「私と結婚してもらえませんか?」
エレナは小箱を開け、私に指輪を差し出していた。
私と結婚して貰えませんか?聞き間違いなくエレナはそう私に言った。
「え、えっとその!ちょ!ちょっと待って!」
突然のプロポーズに私は素っ頓狂な声を上げてしまった。でも、でも答えはもう決まっているじゃないか。それをそのまま言えばいい。私は深呼吸をするとエレナの指輪を受け取りながらこう伝えた。
「こちらこそ宜しくお願いします。ジェシカのお屋敷に行ってたのはこの為だったんだね……ホントに嬉しい……エレナァ!大好き!」
私はたまらずエレナに抱きついた。嬉しさのあまり私は、気が付けば涙を流していた。
「ホントに私なんかでいいの?エレナならもっとカッコイイ人や綺麗な人だっているんだよ?」
「楓がいいの。楓じゃなきゃダメなのよ!私こそこんなダメ主人でドMで、どうしようもないぐらいの自己中な私でいいの?楓にだってたくさんいい人はいるわよ」
エレナも私を強く抱き締めながら声を上げた。エレナの顔を見ると、涙をぐっと堪えながら言っているみたいだった。
「バカ言わないでよ……エレナ以外の人なんて考えられるわけないじゃん。ぐすん……もうホントにダメ主人なんだから……でもそんな所も含めて好きなの。エレナは私の事好きなんだよね?」
「当たり前でしょ。好きよ。大好きよ!」
ついにエレナからも涙が溢れた。はなからみたら抱き合いながら泣いている痛々しいカップルかも知れないがこんなの泣かずにいられるわけがなかった。大好きな人と結ばれた。この事実だけでたくさんだった。
「よかったね……月村、楓おめでとう!ホントによかったぁ!!!」
「ジェシカ……ありがとう。ジェシカにもたくさん辛い思いさせちゃったよねごめんね」
「ジェシカ。私からもお礼を言うわ。ホントにありがとう。貴方に励ましてもらわなかったらこんな風に出来なかったと思うわ」
きっとジェシカも私とエレナの事が心配だったんだろう。涙を流しながら私とエレナに抱きついてきた。私の事を好きだって言ってくれて、今でも気持ちが変わってないならホントは1番辛いはずなのに本当に優しいんだなって改めて思う。私なら同じ対応が出来たかなんてわからない。
「ホントに心配したわよ。エレナったら挙動不審すぎたでしょ?だからジェシカのお屋敷に一時的に避難させたのよ。でも綺麗に収まって良かったわ。おめでとうエレナ、楓ちゃん」
次は詩織さんが駆け寄ってくれた。確かに挙動不審だったのは間違いなかったけど、こうなるとは思わなかったですよ。
「楓、エレナちゃんおめでとう。これからも仲良くやるのよ。何か困ったことがあったらすぐに相談してね」
「楓、月村さん本当におめでとう。まさか教え子のプロポーズを目の前で見れるなんて思わなかったわ。末永く幸せにね」
「紅葉お母さん、佳奈お母さん……ありがとう。私とっても幸せだよ」
「紅葉さん、佳奈さんありがとうございます。絶対楓を幸せにします」
続いて2人のお母さんが声をかけてくれた。紅葉お母さんも目に涙を浮かべて、娘の結婚を喜んでくれているみたいだった。
「エレナ、楓ちゃんおめでとう!まさか2人が結婚するなんて初対面の時は思わなかったよ。むしろエレナが殺されるんじゃないかって思ってたぐらいなんだからね」
「ありがとうございます。流石にそれはしませんよ。まぁあの時の事があってこその今だと思います」
「ありがとう。天音と友達で本当に良かったと思うわ。あの時ちゃんと心変わりをするきっかけをくれたのも天音だったわね。本当に感謝してる」
「そんなに褒められても困るって。ほらさゆりもずっと泣いてないで何か言ったら?」
「だって!ホントに良かったって思えたら涙止まらなくて……楓が辛そうにしてたの知ってたからホントにこんな風になれたのが凄いって思ったら……うわぁぁん!楓ホントにおめでとう!!」
「さゆり……心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ。私、今とっても幸せだから」
私は、泣きじゃくるさゆりを優しく抱きしめながら答えた。さゆりとは中学生の頃から愚痴を言い合ってたもんね……ホントに心配してくれてありがとう。
「楓、これで私のプレゼントは終わった訳じゃないのよ」
