その矢印の色は   作:恋音

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「お恥ずかしい話」

 

 ルビーの恋敵はエースだ。

 愛して愛して止まないサボの仲をとことん邪魔してサボを守る。

 なにより昔からルビーはエースという存在が苦手だった。

 

 エースという男はまるで悲劇のヒロイン。

 幼少期は精神的に子供だし、成長すれば自業自得の処刑に涙流す。

 前世では何度かツッコんだものだ。父親が嫌いなら海賊になって名を上げるなよ。海賊行為で処刑される人間は他にもいるだろ、と。

 

 カッコイイとは思ったことがあったが尊いと思ったことは無い。嫌いでもないが好きでもない。そう、サボという推しの前にして霞むのだから仕方ない。お前はよくやったよ…。

 

 それはさておき。原作というキセキから良くも悪くも逸れたルビーの此度の人生において、己の愛の道に一番の敵がいるとするならそれはエースただ1人、の筈だった。

 

 

 ルビーは完璧忘れていた。

 

 幼少期に訪れる大人の女性という敵を。

 

 

「マキノー!」

 

 ルフィが嬉しそうな声で一人の女性へ飛びつく。

 艶のある綺麗な黒髪に優しそうな笑みを浮かべた、彼女の名前はマキノ。

 フーシャ村の酒場で店主をしている女性だ。

 

「あら…?女の子も居たの?」

「……私、貴女には負けませんわ!」

 

 大人の魅力も無いルビーにはそう言うだけで精一杯だったのだ。

 

「あのな、ルビー。敵じゃねぇんだから」

「いいえ!昨今男性同士でもくっつく人間もいるのよ、それでも敵だと言うのに…大人の女性なんて、まさしく敵じゃない!」

「サボ……どうにかしてくれ」

「話題の張本人が出て何とか出来ると思うか?」

「無視するか」

 

 扱いは日頃の行いも相余って雑だった。

 

「マキノさん…。貴女、将来を約束する殿方はいらっしゃって?」

「え、い、いませんけど」

「そう……早く身を固めた方が宜しいと思いますわ。歳の近い、そう、赤髪のシャンクス辺りで」

「お前は姑かよ!!!」

 

 無視すると言った本人がツッコミ気質なせいで思わずツッコんでしまう。

 ルビーは不服そうな顔をしてエースを見た。

 

「サボのお嫁さん(未来)よ」

「その言葉もう一生使うな…!」

「あら、今からお嫁さんになれ、と?流石に歳をお考えなさい。せいぜい婚約者(フィアンセ)よ」

「ちっっっっっげぇよ!」

 

 ダンダンと地団駄踏むエースに何故か呆れ顔をするルビー。その様子にイライラしてビシッと指さした。

 

「お前、メンヘラかよ!性格くっそ悪いぞ!」

「オタクという生き物は推しに全てを注ぐキチガイなのよ。性格?そんなもの気にする必要があるのなら貴方の性格を直してはどう?」

「腹立つ…このクソアマ」

「それで結構!私、貴方は好みじゃなくてよ!」

 

 悪びれた態度を取らないルビーに怒りと殺意がフツフツと湧いてくる。将来絶対ぶち殺すと誓を立てた。

 

「まー…、ルビー」

「はぁい!どうしましたサボ!」

「はやっ…」

 

「失礼の無いようにしなさい」

 

「ご機嫌麗しゅうマキノさん、私、名をサリー・ルビーと申しますの。仲良くして下さると嬉しいですわ」

 

 ス…っとスカートの端をつまみ上げて貴族の礼を取った。幸いマキノは名前にも態度にも気にした様子が無かったので良かった。

 

「サボグッジョブ…」

「でも、なんていうか…チョロいな」

「うん、ビックリする程チョロい」

 

 彼女の同居人はこの王女を少々不安に思った。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「全員集合!」

 

 彼らは危機感を覚えた。

 

「このままだとジジイに殺される!」

 

 つい先日訪れたガープ襲撃を受け、ボロボロになったエースが提案する。

 

「独立しよう」

 

 ルフィは首を傾げ、サボは思案顔。

 その様子を心のアルバムに納めながらルビーは腕を組む。その鼻から赤い1本の筋が伸びてるが全員見事なまでにスルーしていた。

 

「「独立?」」

「独立するのは分かっていましたが私を呼んだ意味はありまして?」

 

 ルフィやサボとはまた違う意味でルビーが首を傾げる。

 最近マキノに貰ったお気に入りの服とやらを着て木の幹に座っていた。

 

「お前だって脅威だろ」

「別に…そう考えることはありませんでしたわ。何しろ、丸め込みましたもの」

「あー、なんだっけ?流石ルビーだよな」

「サボ…!軽率に褒めるな!」

 

 流石、と言われたルビーは感動の涙を流す。

 その発作からサボを守ろうとエースが背に庇った。

 

「サボに褒められた…私、生きてよかった!」

「サボ…コイツめんどくせぇ」

「ルビー、痛いのか〜?」

「えっと、ごめん」

 

 ルビーはガープ襲撃の際見事な手腕で逃げ延びた。

 可憐な少女が涙を流したのだ。

 流石に海兵のガープは怯むしかない。

 

『ガープ様…私に無体を働くのでしょうか…!』

『嗚呼…、この世は地獄。海軍とはこの様なモノでしたのね…!』

『私はこの日死を迎えても世界に伝えなければ!私は、この世界で、幸せでしたと!』

 

 猫のかぶりように大笑いしたのはいい思い出だ。

 その後ガープが標的をエース達に変えなければ素敵な思い出(意味深)にはならなかっただろうに。

 

「とにかく!独立して小屋とか作ろう!」

「おぉ…なんかスゲェな」

 

 無鉄砲だと呟きながらルビーは計画を盛り上げていく同居人を見た。

 

 もうここまで原作が進んでしまったのか。

 

「それで?ルビーは来るのか?来るよな?」

 

 有無を言わせない様なルフィの無邪気な質問にルビーは数秒考え、ニコリと笑って返事をする。

 

「お断りしますわ」

 

 は?と誰かが聞き返した。

 もちろん気性が最も悪い男など分かっている。

 

「サボも居るのに、か?」

「えぇ」

「……ちょっと本気で意味が分からねぇ。ルビーは弱いけど根性だけはある。お前のいう『愛しのサボ』が居るのに断る、だと?」

「えぇ、断りますわ」

 

 エースが頭を抱えた。

 

 ルビーはなんの悪びれもなく言い放つ。

 

「お恥ずかしい話、私は通い妻と言うのに少々憧れていてよ」

 

 照れてない。恥ずかしがっても無い。

 顔色変えずに堂々と言い放つ存在は同居人のスルースキルを高めるだけだった。

 

 

 後に誰かが言った。

 『アイツのメンタルって多分ルビーじゃなくてダイヤモンドだ。間違いない』と。

 




この作品は超ノロマ更新なのでノリノリにならない限りストック貯めつつ書くので1週間開くと予想。
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