ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです   作:越後屋大輔

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洛陽の闘い、完結に向かいます。


第十九席董卓、洛陽を逃げ出すのこと

 蜂に変身して曹操軍の話を盗み聞きしていた忍は元に戻ると、みんなに事の顛末を語って聞かせた。桃香と朱里は悲しそうに眉をひそめ、愛紗と仗助は怒りが沸点を越えそうだ。れんげも鼻息が荒い、星だけは何を考えているか、表情からは想像できないが、彼らと思いは一緒だろう。

仗助

「今回は俺らが斥候役を買ってでるぜ」

「そうね。張讓がどう動くか気になるし」

れんげ

「またウチの出番なーん♪」情報収集能力にも長けているゲッターチーム、何も鬼と闘えるだけが取り柄じゃない。

 

れんげ

「おっちゃん、しのぶん、早く潜り込むのん」

仗助

「……何でお前ぇが仕切ってんだよ?」

「あちしは門番取っ捕まえて、姿を借りるわ。れんちょんは仗助と自分を透明にして入ってきなさい」忍は殴り倒した門番の鎧を奪い、そいつそっくりの顔かたちに変身する。仗助とれんげは透明になったが、スタンドを出現させて、その位置で互いの居場所が分かるようにして3人揃って城の中へ潜入する。

 

 洛陽城の牢に閉じ込められた董卓。賈駆は自らも董卓と一緒にいたいと望むも、それは叶わず張讓から残務処理を命じられた。

張讓

「連合軍が来たら、速やかに董卓を引き渡せ。ま、精々跳ねられた首でも貰い受ける事だな。アーハッハッハッ」机に向かいながら、あの厭らしい高笑いを思い出す。

賈駆

「ウ、ウゥ、月……」書きかけの書類に涙が落ちて墨が紙に滲む。

兵士(モブ)

「グハーッ!」警備兵が呻き声を上げるのが聞こえた、慌てて外へ飛び出す賈駆。そこには苦悶の表情を浮かべて、気絶している警備兵達が転がっていた。

賈駆

「誰?」姿は見えず、声だけが聞こえた。

??

「安心なさい、貴女達の味方よ」

??

「お前ぇらは必ず無事に助けてやる」

??

「大船に乗った気でいるーん」彼らを伸したのは3人組のようだ、それだけ言うと気配が消える、狐につままれた思いの賈駆だった。

賈駆

「何だったのよ。一体……」

 

 ~その頃の劉備軍~

 

 そして、いよいよ連合軍が洛陽に乗り込む時がきた。ここでも劉備軍が先陣を切る事で連合軍一同、意見が一致した。

朱里

「……という訳で、我ら劉備軍が先行する事になりました」

愛紗

「うむ。ここまでは作戦通りだな」

「……しかし弱小勢力な我らの悲哀を逆手に取るとは、あの三人も中々考えたな」

鈴々

「まさか鈴々達が、実は董卓を助ける為に動いてるなんて、誰も思ってないのだ」

桃香

「でも、私達の部隊だけで先行して大丈夫かな?」

朱里

「……張讓さんの動きが予想できないので、何とも言えませんけど……行くしかありませんね」こうして、部隊の再配置を行った劉備軍は、連合軍から先行して洛陽へ乗り込んだ。どこから敵が出てくるか分からない……そんな緊張と共に進軍するも、敵の気配などは微塵もなく、拍子抜けするほど簡単に洛陽城の前まで来てしまった。

