ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです   作:越後屋大輔

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このシリーズも遂に50話まで来ちゃいました。


第五十席蜀呉、反撃準備のこと

 黄蓋と沙羅が脱走してから数時間が経過した。部隊の混乱を何とか収めた桃香達とゲッターチームは、これからどうするかを相談する為に呉の船に移動した。

仗助

「……なんかスゲー事になっちまったな」

孫策

「そうねー。まさか黄蓋が魏に奔っちゃうなんて思わなかったわー」

「ええ。あちしも思わなかったわ……で?」

孫策

「でって?」

桃香

「これからどうするんですか?呉の宿将と言われる黄蓋さんが、沙羅ちゃんと一緒に魏に行っちゃった以上、こっちの作戦とかも曹操さんにバレちゃってるだろうし……」

孫策

「……って劉備が心配してるけど?これからどうするつもり?」周瑜に話を振る孫策。

周瑜

「どうするとは?」

孫策

「……祭が裏切る訳ないでしょ?という事はこれは何かの策。その策、そろそろ示しても良いんじゃないかしら?」

周瑜

「……他人事みたいに。元々は雪蓮達が考えた話じゃない」

孫策

「そうだけど……。実効したのは冥琳でしょ?」

周瑜

「……話を聞いた時は、流石と言うべきか。やはり雪蓮は戦の天才なのだと思ったわ」

孫策

「すたんど頼みだけどね……考えたのは私一人じゃないわよ」

周瑜

「ああ。孔明も知恵を絞っていたのだな」

朱里

「げったあちいむもですよ♪と言うよりすたんどなしではなし得ない策でした」

孫策

「冥琳が孔明ちゃんと話してる間、すたんどの扱い方を教わりつつ、打ち合わせていたのよ」

周瑜

「ほお」周瑜自身、知らなかった話を聞いて意外に驚いた表情を見せる。

仗助

「スタンド同士の会話なら、盗み聞きされる心配もねえしな」

れんげ

「沙羅ちんもスタンド使いなん。連絡用に黄蓋のおばちゃんと一緒に行ってもらったのん」

「……で、最後の仕上げに周瑜と黄蓋の仲違いを曹魏の間諜に見せつけたのよ」

桃香

「ええっ?!……私、芝居だって聞かされてたのに、全然信じられなかったんですけど……」

愛紗

「まさか本当に策だったとは……」

仗助

「ってオイ。俺って信用ねえ?」

雛里

「そんな事ありませんよぉ」

鈴々

「鈴々は信じてたのだ……ウソだけど」

仗助

「ウソかよ!まぁ良いけどよ……んで?これからどうするって話に戻ろうぜ」

周瑜

「ああ……黄蓋と華雄は今、曹魏の前線に配置されているらしい」

孫策

「あら……あのおチビちゃん、流石の器量ね。あからさまにおかしな降伏をした人間を、そのまま前線に配置するなんて」

周瑜

「そうしなければならん事情があるのさ」

朱里

「覇王としての評判、ですね」

周瑜

「そうだ。覇王であるが故に、曹操は常に天下へ大度を示さなければならん」

雛里

「それが曹操さんを覇王たらしめている無形の力……風評というやつですね」

桃香

「風評?」

朱里

「はい。風評があるからこそ、曹操さんの下に全て集まってくるんです」

雛里

「人、物、そして力が集まる……その全ては、曹操さんを形成している、覇王としての風評がもたらしているモノです」

愛紗

「私達が曹操と聞けば身構えてしまう……それも風評という事か」

「でしょうね……評判、評価……言い方は色々あると思うけど。実績を残しつつ評判を得れば、その人物の姿は、他者の目には大きく映って見えるわ」

仗助

「逆に実績を残していても評判の悪りぃ奴には人も物も近づいてこねえよな」

周瑜

「曹操の強力な武器でありながら、一番の弱点……それは覇王としての風評を、常に得なければならないという事だろう」

桃香

「そこを突いたって事?」

周瑜

「そうだ。そしてここから、我らの反撃が始まる」そこに丁度帰ってきた陸遜達。

孫策

「お帰り、穏。亞莎もお疲れ様」未だ不機嫌そうな呂蒙に陸遜は約束通り、今回の件を説明する。

陸遜

「……って事ですよ、亞莎ちゃん」最後に諭すように呂蒙に告げる。

呂蒙

「はっ。あの……まさか黄蓋様の降伏は(たばか)りだったとは……」

陸遜

「安心しましたか~?」

呂蒙

