ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
自身が勤める会社の取り引き先である海外企業の重役を怒らせてしまった水無月琴子。馘を言い渡される前に辞表を提出して遂に今日、無職になった。
「大体、外国なんかと仕事するのが悪いのよ!日本で細々やってりゃいいじゃない!」今回の事で外国嫌いに拍車がかかった琴子はある街へ職探しにきた、ここの街並みは昔の西洋風であまり好きじゃないのだが
「外国は嫌だの横文字が気に入らないとかいつまでも小さい事に拘ってんじゃないよ、バイトでも何でもいいから働き口探しなさい!」母に尻を叩かれてやむなくバイト雑誌を手に従業員を募集していて自宅から比較的通うのも楽な喫茶店に訪れた次第である、そこがいわゆるカフェではなく純和風喫茶である点も琴子には魅力だった。
「水無月琴子、34才かい。出来りゃもっと若い子に来てほしかったけどね、まあしょうがないか」ここの店主である老女は琴子の履歴書と本人を見比べながら厳しい目を向ける。そこに黒髪の、いかにも大和撫子然とした女子高生くらいの少女が姿を現した。
「お婆ちゃん、その人は?」店主の孫らしい。
「面接にきたんだよ。明日から働いてもらうから」
「え?」琴子は目を丸くした、店主の態度から不採用とばかり思っていたのだ。
とにかく翌日から和風喫茶『甘兎庵』の店員になって一ヶ月。店主の孫、千夜にはない大人の女の艶っぽい美貌が主にオッサン連中に受けて普段は和菓子なぞ見向きもしないくせに琴子目当てで店に通う者まで出てきた。それを見た千夜はナゼか時代劇でよく見る花魁の格好で店にでてきた、しかも煙管に似せているのは工作や手芸でよく使うモールである。
「千夜ちゃん、何してるの?」
「わちきは千夜奴どすえ」スッカリ花魁に成りきっている千夜に祖母の激が飛ぶ。
「千夜、バカやってないで着替えな!琴子さん、気にしないでおくれ。あの娘大人の魅力ってのをはき違えてるみたいでね」
「ハア、そうですか(私に言わせりゃ若い方がよっぽど魅力的よ)」琴子がため息を一つ吐いたところで三人連れのお客が来店してきた、それも琴子がよく知ってる面子が揃っている。
「ハァーイ、琴子。来てあげたわよぉ」
「お久し振りです、水無月さん」
「琴にゃ~ん、遊びに来たよー」オカマのくせに妻子持ちのカフェ店主、藤崎忍と脚本家白雪美帆、新聞記者の寿美幸であった。
「どんな組み合わせよ?しかもアンタ達仕事はどうしたの?今日は平日よ!」
「あちしの店は定休日。光ちゃんは教師だから仕事中だけどねぃ」
「私は在宅ワークですから」
「イヤァ、有休が貯まってたから使っちゃおうと…」三者三様の理由で暇な日が重なったらしい。
「それで、皆して私をからかいに来た訳?」
「まさか。あちしは『ラビットハウス』にご挨拶よ、昔あのお店で働いていたの、今では家族ぐるみでお付き合いがあるわ」
「この街が今度の
「美幸はねぇ、この前『フルール・ド・ラパン』へ取材にきたんだよぉ。それでねぇこのお店の前通ったら琴にゃんがいたから皆で会いに行こうって誘ったんだよぉ、でも都合がいいのが藤ぴーと美帆ぴょんしかいなかったんだぁ」犯人は美幸だった。
「そう邪険にしないでよ。一応客なんだから、注文いいかしら、って何これ?」忍がメニューを開くとお品書きには『煌めく三宝珠』『雪原の赤宝石』『海に映る月と星々』と意味のわからない言葉が幾つも記されていた。
「う~ん、美幸にはよく分からんなぁ」高校時代、どっかで聞いた事のあるセリフを吐いて首をかしげる美幸。
「水無月さん、これは一体?」流石の美帆も呆れ顔になっている。
「それぞれ、三色団子、苺大福、白玉栗ぜんざいよ。ここの孫娘の趣味でね」琴子が額を押さえ脱力しながら解説する、いつの間にか店主が忍の側に立っていた。
「お客さん、店をやってるそうだね。よければウチの孫娘を鍛え直してくれないかね?」クセの強い独創性を矯正させたいのと、単純に外の世界を見せた方が千夜の為になると考えてのお願いだった。
「二、三日検討させて頂けます?決まったら琴子に連絡すればいいかしら?」
「ああ、そうしておくれ」
そして三日後、忍から色好い返事が届いて宇治松千夜はSunnylightでバイトする事になった、果たしてどうなるやら。