ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです   作:越後屋大輔

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今回は琴子が書きました。地理の間違いとかはあまり気にしないで下さい。


怪盗からす小僧 前編

 「で?何なのよ、このあり得ないハーレム展開は?」矢部の書いた小説にやや不快な表情を見せる忍、部で唯一の同性にこき下ろされて立場がない矢部。

 「まあそう言ってやるなよ藤崎君」万丈が矢部をフォローするも

 「先生、ここで余計な敵を作るべきじゃないわ」部長の美緒を始め女子部員全員が矢部と万丈に冷たい視線を向けている、ショボくれる矢部と共に部室代わりにしている居間を退場する。

 

 「それでは書き上げた人は挙手の上で発表して下さい」美緒の宣言を聞いて

 「じゃ私が」琴子が手を挙げた。

 

 時は江戸、元号を享保とした頃。武家屋敷や豪商の金蔵を狙っては奪った金を貧しき人々にばらまいて回る1人の盗人がいた、闇に紛れる黒装束のその姿から世間はいつの頃からかその盗人をこう呼んだ。義賊、怪盗・からす小僧と。

 

 「よう知ってるかい?昨夜もからす小僧が出たらしいぜ」

 「ああ、それも一晩で二度もだってな。最初が品川で次が錦糸町」

 「全くだ、天狗様でもあるめぇし。僅か一刻(いっとき)の間に品川から錦糸町までどう進んだか」

 「今、奉行所じゃからす小僧が二人いるんじゃねぇかってもっぱらの噂らしいぜ」

 「しかし俺達にゃ金をばらまいてくれるのは一人より二人の方がありがてぇぜ」

 

 仕事の合間に主人に内緒で蕎麦屋にきていたさるお(たな)の番頭と手代、蕎麦を啜りながらこんな会話をしていた。

 「しかしこの辺でもからす小僧の話題で持ちきりですな」

 「それなんだけどさ、ちょっと気になる事があるんだ」

 「何がです?」

 「ウチの女将さんさ、会合やら何やらで帰りが遅い晩、必ずからす小僧が仕事しているんだと」

 「え、まさか……ないない、人伝に聞いた話じゃからす小僧は六尺以上の大男だそうじゃないですか。ウチの女将さんは五尺にも満たないおチビさんですよ」

 「ハッハッハ、まあ偶然だろうねぇ」笑い飛ばしながらも蕎麦を平らげ、勘定を済ませお店に戻ろうとしたが

 「あ痛たたたーっ‼」突然番頭が苦しみだした

 

 さて、川越街道から江戸に入ってきた老翁一人と若い男二人の三人連れがいた。ご存じ天下の副将軍水戸光國公とお供の助さん、格さんである。諸国漫遊の旅をしてきた彼らもまた、水戸へ帰る前に偶然にも同じ蕎麦屋に立ち寄っていたのだった。

 「もし、どうなさいましたかな?」光國は腹痛を起こした番頭に駆け寄り手代に事の仔細を尋ねる。

 「わかりません、連れが急に苦しみだして……」

 「とにかく医者に診せましょう。助さん格さん運ぶのを手伝ってやりなさい」

 「「はい、ご隠居」」番頭を医者の元へ連れていく。

 

 江戸きっての老舗の菓子の店、伊集院屋。さっきの二人はここの使用人だったようだ、手代と一緒に戻ってきた女主人とご隠居達。

 「あ、女将さん。お帰りなさいませ」

 「番頭さんの容態は?」

 「大した事はないのだ、明日には動けるようになると医者も言っていたのだ。全く!この忙しい最中に蕎麦を食おうと勝手に店を抜け出すからバチが当たったのだ」

 「まあまあ女将さん、済んだ事にいつまでも愚痴をこぼすものじゃありませんぞ」

 「おや、これは番頭を医者まで運んで下さった方々。わざわざご親切、感謝するのだ」ご老公一行に頭を下げる女将。

 「せめてお名前をお聞かせ願いたいのだ」武家の者ならいざ知らず江戸の町人達には顔が割れていない。

 「私は越後のちりめん問屋の隠居で光衛門、この二人は供の者です」

 「助です」

 「格です」

 「私はこの伊集院屋の女将でおメイというのだ」

 「ではおメイさん、私共はこれで」

 「待つのだ、せめてお礼を受け取ってほしいのだ。これ梅吉」

 「へい女将さん」

 「いやいや、どうぞお気遣いは無用に」遠慮するご隠居だったが

 「ナニ、金ではなく饅頭なのだ。これでも味には自信がある、是非ご賞味頂きたいのだ」

 「そういう事なら頂いて参りましょう」結局おメイの勢いに押されて受け取る事になった。

 

 旅籠(はたご)にやどをとったご隠居達は早速頂いた菓子を食べる。

 「いや、流石は大店のお菓子。中々に絶品ですな」

 「これは確かに。ところでご隠居、例のからす小僧の件ですが」

 「何か気になる事でもおありですかな?助さん」

 「あのお店の使用人、梅吉が少し……」

 「ウム、あの男やけに背が高い。奉行所が通達していたからす小僧とほぼ同じ」

 「格さん、背丈だけで誰かを盗人扱いしてはいけませんぞ」

 

 江戸の町奉行所ではからす小僧二人説をいよいよ本格的に検証していく事と相成った。

 「お奉行様、二人のからす小僧ですがどう見ても盗みの手口が違いすぎます」配下の一人が意見すると

 「ワシもそう思っていたところじゃ、一人は闇夜に紛れ音も立てずに盗みを働く。まさにからす小僧の名にふさわしき仕事ぶり、酷い場合は被害に遭った者が数日間気づかないとか。一方もう一人の方はやり方が雑というか粗暴じゃ」

 「ハッ。倉にも忍び込むどころかドタバタと入ってきますし、錠前でも何でも力任せに引きちぎり家人が捕まえようとしても強引振りほどいて逃げおうせます」

 「それでは昨日品川に現れたのは前者の方ですな」からす小僧とは一体何者なのか?それは次回の講釈で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後半、ミステリーになってしまった、忍の担当のハズなのに
( ̄□ ̄;)
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