ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです   作:越後屋大輔

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今回でラノベ部編は終了とします。にも関わらず作中小説が全く書かれていない……


UMAと異世界食堂(最終回)

 クリスマスイブが明けた土曜日の早朝、結局如月家で一夜を過ごした件の生き物は美緒に抱きかかえられて勝手口にいた。

 「ボクはどうなるの?」生き物は美緒に尋ねるが忍が何を考えているか彼女などが知る由もなく答えに詰まっているところに忍が現れた。

 「ハーイ美緒ちゃん」

 「お早うございます藤崎君」美緒は忍に生き物を引き渡し

 「この人は信頼できるから大丈夫」生き物にそう言い聞かせる。

 「ウン!」屈託ない笑顔で返事をする生き物。

 「じゃお預かりするわね」美緒は生き物を受け取った忍に視線を移すと

 「ところで藤崎君、絶対に安全な場所ってどこなんですか?」

 「詳しい事は後日話すわ、とりあえずあちしのバイト先に連れていくつもりよ」今日は土曜日で彼のバイト先は定休日のハズだ、美緒はどういう事かと首をかしげる。

 

 さて、その忍はバイト先の『洋食のねこや』にやってきた。実はこの店、毎週土曜日になるとナゼか異世界のあちこちと繋がっておりそこから訪れる客の為に特別営業を行っている。当初は驚いた忍だが、今ではスッカリ慣れてしまっている。この日も生き物を連れている以外、いつもと変わらぬ様子で出勤した。

 

 忍とほぼ同じ時間に異世界からのバイト店員も出勤してきた、魔族のアレッタと一見するとエルフのクロの2人。

 「よし、今日も全員揃ってんな。アレッタとクロは朝食ができてるから」2人に朝食を食べるように促し、既に自宅で朝食を済ませている忍を手招きして

「忍君は仕込みの準備を手伝ってもらう……って何だそりゃ?」いつも通りの指示をだして店主はようやく忍が得体の知れない生き物を抱えているのに気づいた。

 「実はですね……」忍は店主に事情を説明しようと生き物を一時厨房の床に立たせるが、蹴躓くモノは一切ないにも関わらずその場で前のめりに転んでしまう。

 「アンタ何やってんのよ?」苦笑しつつ忍は生き物を起こして、もう1度立たせようとしたが今度は仰向けにコケてしまう。

 「わざとじゃないでしょうね」若干切れがちの忍を意外にもクロが宥める。

 『その子はチェブラーシカ族。すぐ転ぶのは種族としての特徴、昔は私達の世界にも生息していたけど今は絶滅している。それがナゼこの世界にいたのかはともかく、その子はおそらく最後の生き残り』忍、店主、アレッタに思念波でこの生き物について説明するクロ。2人は勿論だが、アレッタもチェブラーシカ族の存在は知らなかったらしく

 「「「ヘェ~ッ」」」と3人揃ってクロの博識さに感心した。だが彼女の正体は異世界で神として敬われている七色の覇王こと、6柱の龍の1柱。故に、知っていて当然ともいえる。

 

 ~以下()内は忍のつっこみ~

 とりあえずチェブラーシカはねこやの片隅にある壊れて音がでなくなったピアノの蓋に座らせておいた、すると

 「こんにちは、皆さん」この日最初に訪れた常連の1人であるアーデルハイドはチェブラーシカを一目見るなり

 「まあっ、何て可愛らしいの!」ピアノまで駆けていってチェブラーシカを抱き締めて頬ずりした。

 「すみません、今日はこの子を私と同じテーブルにつけてよろしいですか?」

 (ここはホストクラブかっ!)

 「まあ、構いませんが」と、店主が言い切らない内に途端にチェブラーシカを抱っこして自分の向かいに座らせる。後から来たお客達も女性陣はおろか、男性陣まで目尻を下げてチェブラーシカを見つめる。

 「なあカツドン食うか?」ライオネルが自分の器からカツを一口取り分けチェブラーシカに与えようとする。

 (いつの時代の刑事ドラマよっ)

 「テリヤキはどうかな?」これはタツゴロウである。

 (老若男女問わずモテモテね)

 「ウィスキーじゃ。旨いぞ」ドワーフ2人組がグラスを渡す、これは忍がつっこむ前にアレッタとクロが止めさせたが。

 

 「じゃクロ、アンタがこの子引き取ってくれる?」その日の特別営業が終わって忍からの提案を受けたクロはどう返事したらよいものか困っていた。今彼女が暮らしている空の果ては他の生物が生息するのには適していない、まして数多の生物の中でも最弱の部類であるチェブラーシカ族にはあまりにも劣悪すぎる環境だ。

 「あんまり無茶言うなよ忍君、クロにも都合ってモンがあるだろ」店主はそういいながら楕円形の表面がザラザラしたモノを入れた透明な袋を取り出す。

 『それは?』クロの問いに店主はこう答える。

 「これか?木村さんから貰ったカレーパンだ」

 『それ美味しいの?』

 「ああ、ただ数が多くて俺1人じゃ食い切れないから。今日の夕メシにしようと思ったんだがクロ、お前も食うか?」

 『ウン、今日のカレーを食べてから』

 「そんじゃスグに揚げちまうか」

 

 こうして閉店後のねこやの厨房にある従業員用の食事スペースに揚げたてのカレーパンが16個並んでいた、忍も昼夜の食事は店内で摂るのでその夜もご相伴に預かる。

 「熱っ!」生まれて初めてカレーパンを食べたアレッタは口の中を軽く火傷する、一方店主と忍は食べ慣れてるので平気のへいざである。

 (このままでは3人に食べ尽くされる)そう思ったクロはしっかり自分が食べるカレーパンを確保して負けじと頬張る。元より体が小さいので口を大きく開けられないチェブラーシカは包丁で細かく切ってもらったのを食べる、おかげで火傷はしないで済んだが

 「ふぇ~ん、辛いよぉ」外見だけでなく精神的な面も味覚もお子ちゃまだったようだ、その様子にクロは今まで持ち合わせた事のない感情が心に沸き上がっているのに戸惑っていた。

 そうこうしている内に店主以外の3人が帰宅する時間になった、店主に貰ったラッシーを飲んでようやく舌が落ち着いたチェブラーシカにクロは話を切り出す。

 『行くところがないなら私と暮らさない?』思念波で伝える、さぞ驚くかと思いきや

 「ウン!」何の躊躇いもなく決心したチェブラーシカ。

 『次は一緒に連れてきていい?』クロが店主らに問うと

 「ああ構わんぞ」

 「あちしも大歓迎よ」

 「私もチェブちゃんともっと仲良くなりたいです」全員の賛成を得た。

 (この子があの空の果てでも生きられるように)クロは誰にも気付かれないよう魔法をかけるとチェブラーシカを抱っこしてあちらの世界の月に帰っていく、そして本来の姿である黒い龍に戻った。チェブラーシカは始めこそ腰を抜かすが、その瞳を見ると

 「やっぱり1人より2人の方が楽しいね」あっけらかんと答える、その無邪気な笑顔はクロに少なからず安らぎをもたらした。

 

 年が明けて3学期が始まった、今日もラノベ部は賑やかだ。

 




シメ方がかなり強引ですね、チェブラーシカの件は忍から美緒に伝えてありますのでご安心を。
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