ボンクレーが『ときメモ2』の世界に転生したようです 作:越後屋大輔
「
異世界に流された薫は暦の旧友で『異世界食堂』の常連でもある伝説の侍、タツゴロウに心身を鍛えられた後、冒険者として辺境の地を渡り歩く日々を送っている。
ある街の冒険者ギルドで依頼された魔物退治を果たして幾らかの金を得た薫がこの日のねぐらを探していると一軒のボロ家をみつけた、家人に頼んで屋根を貸してもらおうと静かにノックすると30絡みの女がでてきた。
「生憎ウチにゃ金も、他に盗るモンもないよ」山賊か何かだと思われたらしい。
「そんなんじゃない、旅の
「そういう事なら入りな、ホントに何もないトコだがね」
「では一晩世話になる」家の中には女の夫らしき男と11才程の少年と8才くらいの少女がいた、どうも出かける準備をしていたようだ。
「スマンがちょっと出かけるんでな、月が真上に昇るまでには帰ってくるが」夫がそう告げる、その傍らで二人の子供達はハシャいでいる。
「父ちゃん母ちゃん、早くネコヤ行こうよぉ」ネコヤ、という言葉に思わずピンときた薫は夫婦に尋ねる。
「アンタ方ねこやに行くのか?」
「おや、おたくもあの店知ってんのかい?」
「ああ、昔からな。例の扉はどこにあるんだ?」
「ウチの納屋の奥だよ、よかったらついてくるかね?」
「そうさせてもらおう」薫はこのへルマンとヘレン夫妻と二人の息子カイ、娘のボナと揃ってねこやに通じる扉をくぐった。
「いらっしゃい!ん?薫君じゃないか、随分久し振りだな」薫が異世界に流される前の若店主が厨房から声をかける。
「どうも」短く返した薫は店内を見渡すと若店主に疑問を投げかける。
「あの、おじちゃんは?」
「爺さんなら十年程前に死んだよ、茜ちゃんも結婚して退職した」
「そうっすか…(考えてみればあれから20年近い時が経っている、茜だってもういい年齢だし、あの頃還暦はとうに過ぎてたおじちゃんが亡くなってもおかしくないか)このところ自身も加齢による衰えを少しずつ感じていた薫は自嘲しつつ
「せっかくの家族の団らんを邪魔したくはないからな」テーブルに席をとったへルマン一家にそう伝えると離れたカウンター席に腰を下ろす薫、再び来客を知らせるカウベルが鳴ると明らかにこちらの世界の者らしき人間がハイテンションで店に入ってきた。
「ウーン。土曜日はここの扉から出入りする方が楽だよねぇ」腕を伸ばして肩の凝りをほぐしている。
「沙織さん、いらっしゃいませ。空いているお好きな席へどうぞ」その女は異世界側の住人と見受けたウェートレスに促されてたまたま空いていた薫の隣に座る。
「オヤ、アレ、フーン」女は隣の薫の顔を覗き込んだり舐め回すように観察していたがこうやがて話を切り出した。
「ひょっとして茜ちゃんのお兄さん?」
「茜を知ってるのか?イヤそれよりお前は何者だ?」流石に店内で喧嘩する訳にはいかないので薫は警戒しながらもできるだけ穏やかに確認する。
「私、藤崎沙織。赤の女王様に
「因みに親戚一同、私に関する記憶を失ってるの。覚えてくれてるのは妹と従弟の二人だけ」
「そうか、俺も家族とは随分会ってない。既に死亡扱いだろうな」日本の法律では七年間行方不明だと死亡届がだされる事がある、警察が捜索しても異世界にいたのでは見つけようもない。
「今更帰る気にもならん、妹とて家族のある身だし俺が帰ったところで迷惑なだけだろう」
「じゃあ私と一緒に行く?旅暮らしの根なし草だけどさぁ」
「奇遇だな、俺もだ」こうして薫と沙織は冒険者パーティーを結成した、一応言っておくが二人は最後までいわゆる男女の関係にはならなかったらしい。
そして二度とは帰らない二人…