ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
沖縄から帰ってきて数ヶ月後。本州はすっかり寒くなり、学校は全国的に冬休みを迎えていた。
冬休みになった途端、再びれんげの住む村に訪れた仗助はまたしても村に逗留し始めた。今回は忍と一緒ではない。
れんげ
「おっちゃん……1人で何しに来たん?」
仗助
「何だって良いだろうが。忍と違って俺は地元に居ても特にすることぁねえんだよ」実際忍はこの冬休み、バレエのレッスンと『洋食のねこや』でのバイトでスケジュールが埋まっている。
れんげ
「そうなんなー。ウチこれからなっつん家に遊びに行くから、バイバイなん」
仗助
「オウ!……って待て。あそこの隣って、このみさん家だったよな?」
れんげ
「それがどうかしたん?」
仗助
「一緒に行くぞ。異論は認めねえからな」
れんげ
「仕方ないんなー。それじゃウチが連れてってあげるん」これじゃどっちが年上か分からないわ。と、忍が居たなら笑いながらそう言うだろう。
ソワソワしながら辺りを見渡す仗助。れんげは一直線に越谷家に駆け寄る。
れんげ
「なっつん、遊びに来たーん」玄関で声をかけるれんげに返事はない。そこに誰かが隣の家の垣根から手招きしているのに気づく2人。
??
「おーい」
仗助
(このみさん?家にいたのか……こりゃラッキーかもしれねえな♪)嬉しさが込み上げる仗助だったが
れんげ
「手が喋ってるん……こんな妖怪がいたとは!」
仗助
「ちょっと待てやコラ」相変わらずなれんげのボケっぷりに思わずツッコんでしまう。
このみ
「イヤイヤ違うから。私だから、このみだよー。なっちゃん家今、デパートに行って誰もいないよぉ」
れんげ
「そうなんなー。せっかく遊びに来たんに……おっちゃんはこのみ姉に用があるみたいなん」
このみ
「じゃあ3人で遊ぶ?」このみが手だけ見せたままそう提案すると、
れんげ
「良いのん?遊ぶん遊ぶん。じゃ今からそっち行くん」
仗助る
(2人っきりになりてえ気もするが、こいつも一緒の方が余計な気を使わせないで済むか……ヨシ!)れんげの後についていき、富士宮家の庭に廻る仗助。けどそこには誰も居ない。
れんげ
「今度はこのみ姉が居ないん……」
仗助
「マジか?……どこ行ったんだ。ん?」庭に落ちていたある物に目をやる2人。
れんげ
「こ、このみ姉の脱け殻?」
仗助
「んなワケねえだろ。どう見てもただのビニール手袋じゃねえか」その時、ワッという声と共に2人は背中を押された。振り返るとこのみがいる。
このみ
「ゴメンゴメン。スコップ家に置いてきたんだ。2人ともどうしたの?」
仗助
「あ、あのですね……」いつも肝心なところで口ごもる、意外にヘタレな仗助である。
れんげ
「ここに皮が……」
仗助
「だから違ぇーよ」
このみ
「ああそれ、庭の手入れに使ってたの」
れんげ
「やっぱり手袋だったんなー。ウチ、このみ姉が脱皮したかと思っちゃったん」
仗助
「イヤ何でだよ?」
れんげ
「そうなんなー。人が脱皮するワケないん。そんなのしたら妖怪なん」
このみ
「妖怪って脱皮するの?」
れんげ
「妖怪なら脱皮するのもいるかもしれないん。でもこのみ姉妖怪じゃないから脱皮しないんなー」ナゼか妖怪について熱く語るれんげ。
仗助
「つーか……俺はお前ぇの話を聞いて脱皮どころか脱力してんだが?」
れんげ
「おっちゃんは髪の毛だけ脱皮して、ハゲちゃえば良いん」
仗助
「喧嘩売ってんのか手前ぇ?」
