ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
夏休みの大会で光ちゃんとあちしはインターハイ行きのチケットを手にした、この先は秋に向かって精進あるのみね。
「オウ忍君、インターハイ出場だってなあ。当日は観に行くからな」
「大したモンだな、俺なんか高校じゃ何もしなかったが」バイト先のねこやでもおじちゃん達が喜んでくれた。
「店主よ、その何たらハイとはスゴいのかの?」デ○ズ○ージジイがすっとんきょうな質問をしていた、
~その頃、異世界では…~
姿形はそのままで魔族として異世界に転生したイワンコフはかつて『獅子王』ライオネルの右腕として放蕩の限りを尽くしていた。戦いに明け暮れては大酒を呑み悪事と呼ばれる行為は全てやった、そしてライオネルと共に剣聖アレクサンドルに破れて奴隷になり牢に放り込まれた。
一年後、かつてのボスが自らを解放する為に必要な金貨1万枚を稼いだと知ったイワンコフはこのむさ苦しい牢から出ていくだろうとばかり思っていた。ところがライオネルは出ていくどころか件の場所を私室として買い取ったという。
「ナゼ?ボス、どうしてここから出ていかなッシブル?」
「お前ぇは相変わらずけったいな話し方するよな。そりゃいいとして、俺ぁここが気に入ったんだ。イヤ正確には違うな、お前ぇがこっから出られる金稼いだら教えてやらあ」やがてイワンコフもライオネル同様コロシアムの試合に勝ち続け、賞金金貨七千枚を得て自由の身になる。
翌朝に僅かばかりの手荷物をまとめたイワンコフはライオネルが今は私室として利用する牢を訪ねる、あわよくば彼を連れて一緒に出ていくつもりだった。
「ボス。ヴァターシも自由の身になッシブルよ、さあこんなトコさっさとでましょう!」ライオネルは起き抜けらしく目を擦りながら
「ん?ああ、約束だったな。ちょうど今日はドヨウの日だしな」ドヨウの日?知らない言葉を呟くライオネルを訝しく感じたが、誰よりも長い付き合いで得たその信頼はこの程度で揺らぎはしない。
「何だ?お前ぇ気付かなかったか。ホラよ、この部屋に扉があるだろ」ライオネルが指差す先には確かに黒い扉がある、ドアノブに手をかけた彼の後をついていくと奥はイワンコフが知らない世界が広がっていた。
「ボ、ボス?ここは一体何?」
「まあ座ろうぜ、腹も減った。オイ兄ちゃん!カツ丼大盛で頼む」
「ハイ、カツ丼一丁入りました」ライオネルの言葉を受けた、どことなく己と似た匂いのする青年が声をあげる、ポカンとするイワンコフにライオネルはようやく説明し始めた。
「ここは異世界食堂だ、あの部屋みてぇにこの店に繋がる扉が世界のあちこちにある、それも使えるのは7日に一回きりだ。まあそれよりお前ぇも好きなモン頼みな」つまり我がボスはこの店にくる為にあの牢にい続けてるのね、とイワンコフは得心した。
「ハーイ、そこのウェイトレス・ガール!」イワンコフは女給仕を呼ぶ。
「ここのお薦めは何かしら?教えてほッシブル」女給仕はイワンコフの容貌に若干ビビりはしたが
「それならハヤシライスはどうですか?美味しいのに特別営業の日に頼むお客さんいないんですよ」
「じゃそれを頼むわ」
「ハーイ、ハヤシライス一丁入りました」
「はいよ」厨房がある場所から声が返ってくる。
「お待たせしました、ハヤシライスです」持ってきたのは先程の青年給仕、一礼すると奥に下がっていく。
見た目には茶色い液体の中に肉とオラニエが煮込まれてライスの上にかけられたシンプルな料理、まずはスプーンをとって液体の方から口に運ぶ。
「なるほど。酸味があってこってりもしててハマれば癖になりそうな味ね」その様子をカツドンとやらをかっ込みながら窺っていたライオネルが助言をする。
「それだけで食ってもホントの良さは分かんねぇぞ、ライスと一緒に食ってみろ」言われた通り液体部分とライスを同量の割合で混ぜて食べると仄かに甘いライスがこの液体の酸味とこってりさを中和しながらも決して消す事なく絶妙な味のバランスを完成させた。
「どうやら気に入ったみたいだな」ほくそ笑むライオネル、それはこの異世界食堂におけるイワンコフのあだ名が決まる瞬間でもあった。
~閉店後の忍~
夕食時のピークが過ぎて茜ちゃんは一足先にバイトを上がる、一方あちしは閉店まで残って後片付けを手伝ってから終了となる。土曜日の流れは大体こんなモンよ。
ところで今日ご新規できた顔のやたらデカいお客さん、どこか懐かしさを感じたんだけど…多分気のせいよね。アラ、誰かが待ち伏せしているわ。
「俺様はバイト番長!」
「宅配便のお姉さんでしょ?」こんな形で再会するとは予想外ね、それにしても下手な変装ね。そんなのすぐバレるわよ、変装(というより変身だけど)のプロフェッショナルたるあちしの目は誤魔化せないわよン。
「お、俺様は宅配便なんて知らねぇ、さあ勝負だ!」バイト番長との戦い、かと思いきや。
ヨーヨーを得物としてあちしに投げつけてくるけど全く当たらない、この人やる気あるのかしら?
「おっといけねぇ、今から深夜のバイトだ、アバヨ少年!」な、何だったの一体?
この回こそ何だったの?