任先は桜ヶ丘女子高校である。
「それでは陽ノ下先生には新一年生の担任を受け持っていただきます」校長から指示される。
(きゃ~、新米でいきなり担任任されちゃったぁ。どうしよう…)平静を装うがホントはプレッシャーに押し潰されそうになる光。
入学式の最後に新任教師の挨拶が行われる、といっても今年度赴任してきたのは光唯一人だけだった。
「え~、新入生及び在校生の皆さん。初めまして、陽ノ下光です。今日からこの桜ヶ丘女子高校に体育教師としてお世話になります(以下略)宜しくお願いします」何とか挨拶を済ませた光、職員席に戻ると安堵のため息をついた。
職員室で簡単な打ち合わせをして一年生の教室に入る、中はそれなりにハシャいでいる生徒もいたが比較的大人しい。彼女達も緊張が解けてないようだ。光は大きく深呼吸してから戸を開ける、生徒達は一斉に席につく。今日は初日の為予め廊下側一番前から後ろに、その次は二列目最善席と名前の五十音順に指定されていた。
「お早うございます!」元気よく挨拶する光、生徒達からも返ってきた。
「「「お早うございます‼」」」
「入学式でも自己紹介しましたが私は陽ノ下光。今日から一年間、皆さんの担任を勤めます。私も皆さんと同様教師一年生、お互いに頑張っていきましょう」
「「「ハーイ‼」」」こうして光の教師生活はスタートを切った。
初出勤を終えて帰宅した光は色々相談に乗ってほしくて自分が高三の担任であり同じ高校出身、更に教師としても先輩である華澄に電話する。
「そうね、光ちゃんには光ちゃんの理想の教師像があるんじゃない?勿論理想だけじゃ上手くいかないわ。でもそれに近づく努力ならできるでしょ」華澄のアドバイスは予想通り一言一言が的確で文句のつけようがなかった。
「華澄さんありがとう。私精一杯頑張るね、じゃお休みなさい」光が電話を切ると受話器から流れるツーツーという音を聞きながら華澄は呟く。
「ゴメンね光ちゃん。さっきは偉そうな事言ったけど、ホントは私も未だあれこれ模索中なの」頼りになる姉貴分を気取ったものの、やはり華澄も悩みを抱える教師の一人だった。
新学期が始まり二週間くらい過ぎた日、HRを終えて職員室で日誌をまとめていた光に担当クラスの生徒が二名やってきて部活の事を問うてきた。
「アレ?秋山さんに田井中さん。どうしたの、今日は?」
「すいません。私達軽音部に入部したいんですけど、申請はどうすればいいんでしょうか?」おデコが特徴的な生徒、田井中律が代表で尋ねると
「えっと、軽音部ね」光は各部の状況が記された書類をチェックして
「う~ん、軽音部は廃部だね」
「廃部?!」
「正確には廃部寸前。昨年度で部員が卒業しちゃったみたい、来月までに四名入部すれば継続できるみたいだけど」新任教師の光も詳しい事は分からない。
(後で他の先生方に聞いてみよう)律ともう一人の黒髪ロングの生徒、秋山澪は一礼して職員室を去っていった。
それから数日後、校舎内を移動中の光を律と澪が改めて呼び止めた、律の手には部活申請用紙が握られていた。
「陽ノ下先生、部員四名集まりました」あれから律と澪は偶然知り合った琴吹紬、平沢唯を勧誘して何とか頭数を揃えたのだった。
「そっか。でもそれだけじゃ申請は通らないよ、どなたか顧問を引き受けて下さる先生を探さないと」
「はい、それでですね…」律は一拍おいていきなり土下座した。
「陽ノ下先生、軽音部の顧問やって下さい!」
「え?私、体育教師だよ。文化部の顧問っておかしくない?」別に法的な決まりはないが普通体育教師なら運動部の顧問を引き受けるのが通例である、少なくとも光は聞いた事がない。
「さっき他の先生方に確認したら部の顧問をされてないのは陽ノ下先生だけと窺いました」確かに桜ヶ丘女子高校は部活が盛んでその数も多い。当然教師全員が駆り出されている、顧問を持ってないのは新任の光くらいだろう。
「フウ、分かった。学年主任の堀込先生と相談してみるね」半ば諦めモードで引き受けた光。その夜、恋人の忍に会って事情を説明する。
「一年目にして出世したじゃない、あちしも応援するわよ」恋人にしてオカマの忍だが光にとっては一番の理解者である。
「でも顧問になるとデートの機会も減っちゃいそう、あのさ…忍ちゃん」
「ナニよ?」
「会える日が少なくなっても、私を嫌いになったりしない?」
「なる訳ないでしょ、愛してるわ❤」
「エヘヘ、私も愛してるよ❤」人目も憚らずイチャつくバカップル振りの二人だった。
そして部活申請は無事通り音楽室に光と四名の部員が集まった。
「よーし、軽音部の始動だぜーっ‼野郎共勝鬨をあげろぉ!」律が拳を振り上げて叫ぶ。
「みんな女の子でしょ?」思わず突っ込む光。こうして桜ヶ丘女子高校軽音部は再始動を果たした。