ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
時は少し遡りきらめき市民会館では詩織や公人も成人式に出席していた、美樹原愛や清川望も華やかな着物を身に纏う。その中に佐倉楓子もいる、彼女はそわそわして落ち着かない様子だ。
「楓子、どうしたの?」詩織に尋ねられても心ここにあらずな彼女を白雪真帆がからかう。
「式典の場所が彼氏と一緒じゃないから淋しいんでしょ?」図星だった。
「違うモン!それに式典終わったらデートだし」咄嗟に余計な事まで言ってしまったのに気づくがもう遅い、友人達はニヤニヤしながら楓子を囲んでイジり始めた。
「高校の頃なら八重さんが止めてくれたのに~」生憎八重花桜梨は実年齢が一才上で成人式は昨年済ませている。そこに
「みんな、止しなさいよ」助け船が出される、虹野紗希が赤ん坊を抱えて現れた。
「アレ、虹野さんその赤ちゃんは?」
「私の子だけど」
「「「「え~っ! 」」」」その場にいた全員驚いた。
「そんなにビックリしなくても…」
「相手は誰?」
「どこにいるの?ブッ飛ばしてやる!」
「勝手にシングルマザーにしないでよ。この子の父親とは正式に結婚してるし、ちゃんと養ってもらってるわよ」紗希が元同級生を宥めていると赤ん坊がグズりだした。
「ウッ、アププ、ビェ~ン」
「あ~、煩かったかなぁ?ゴメんね」必死にあやす紗希、中々泣き止まないところに一人の男性が赤ん坊を引き取る。
「この子は俺が見てるから。それより一生に一度の成人式に出てきたらいい」年齢は三十手前くらいで見た目も悪くない、一足先に幸せを掴んだらしい紗希を羨望の目でみる友人達だった。
さて、こちらも無事式典が終わり、かつての同級生達が集ったが紗希だけは再び我が子を抱いて夫と共に帰っていった。
「紗希ちゃん、幸せそうだったわね」
「そうね、旦那さんもいい人っぽいし」女子達は口々にそんな話をしている、一方男子の方はというと
「チキショー、あの親父め」
「よくも俺らの虹野さんを…許せん」嫉妬とやっかみのこもった恨み言をぶつぶつと呟いていた。
同級生達の喧騒を離れて二人っきりになる詩織と公人。
「じゃ帰るか、それともどっか寄っていくか?」
「ううん、今日は帰りましょう」二人揃って家路へ向かう、詩織の家に辿り着くと
「ヤッホー、詩織さんに公人君」
「ハァーイ、お久し振りねぃ」光と忍が門前で待っていた。
「何しに来たんだ?」公人が尋ねる。
「四人で呑みに行かない?私達の知ってるお店で」光から二人を誘う。
「どうしよっかなぁ?」
「俺は詩織に合わせるよ」公人はそう返事をする、詩織は少し考えて
「いいわ、行きましょう」
「じゃ決まりだねっ」嬉しそうに声を弾ませる光。
詩織と公人が連れてこられたのはわりとこじんまりした居酒屋だった。まだ開店して間がない時間らしく、彼らの他にお客はいない。従業員も奥で料理を作っている店主以外は一人だけ、それもどうみても中学生くらいにしか思えない。
「いらっしゃいませ」元気よく挨拶する中学生。
「こんばんは大輔君、今日ちょっと早いけど四人いいかしら?」忍は常連らしく慣れた調子で話す。
「大丈夫ですよ、テーブルになさいますか?」大輔と呼ばれた中学生は席についた四人にお冷やとおしぼりをだす、詩織はお品書きをテーブル全体に広げると
「料理も結構豊富なのね」
「ここ、食事処でもあるのよ、主にホステスさんや水商売の人御用達のね」忍が答える。
「そんなトコで中学生が働いていていいのか?」訝しむ公人。
「え、だってここの家の子でしょ?なら問題ないんじゃ」色んな意味で光は疑う事を知らない。
「お待たせしました。カルパッチョにチキン南蛮、トマトサラダと筍煮です」先に頼んでいたビールを呑み始めたところで大輔が注文した料理を運んできた、並べ終えたら今度は日本酒を二合追加される。
「うおっ!鶏肉軟らかい」
「筍の味も濃すぎず薄すぎず絶妙ね、シャキシャキ感が最高」
「魚も新鮮だしトマトも瑞々しくて美味しい。ここいいお店だね」
「でしょ?」こんな風に一時の酒席を四人は大いに楽しんだ。
「ご馳走様、明日はみんな普通に大学あるからこれで帰るわ。お勘定お願い」忍が代表して代金を支払う。
「ありがとうございます、またのご利用をお待ちしてます」大輔はお釣りを渡しながらそう伝えて家路へ向かう四人を見送った。
そして閉店後。
「ねぇマスター」大輔は義理の親である
「なーに?神妙な顔しちゃって」ごく当たり前に返事をする。
「忍さんって彼女さんいるのに何でオカマなんだろ?」
「オカマにも色々いるのよ、アンタはまだ知らなくていいけど」
「え~?」
「大人になれば自ずと知るわよ。それよりアンタ、クラスに最近気になる娘がいるらしいじゃない?」
「なっ…僕の事はいいだろっ」
「アラアラ、照れちゃって」真っ赤な顔をしている大輔を微笑ましく思いながらクスクス笑う熊実、『越後屋』は今日も平和であった。