ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
間もなくひびきの高校の文化祭がやってくる、我らがラノベ部も催し物を披露する手筈になっているが
「今年はどうしますか?」
「去年みたいに朗読劇やる?お客の入りはイマイチだったけど」部長の美緒と副部長の忍が出展について話し合っている、他のみんなは各クラスの手伝いに駆り出されていて不在である。
その頃喫茶店をやる事になった2年1組の教室では着々と準備が進められていた。そんな中1人だけ心ここにあらずといった様子でそわそわしている女子がいる、忍の幼馴染みで彼女の陸上部の陽ノ下光だ。
「光ぃーっ、こっち手伝って」クラスメートに呼ばれても上の空。
「ゴメン、私ちょっと離れるね」教室を出てラノベ部の部室になっている第二視聴覚室にやってきた、ドアに手をかけると忍と美緒の囁き合う声がする。
「愛している、あなたの為なら何だってできる」
「それじゃ僕の望みを叶えてくれる?」
「勿論よ」
「フフッ、いい娘だ」どう聞いても恋人同士の会話としか思えない、怒りでドアが壊れるくらいの勢いをつけて開ける光。
「ちょっと!(怒)2人共何して……」しかし光が目にした光景はセリフからは想像のつかないモノだった、テーブルを挟んで向き合う位置にはいるが互いの顔を見ようともせずその目は原稿用紙に釘付けになっている。
「陽ノ下さん、どうかされましたか?」光に気づいた美緒は目が疲れたらしく、眼鏡を外して親指と人差し指を眉間に当てながら尋ねる。
「えっと……部活中だよね、ゴメンねいきなり押し掛けちゃって」光は己の勘違いを恥じて、苦笑いで誤魔化そうとする。
「ひょっとして……朗読劇のセリフが外に漏れていたかしら?」勘の鋭い忍に指摘されて真っ赤になる光、忍は彼女の耳元に口を寄せて
「妬かれるのは嫌じゃないのよ、でも浮気なんてしないから安心して。愛しているわ」それだけ囁くと光は一転してデレッデレの表情になる。
(羨ましい、私も彼氏ほしいな)再び忍と2人になった部室で美緒は光の去った跡と忍の方へ交互に首を向ける、それこそ指を咥えるかのように。勿論、実際に咥えてはいなかったが。
「ところでさっき読んでたのが今年の朗読劇?」光から話題を変えると
「まだ決めてないんです、とりあえず読み合わせをしていただけで」
「内容はミステリーよ、登場人物の会話シーンを読み合わせていたの。これ、あちしが書いたヤツね」中身は同じ2刷の原稿の内の1刷、自分が持っていた分を光に手渡す忍。
1900年代初頭のヨーロッパ某国、さる資産家の老夫妻の屋敷で夕食会が行われた。その日のテーブルについたのは夫妻の他、夫とは血の繋がってない30代半ばの甥と妻の友人である50がらみの婦人にナゼか夫妻の甥に招待された私立探偵の計5名である。
食事会で供されたメニューは海老のサラダに1/4ポンドステーキ、トマトと貝のスープとデザートにホールサイズのケーキが用意された。調理と配膳は夫妻に仕えるメイドがほぼ1人で行った、彼女はまだ20才にも満たない若さながらもその所作は申し分なかった。ケーキだけは夫が小皿に切り分けていたが途中手を滑らせて1枚落としそうになる、間一髪難を逃れて改めて配膳しようとしたが甥は甘いモノは苦手と詫びて断った。
終始和やかな雰囲気で進んでいった食事会だったが全員が食後のワインを楽しんでいる時に異常事態が起きた妻が急に苦しんで椅子ごと床に倒れたのだ。たまたま隣に席をとっていた探偵が抱き起こすものの妻は既にこと切れていた、探偵は一足先に客室で寛いでいた甥に警察に電話をするように頼むと
「皆さん、犯行現場には一切お手を触れないで下さい!」と全員に指示した。
検視医の見立てでは死因は青酸カリを口径摂取した為に死んだそうだ。当然最初はメイドが疑われたがキッチンからも彼女の部屋からも毒物は見つからなかったので犯人とする決定的な証拠は得られなかった。
第二候補は遺産を受け取れる可能性のある被害者の甥である。そもそも一行の中で彼だけはトライフルを食べずに客室に引き上げている、しかし頼まれたとはいえ警察を呼んだのは彼自身だ。犯人ならば電話に細工して、繋がらないから直接署に赴くと嘯いてトンズラする事も出来たハズだがそんな事は一切していない。
「警察の方は僕が遺産目当てで伯母を殺害したとお思いでしょうが」警察からの訊問に彼はこう答えた。
「僕は数年前に相続権を放棄しています、伯母は遺産を慈善団体に寄付するつもりでした。僕と探偵さんは遺言状の証人として招かれたんです」
「左様、奥方は明日弁護士を呼んで遺言状を書き換えるとおっしゃってました」探偵は甥に同意すると、メイドに質問という1つ確認をした。
「お嬢さん、貴女はホールサイズのケーキを運んできましたな」
「ええ」
「それをご主人が小皿に取り分けて全員に配ってます、貴女はそれを事前に知ってましたかな?」
「ハ、ハイ」
「メイドさんが犯人じゃないの?」光の問いに忍は
「朗読していたセリフね、それっぽいけどまだ秘密よ」
「青酸カリは誰がいつ盛ったんですか?」美緒も首を捻る、さて犯人は?
解答は前回同様2日後くらいにおまけ話の後書きに載せます。