「はいっ!」

孫策

「じゃ、皆が安心したところで、そろそろ反撃と行きましょうか」

周瑜

「ああ……深夜、我らは呉の精鋭を率いて隠密行動をとり、曹魏の陣地に接近する。黄蓋殿が曹魏内部で火を放つと同時に、一斉に奇襲を掛けて曹操の本陣を強襲する手はずだ」

孫策

「狙うは曹操の頸一つ……良いわね。ワクワクしてくるわ」

「隠密行動ならあちしも得意よ」忍は恋の飼い犬、セキトに化ける。

「(外見はセキト)この姿なら、大抵の場所に潜り込めるわ。先行は任せて」驚きで声も出ない呉勢に対し、忍の変身にスッカリ慣れてしまっている蜀勢は何事もないかのように話を進める。

朱里

「では私達は呉勢の奇襲の後、更に奇襲を掛けましょう」

愛紗

「我らも隠密行動になるな」

雛里

「そうですね。しかし船戦に慣れてない私達が、必要以上に近づいては敵に察知さかれます。ある程度の距離は置かないと」

れんげ

「それならウチに任せるーん」

桃香

「え?そっか!れんげちゃんならみんなを透明に出来るよね」

卑弥呼

「犬が先行する部隊に、目に見えない奇襲か……相手にとっては不気味極まりないのう」

朱里

「そして時間差奇襲で、更に敵に混乱を招きます」

孫策

「うわぁ……悪どいわねぇ」

仗助

「そうは言ってもよ、今はなりふり構ってる時じゃねえだろ」

周瑜

「……確かにな」

「なるほど、了解した。すぐに編成に掛かろう」

紫苑

「私と桔梗の部隊は、小舟で編成しましょうか」

桔梗

「じゃな。この戦のキモは火だ。機動力の高い小舟を使えば、効率良く放火できるだろう」

仗助

「放火……まぁ放火か、確かに」

「あたし達はどうするよ?」

朱里

「翠さん達は、愛紗さん達の更に後方で待機しておいて下さい。第三波は呉勢と共に大軍団で一気に攻勢を仕掛けますから」

白蓮

「了解した……三段構えの闘いか」

蒲公英

「でもそれで勝てるのかなぁ~……」

周瑜

「勝てるかは分からんさ。ただ勝つ為の手は打ってある」

愛紗

「手?これ以上、どんな手を打っているんだ?」

周瑜

「我が軍には江賊出身の者がいてな……我らの攻撃が始まり次第、曹魏の軍船を水没させるべく工作を開始する」

白蓮

「四段構えか……みんな性格悪いなぁ~」

周瑜

「東方が言う通り、なりふり構っていられないのだよ……では、我らは半刻後に出る……後は頼む」

朱里

「了解です」

周瑜

「……雪蓮。貴女の力、貸して頂戴」

孫策

「了解。ふふっ……たっぷり暴れさせてもらうわ」ニヤッと笑う孫策。その笑みに凄烈な色が浮かぶ。

「作戦は決定ね……」

れんげ

「しのぶん。セキトに化けたままなん。それじゃカッコつかないん……」

仗助

「しゃーねぇー俺が。作戦は決定した……俺達は俺達の出来る事を真剣(ガチ)でやろうぜ……桃香、号令だ」

桃香

「うん……みんな、頑張ろうね!」

愛紗

「ふふっ……相変わらずな号令ですね」

「だが、それでこそ我らの盟主だな」

桃香

「そうそう……みんなが奮い立つような号令は、孫策さんにお任せだよ」

孫策

「お任せされましょう……劉備。私達の背中、貴女に預けるわよ」

桃香

「私達の背中も孫策さんにお預けします……頑張って曹操さんをやっつけちゃいましょう!」

孫策

「そうね……では出る!各員、迅速に出撃準備せよ!呂蒙もね」

呂蒙

「はいっ!」

仗助

「俺達も準備に掛かろうぜ。愛紗、星、雛里、忍の4人が先鋒。その次、紫苑、桔梗、蒲公英の3人。本隊には桃香、鈴々、翠、白蓮、卑弥呼、恋、音々、クソ猫!そんでもって───」

桃香

「仗助さんだね」

「さあ……この一戦に全てが掛かってるわ。みんな……頑張りましょ!」忍の言葉に蜀一同が鬨を上げる。

全員

「「「「おー!」」」」

 

 こちらは曹魏に降ったハズの黄蓋。何やら不敵な笑みを浮かべると

黄蓋

「さぁて……そろそろ頃合いか」

沙羅

「いよいよだな」

黄蓋

「うむ。手はず通り、火を放つ……乗ってきた船の半分にも火を掛けるぞ」

沙羅

「了解した」

黄蓋

「今宵、黒天に月は輝き、涼風は火を煽る……良い月夜じゃな」

沙羅

「ああ。この風があれば、火はより一層激しく燃えるだろうな」

黄蓋

「問題は風向きか。東南の風が吹いてくれん事にはどうしようもないが……」

 

