ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです   作:越後屋大輔

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私の別作「パタフィニット・ストラトス」とのクロスオーバーです。


高校生今昔物語

 藤崎忍は久し振りに高校生の頃、バイトしていたねこやへやってきた。

 「随分久し振りね。おじちゃんも亡くなって、茜ちゃんも結婚して辞めちゃったし何だか緊張するわ」そう呟いて店内に入る、心なしか扉のカウベルの音が違う気がした。

 「いらっしゃい」店内は昔と全く同じだし店主も…当時は若店主だったが今は年齢もそれなりに重ねて貫禄付いていた、やはり時が経った事実は否めない。

 

 「いらっしゃい、オウ久し振り」店主がごく自然に出迎える、昼食のピークが過ぎたせいもありお客も今は誰もいない。

 「お久し振りです。すみません、妻と娘とこの店で待ち合わせてまして」店主に挨拶をすると、ウェートレスから給されたお冷やで喉を潤す。

 「構わんよ。ところで忍君、カフェの経営は上手くいっているのかい?」店主の問いに対して

 「ボチボチですね」そこに一人のお客がやってきた、15,6才くらいだろう、中々のイケメンである。忍を見ると身構えるが

 「あの若者はちょっとした訳があって土曜日の件を知ってるんだ」忍にこちらの世界の国家であるマリネラにもナゼか扉が現れた事を説明する店主。

 「へえ、あなた海外の学校に通っているの?」別に隠す必要もないので普段通りの口調で若者に話しかける、相手は若干引き気味だったがキチンとした態度で対応する。

 「あちしは藤崎忍、ここの元従業員よ。今は違う街でカフェを経営()ってるわ」

 「PS学園の織斑一夏です」

 「アラ、PS学園って確か…」

 「ご存じなんですか?」

 「ええ。あちしの知ってる子が通ってるハズだけど」そんな話を交わしてる時に入り口から激しいブレーキ音が店内に響く。

 「こりゃ事故ったな」呟いた店主と一緒に店を出て様子を見に行く忍と一夏、そこには奇妙な光景が広がっていた。

 

 違法な借金の取り立てを行っていたのが隣の県警にバレて自動車で逃げる途中の青井幹人は赤信号にも関わらずアクセルを目一杯踏んで空港を目指していた、横断歩道を渡ってきた子供に気づき反射的にブレーキを踏むが間に合わそうにない。

 「構やしねえ、轢いて逃げるか」常日頃から人命を軽んじる青井は再びアクセルに足をかけた、母親と思わしき女性が耳をつんざく程の金切り声を上げる。次の瞬間、急に自動車が宙に浮く。

 「な、なんだ?!」

 「あらよっと」さっきの子供を守るように片腕に抱えた高校生くらいの少年がもう一方の腕でバンパーを掴んでフロントを下にした形で青井の自動車を持ち上げていた。先ほど金切り声を上げた女性は腰が抜けたのかその場にへたり込んでしまった、高校生は子供を母親に引き渡すと

 「光さん、お久し振りです」我に返った女性は

 「えっ、ひょっとして…幸太君?!」一夏と忍を除く全員がその光景に開いた口が塞がらない。

 

 それからしばらくして警察がきて少年に簡単な事情聴取をすると、青井を連行していった。彼は野次馬の中に一夏を見つけると近づいて会話し出す。

 「一夏、早かったな」

 「春日部の用事は済んだのか、幸太?」

 「おう、伯父貴んトコへ顔出してきた」どうも二人は友達のようだ。

 「話にゃ聞いていたが神君ってホントに馬鹿力だな」最早店主には苦笑いしかできない。

 「お兄ちゃん、アリガトー」助けられた子供はお礼を述べると忍に駆け寄る。

 「パパァ!」今度は一夏の口が塞がらなくなった。

 「一夏?お前何つー顔してんだ?忍さん、ご無沙汰してます」

 「アラヤダ、何でオネェに子供がいるのかって言いたいの?幸太君も元気そうで何よりだわ」嫌みなく笑う忍は我が子を抱き上げると愛する妻の手をとり立ち上がらせる。

 「とりあえず店に入りな」店主は全員をねこやに招いた。

 「そうだわ、店主にもまだ会わせた事なかったわね。妻の光と娘の蛍よ」かつての雇い主と自分の妻子を引き合わせる忍。

 「改めまして、幸太の友達でPS学園の織斑一夏です」自己紹介が済むと盛大に腹の虫が鳴る、勿論幸太のモノだ。店主は苦笑しながら厨房に向かう、一夏や忍達はともかく幸太は炊飯器一杯平らげてしまうので新たに炊かなくてはならない。

 「お待たせしました。カツ丼に照り焼き、ローストビーフの定食です」見渡す限り肉、肉、肉である。

 「こんなに誰が食べるの?」給仕したウェートレスはさっき店主に突っ込んだが

 「イヤ、こいつ毎回このぐらい食います」一夏からフォロー?が入った、忍も笑いを堪えながら

 「相変わらず、というより前以上に食べるわね」そして本当に完食する幸太。

 「毎回思うけどよくお腹壊さないよね、ある意味感心しちゃうよ」光も呆れ顔でため息を吐く、ウェートレスは本日三度目の衝撃に全身が固まった。

 

 「今日はびっくりする事ばっかりの一日だったわね」蛍を挟み家族三人手を繋いで家路をいく忍一家。

 「ウン、でも楽しかったかも」屈託なく笑う妻に忍も笑顔を向ける。

 「私、大きくなったら幸太お兄ちゃんのお嫁さんになるー」両親の腕にぶら下がりながらはしゃぐ蛍をふと見つめる忍。

 「どうしたの?」光の問いに

 「蛍ちゃんは嫁にやらないわよ」ぶっきらぼうに吐き捨てる忍にこういうところは娘を持つ普通の父親なんだなと光は吹き出した。

 

 

 

 

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