ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
年が明けて一週間、もうすぐ成人式を迎える陽ノ下光。両親もこの日の為に振り袖を新調してくれた、早速試着して鏡で自分の姿を眺める。愛しの忍にも見てほしくて思わずウキウキしてしまう、姿見に写る自分を眺めながら本番の日には彼と一緒に式へでようと決めていた。
一方その忍はスーツに袖を通していた、これから着る機会が増えるからと今までのバイト代をはたいて多少値がはるのを購入したのだ。
「着物だと動きづらいし、やっぱりこっちよね。我ながら決まってるわ」こちらも鏡をみながら身だしなみを調える、こちらも翌日の本番へ向けて準備万端といった様子だ。
ひびきの市民会館に元ひびきの高校の生徒達が集まってきた。
「ヤッホー、琴子」光は親友、水無月琴子をみつけて駆け寄る。
「光、振り袖似合うじゃない」
「エヘヘ、ありがとう。琴子もね」卒業してから随分会ってない二人は久し振りの再会で会話にも花が咲く。
「よぉ藤崎」全身を影に包まれる忍。誰だか見当はつく、こんなデカい知り合いは他にいない。
「高坂、アンタも来たの?」
「も、とはご挨拶だな」
「イヤ、アンタの事だからてっきりきらめき市民会館に行くかと思ったのよ」
「何でだよ!」
「三年前の文化祭の件、忘れたとは言わせないわよ」高二の時、無断欠席して楓子ときら高の文化祭を楽しんだ過去をほじくり返される。
「ウッ!そ、そんな古い話。もういいだろ!」
「冗談よ、じゃあちし行くトコあるから」
(こいつ、死んだ坂城に似てきたな…)
ひびきの市民会館で開催された式典では地元の名士達が順番にお祝いの言葉を新成人へ送る、それはお定まりのモノであったがある人物によってその退屈な空気が変わった。
「あ~新成人の諸君、おめでとう」どこかで聞いた声がする。
「ワシはひびきの高校校長、爆!烈!
(な、何で校長が?!)元ひびきの生全員が心の中で突っ込んだ。実は爆烈山、かつてひびきの市の市会議員を務めた事もある為こういう式典にはよくお声がかかる。当然成人式にも毎年現れて、ひびきの高校を卒業した新成人が一斉に驚くのもある意味恒例と化していた。
「あ~ビックリしたわぁ」
「でも校長先生がきて盛り上がったね」式典終了後、普段はバイトしているカフェに今日は客として訪れ、光とお茶を飲みながら語らっていた。
「あたしは知ってたぜ」赤井ほむらが二人の間に乱入してきた。
「え、そうなの?」光はまた驚いたようだが
「あ~。そういや校長とアンタのお爺さん、旧知の仲らしいわね」納得した様子で赤井に返す忍に光は頬を膨らませる。
「なぁ、何で陽ノ下怒ってんだ?それにどうして藤崎がそんなの知ってんだよ?」どうも女の子経由で得た情報だと思ったらしい、ヤキモチ焼きもここまでくるとちょっと怖い。
「ねこやのおじちゃんから聞いたのよ。二人共、学生時代よくあそこに通ってたみたいね」
「へっ?」恥ずかしくなったのか忽ち小さくなって俯く光。
「サ○エさ○的なオチだな」爆笑する赤井に
「フフン、それだけ愛されてるって事よ。どう、悔しい?」
「お前ぇ、自分で言ってて恥ずかしくねぇーのかよ」
「別に。光ちゃんは誇らしい恋人だもの、何を恥じるのよ」
「ああ。お前ぇには過ぎた相手だな」プチッ、軽くキレた忍。
「どうやらバレエ拳法を食らいたいようね」
「ナニをっ!こっちこそ必殺元会長キックお見舞いしてやるぜっ」ナゼかにこやかに応じる赤井。
「ほむら!藤崎君!止めなよ」間に入る人がいた、一文字茜である。
「いい加減にしなよ。さもないとボクも本気で怒るよ」ヤバいと思った二人は互いに矛を納める。
「ア、アハハ。ほんのジョークよ、ンな怖い顔しないでよ茜ちゃん」
「オ、オウ。めでたい日だからな、つい浮かれちまって」
「それならいいけど…」ここで話題を変えようと忍は
「茜ちゃん、その晴れ着素敵じゃない」とりあえず誉める、尤もその言葉に嘘はないが。
「えっそうかな?これ、暦おばちゃんが子供も孫も男の子だから張り合いがないって言ってボクに譲ってくれたんだ」
「確かねこやの女将さんだっけ?随分気前のいい人だね」光も話に加わった。
「うん、ボクをホントの孫みたいによくしてくれるんだ」一文字家の実状を知っている赤井と忍は深く頷いた。
「おっと、もうこんな時間か。じゃあたしは失礼するぜ」赤井は席をたってその場を去っていった。
「ほむら、何か用かな?」茜が首をかしげると
「茜ちゃん知らないの?赤井の奴、彼氏いるわよ、多分これからデートじゃないかしら?」
「へぇ~って、え~っ!」顎が外れそうな勢いで大口開けて驚く茜。
「あの赤井さんに彼氏?」光も唖然としている。
「アンタ達…流石に酷いわよ、あちしも最初ビックリしたけど」そんな話をしながら夕方まで三人で過ごした。
とにかく法の上でも大人への一歩を踏み出した彼ら、未来の可能性はどこまでも広がっている。