その日は、空がどんより曇っていた日だった。
「来ませんわ」
エースとサボとルフィが家出…もとい、独立を宣言して早数週間、ダダンのアジトに居るルビーに毎日顔を出していたサボが来なかったのだ。
せっかく、通い妻ね!と興奮していたのにも変わらず。ルビーは鋭い目をして高町方角を睨む。
「(これは……動いたのかしら)」
サボが居なくなる。
それは原作で実家である貴族の家に無理やり連れていかれる出来事だ。
そうなるとサボは表面上死亡する。
そして革命軍に入る事になるのだ。
「(結局、どうするか決めれなかったわ)」
ルビーは悩んでいた。
原作通りに進めるか止めてしまうか。
サリー家の名を使えばサボは容易に奪還できる。そしていざとなれば結婚も。どうやらサボの父親であるアウトルック3世は王族に婿入りさせようとしているようだから。
結婚したい愛でたい!などと言っていてもその選択肢を使わなかったのはただ馬鹿だからという理由では無く、それがサボにとって不幸だと知っていたからだ。
「(これからどうしましょう)」
どの行動がサボにとって最良の選択肢なのか分からない。原作通りにしてもサボの命に危機はない、筈だ。
心配する事としない事は別物。
そして何より。
「(暫くサボに会えない……ですって…!?)」
それは困る!とルビーは心の中で問答する。
前世ではサボに囲まれて生きてきたのだ、辛くなれば携帯の待ち受け画面。時には漫画、時にはアニメ。
1日1回はその神聖な姿を拝まなければ耐えられなかったと言うのに!
生まれ変わっても6年間掛けて脱走してようやく会えたのに!もう会えなくなってしまう!
そうとなれば決まった。
「革命軍ね」
細かい事など漫画で読み取れる筈もない。可燃ごみの日、海岸のどこかに現れるという革命軍に入れてもらえるよう頼み込むだけだ。
「火事で紛れこめば入れてくれるかしら…いえ、例え入れたとしても特殊な出会い方でないと幹部に近付ける事など出来ませんわね…」
「ルビーは何を考えてるんだ?」
「今後の事ですわ、海に出るべきかと思って」
「王女様が出れるわけ無いじゃニーか」
やってみなければ分かりませんわ!と頬を膨らませるルビーに苦笑いをしつつダダンがやって来た。
「出るなら力くらい付けときな」
「ドグラ、貴方少しくらいダダンの漢気を分けてもらったらよろしいのでなくて?」
「それはあたしが女っぽくないって言うことかい?」
「お元気でいらっしゃいますわ」
「よろしい、今日の晩ご飯は要らないらしいね」
「お気だてに難がおありですのね!」
『意地悪だ』と訴えるルビーを無視してダダンは大笑いし始める。
「………ダダンはふくよかでいらっしゃるのですから、少々お食事を控えるべきではなくて?」
「このッ…この王女はオブラートに口が悪いッ!」
ムニッと生意気な口を引っ張られてルビーは唸る。
雰囲気で少し大人びて見えるがエースやサボと年が変わらないこの少女、もう少し素直さ─特定の人物除く─を学んだ方がいいと思うのが常だ。
「ねぇダダン」
ルビーは引っ張られた頬を押さえながら煙草をふかすダダンを見た。
「どうすれば人に好かれると思いますの?」
「…………諦めな」
投げ捨てる。
数秒してサボの事ではありませんわ!という否定の声がアジトに響き渡った。
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燃える。燃える。
南の空が赤く染まる。
「ルフィに手を出すなァ!」
叫ぶエースの声と倒れる男達の音。
「何をしやがった胡散くせぇガキめ!」
ブルージャムはエースを踏みつけて銃を向ける。
ルフィが血を流しながらやめろと叫ぶもブルージャムは聞こえてない様だった。
「やめねぇか海坊主!エースを放しなぁ!」
がきぃんッ!と刃こぼれした斧がブルージャムの刀にぶつかりエースの目には仮親のダダンが見えた。
何でここにいるんだ、ダダンへのその疑問は周囲を見渡せば即座に変わった。
「……何でここにいるんだ王女様よォ」
「ごきげんようエース、相変わらず自信がおありで。今の気分はいかがかしら」
「最悪だな」
ルビーの姿を見て呆れが勝る。