鈴々

「……何事もなく来ちゃったのだ」

桃香

「来ちゃったねぇ……何も起こらなかったっていうの、喜んで良いのかな?」

朱里

「……読めないですね。相手の手の内が」

「城にも全く動きなし。薫風を受け止めて清々しくそびえ立つ城壁……詩でも一編作れそうなほどにな」

桃香

「じゃあ斥候をだそう。仗助さん達からもなんの連絡もないし」

鈴々

「んー……ねぇねぇ、桃香お姉ちゃん」

桃香

「ん?」

鈴々

「鈴々も斥候に出ても良いー?」

桃香

「鈴々ちゃんが直接?またどうして?」

鈴々

「んとねー、状況を自分の目で確かめたいのだ」

愛紗

「将校斥候という訳か……悪くないかもしれん」

桃香

「でも……危なくないかな?」

「危険はありましょうな。だが状況が不透明な今だからこそ、危険を冒しても情報を手に入れなければならないでしょう」

桃香

「……分かった。じゃあ鈴々ちゃん、お願いできる?」

鈴々

「任せろなのだ!」

桃香

「無茶しちゃダメだよ?危なくなったらすぐに帰ってきてね?」

鈴々

「分かっているのだ。それじゃいってきまーす!」

桃香

「これで何か分かるかな……」

「うむ、鈴々の状況判断能力は高い。しっかり情報を持ち帰ってくれるでしょう」

愛紗

「そうだな……では鈴々が帰ってくればすぐに動けるようにしておこう」

「ああ」

 

 洛陽城に潜入したゲッターチーム、今回はいつになく忍が兵士相手に大暴れしていた。

「アン!ドゥ!オラァ!ギャオーッ!アン!ドゥ!オラァ!ギャオーッ!」

仗助

「……あの吠え様、猛獣かあいつは?」

れんげ

「いつも『1、2、3』しか数えないんに、今日は『4』まで数えてるん!」

仗助

「イヤ、突っ込むトコそこかよ……」

れんげ

「ウチも負けてられないん!」れんげもC&Cファクトリーで敵兵にラッシュを食らわす。

C・F

「ののののののののののーん!」次々と敵兵を倒すれんげに仗助も触発されたのかクレイジー・ダイヤモンドで葬っていく。

C・D

「ドラララララララララーッ!」結局敵は張讓を除き、ものの数十秒で全滅した。

 

 賈駆の部屋の戸を乱暴に開ける張讓。顔は青褪め、息を切らしているところから、尋常じゃない様子が見てとれる。

張讓

「賈駆!連合軍が押し込んで来た!董卓を引き渡せ!」しかし……

れんげ

「もう遅いん!」後ろから董卓の姿が現れた。男が2人と幼女が1人、彼女を囲い、張讓に敵意の目を向けている。

張讓

「そ、そいつが董卓だ!お前ら連合軍だろ?さっさと連れていけ!」

仗助「あ"~?(怒)何言ってんだ手前ぇ!」

「(怒)今度の一件、アンタが裏で糸引いてたんでしょ?」

れんげ

「全部お見通しなん!」自らの悪事が露見して、一瞬怯んだ張讓だが、窓に体当たりするとそこから逃げ出した。

仗助

「逃がすかよ!」クレイジー・ダイヤモンドで張讓を捕まえた仗助。

仗助

「れんげ、この2人連れて桃香達と合流しろ。他の奴らに見つからねえようにな」

れんげ

「分かったのん……2人共ちょっと顔貸してほしいん」れんげは董卓と賈駆の顔に触れる、2人はみるみる顔が変化して、全くの別人にしか見えなくなった。

れんげ

「とーたくはコマちゃん、かくはなっつんの顔にしたん。これならバレないのん」董卓らの手を引いてれんげは洛陽城を後にする。

 

仗助

「ザケた事してんじゃねえよ手前ぇ!女虐めて喜ぶたあ、それでもキ○玉付いてんのか?!あ"ぁ?」れんげが董卓達を連れ去ると、仗助は素手の拳で張讓を散々殴りながら罵倒する。

「……(ため息)仗助、そいつは宦官よ」

仗助

「は?どういうこった?」

「……つまり、ないのよ」忍がそう教えると、腹を抱えて大爆笑する。

仗助

「アーハッハッハッ!何だ手前ぇ?キ○玉ねえのかよ?アーハッハッハッ」

「(……ッントに下品よね。こいつ)そこまでにしなさいよ、仗助」

仗助「何だ?まさかこいつを庇うつもりか?」

「違うわよ」仗助を下がらせ、顔の腫れ上がった張讓の髪を掴んで持ち上げて、こう告げる。

張讓

「な、何をする?」

「決まってるでしょ?……責任を取るのよ」

張讓

「そ、それって……」

「だから、董卓ちゃんの代わりにアンタが首を跳ねられろって事」張讓の顔から、サーッと血の気が引く。

張讓

「い、嫌だぁぁーっ!死にたくないぃぃぃーっ!」

「煩いわね!もう決定事項なのよ!」

仗助

「(イヤ、お前ぇの一存だろ……)そういや忍、お前ぇ今回はかなりこいつにブチキレてたけど、何かあったのか?」

「ちょっとね。こいつ匠に似てるのが腹立つから、酷い目に遭わせたかったのよ」

仗助

「それが理由かよ?!そりゃ確かに坂城のヤローはクズだけどよぉ……」

「あっちじゃ匠を殴りたくても中々難しいでしょ?」と、仗助に笑顔を向ける。

仗助

「……こいつだけは本気で怒らせないようにしねえとな(震)」改めて忍の怖さを実感した仗助は、小声で呟いていた。

 

