ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです   作:越後屋大輔

256 / 282
最終決戦まで、後僅か?


第四十七席周瑜と黄蓋、大喧嘩するのこと

 大きく頷いた周瑜が、矢立から筆を抜き出し、掌にサラサラと筆を走らせる。対する朱里も忍に貰ったボールペンで、同じように掌に何かを書き……。

朱里

「いっせーのーせー」短い指を精一杯に開き、じゃんけんをするように周瑜の方へ差し出した。

周瑜

「……うむ」

朱里

「はわわ、一緒ですね♪」

周瑜

「ふっ……やはり同じ事を考えていたか」

朱里

「はい♪これしか方法はないかと」目と目を合わせ、微笑み合う2人に、

桃香

「なになに?一体どんな方法なの?!」桃香がキラキラと目を輝かせて問い掛ける。

朱里

「これですよ♪」朱里が桃香に自分の掌を見せる。そこに書いてあったのは……

桃香

「これって……んーと……」

仗助

「ちょっと待った。桃香」

「口にしちゃダメよ」

桃香

「へっ?言っちゃダメなの?」

朱里

「壁に耳ありですから……」

れんげ

「どこで誰が聞いてるか分からないん」ゲッターチームはそう言いつつ、朱里と周瑜の掌を覗き込む。

仗助

「なるほどな」

「そういく訳ね」

 

れんげ

「おお……!」そこに書いてあったのはただ一文字。火……それだけだった。

孫策

「なるほど……それしかないわね」

周瑜

「ああ。相手は巨大だ。その巨大な軍勢に痛撃を与えるにはこれしかない」

桃香

「でも……一体どうやって?」

周瑜

「それなら私に一案があるわ……雪蓮」

孫策

「何?」

周瑜

「この闘いが終わるまで……何も言わず、私を信じていて欲しい」

孫策

「良いわよ」周瑜の言葉の意味も問わず、孫策はサラリとした口調で頷きを返した。

周瑜

「……もう少し悩んでも良いんじゃない?」

孫策

「何か考えついたんでしょ?なら全部任すわよ」

周瑜

「ありがとう」心なしか、僅かに笑みを見せた周瑜。そして朱里に向き合う。

周瑜

「では孔明よ。部隊編成を決めようか」

朱里

「はい。まずは敵と一当てする先陣の編成ですね。これは最強で部隊を当てるのが良いかと」

周瑜

「同意だ。呉からは私と孫策が出よう」

朱里

「では私達は……」そこまで言って、朱里は仗助達に視線を移す。

仗助

「愛紗に鈴々、それに朱里だな。後方の本陣で桃香と雛里、俺達は待機。後の連中も割り当てられた部署で待機……ってトコだな」

朱里

「はい。私にも否はありません」

愛紗

「ああ。先陣、見事務めてみせよう」

鈴々

「鈴々の出番なのだ!」

周瑜

「ではその編成で行こう……雪蓮。頼むわよ」

孫策

「軍神と呼ばれる関羽、張飛の二人と(くつわ)を並べる、か……ふふっ、良いわね。たっぷり暴れてやろうじゃない」ニヤッと笑った孫策の雰囲気が、今までの陽気なモノから、ぎらついた感じに変わった。恐らく戦闘準備に入ったのだろう。

れんげ

「……他は誰と誰が出るん?」

周瑜

「蜀の武将達は、我ら先鋒の左右に展開して待機しておいてくれ……ただし」

仗助

「何だ?」

周瑜

「攻撃は絶対にしないでくれ……私の指示があるまで動くのも禁止だ」

「なんだそりゃ?あんたの指揮下と入れって言うのか?」

周瑜

「そうだ」

桔梗

「ふんっ、聞けん話だな」

卑弥呼

「ワシらは桃香様の命令によって動く。他軍の貴様にとやかく言われる筋合いはないぞ?」

蒲公英

「そうだそうだー!」

桃香

「え、でも……仗助さん、忍さん、どうしよう?」

仗助

「こんな時に我を張っても仕方ねえよ……」

「桔梗さん。頼むわ」

桔梗

「しかしな。仗助に忍よ。いくら名軍師として名高い周瑜とは言え、我が軍の動かし方に精通しとらん将を上に戴けば、被害を被るのは一般の兵達だ。そいつらの命を預かる将としては、簡単に受け入れられん」