「え?まだあるの?」
「うん。ジェシカ、お願いしてもいいかしら?」
「任せて!ソフィ!ママ!」
ジェシカが声を挙げるとリビングの扉が開いて中に入ってきたのは……
「え!?ウエディングドレス?」
「そうよ。プロポーズに答えてくれたらそのまま式も上げちゃおうかなって。ダメだった?」
「ううん。すんごく嬉しい……ここまで考えてくれてたんだね。ありがとうエレナ」
「当たり前じゃない」
リビングにいる他の人達からも歓声が上がっていた。誰が見ても純白のウエディングドレス2着は美しかった。
「それじゃまた後で会いましょ。私は、自室で着替えてくるから楓もどこかで着替えてきて。ソフィがやってくれると思うから」
「うん!ソフィさんお願い出来ますか?」
「任せて下さい。では移動しましょうか。客間を一室借りられますか?」
「はい。宜しくお願いします」
私とソフィさんは、ウエディングドレスを1着受け取り空いている客間へと移動した。
「遅れましたがご結婚おめでとうございます。まさかこの歳でウエディングドレスの着付けをやることになるとは思いませんでしたよ」
「ありがとうございます。私もこんな早くウエディングドレスが着れるなんて思わなかったです」
それから服を脱ぐと、丁寧にソフィさんがウエディングドレスを着せてくれた。鏡に写っている自分が、本当に自分なのかと疑うぐらい鏡に写っている自分が綺麗になっていくのがわかった。
「胸のあたりとかきつくないですか?」
「大丈夫ですよ」
「よかったです。これで完成ですよ。確認してみて下さい」
最後にティアラを乗せて貰って、私は再び鏡に写っている自分を見つめ直した。
「綺麗……こんなに変わるんですね」
「女の子皆の夢がつまってますからね。本当にお綺麗ですよ。それではリビングの方に行きましょう。歩きづらいと思いますので私が手を引きますね」
「ありがとうございます」
私はソフィさんの手を掴むとリビングに向けて歩き出した。
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sideエレナ
「無事に成功してホントによかったわね。おめでとう月村さん」
「ありがとうございます。内心ホントに心臓が破裂するぐらいドキドキしてましたよ」
「ふふ、でも今はホントに幸せでいっぱいな気持ちでしょ?私も主人にプロポーズされた時はこんな感じだったもの」
「そうなんですね」
私は、自室でジェシカのお母さんのニーナさんに着付けをお願いしていた所だった。しかし、ホントに楓に指輪を受け取って貰えて良かった。楓が泣きながら私を抱きしめてくれた時なんて、私も喜びの余り涙が零れてしまったし、こんなに大好きな人と結ばれる事が嬉しいだなんて思わなかった。これからは、彼女じゃなくて家族になるんだもんね。そう考えると自然と頬が緩むのがわかった。
「ふふ、やっぱり嬉しいよね。ずっと月村さん笑ってるもの」
「自分でも分かってます。真面目な顔を作ろうとしても今は嬉しくて嬉しくて笑顔しか出てこないです」
「それに今夜は初夜だもんね」
冗談混じりにニーナさんは、笑いながら話す。こういう事を言うのは天音ぐらいだと思っていたけど、まさかニーナさんに言われるなんてね。
「ニーナさんにそんなこと言われるとは思いませんでしたよ」
「あら、私だって女よ?欲ぐらいあるに決まってるじゃない。優しくしてあげるのよ?」
「もちろんです」
そう話してる間に、私の着付けは完了した。鏡に写った自分を見ると、ホントに結婚するんだ……という気持ちになった。
「お父様、お母様、天国で見てくれていますか?今度私の可愛くて優しいお嫁さんを紹介しに行きますね」
「よし!それじゃ行きましょうか月村さん」
「はい」
私は、ニーナさんと共にリビングへと向かった。
sideエレナ終
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「エレナまだかな。早くしてよ緊張で死んじゃいそうだよ……」
私はリビングの扉の前でエレナを待っていた。待っているだけなのに、心臓はうるさいぐらいに音を鳴らしていた。
「お待たせ……凄く似合ってるわよ。一瞬誰かと思うぐらいにね」
「エレナ」