 董卓達を連れ、城下を堂々と進むれんげ。董卓達はオドオドしているが、元よりメディアが存在しないこの世界では2人の顔を知っているのはごく一部に限られる。しかも今は全く別人の顔なので、尚更バレる心配はない。

れんげ

「そんなコソコソしなくてもいいんに」

賈駆

「……それはそうだけど」

董卓

「詠ちゃん。私達、ホントに別人の顔になってるね」時折頬を寄せ合いながら、鏡を覗いては感心する2人。そこに曹操軍が近づいてきた、兵の1人がれんげと挨拶を交わす。

兵士(モブ)

「……これは御遣い殿。お勤めご苦労様です」いまや曹操軍の間でも天の御遣い三人組こと、ゲッターチームはスッカリ有名になっていた。

れんげ

「にゃんぱすー。兵士さんもお仕事頑張ってなーん」

兵士(モブ)

「はっ。では我らはこれにて」兵は董卓達に興味すら示さず、軍と共にれんげが来た道を逆に進んでいった

董卓

「……行っちゃったね」

賈駆

「いくら顔が変わっているからって……ボク達を連れているのを、何も疑問に思わなかったのかしら?」

れんげ

「かくってしのぶんの逆なん?」

賈駆

「何よ。唐突に……」

れんげ

「何か喋り方に男と女が混じってるん」

賈駆

「……ああ、あの女口調の男ね……って!一緒にしないでよ!」この賈駆とれんげのやり取りに吹き出した董卓。

董卓

「この娘面白いね。詠ちゃん」

賈駆

「……月ぇ~」表面上はムスッとしてるが、本当は洛陽へ来て初めて月が笑った事が嬉しくて仕方ない賈駆。それを決して顔にださない、いわゆるツンデレな賈駆であった。

 

 やがて斥候として、洛陽の城下に入っていた鈴々と合流したれんげ。

鈴々

「れんちょん。お帰りなのだ」

れんげ

「ただいまなーん、とーたく達連れてきたのん」

鈴々

「そうなのか?顔が違う気がするけど……」

れんげ

「桃香(ねえ)達んトコに着いたら元に戻すん」

鈴々

「それじゃ合流するのだ」

れんげ

「了解なのーん」

 

桃香

「お帰りれんげちゃん」

愛紗

「その二人……どちらかが董卓か?」

れんげ

「そうなん。今、C&Cファクトリーで顔を変えてるん」

「確かに。白連殿の記憶から見た董卓殿とは、まるで別人だな」

れんげ

「それじゃ元に戻すんなー」さっきまでれんげの友人を模していた董卓と賈駆の顔が忽ち、元通りになる。

??

「董卓殿。久しいな」

董卓

「公孫賛さん?」董卓に声をかけたのは洛陽の闘い終了後、桃香達と合流した白連だった。

白蓮

「堅苦しい挨拶は抜きにしよう。私も貴女も既に太守ではない、これからは私の事を真名で白連と呼んでくれ」

董卓

「はい。では私の事も(ゆえ)とお呼び下さい」久し振りに対面する元太守同士が挨拶を交わす中、仗助と忍も本陣へ帰還した。

仗助

「戻ったぜ」

「ハーイ、たっだいま~」2人はある人物を拘束していた。

桃香

「……仗助さん、忍さん。そちらは?」

仗助

「こいつか?これから馬騰のオッサンに引き渡すんだ」

「この者こそ本物の董卓(・・・・・)って事にしてね」

桃香

「えっ?」

 

 

 

 

 

 




因みにフランス語で『4』は『quatre(キャトル)』と言います。
張讓はアニメだけに登場しますが、実際に匠と外見はよく似てます。声優は初代クレヨンしんちゃんの矢島晶子さんのせいか、メタ妄想しがちな私です(笑)。

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