特出した強さも無いくせにどうしてこうも無鉄砲なんだ、と頭を抱えたくなった。
「私サボの為なら火の中水の中ですの」
「だからって本当に火の中に来る奴があるか!」
「貴方の目の前にいるのではなくて?」
コテンと首を傾げるとほぼ全員がため息を吐く。
「それでは私行く所がございますので、これにて失礼致しますわ」
「まてまてまてまて」
更に火の海の中に進もうとするルビーを慌てて引き止める。
心做しかブルージャムでさえ正気に戻り呆れ果ててる様に見えてしまうが、全く、甚だ遺憾である。
「どこに行くつもりだ」
「…早く戻りませんの?」
「お前ほっとけるか!?普通!」
「無駄なデレを使う暇があれば早くブルージャムを倒すなり逃げるなりしたらどうです…。私の行動に関与される覚えはありませんわ」
「あぁもう!ダダン!こいつ放って戦えねぇ!」
「あら」
ガシッと俵担ぎにされたルビーはエースの言葉に目を見開く。
「逃げるの、お嫌いではありませんの?」
「戦略的撤退といえ!」
暴走癖を持つルビーのお陰でエースとダダンが火の海に残るという原作が変えられたものの、ルビー自身あまり嬉しい改変では無かった。
正直1人で海岸へ出て革命軍に入りたかった。
「迷惑ですわ!」
「テメェがな!」
痛みに泣き喚くルフィの声と燃える音をBGMにエースや山賊は走る。ルビーはこれからどうしようかと運ばれる中無い頭を捻るだけだった。
「なんでテメェは危険って分かっていながら突っ込んでいったんだよ!」
正座で仁王立ちのエースとルフィの説教をルビーは受けていた。不機嫌そうに口を尖らせるも同居人の怒りは収まりそうも無い。
「何故、と言われましても。私がサボを愛しているから以外理由が浮かびませんわ」
「サボは高町にいるんだっての!」
「今更何年もサボの顔を見れないなど耐えられませんの。人間蜜を吸うとその味が忘れられなくなるのよ」
「そんなにサボが好きか!」
「もちろん」
即答。
躊躇いのなさにエースが思わず頭を抱える。
「頼むから火の中に残ろうとしないでくれよ……」
「……戯言ですわね」
ため息と共に漏れた言葉を聞いてルビーが表情を曇らせた。原作で、あの場に残っていたのは誰だ。
「とにかく!私はサボの為に生き己の欲望の為に人生を変えますの!赤の他人様に干渉される覚えはありませんわ!」
「はぁっ!?俺達は…、っ、そうかよ!」
エースは家族だろという言葉を飲み込む。
そうだ、彼女はあくまでも盃を交わさず同居人としてこの場にいるのだ、この頑固者の王女に言うだけ無駄だ。
「おれも弱いけどルビーはもっと弱いぞ」
「知ってますわ」
「なんでそんなに命に執着しないんだ?」
「……私、貴方の野生動物の様な鋭さが苦手よ」
苦々しい表情をしてルビーはルフィの問いに答えた。
「何度も死の淵を見てしまったからですわ」
そして死んでしまったから。
それなら、この人生は1番の推しに捧げてしまってもいいじゃないか。2回目の人生なんだから、尊い推しの1回目の人生の為に使ってもいいんじゃないか。
「命を粗末にするつもりは無いけれど、どう使うかは私の自由よ。将来、2人にも命をかけるくらいの存在が出来るはずですわ」
先を知ってるルビーは言いきれる。
エースは
ルフィは仲間の為に命をかける。どんな強敵だらけの航海だろうと、誰1人として見捨てたりしなかった。
「……生意気だ」
「あら、私の方が歳上ですのに。生意気なのはそちらでは無くて?」
「たった6ヶ月程度の差だろうが!」
「七月生まれで10歳の私と、一月生まれで10歳の貴方とは大分差があると思いますわ」
「……俺の方が強い!」
「それが何か?」
純粋に疑問に思うのかキョトンとした表情でルビーは首を傾げる。
「あーもー!さっさと怪我の手当をしな!」
「チッ」
痺れを切らしたダダンが雷を落とした。
「どうか…原作通り……無事でありますように……」
もしもの可能性が捨てきれず、不安になる。
ルビーは祈るように目を閉じた。
たぶん私はルビーを誤解させる様に書いている。
ひょっとしたら鋭い人はタイトルと名前で分かるかも知れませんがね(ヒント)
評価感想、くれてもいいのよ?(チラッ)