ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
国際的に名の知れたバレエ団に所属する八重花桜梨。そこが近い内に日本公演を行う事が決まりプロモーションで数人の関係者が来日する事になった、運良くそのメンバーに加われた彼女は仕事の合間に里帰りしようとかつて高校時代を過ごしたきらめき市に戻ってきた。
何年か振りに市内を散策している途中、ふとペットショップを覗くと旧友の一人である美樹原
愛と近況を軽く語り合いゲージを購入して空輸便で今の住所に送ってもらう手続きを済ませると、時計はちょうど12時を指していた。
「私、忍君が
翌日、今度は花桜梨の方から愛を誘い忍のカフェ『Sunnylight』にやってきた。
「いらっしゃい、アラ?久し振りね」お冷やを持ってきた忍が花桜梨に声をかける。
「久し振り藤崎君、お店持ったって聞いてきたけどいいトコだね」
「ええ、おかげ様で。八重さんも日本に帰ってきてたのね、いつまでいるの?」
「とりあえず一旦は
「うわっ!」
「キャッ!」寸でのところでぶつかりそうになったが、間一髪相手がブレーキをかけて事なきをえる。
「す、すみません。お怪我はありませんか?」
「大丈夫です、私こそボーッとしてて」相手の顔を見上げる、イケメンという訳でもないが清潔感のある好青年だ。
「よかった、それじゃ失礼します」青年は頭を何度も下げてから荷物を乗せた自転車を押して去っていった。
「ちはー、染井酒店です。ご注文の品、お届けに来ましたぁ」『Sunnylight』の裏口から元気な挨拶が聞こえる。
「アラ、ご苦労様。品物を見せてちょうだい」この店にビールや醤油等を卸している染井酒店の若旦那が先日頼んでおいた品物を配達にきた。忍は届けられた品物に注文漏れがないかチェックをする、間違いがないのを確認して
「ご苦労様、後で支払いに行くわね」若旦那に告げると
「毎度どうも。また宜しくお願いします」それを受けた若旦那もハキハキとした声で挨拶して帰っていった。
~それからしばらくして~
「私ね、今回を最後に引退するの。退団の手続きも済ませてきたわ」いきなりの告白に呑みかけのカクテルを吹き出す愛。
「どうしたの、突然?」何とか平静さを取り戻して花桜梨に問うと
「突然でもないの、前々から決めていたわ。年齢的にも限界が近いし、両親の事を考えると日本に帰ってきた方がいいと思うの」酒のせいか、彼女の地なのかすすり泣きながら話す花桜梨。
「ちょっといいかしら?」釈然としないと言いたげな表情の忍が話に混ざろうと口を開く。
「藤崎君?」
「退団後どうするか考えてる?講師とか何か別の形でバレエには携わっていきたいのかしら?」
「そうね、バイトでもいいから仕事探さなくちゃ。バレエは趣味の範囲でいいわ」
「だったらあちしにツテがあるわ、帰ってきたら紹介するわね」
葉桜が目につく季節に花桜梨は再び日本に帰ってきた。今度は一生を過ごすつもりである、実家で両親から歓迎されてかつての自室のベッドに腰を下ろす。出ていってから何一つ変わってない様子に苦笑した、荷物を片付けると忍に教えられた場所へ向かう。
「すみませーん」訪れた先の門前で住人に呼び掛ける。
「いらっしゃい。あ、貴女は」
「あの時の!」何ヵ月か前、自転車で衝突しかけた相手と意外な再会を果たした。
「どうも、この染井酒店の息子で吉彦と言います」
「八重花桜梨です、藤崎君の紹介でこちらでお世話になります」改めてお互いに名乗っていると吉彦の母親、即ちお店の女将さんが顔をだしてきた。
「ちょっとアンタぁ、吉彦に嫁さんがきたよぉ!」大騒ぎしながら夫…吉彦の父を引っ張り出す。
「よっ…そうじゃないよ。人手が足りないから新しい人を雇うだけだ!」否定しながらも明らかに照れている吉彦、そんな家族を見ながら
「ここなら何とか上手くやっていけそう」安堵してクスクス笑う花桜梨。第二の人生に今、新たな桜が咲こうとしている。