朱里

「むむむー……えいっ!」朱里が祈るように、空へ向かい気合いを入れている。

「どうしたのよ突然?」

雛里

「この作戦のキモは火と共に風向きなんです。東南の風が吹いてくれない事には、火計の効果を最大限に発揮する事ができません。その為に朱里ちゃんは、天の神様にお祈りをして東南の風を吹かそうとしてるんです」

仗助

「へぇ~……」

朱里

「むむむー……えいっ!」その時……

朱里

「はわわっ!皆さん、東南の風が吹いちゃいました!」

れんげ

「朱里りんスゴいん!」

仗助

「ホント……スゲェな、これ。色んな意味で」

雛里

「やった……!東南の風、吹いてるよ、朱里ちゃん!」

朱里

「うん!お祈りが効いたんだね、きっと!」

「こんな事あるのね……」

 

 一方の黄蓋、沙羅組。

沙羅

「……!!黄蓋!風向きが変わった、東南の風が吹き始めたぞ!」

黄蓋

「うむ!天は我ら呉蜀に味方してくれたな!すぐに火を放つぞ!」

沙羅

「ああ!……我らの勝利を願ってな!」

黄蓋

「応よ……!では皆の衆、火を放て!」

兵士(モブ)

「はっ!」黄蓋隊も一斉に火矢を射つ。

 

 さて、曹操の陣では……

夏侯惇

「ん?風向きが変わったか……?」

夏侯淵

「ああ。東南の風が吹くようになったな」

夏侯惇

「しかし……船の上というのも落ち着かんな。それに寒い。暖を取りたいところだ」

夏侯淵

「我慢しろ。船上で火を使う訳にもいくまい?」

夏侯惇

「それはそうだが……腰の辺りが冷えるのは勘弁して欲しい」

夏侯淵

「まぁ女にとって、この寒さは堪えるな」

夏侯惇

「だろう?はぁ~……火が欲しい……温かくなりたぁい」

夏侯淵

「全く……我が儘な姉者だ。そこまで寒いなら部屋で休んでおけ。寝ずの番は私一人で充分だ」

夏侯惇

「んー……じゃあお言葉に甘えようかなぁ……ん?温かくなってきたか?」

夏侯淵

「ふむ?そのようだな?」

夏侯惇

「おおー。言ってみるモノだな。天はやはり華琳様を愛し、そして華琳様を愛している私の言葉を聞いてくれたんだな、きっと」

夏侯淵

「……華琳様一筋な姉者は、一年中幸せそうだな」

夏侯惇

「うむ!……って言うか、何だか暑くないか?」

夏侯淵

「そのようだ……熱帯夜になるのか?」

夏侯惇

「寒いのも敵わんが、暑いのもイヤだぞ私は」

夏侯淵

「イヤだぞと私に言われてもどうしようもないな」

夏侯惇

「むむむー……どうしよう。今日は甲板で寝ようかな……」

夏侯淵

「確かにその方が涼しく眠れるだろうが、蚊に食われるぞ」

夏侯惇

「むっ。蚊に食われた身体なんぞ、華琳様見せたくはないなぁ……」

夏侯淵

「なら大人しく船室で寝ておけ」

夏侯惇

「むー……悩む、悩むぞ……」

夏侯淵

「はぁ……また暑くなった……?」

夏侯惇

「うはぁ……この暑さはきついなぁ」

夏侯淵

「違うぞ姉者!これは───!」

兵士(モブ)

「申し上げます!前線に配置された黄蓋の部隊より火が……火がぁー!」

夏侯惇・夏侯淵

「「なに……っ!」」どうやら、黄蓋が作戦を成功させたようだ。

荀彧

「華琳様!緊急事態が───!」

曹操

「分かっている!すぐに消火作業を開始しろ!」

荀彧

「やってます!しかし火の廻りがあまりにも早く、消火作業が追い付きません!」

曹操

「ちっ……本陣は前線から距離を取って後退!中軍は引き続き消火作業に従事せよ!」

荀彧

「御意!」

曹操

「この混乱……敵がくるぞ!各員、警戒を厳にしておけ!」予想外の事態にパニクっている曹操軍。次回、いよいよ蜀呉の反撃が始まる……。

 

 

 

 

 




次回は赤壁の闘い、ファイナル?

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