ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
新しい宇宙、フェリシアと東京の上空に浮かぶ飛空都市にある特別寮の一室へ案内されたアンジェ。試験期間中はここに住む事になるそうだ、隣はロザリアの部屋らしい。
「では改めて守護聖の方々をご紹介しましょう、こちらですよ」ディアに連れてこられたのは『聖殿』という巨大な建物。
(やっぱり中世のヨーロッパ建築を彷彿させるな、科学技術は向こうに比べて劣っているみたいだけど)
「アンジェリーク、どうかなさいましたか?」物思いに耽っていたところをディアにジッと見つめられてしまう、キョトンとした表情もまた美しい。
「この聖殿には各守護聖の執務室があります、今はそうですね…彼らのリーダー役のジュリアスが在室のようです」謁見の間で試験の説明役をかってでた金髪の男である。
(男に会ってもなぁ、でも挨拶くらいはしておいた方がいいか)聖殿の中にあるその執務室のドアの正面まできた、上のプレートには『光の守護聖・執務室』と彫られてある。勿論日本語でも、地球のどこかの文字でもないがナゼかアンジェにも普通に読める。
「お名前が彫られてないんですか?」アンジェがディアに質問する。
「ええ、各守護聖は当代に一人しかいませんからね。その都度名前を彫るのは非合理的でしょう」それから守護聖について丁寧に教えてくれるディア。
(世代交代とかもあるのか、あの金髪がずっと守護聖やってる訳じゃないんだな)ディアがドアををノックすると
「開いている」と声がした、室内に入ると机にある書類に目を通す金髪男がいた。
「今アンジェリークに飛空都市を案内しているのですよ、せっかくだからあなた方のご紹介も兼ねてね」
「そうか、私は誇りを司る『光の守護聖』ジュリアスだ。アンジェリークといったな、以後宜しく頼む」
「はい、よろしくお願いします。ジュリアス様」
次に訪れたのは『闇の守護聖・執務室』とある、ディアはドアを叩く前にアンジェにそっと耳打ちする。
「今から会う人はジュリアスとは何かと気が合わないのですよ、一応参考までにおぼえておいて下さいね」ドアをノックすると
「何の用だ?」機嫌の悪そうな声が返ってきた。
「ディアです。クラヴィス、アンジェリークと一緒に貴方へご挨拶に」
「そうか…」執務室は清潔だが自分の手足も視認できないくらい薄暗かった。
(闇の守護聖だけあって暗いのが好きなのか?しかし闇って聞くと悪モンぽいな)
奥に進むと僅かな灯りを付けただけの机で黒い長髪の男がタロットに興じている。
(そういえばこの男、女王陛下とディア様を挟んでジュリアスの反対側にいたな)アンジェは謁見の間での事を思いだしていた。
「私はクラヴィスだ」短くそう告げたクラヴィスはアンジェを一瞥してまたすぐにタロットカードを弄りだした。
「ゴメンなさい、クラヴィスはいつもあの調子なのです。今日はむしろご機嫌な方なのですよ」
(分からん!)色々突っ込みたい気持ちをなんとか堪えてディアと聖殿を後にするアンジェ、次に飛空都市にある公園にやって来た。今日は『日の曜日』、元の世界の日曜日にあたる日なせいか全体的に休日モードな雰囲気だ。
「試験の合間にここでお散歩など楽しむのもよいでしょう、アラ?あちらにも守護聖がいらっしゃいますね」髪全体をカールして所々メッシュを入れ口紅まで引いているやたら派手な男がいた、見ようによってはアンジェが匠だった頃の世界にいたいわゆるニューハーフにも見えた。
「ハーイ、ディア♪ん?その娘は確か」
「ええ、女王候補のアンジェリークですよ。アンジェリーク、こちらはオリヴィエです」
「やあ、私は美しさを司る『夢の守護聖』オリヴィエ。よろしくね」見た目と違って中身は好青年のようだ、アンジェは元の自分ならこの男が一番、気が合いそうに思えた。
公園にはもう一人守護聖がいた。比較的年齢が近そうな若者でどことなくかつての友人、穂刈純一郎に似ている。今は飼い犬とフリスビーを楽しんでいたがこちらに気付くと、犬を呼び寄せ近づいてきた。
「こんにちはディア様。あ、君は…」
「女王候補のアンジェリークです、よろしくお願いします。えっと…」自分から挨拶したものの名前を聞いていなかったのをすっかり失念していたアンジェ、その様子に若者は爽やかに答える。
「アハハ、俺は勇気を司る『風の守護聖』ランディだよ。よろしくな、アンジェリーク」ランディは挨拶を済ますと再び飼い犬と遊ぼうとしたが、その犬が突然不機嫌になったのかアンジェにむかい唸り声を上げる。
「ウ~」
(マズいな。犬って勘がいいらしいし、俺の正体に気づいたのか?)冷や汗を垂らすアンジェだったがランディに叱られてようやく犬は大人しくなった。
「ゴメンよ、いつもはこんなんじゃないのに…一体どうしたのかな?」ランディに頭を下げられ恐縮するアンジェ、真実を言えないのがやけに心苦しかった。
「では、移動しましょうか」ディアに促され共に公園を後にする、近くの施設をまだ回りきってないのに疲れを感じ始めていた。