ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです   作:越後屋大輔

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龍と国王

 ある有名歌手に提供する楽曲の作詞をした縁でその楽曲の作曲家と結婚した作詞家の如月美緒、34才。来月には高齢ではあるものの出産を控えて幸せの絶頂にいた、あの忌まわしい交通事故に遭うまでは。

 青井幹人は既に道交法違反で数回の逮捕歴があるにも関わらずこの日も赤信号を無視して法定速度より40キロもスピードをだして走らせていた、言うまでもなく免許は剥奪されているので無免許運転である。

 

 ボムッ‼フロントバンパーから鈍い音がした、どうやら誰かを轢いたらしい。しかしクズ野郎の青井は自動車(くるま)を降りて確認どころか、ブレーキすら踏まずにそのまま走り去っていった。

 その後、通りがかりの市民から道路で女性が大怪我をして倒れていると119番通報があり美緒はすぐに病院に運ばれた。

 「先生、妻とお腹の子を助けて下さい!」美緒の夫が担当医にすがり付いて泣いている、そこへかつての旧友達も駆けつけた。

 「すみません、○○美緒さんに面会はできますか?」二人の子供を連れた藤崎光、他にも朝日奈夕子、白雪美帆、佐倉や穂刈夫婦も訪れた。

 

 結果からいうと美緒はかろうじて一命をとりとめた、お腹の子も未熟児であったものの帝王切開で出産して今は保育器に入れられている。しかし彼女は昏睡状態に陥り未だに目覚めず回復の見込みも薄いらしい。

 

 「皆さん、お忙しい中よくいらして下さいました」面会の許可がでたので美緒の夫がみんなを招き入れる。

 「美緒っち…」夕子はかける言葉が見つからなかった、水無月琴子は

 「犯人は誰よ?!ぶっ飛ばしてやる!」怒り心頭の様子、楓子はまともに美緒の顔をまともに見られず賢にすがり付いて泣きじゃくる。

 「そういや、忍は?」純一郎が光に尋ねる、友人の危機に彼が動かないのはどうも不自然に感じた。

 「あっ…」何かを思い出したように茜が声を上げる。純一郎は腕時計についていたカレンダーを確認した、そして顔を見合わせると声を揃えて

 「「今日は土曜日‼」」光は二人に向いて知っていると頷いたが美緒の夫も含めて後の面子はポカーンとしている。

 

 お気づきの方もいると思うが事故の連絡を受けた忍は『洋食のねこや』こと『異世界食堂』にやってきていた。

 「裏口が開いた?忍君か」店主はさして驚きもしない、アレッタも慣れたモノで

 「いらっしゃいませ」と元気よく迎え入れる、だが今日の忍はいつもと様子が違っていた。

 「店主すいません。昔『フライングパピー』の店長の怪我を治したって薬、まだ残ってますか?」ゼイゼイと息を切らしながら問う忍を落ち着かせる店主。

 「どうした?血相変えて。まずは事情を話してみろ」忍はアレッタがだしてくれたお冷やを一気に飲み干すと今回の出来事を話す。

 「生憎アレは既に切らしていてな、手に入れたくてもしばらくはムリだ」すまないなと申し訳なさそうに言葉を締める店主にがく然とする忍だったがそこに例の扉からお客がやってきた。異世界からではなくこの世界で有名な人物、マリネラ王国国王パタリロ・ド・マリネール八世その人であった。異世界のあちこちに現れる例の扉、実はナゼかこちらの世界の国家であるマリネラにも存在する、忍は以前店主からその事を聞いていたので知ってはいたが国王に会うのは初めてだった。

 

 「その薬なら以前僕が提供してもらった。その後、独自に研究してほぼ同等のモノが完成している。今から取ってきて君に進呈しよう」事情を聞いたパタリロが薬を分けると言ってくれた。

 「え?あの扉は一度出たら一週間使えないハズ…」郵送でもしてくれるのかと思ったが

 「ナゼか我が国の扉だけは何度でも行き来できる、土曜日に限るがな」そうして一旦店を出るとすぐ引き返してきて

 「薬だ。これでお友達を助けてやるといい」忍はパタリロに土下座してお礼を言うと再び裏口からでていって美緒が入院している病院へ急いだ。尚余談だが、その薬の効果で美緒は奇跡的に回復。二週間程で一足先に産まれた子供と一緒に迎えにきた夫に寄り添って退院した、忍は美緒夫婦に感謝されたのはいうまでもない。

 そして轢き逃げ犯の青井は勤めていたヤミ金業者が摘発されたのをきっかけにまたしても逮捕された、後に拘置所内で表向き謎の死を遂げる事となる。

 

 後日、パタリロお付きのタマネギ部隊は口々に語り合う。

 「殿下が例の秘薬を無料(ただ)で提供しらしいぞ」

 「あの強欲で金にがめつい殿下が?信じられんな」

 「後になって詐欺まがいな手口で大金を要求するつもりじゃないのか?」

 「やかましい!」ひそひそ話をするタマネギ達をどやしつけるとあの扉が現れる自室に戻るパタリロ。

 「そりゃ僕だってあの薬で大儲けしたいわい、だがそれがバレたらあの黒髪のウェイトレスにどんな目に遭わされるか…」土曜日のねこやのウェイトレス『クロ』。しかしその正体は異世界の六柱の神である龍の一柱である黒き龍である、以前異世界(あちら)の技術で一儲けを企んだパタリロは彼女に殺されかけた。今度の一件でもクロはパタリロに睨みを効かせていたので金の要求など出来る訳もなかった。

 「あの龍女神め、しかしヤツだけは怖い…」あの時の恐怖が頭をよぎり歯をガタガタ鳴らして全身の震えが止まらないパタリロだった。

 

 

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