「確かにその通りよ。だけど今はまだ作戦を考える時間だわ……」

仗助

「剣を交えて闘う事になったら、本陣で指揮を執るから。それじゃダメか?」

桔梗

「ううむ……」渋い顔の桔梗に、紫苑から二人への援護射撃が入る。

紫苑

「桔梗。ここはお二人に従いましょう。今は大戦略の方が大切なのだから……」

桔梗

「……分かった」

仗助

「すまねえ……」

「……みんなも良いわね?」

「まぁ……二人がそれで良いなら、あたしは別に文句ないけど」

蒲公英

「蒲公英もー」

卑弥呼

「皆が了解した以上、ワシ一人意地を張る訳にも行くまいて」

「ありがと……じゃあ戦の序盤の指揮は周瑜に任せるわ」

仗助

「思いついた案ってのを、しっかり実行してもらうぜ」

周瑜

「任せておけ……雪蓮。呉の武将達も同じように配置する。本陣には蓮華様を」

孫策

「分かった。言っとく」

周瑜

「頼む……ではこれで軍議は終了だ」

朱里

「了解です……雛里ちゃん」

雛里

「うん……基本的に操船は呉の方々にお任せしますから、私達は白兵戦を担当する事になります……皆さん、準備の方、よろしくです」

「了解した。右は私が指揮を執ろう。左は紫苑。お主に任せる」

紫苑

「了解よ」

愛紗

「では我らも先陣に向かおう」

鈴々

「合点なのだ!」

桃香

「みんな……気を付けてね」

仗助

「武運を、な……」蜀の仲間達が部署に向かう。その背中を見送りながら、皆の無事を祈るゲッターチームだった。

 

桃香

「この闘いに勝って戦乱の世を終わらせよう!」

愛紗

「はっ!命を賭けて敵を粉砕するぞ!」

「やってやんぜーっ!鈴々、行くぞ!」

鈴々

「応なのだ!突撃、粉砕、勝利なのだー!」

 

 いよいよ赤壁の闘いが始まる。とは言っても、今回は決戦の為の布石に過ぎない。曹魏側の指揮官は夏候惇が務めるが、突撃の一手ばかりが続く。不慣れな水上での闘いに短期決戦を望んだのだろうが、相手は舟戦に長けた呉。次第にじり貧となっていく。そして意外に早く、決着は着いた。

愛紗

「良し!朱里!後を頼む!」

朱里

「了解です!本命を叩き込みます!」

雛里

「弓兵さん!火矢の斉射をして下さい!」蜀呉同盟軍は曹魏の船に火矢を放つと、すぐに撤退した。

朱里

「頃合いです!愛紗さん、鈴々ちゃん!そろそろ退きましょう!」

愛紗

「了解した!鈴々!」

鈴々

「応なのだ!みんなー、鈴々の旗に続いて整然と後退するのだ!」両軍の兵士はこれに応える。

兵士達(モブ)

「「「「応っ!」」」」

兵士達(モブ)

「「「「応っ!」」」」そし孫策と周瑜も撤退を始める。

周瑜

「我が軍も退くぞ、雪蓮」

孫策

「はいはい……さぁて。曹操がどんな反応を見せるか。楽しみね」悪戯っぽい笑みを浮かべる孫策だった。

 

