ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
その日は平日のランチタイム、女子高生らしき四人組がカフェ『Sunnylight』にやってきていた。
「いやあ、今日は絶好のカフェ日和ですなぁ」
「カフェで食事するのに天候は関係ないでしょ」
「私達だけ制服なのって恥ずかしいんですけど」
「仕方ないわよ、今日は学校の課外授業でここに来たんだもの」きらめき高校やひびきの高校に課外授業はないからこの近辺の学生ではなさそうだ、そもそも赤を基調としたその制服には見覚えがない。
「いらっしゃいませ」メニューを見ながら談笑する四人組にお冷やを持っていく店長の忍。
「ではご注文が決まりましたらお呼び下さい」そう伝えて下がろうとしたら
「あ、もう決まってます」眼鏡をかけた細身の女子が忍を呼び止める。
「パーティーサイズのピザとケーキセットを四つ、私はコーヒーで。ヒロは?」
「じゃ、私はミルクティーでお願いします」おそらく天パのウェーブヘアの女子が続く。
「私はカフェオレで。宮ちゃんは飲み物どうする?」身長150cm.もなさそうな小柄な女子が隣に座っているもう一人のロングヘアーに話を振ると
「ん~、カレー」
(おのれは石○ゃ○か)心の中で突っ込む忍、連れの三人もシラケた目をその女子に向ける。
「ウソ嘘、私もカフェオレで。カレーも食べたいけどお金がないし」
「それでは少々お待ち下さい」次の接客を朝日奈にバトンタッチしてキッチンで調理に回った、高校から大学一年まで『洋食のねこや』のバイトで培ったスキルが役に立っている。
一方さっきの四人組は各自スケッチブックを取り出して自分達が描いた絵をお互いに見比べている。
「ヒロさん上手~」
「イヤイヤ、ゆのっちのも中々だよ」
「沙英のも見せて」
「宮子…それテーマ違ってない?」賑やかだが騒がしくはない程度に盛り上がっている、それを後ろから覗き込む人がいた。
「Great!基礎はできてるわ、後はOriginalityの追及ね。他の作品も見せてもらえる?」夕子が何も乗せていないトレイをその頭上に炸裂させる。
「何やってんのよ、彩子」
「Hi夕子、Long time no see」驚いたのは四人組だった。
「彩子って…あのアーティストのA-yaさんですか?」
「へっ?え~っ!」
「嘘っ?こんな身近に?」
「わ、私大ファンなんです!あ、握手して下さいますか?」興奮し通しである。
「何、彩子って有名人?」
「美術界の新カリスマです、私達美術を学ぶ者には雲の上の方なんです!」
「仕事しなさいよ夕子、後彩ちゃんは何しに来たのよ?」後から忍もきた。
「今度、自分の個展を開けるようになったのよ。今日はその挨拶回りって訳」彩子は抱えていたリーフレットの束をテーブルの上に置く、そこには『A-yas'exhibition』の文字がデフォルメされて載っていた。
「これ、無料配付用なの。シノっち、何枚か引き取ってくれる?」
「ご自由にお持ち下さいってヤツね。あちしには特に損はないし、いいわよ」
「Thanks!それじゃお願いね」彩子は300枚くらいのリーフレットを忍に預けてると紅茶を注文して人心地ついた。女子高生四人組は集合時間が迫っていたらしく、名残惜しそうにしながら代金を支払い店を去っていった。
今日のランチタイムが過ぎて彩子も帰った頃、
「個展ねぇ。彩ちゃんもやるじゃない」そう呟きながら店の入口にあるリーフレット用の棚を整理する忍、その内四枚はさっきの女子高生達が持っていった。
「みんなどんどん大人になっていくのね。私だけ取り残された気分」夕子が少し淋しそうにポツリと漏らす。
「アンタは定職に就こうとか思わないの?」忍に問われると
「ん~。何かメンド臭そうだし、別にいいかな」
「面倒って…まあ、今この店は人手不足だし。あちしは助かるけど」
「話変わるけどさ、今日来た四人組、美術高校の生徒だったよ」
「何でアンタがそんな事知ってんのよ?」
「夕子さんの情報網を甘く見ちゃダメだよ、あの制服可愛いからチェックしてあるんだよね」
「まさか、いい
「ソンナワケナイデショウ?」明らかにキョドっている夕子に
「誤魔化さなくてもいいわよ、人の趣味趣向なんてそれぞれだもの」だいいちオカマのあちしが言える立場じゃないわよねと、忍は苦笑していた。