ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
今から八年前、まだ小学生の平沢唯と憂の姉妹は踏み台に乗った自分達の身長よりも更に高い屋内用クリスマスツリーの登頂に星のオーナメントを飾り付けようとつま先を伸ばしていた。
「う~んしょっと、アワワ」唯が踏み台にしていた椅子から落ちそうになるのを憂が足を支える、星のオーナメントも無事に飾る事が出来たようだ。
「ねぇ憂、今年もサンタさん来てくれるかなぁ?」
「うん?」
「私、宿題忘れたり給食残したり、あまりいい子にしてなかったから来てくれないかも…」指を組んでツリーに祈る唯。
「プレゼント貰えますように!」この頃からできた妹だった憂は姉を励ました。
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。サンタさんきっとプレゼントくれるよ」
「憂もお願いしておいた方がいいよ」そう唯に言われた憂は少し考えて
「今年はホワイトクリスマスになりますように!」
「ホワイトクリスマス?」唯はその言葉を知らなかったらしい。
「雪が降って真っ白になったクリスマスの事なんだって」
「ふぅ~ん」
翌朝、唯は憂を起こして庭に誘い出す。慌てて靴を履いて外へ出た憂の目には雪の積もった屋外用のクリスマスツリーが映った、パッと喜びの笑顔になる憂。しかし昨夜は雪など降っていないハズ、雪を触ると冷たくもない。
「お姉ちゃん?これって…」
「クッションの中身‼」唯は自慢気に切り裂いて綿を抜いたクッションを見せる、呆気にとられる憂。その日、唯は母親にこっぴどく叱られるハメになった。
そんな昔の事を思い出して、つい吹き出してしまった憂。今年も唯とクリスマスの飾り付けをしている、今の二人はツリーの背丈をとうに追い越し、星のオーナメントを飾るのに踏み台など必要ない。
終業式も間近のある日、一学年差の姉妹は途中まで一緒に登校する。歩きながら何気ない会話をしていると、唯は憂のいつもと違う様子に気づく。
「憂、マフラーしないの?」
「うん、去年洗濯して干しといたら風に飛ばされちゃったみたいで」その時、一陣の木枯らしが二人の側を駆け巡る。
「「うぅ~寒い~っ」」唯は自分のマフラー半分を憂の首にかける。
「お姉ちゃん?」
「あったかあったか」すると今度は憂が唯の左手を見て
「片方の手袋は?」
「なくしちゃったみたい」憂も手袋をした両手で唯の左手を優しく包む。
「あったかあったか」そのまま二人共よく似た笑顔で手を繋いで歩き続ける、仲の良い姉妹であった。
放課後、律が手作りのチラシをみんなに見せる。
「クリスマス会のチラシを作ったぞ」
「あれ?クリスマス会ってやる事になっていたの?」澪が尋ねる。
「誰にも言ってないけどな」
「言えよ」突っ込みつつ手作りチラシを受けとる澪。
「日時、12月24日。場所、ムギの家。会費、1000円」そこまで読んだところで紬が申し訳なさそうに話に入ってきた。
「あの、その日はウチ、都合悪いの」
「あー、やっぱりダメだった?」トントン、部室の戸がノックされた。
「みんな練習してる?って今日も相変わらずだね…」光が部活を見に来た、しかし軽音部の面々はこの日もまったりティータイム中である。
「それよりヒカちゃん、聞いとくれよ」
「ふ~んクリスマス会かぁ、ムギちゃんのお家ではムリなんだね。でも事前確認くらいしときなよ、律っちゃん」行き当たりばったりの律に正論を告げる光、最近は彼女も部員達を気さくによぶようになっていた。
「ウチは常に何かしらの予定が詰まっていて、一ヶ月前に予約とらないと行けないの。ホントにゴメンね!」手を合わせて謝罪する紬。
「そ。そうなんだ…」
(((どんな家?)))苦笑いする光と心中で突っ込む澪、律、唯。
「律ちゃんのお家はどう?」紬が提案するが
「ダメダメ、律の部屋は汚くて足の踏み場もないから」澪が却下した、これに対し律は
「なんだとー!澪の部屋なんか服が脱ぎ散らかってるくせにぃ。パンツとか」
「真顔でデタラメ言うな!」真っ赤な顔で否定する澪。
「証拠は写真にバッチリ」
「嘘つけー!」
「嘘じゃないも~ん」律が突きつけた写真にはクロワッサンとあんパンが写っていた。
「パンが二つでパン・ツー…」あまりの下らなさに律以外全員項垂れる。
「じゃあ、私のウチでクリスマス会やらない?彼も当日一緒だけど」光がそう言うと満場一致で
「「「「行きます‼」」」」即答だった。
「ハイ、ヒカちゃん先生!」
「ナーニ唯ちゃん?」
「妹も連れていっていいですか?後、和ちゃんも!」
「ウン、勿論いいよ」こうして軽音部のクリスマス会は、光が恋人の忍と同棲中の家で開催される事になった。