ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです   作:越後屋大輔

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何だかメッチャ重い話に…


ある日の越後屋

 実業団の水泳選手を引退した清川望、今は普通のOL仕事に従事している。そして現役の頃は全く口にしなかった酒も嗜むようになり、呑み友達も何人か出来た。

 

 この日も高校時代の友人から紹介された『越後屋』で一杯引っかけて帰るつもりで店の暖簾をくぐると昔から知っている友人が一足先にカウンターで呑んでいたのを見つけた、どうも一人の様子だったので空いている隣の椅子に座った。

 「藤崎君、こんばんは。隣座るね」

 「アラ清川さん。ええ、いいわよ」望は首を軽く回してお客の帰ったテーブルを片付けている少年を呼ぶと

 「すいませーん、こっちにビールと焼き鳥。そうだ藤崎君は何をアテに…」そう問おうとして忍に目を向けると彼の前には日本酒とイカの塩辛が小鉢であるだけだった。

 「随分シンプルだね」

 「今日はお酒をメインで味わいたいの。いずれあちしもお店持ちたいし、これもその為の下準備よ」

 「そうか、いつか言ってたね。カフェかバーを開きたいって」

 「ええ。昼はカフェ、夜からバーにするってスタイルもアリかと思ってるの」二人がなんて事ない雑談をしているとふと表のガラス戸が音を立てて来客を知らせた。

 「すみませんこのお店、一見でもOKですか?」どこか見覚えのあるイケメンだったが忍は思い出せない。しかし望は誰だか知っていた、何せ同じ高校出身である。

 「ええ大丈夫です、空いているお好きな席へどうぞ」従業員の少年に促されたイケメンは辺りを見渡す、望は彼に手招きして呼び寄せる。

 「やあ、飯塚君じゃない。こっちにきて一緒に呑もうよ、藤崎君いいかな?」

 「あちしは構わないわよ」飯塚というイケメンは忍と挟む形で望の隣に席をとってさっきの少年に注文を告げる。

 「君、叉焼とハイボールを頼む」忍は飯塚を顔をしばらく眺めいたがハッとして

 「思い出した!アンタ、佐倉さんに横恋慕してフラれたあげく高坂にかっさらわれていった残念君じゃない」

 「事実だが酷い言い草だな」自嘲して軽く口角を上げる飯塚三流。

 「何の話?私聞いた事ないんだけど」蚊帳の外にされた望が追求してきた。

 「さして珍しくもない話さ。一人の女性が二人の男の内、一人を選んだ、それだけの事さ」

 「今日は何か妙な取り合わせになったわね、まあいいわ。仲良く呑みましょ」

 

 三人がそれぞれの家路へ向かい、閉店の時間が近づいた頃、大輔が暖簾を片付けようと外へ出ると熊実と同年代くらいの男性が越後屋に近づいてきた。

 「遅くにすまん、隼人が来たと店主に伝えてくれないか?」大輔が熊実にそのまま話すと

 「店は閉めるけど入ってもらって」男性はお客が全員帰った静かな店内に足を踏み入れると熊実に向き合う。

 「よぉ、くま」どうも昔の知り合いらしい、熊実は大輔を下がらせると隼人と名乗る男性を適当な椅子に座らせる。

 「日本に帰って来てたのね、隼人」

 「義兄(あに)のところへ顔を出せと妻の実家に急き立てられてな」

 「そう、幸太君には会ったの?」

 「会わん訳にいかんだろう、幸太は普通に受け入れてくれたさ。夫婦揃ってナゼか九州男児の爺さんに叱られたがな」嘆息する隼人に

 「一杯くらい奢るわよ」熊実はウィスキーをロックで差し出した。

 「お前も俺を父親失格だと思うか?」唐突に切り出す隼人。

 「ま、アンタにはアンタの事情があるんでしょ。そのジジイに言われたの?」

 「後、タカヒロにもな」

 「そうでしょうね、でもアタシは父親になった事ないから何とも言えないわ。養子はいるけどね」

 「さっきまで店を手伝ってた子か?利発そうな少年じゃないか」

 「アンタに誉められるなんて不気味ね」

 「別にお前を誉めてはいない」

 「それで?何で春日部のお義兄(にい)さん一家から離れて一人で来たの?」

 「タカヒロにも言ったがお前に伝えなきゃならん事がある…竜馬が死んだ」やっとの思いで吐き出した隼人の言葉に熊実は

 「そう…」とだけ呟いた。

 「かつて○国で結成した傭兵団の仲間達。弁慶、甲児、鉄也、名前を挙げればきりがないが皆死んじまった。生き残ったのは俺とお前とタカヒロの三人だけだ」

 「竜馬は独り者だったの?」

 「ああ。外国(むこう)情婦(おんな)はいたようだが、子は成さなかったらしい」そこまで聞いた熊実はウィスキーのお代わりを注ぐ。

 「オイ、金なら払わんぞ」

 「これは情報料よ、それにアタシも呑みたくなったから付き合って頂戴」

 「フッ、お前も相変わらずだな」

 「それこそお互い様でしょ」天に召されたか地獄へ堕ちたかは分からないが今はこの世の者ではない同胞を偲んで呑み明かす二人。月が半円を七分程描いたところで、野原家に帰った隼人は義兄一家に改めて幸太をよろしくと頭を下げた。そして二日後、妻と共に再び今の仕事場があるマリネラへ去っていった。 

 

 

 

 

 

 

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