ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです   作:越後屋大輔

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兄想いの妹

 光の通う体育大学では文化祭が近づいていた。そんなある日曜日、忍がバイトするカフェに陸上部の後輩を連れてきた光。

 「で、先輩の彼氏はどこなんですか?」何人かいる男性店員を見かけた後輩に尋ねられる、そこにちょうど忍が注文された紅茶を運んできた。

 「ではごゆっくり」光達の席を去る忍、後輩はその背中を見つめて

 「やっぱり先輩の彼氏だけあってイケメンですね」赤い顔でポ~ッと見ている後輩に

 「あげないよ、私の…だから」その一言に冷や汗を垂らす後輩。

 「な、何言ってんですか先輩…そんな事考えてませんからっ、ア、アハハ。ヤバい、この人スッゲぇやきもち焼きだ…(焦)」言い知れぬ恐怖に背筋が凍り、紅茶の味もわからなくなった。

 

 ところ変わってここはある企業の受付、一人の女性が取り引きに他社から訪れたサラリーマンに対応している。

 「では三階にて担当者がお待ちしております、そちらのエレベーターをご利用下さいませ」

 「ありがとう。ところで君可愛いね、仕事終わったらどっか行かない?」

 「あ~すみません、当社はナンパお断りですんで」受付嬢を口説こうとした他社の人間をたまたま通りがかったここの社員が制する。

 「あ!ど、どうも失礼しました(苦笑)」別段強い口調ではなくむしろ遠慮がちな態度だったがその社員は鍛え上げられた筋肉と190,近い長身の持ち主である、取り引き相手のサラリーマンはビビりながらエレベーターの方へ逃げるように進んでいった。

 

 それから退社時間を過ぎた頃、例の大男とさっきの受付嬢が足並みを揃えて日の落ちた往来を歩いていた。

 「それでさ、俺が通らなかったらO.K.の返事とかしてた?」

 「そんな訳ないでしょ、ちゃんと『ムリです』って断ったよ」読者ならば既にお気づきであろう、高坂賢と佐倉楓子である。高校時代から恋人同士であるこの二人はダメ元で同じ会社の就職試験を受けたら揃って合格して今は一緒に通勤、退勤している毎日を送っている。

 「それより大事な話ってナーニ?昨日電話で言ってたよね」

 「あ、うん。あのさ…今度の休日、不動産屋に行かないか?」

 「えっ?!それって…」

 「結婚を前提にさ、一緒に暮らそうぜ」

 「もちろんO.K.!」賢に飛び上がって抱きつく楓子。

 「うおっ!アブねっ」勢い余って転びそうになるのを慌てて抱く止める賢、その瞬間楓子はハッとする。

 「私、重くない?」

 「重かねぇよ、今でも鍛えてる」

 「それ、どういう意味?」賢はプゥと頬を膨らませる楓子の頭を優しく撫でる。

 「あはは、冗談冗談。それに俺、どっちにしろ楓子が好きだ」

 「もう、知らないモン!」照れ隠しなのか賢にポコポコと拳を当てる楓子。顔は勿論、耳まで赤く染まっている。交際は三年目にして順調のようだ、東から昇った月も祝福しているかにみえた。

 

 「ただいまぁ」ある春の早乙女家での一幕、三流(さんながれ)大学から自宅へ戻ってきた早乙女好雄は自室にあるベッドに寝転ぶと

 「あーっ、大学行っても彼女はできないし何にも面白くねぇな」ボヤき始めた。

 「お兄ちゃん、進歩がないね」一つ年下の妹、優美が顔を覗き込む。

 「お前にゃ関係ないだろ」不貞腐れて答える好雄。

 「赤井さんとはどうなったの?高校の時はいい感じだったじゃん」

 「進路が違ったからな、最近は全然会ってねぇよ。まあ自然消滅だな」他校生の赤井ほむらとは高校時代、つるんでいたがお互い大学と家業の手伝いと別々の道に進んでからは会う回数も減っていった。

 「向こうはそう思ってないかも知れないよ、待ってるだけじゃダメ。自分から会いに行かなくちゃ」優美の提案ですぐ後の休日、赤井の家が経営する『赤井果樹園』にやってきた二人。毎年この時期になると赤井果樹園には多くのお客がイチゴ狩りに訪れる、早乙女兄妹もそれに便乗したのだ。

 「オ、オウ好雄、久し振りだな」どことなく緊張した様子の赤井に迎えられる。

 「そ、そうだな。元気だったか?」好雄もぎこちなくしていると優美に尻を蹴り飛ばされた。

 「今日はよろしくお願いします」経営者である赤井の祖父、燐吾に挨拶する優美。

 「それじゃ、後は頑張ってお兄ちゃん」そう言うと優美は時間差で来ていた女友達の元へ去っていく、赤井と二人っきりでその場に残されてしまった好雄。

 「さ、最近はどうしてる?」とりあえず何か話そうとするがしどろもどろになってしまう、赤井の方も

 「べ、別に毎日果物の世話ばかりで代わり映えしねぇかなあ」

 「アハハハ…」

 「イヒヒヒ…」乾いた笑い声が空しく響く、こちらの二人はどうも前途多難かと思いきや

 「これが新しい品種でさ、結構旨いんだぜ」

 「あの高い場所のはまだ収穫できないのか?」

 「あれか。ちょっと待ってろよ、今取ってやる」トングを届かせようと手を伸ばし梯子の上でジャンプする赤井。

 「オイ!危ないって!」案の定落下する赤井、好雄を尻に敷く形で着地した。

 「わ、悪りぃ」

 「イヤ、大丈夫だ(意外に、柔らかかった❤)」

 「どうやら上手くいきそうだね、これで優美も心置きなく彼氏を作れそう」ほくそ笑む優美だったが

 「お兄さんとはいえ人より自分の心配しなくっちゃね」女友達が囁き会う。早乙女優美、彼氏いない歴=年齢の彼女の幸せはまだ先のようである。

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