ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです   作:越後屋大輔

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匠が転生したのはなんと…


第53話アンジェリークの世界

 バレンタイン翌日のHR、教室にきた華澄先生は神妙な面持ちであちしらにこう告げたわ。

 「皆さん、今日は悲しいお知らせがあります。クラスメートの坂城匠君が突然の事故で亡くなりました」流石に教室全体の空気が重苦しくなる、あちこちから女子の啜り泣く声もするわね。

 「詳しい話は私も聞かされていませんが、現在警察が捜査中との事です。どうかご冥福をお祈りして下さい」う~ん、大してショックじゃないっつーか実感がわかないわね。事故だっていうけど自動車にでも轢かれたのかしら?

 

 日曜日、匠の葬式が行われた。あちしと純は受け付けをお手伝いしつつ弔問客に挨拶する。殆どが親戚関係みたいね。後はひびきの生が結構な大人数で訪れていた、最後のお別れを済ませ出棺されるとあちしの胸に何かこみ上げてくる。あんなヤツでも死んだとなると悲しいモンなのね。

 

 その次の土曜日、いつものねこやでバイト中。ビーフシチューのお姉さんがあちしと茜ちゃんの顔を交互に見つめると

 「先だって死んだお主らの知り合いじゃがな、こちらでも妾達の方でもない別の世界に生まれ変わっておる。会う事は敵わんがな」そうなの?あいつとんだ死に損ないね。つーかあちしの涙返しなさいよ!

 「フザけんな!あの腐れチビ!」怒り心頭のあちしは茜ちゃんに宥められる。

 「そんな怒らなくても。それに別の世界にいるなんてボク達にとっては死んだのと変わらないよ」そうかしら?あちしと茜ちゃんとでは死に対する価値観が違うのね。

 「まあ俺は直接の知り合いじゃねぇし、哀れみはするが正直どうでもいいな」おじちゃんはボソッと呟いて、横に立っていた若店主はひきつった笑顔を見せる。

 

 三日もしたら誰もが匠なんて最初からいなかったと言わんばかりに通常運転に戻り始める、けどこんな日々ももうすぐ終わりがやって来る。卒業式を明後日に控えていた。

 

 ~そして死んだ匠は…~

 リモージュ家の夫婦は悲しみにうちひしがれていた、先程この世界の宇宙の女王陛下の後継者候補に選ばれた一人娘のアンジェリークが急に倒れて意識不明の状態で病院に担ぎ込まれたからだ。

 「それで先生、娘は助かるのですか?」母は医師に尋ねるが

 「何とも言えませんな、一通り検査はしましたが体には異常ありません。問題があるならば魂というか精神的なモノでしょうな、そうなると私共の力ではどうにも…」泣き崩れる彼女を夫、アンジェリークの父が支えて宥める。そして夫婦は医師と相談の上、娘の身体を引き取って自宅で世話をする事に決めた。

 

 その晩、母の夢の中に不思議な人物が現れた。髪を奇妙にカールしていて額には異様に大きなほくろがあり内側に折り込むような形で足を組みロータスの花に腰かけている、しかも花は潰れておらず(くだん)の人物を支えながら咲き誇っていた。

 「私は釈迦如来。あなた方の知らぬ異界の神に近き者」

 「え?か、神様?」思わず平伏するアンジェリークの母。

 「正確には神ではなく仏じゃが…まあ同一と考えてよいでしょう」この世界に仏教は概念すらないので細かい説明は省略するお釈迦様。

 「して、本題ですが娘ごが眠ったまま意識がないのですね?おそらく魔性の者に魂だけ奪われたのでしょう。取り戻すのは不可能です」

 「では、娘はずっとあのままなのでございましょうか?」涙を溢れさせる母にお釈迦様は首を横に振る。

 「いいえ、新たな魂を吹き込めば意識が戻ります。しかし、目覚めた心は貴女の知る娘ごとは全く違う別人です、それでも良ければ私が見守る世界にちょうどいいモノがあります」

 「体だけでも私の娘ならそれでも構いません。神様、どうか目覚めさせて下さい!」

 「では明日の朝、娘ごの寝室に行きなさい。きっと目覚めているでしょう」

 翌日、彼女は夫を起こすと共に娘の寝室に向かった。

 「そのシャ何とかいう神様なぞ聞いた事もないぞ、只の夢だったんじゃないか?それにどっちにしろ心は別人なんだろ?」訝しげな夫に

 「あなたはアンジェリークが大事じゃないんですか?例え中身が他人でもあの娘が元気な姿でいてくれたらそれでいいではありませんか!」妻に気圧されて仕方なしに娘の寝室のドアを開けた。

 

 「えっと…これ、女の子の体だよな」坂城匠、イヤかつて坂城匠だった彼女(・・)は自分の新たな体をなめ回すかの如く確認する、それから顔や手足等に触れながら改めて実感した。

 「何で俺が女の子に?ン?でも待てよ」匠ことアンジェリーク(以降はアンジェで統一)はさっきまで着ていた寝間着を脱ぐと部屋にあった姿見で己を眺める。

 「結構可愛い顔じゃん、それに胸も割かし…グフフフ」何を思ったのか下卑た笑みを浮かべた。

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