 こちらは曹操の陣営。

夏侯惇

「くっ、中々やるな、奴ら」

夏侯淵

「ああ。こちらも大きな被害を受けた……しかしどういう事だ?奴らの方が押しているこの状況で退却していくとは……」

荀彧

「伏兵、計略……何かしらの策があるんでしょ」荀或が呟く。そこに他の軍師、郭嘉と程昱も集まる。

郭嘉

「ではこのまま進むのは愚策。一度進軍を停止し、体勢を整えましょう」郭嘉がメガネをクイッと上げて提案する。

曹操

「……ふむ」どこか腑に落ちない。といった表情を見せる曹操に、

程昱

「どうかされましたか?」頭に人形を乗せた少女、程昱が尋ねる。

曹操

「どうも……相手の動きが気になるのよね」

荀彧

「というと?」

曹操

「……いえ、何でもないわ。私の思い過ごしなのかもしれない」

程昱

「……では部隊を一度後退させますが、問題はありませんかー?」

曹操

「ええ。お願い……桂花。後退後、補給物資の手配を。春蘭と秋蘭は前線にて待機。季衣(きい)流琉(るる)は私と共に後退しなさい」曹操が許緒と典韋に命じると仲良く返事をする2人。因みに許緒の真名は季衣、典韋の真名が流琉である。

許褚「はーい!」

典韋

「了解です」後退しながら、曹操はひとりごちる。

曹操

「戦況は膠着、か……さて蜀呉はどう動く……私はどう動く……」こうして赤壁の闘い、第一の幕は閉じていった。

 

雛里

「曹魏、進軍を停止しました……とりあえず作戦は成功ですね」

「ええ。だだ……ここからが難しいトコよね」進軍を止めた曹魏の軍勢に対し、どんな攻撃を仕掛けるのか。それは朱里と周瑜、2人の策に掛かっている。

桃香

「あ、みんなの乗る船が戻ってきた……陣地に向かえって合図が来てるよ」

仗助

「よっしゃ。すぐに陣地に向かおうぜ」

 

 桃香達が本陣に向かうと、既に朱里と周瑜を始め、各軍の将達が戻ってきていた。

「みんなお疲れ様。作戦はとりあえず成功……って事で良いのかしら?」

周瑜

「ああ。敵の主力を戦場へ釘付けに出来ている。今の状況こそ、最大の戦果……といったところだろう」

朱里

「しかしこの均衡も長くは続かないでしょう。後はどうやって策を仕上げるか、ですが……」

雛里

「例の策を実行するにしても、最大の効果を求めるには今の状況は素直過ぎますね……」

音々音

「ふむぅ~……この状況を更に混乱させないと、策を実行しても美味しくはありませんなー」

仗助

「策、か……忍。何かねえか?」

「そうね……」赤壁の闘いの重要な要素と言えば火計と連環の計、だが果たして地球の歴史通りに事が運ぶのか、火計はまだしも連環は今更ムリであった。

れんげ

「……どうするん?」何か良い手はないのか、みんなして頭から湯気を出す勢いで考えているところへ、

??

「……なんじゃ。また軍議か。下手な軍議、休むに似たりじゃな」トゲトゲしい言葉と共に、1人の女性が軍議の場にやってきた。

れんげ

「おばちゃん。誰なん?」

黄蓋

「儂は黄蓋。呉の古株じゃよ。お前が天の御遣いの一人か?」

れんげ

「そうなのん。ウチ宮内れんげって言うん。にゃんぱすー」

黄蓋

「うむ。可愛らしいのう。どこぞの軍師とは大違いじゃ」

周瑜

「黙れ黄蓋。たかが前線の一指揮官が、偉そうな口を叩くな」

黄蓋

「……ほお。公謹よ。儂に喧嘩を売っているらしいな?」

周瑜

「口の利き方に気を付けろ、下郎。私は呉の大都督。貴様は我が(めい)を犬コロのように待って居れば良い」

黄蓋

「犬コロじゃと?!我ら前線の将が(いのち)を的にして闘っていたこそ、呉は強国としてのし上がったのじゃぞ!それを犬コロとは……!公謹!貴様、文官の分際で我らを馬鹿にするなど傲慢にもほどがあるぞ!」

周瑜

「黙れ!呉の手足でしかない貴様らが、呉の頭脳である私に反論するな!己の身分を弁えろ!」激しい口調で言い争う2人の様子に、蜀軍一行は無言のまま、思わず息を呑む。

黄蓋

「身分じゃと……汗に塗れ、血を流し……呉の繁栄の為に命を賭けてきた我ら部将を、犬コロ扱いする事が、貴様の言う身分の違いか!我らが殿の囲い者が、主の寵愛を笠に着て、よくぞ言うた!頭脳よりも肉体を駆使して王に取り入った、薄汚い売女風情が!誇り高き我ら武官を愚弄するなど百年早いわ!」