このみ
「(仲良いなあ……)そりゃあ脱皮なんてしないよ……妖怪ではあるけど」さりげなくトンデモないことを言い出すこのみ。仗助は吹き出しそうに、れんげはキョトンとなる。
仗助
「……プッ」
れんげ
「……え?」
このみ
「あれ、言ってなかったっけ?私妖怪だよ♪」れんげは本気で驚いていた。
れんげ
「なぬぅーっ!初耳ですが!?」
このみ
「へぇー。みんな知ってると思ってたけど?」こうなると仗助は笑いを堪えるのも一苦労だった。
仗助
(アッヒャッヒャ……れんげの奴、マジで信じてやがんの……苦しい、笑い堪えすぎて腹痛ぇー)
れんげ
「ホ、ホントに妖怪なのん!?もしそうなら証拠見せて欲しいん!」
このみ
「証拠?う~ん……じゃあ私の指見ててね」
れんげ
「分かったん。見てるん!」このみはれんげに見えないように片方の親指を曲げて、もう一方の親指の先端だけ見えるように両手を組む。
このみ
「はい。指とれちゃったー♪」正面から、あたかも指が抜けたように見せる。いわゆる子供だましのマジックだが、本気で信じたれんげは呆気にとられる。それを見て笑いを必死に堪える仗助。
れんげ
「このみ姉の親指取れちゃったん!びょ、病院!お医者さんを呼んで下さいん!ハッ!おっちゃん!クレイジー・ダイヤモンドでこのみ姉を直して欲しいん!」
このみ
「ありがとう。でも大丈夫だよ」
れんげ
「何を言ってるん!?大丈夫で済めばおっちゃんは要らな……」
仗助
「いちいち失礼なヤツだな、お前ぇは」仗助とれんげが言い合っているとこのみは手を開いて2人に見せる。
このみ
「ホラ、妖怪だからすぐに治っちゃった♪」指はちゃんと5本ある。勿論元々指が取れていたワケではない。
れんげ
「……まさかこのみ姉は……本当に妖怪『医者いやず』だったん?」
仗助
「聞いたことねえ妖怪だな、オイ」
このみ
「あーあ。バレちゃったかぁ」
れんげ
「スゴいんスゴいん!ウチ初めて妖怪見たのん!ホントに居たのんなー!」
このみ
(私からすれば妖怪よりスタンド使いの方がよっぽどスゴいと思うけど……でも面白~い♪)相変わらず笑いを堪える仗助を脇にれんげは目を輝かしてこのみに問う。
れんげ
「ウチも……ウチもサンタさんみたいな妖怪になれますか!?」
このみ
「れんげちゃんの妖怪の範疇、結構広いねー」
仗助
「てかサンタって妖怪じゃねえだろ?どっちかつーと神や妖精とかじゃね?」
このみ
「でも妖怪になるのは難しいよ。国家試験があるから勉強が出来ないと」
仗助
「そうだぞ。億泰の頭じゃとてもなれないぐらい試験は厳しいからな」これが忍だったらスグに突っ込むだろうが、仗助はこのみに話を合わせてれんげをおちょくりだした。
れんげ
「勉強すればなれるん!?このみ姉、勉強教えてほしいん!ウチ頑張るん!」
このみ
「良いよー。2人とも私の部屋来る?」まさか自分も部屋へ招待されるとは思わなかった仗助は心の中でガッツポーズを決め、れんげを讃えるのだった。
仗助
(ヨッシャー!れんげ、今日だけは誉めてやる!)鼻歌の一つでも歌いたい気持ちを抑え、富士宮家に足を踏み入れる仗助。一方、意気揚々と二階にあるこのみの部屋へ向かうれんげ。
このみ
「走ると危ないよー」そして3人でこのみの部屋にあるテーブルにつく。このみは学校で使っている古文の教科書を開いたが……
れんげ
「こ、これは呪文……!?ウチいきなりとんでもない物を見てしまったん!」
このみ
「あー。れんげちゃんにはその呪文書はまだ早いかな?」