私の目の前にウエディングドレスを着たエレナが立っていた。その姿は、本当にどこかの国のお姫様を連想させるぐらいにとても綺麗だった。
「やっぱりずるいよ。そんなに綺麗な人の横に並べるわけないじゃん」
「何言ってるのよ。ほら、皆待ってるわよ。行きましょ」
「うん」
エレナは、私の手を握るとリビングの扉を開けた……
扉を開けると、皆が2列に並び、拍手で迎え入れてくれた。
「おめでとう!!!」
「おめでとう!!!」
私は、祝いの言葉一つ一つに頭を下げた。そしていつの間にか、私達がプレゼント交換をしていた場所にぽつんと机が置かれ、そこにはニーナさんが立っていた。
「月村エレナさん、あなたは橘楓さんを妻とし、神の導きによって家族になろうとしています。汝健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい。誓います」
「橘楓さん、あなたは月村エレナさんを妻とし、神の導きによって家族になろうとしています。汝健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい。誓います」
私達は、2人の思いを確かめるかのように見つめ合いながら言葉を述べた。
「それでは誓のキスを」
「エレナ……私本当に幸せ。これからもずっと仲良くしようね。大好きだよ」
「楓……私も幸せよ。今、私がここに居るのは楓のお陰だもの。大好き。もう絶対離さないからね」
私達は、永遠の愛を誓い、誓のキスをした。
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3年後……
「彩葉(いろは)、忘れ物確認した?」
「はい。大丈夫です。楓さん行ってきます」
「ママでいいって言ってるのに……行ってらっしゃい」
「まだママとは呼んでくれないみたいね」
「うん。やっぱりまだ難しいかな」
私とエレナは、結婚して3年がたった日に紅葉お母さんが務めている孤児院から女の子を1人預かった。前々から子供は、紅葉お母さんの施設の子を預かろうかと決めていた。何回か通ううちに5歳の女の子が、来る度に私にずっと手を振っていることに気が付き、結局その子を引き取ることにした。内気な性格なのか、まだしっかりママとは呼んでくれないが今では立派な家族だ。名前も橘から月村に変わって、女の子には彩葉と名付けた。
「そうねぇ……ねぇ楓、最近彩葉ばっかりだったじゃない?その……さ?分かるでしょ楓?」
「あのさ……2日前にも同じような事言ってたよね?エレナだってこれから仕事でしょ?」
「分かってるわよ……でもそんな足出しながら家事なんてやってたら目がいっちゃうのは仕方ないでしょ?」
季節は春から夏に移り変わろうとしている6月の半ば。ジメジメとした熱さが続いていて、私も家の中では、ハーフパンツに半袖という軽い格好をしていた。
「ホントにどうしようもないんだから……私が誘ってるみたいな言い方しないでよね……1回だけだからね」
「楓様いつものやつお願いします……エレナをたくさん虐めて下さい」
エレナは、私の前に座ると勝手に私の右足を撫で始めた。ホントにこういう所だけは結婚しても変わっていなかった。
「ホントにどうしようもないんだから……1回しか言わないからね。私の足を舐めなさい!!!」
「エレナ感激です!!!」
まだ私達の結婚生活は、始まったばかり。これからどんな障害が待ち受けているかはわからないが、この人とならやっていけそうな気がした。
to be continue……
長かったこの物語もついに終わりを迎えました……が!アフターストーリーとして彩葉ちゃんの物語を書く予定です。本当にここまで読んでくださってありがとうございました。この物語を書き始めた理由は完全に数人に読んでもらえたらな……という気持ちでした。気が付けばお気に入りが3桁を突破し、評価まで入れてもらえるなんて書き始めた頃は思わなかったです。最後までかけたのも読者の皆様のお陰だと思います。本当にありがとうございました。これからも頑張っていきますので宜しくお願い致します!
https://syosetu.org/novel/200394/
エレナと楓のその後の物語はこちらから!