ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
新学期初日、いつになく神妙な面持ちの匠があちしに告げる。
「なあ、知ってるか?佐倉さん転校したんだって」
「ああ。そうらしいな」あちしは無表情で返す、その理由は2つ。1つは佐倉さんとは元々クラスも違うしそれほど親しかった訳じゃないから、顔見知りが減るのは何気に寂しいけど転校元の反応なんて大多数がこんなモンじゃないかしら?佐倉さんと仲の良かった人は別として。
「坂城!」ウチのクラスの野球部員、
「佐倉さんの転校先わかるか?」
「今調べてる。情報が入ったら教えるよ」ビンゴ。つーか匠も知らないのは意外だわ、ここはあちしが救いの手を差しのべてあげましょ。
「高坂、今日一緒に帰らないか?」HR後に高坂を誘う。
「何でだ?」まあそりゃそうよね、別に大して仲良いって訳じゃないし。
「いいから、いいから」半ば強引に連れ出し駅へ向かう、駅舎について公衆電話で詩織ちゃんとコンタクトをとってきらめき市行きの電車に高坂を押し込んで彼女の家に向かった。
「オイ藤崎!俺をどこへ連れていく気だ?」電車内でも高坂はムカッとした様子で問い質してくる。本人は精一杯睨みを利かせてるつもりだろうけどあちしは気にしないで適当にあしらう、オカマって結構根性座ってンのよ。伯母夫婦宅、すなわち詩織ちゃん家に着くとまたしても沙織さんがいた。
「しっのぶちゃん♪」鼠を狩る猛禽類の如くあちしの首に手を回してきた、男モードをキープしたまま沙織さんを振りほどき声を低く落として尋ねる。
「詩織ちゃんいます?」素でないあちしの態度と後ろにいた高坂を見てようやく察した沙織さんは
「詩織ならリビングにいるわよ」と告げて気まずそうに自室へ引っ込んでいった、安堵の息を吐くと高坂と向かう。
リビングには詩織ちゃんと公人、愛ちゃんに虹野さんもいた。それに、
「佐倉さん!」
「高坂君、どうして?」互いに驚きを隠せないみたいね。
「あ~ゴメン、俺が教えた」今更嘘ついても意味ないし、あちしはさっさと種明かしをする。実は佐倉さん、転校が決まってすぐに虹野さんに連絡したそうよ。そこから詩織ちゃん経由であちしも知らされたのよね。
「藤崎君、私がきら高に転校したの知ってたんだね」
「ゴメンなさい、私が忍ちゃんに話したの」詩織ちゃんも白状したところで高坂を佐倉さんの隣に移動させてその後は各自、世間話に興じる事になったわ。
「彼、ひょっとして佐倉さんの事が…」
「そう思うでしょ?だから連れてきたのよ」途中、詩織ちゃんとキッチンに向かい2人で内緒話をしながら人数分のお茶を淹れる。ま、後は彼女の気持ちと彼の頑張り次第じゃないかしら?一応上手くいくのを祈っとくわ。
『去る者は日々に疎し』なんて諺にもあるように新学期から3週間もすると同級生の誰もが佐倉さんの話題を持ち出さなくなった、時って残酷よね。そんなある日、全校生徒が講堂に集められた。
「今日は教育実習生が来ている」校長から紹介された一人の女性があちしら生徒に挨拶する、アラ?どっかで聞いた声。
「えー麻生華澄です」やっぱり華澄お姉ちゃんね。まさかこんな形で再会するとは思ってもみなかったわ、しかも
「なあ、華澄さんじゃない?」講堂での全校集会が終わり廊下で匠らと雑談していると校長に連れられた華澄お姉ちゃんとバッタリ出くわした。
「ねぇねぇ華澄さん」ムカッ!何よコイツ、馴れ馴れしいわね(怒)、せめて麻生さんとか華澄先生って呼びなさいよ。
「はい?」匠の呼びかけに振り向いた華澄お姉ちゃんだったけどすぐに視線をあちしに移すと
「え~と?あっー、もしかして!」気がついたみたいね。
「どうもお久し振りです、華澄さん」オカマである云々以前にこの年でお姉ちゃんと呼ぶのは流石に恥ずかしい、畏まって挨拶するあちしに
「何でこんなトコにぃ?いつ戻ってきたのぉ?」な、何かテンション高いわね。幻滅した訳じゃないけどあちしの中の『華澄お姉ちゃん』のイメージが崩れ落ちそうになる、
「あ、高校入った時にこっちに越してきて…」
「オーイ華澄さん、話は後にしてもらえるかな」校長に制され移動していく。
「運命の再会か、いいなぁ」もうアンタは口閉じなさいよ(怒)!でもホントにびっくりしたわ。
それから華澄さんは1週間ほどひびきの高校に来ていたけどまた大学に戻っていった。そうそう、来年度からどこかの学校で教職に就くらしいわ。
~回想シーン~
「忍君は将来何になりたい?」
「う~んとねぇ、そーりだいじん!」
「そう、すごいわね」
「華澄お姉ちゃんは?」
「そうね、先生なんてどうかな?」
「華澄せんせーかぁ、かっこいー」
~回想シーン終わり~
ふと昔の記憶が甦った、懐かしいわ。しかしあちしも大それた事抜かしたモノよね、我ながら恥ずかしくなってくるわ。