仗助
「これは……!未だ全ては解読されてないっていう、伝説の呪文書じゃないっスか!?」いい年をして、いたいけな子供をからかい続ける仗助とこのみだった。
5分ほどれんげを弄り倒してこのみが1つ提案する。
このみ
「れんげちゃんはかけ算とか練習したらどう?」
れんげ
「かけ算?それ聞いたことあるん。2年生でやるヤツなん」
仗助
「1年生でかけ算出来たら大したモンだぜ」
れんげ
「かけ算ってどうやるん?」
このみ
「九九ってのを覚えるんだよ。23が6、24が8みたいに」
れんげ
「何か分かりにくいん……」
仗助
「う~ん……2×3は2を3回足しても出来っけど計算に時間かかるしよ」
れんげ
「足せば良いのん?じゃ4×8は32なん?」
このみ
「え?そうだけど……もしかして足し算で計算したの?」
れんげ
「ん」
このみ
「……6×6!」
れんげ
「36」
このみ
「9×9!」
れんげ
「81」
このみ
「正解!」
仗助
「ちょっ、待て。まさかとは思うが……11×11!」
れんげ
「121」
このみ
「九九の先まで計算出来るの!?」
れんげ
「足したらかけ算出来ちゃったん!こんな裏技あったん!?」
仗助
「イヤ、別に裏技じゃねえけどよ……」
れんげ
「やっぱりこのみ姉妖怪の試験に合格しただけあって、教えるのものスゴく上手いんなー。姉々より先生に向いてるかもしれないん」
このみ
「イヤイヤ、れんげちゃんがスゴいだけだよ。そういえばスタンドってどうしたら出せるの?」どさくさ紛れに聞いてくるこのみに固まる仗助とれんげ。
仗助
「スタンドを出せる条件は人によって違うんすよ。まず持って生まれた才能。それか血筋。エンヤとかいう婆さんが特殊な矢と弓でムリヤリ引き出すってのもあったんすけど、これは俺も詳しくは知らないっす」仗助後々にこのみを巻き込みたくないので、簡単な説明だけをして話を打ち切る。
れんげ
「今も出してるん」れんげの背中にはタヌキの姿をしたスタンドが現れている。勿論このみには見えないが。
仗助
「オイ。C&Cファクトリーの見た目変わってね?」
れんげ
「そうなん。段々『具』に似てきてるん」
このみ
「ウワア……私、置いてきぼりじゃん」そうこうしている内に、
このみ
「なっちゃん達帰ってきたみたい」3人はこのみの家を後にして、小鞠と夏海を出迎える。
れんげ
「なっつーん!こまちゃん!」
夏海
「アレ?れんちょん遊びにきてたの?」
れんげ
「きてたん!」
仗助
「誰も居ねえから、このみさんトコで世話になってたんだ」
れんげ
「それより聞いてほしいん。このみ姉スゴいん!指取れてもすぐ直ったん、妖怪医者いらずなのん!」
夏海
「は?急に何言ってんの?」何の前触れもなく、意味不明なことを語りだしたれんげを、へっ?と言いたげな顔で見つめる夏海。
このみ
「ああ。れんげちゃんの反応が面白くて。ホラ昔やって見せたでしょ」さっきまでの話をこのみが越谷姉妹に説明しつつ、親指のマジックをやってみせる。
夏海
「あーそれか。こうやるヤツでしょ」夏海が再現する。
夏海
「はい、指取れましたー」
小鞠
「あー私もそれ知ってる」小鞠も続いて同じマジックを見せる。
夏海
「そして『はい、元通りー』って……れんちょん?」次々指が取れたりくっついたりする様子を目の当たりにして更に顔面蒼白になるれんげだった。
れんげ
「この村、妖怪しかいないん……」
原作ではここで終わってますが、アニメではどうにかしてれんげの誤解を解いたようです