周瑜

「……なにぃ?!」 

黄蓋

「失せろ、売女!貴様なんぞ、呉には要らん!」

周瑜

「言うに事欠いて私を売女呼ばわりか……!もう良い!黄蓋!貴様の役を剥ぐ!一兵卒(いっべいそつ)として戦場で死ね!」

黄蓋

「……儂を一兵卒におとすじゃと……!」

周瑜

「上官に対する侮辱、命令不服従、主を冒涜する発言……役を剥ぐには充分な理由だ。失せろ、黄蓋。自分の天幕に戻り、謹慎していろ……この闘いが終わった後、貴様に正式な罰を通達する」

黄蓋

「勝手にせい!」苦虫を噛み潰したような顔で軍議の場を去る黄蓋。

周瑜

「誰かある!」周瑜も不機嫌そうに部下を呼びつける。駆け付けたのは周泰だった。

周泰

「は、はいっ!」

周瑜

「黄蓋の部隊を解散させろ。兵は他の将に預けるように手配しておけ」

周泰

「し、しかし……」周泰は一応、反論を試みるも、

周瑜

「……やれ!」周瑜のあまりの剣幕に従うしかなかった。

周泰

「は、はいっ!」

桃香

「あ、あのぉ~……」見過ごせないと思ったのか、桃香が周瑜に声をかける。

周瑜

「……なんだ?」

桃香

「この時期に喧嘩するの、良くないと思うんですけど……」その2人の間に孫策が割って入る。

孫策

「いいのいいの。放っておけば良いわよ」

桃香

「え、でも……」

周瑜

「……劉備よ。いくら同盟したとはいえ、呉の内部の事に口を出さないでもらおう」

愛紗

「同盟しているからこそ口を出しているのだ!貴様らの不仲が戦況に響いたらどうする!」

「うむ。共に闘う者として、先ほどような口論は、今後謹んで貰いたいモノだ」

蒲公英

「そうだそうだー」蒲公英の言葉に蜀一行が一斉に頷く。そんな中、ゲッターチームだけは何か違う考えを持っているようだった。

仗助

(なあ、あれって……)

(ふ~ん……そういう事)

れんげ

(紛らわしいんなー)

仗助

「その辺りについては口を出さないでおこうぜ」

「……そうね。内政干渉になるわ」

愛紗

「しかし!」

れんげ

「愛紗姉……今はそうするん」

愛紗

「れんげまで……!」

「後でちゃんと説明するわ……桃香ちゃんも良いわね?」

桃香

「忍さんがそう言うなら、従うけど……」納得いかないといった表情の桃香を宥めるのを忍に任せ、仗助は周瑜に中断していた軍議の続きを促す。

仗助

「で、これからどうすんだ?」

孫策

「さあね……冥琳、どうする?」

周瑜

「……今日はこれで軍事行動は終了する。各員は陣地に戻って休養しておいてくれ」

「休憩?……あたしら、疲れるほど闘った訳じゃないんだけど?」

桔梗

「うむ。戦線が膠着している状態では動きが取りにくいというのは分かるがな……」

紫苑

「のんびりしている場合でもないでしょう?」

周瑜

「……決戦は明日だ。皆、休息を取れ」桃香達の疑問に答える事もせず、周瑜は有無を言わせぬ口調で命令する。高圧的な言い方に、再び愛紗達が反論しようとするのを制するゲッターチーム。

れんげ

「分かったのん。じゃあゆっくり休むん」

「さ、みんな行きましょ」不満タラタラな仲間達を連れて、自分達の天幕へ立ち去るゲッターチーム。彼らだけが、この喧嘩の裏に隠された真実に気付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




『昱』の字がどうにか出せたので、前回匠とインベーダーに出番を奪われた許緒と郭嘉、程昱がやっと登場。
\(*^▽^)/★*☆♪
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。