「久しぶりね一緒に食事なんて。小学生以来じゃない?」
「そうですね、私もあの頃はエレナお嬢様が次期当主などと知らなかったもので随分失礼をしました」
なんか緊張する……ご飯の味がわからない。
「いいのよそんなことわ。ねぇ楓、前みたいに今度からエレナお姉ちゃんって呼んでよ」
「はい……?」
箸に掴んでいた刺身を落とすほどの衝撃だった。一体何がエレナお嬢様にあったのだろう。今朝まではいつもどおりだったのに……
「そんなに驚くことないじゃない。私も寂しいのよ。それに楓だって天音のメイドに大きな屋敷に1人だからちょっと寂しいんだよねって話をしてたらしいじゃない? だったら前みたいに上下関係なくお友達、いえ姉妹みたいな関係にならない?」
天音とは緒方天音。緒方家の次期当主で数少ないエレナお嬢様のお友達だ。主人同士が仲がいいと自然に主人の愚痴など言い合ってメイド同士が仲良くなることが多い。ちなみに天音のメイドは伊集院さゆり。伊集院家は代々緒方家に仕えているらしい。
あーなんで言うかなぁ……エレナお嬢様のお気遣いはすんごい嬉しいけどお姉ちゃんだなんて呼べないよ。恥ずかしいし身分ってものが絶対許してくれるはずもない。
「しかしお嬢様。私はメイドです。いくらお嬢様が良いと言われましても他の方の目もありますし……」
「んーまぁ確かにね。でも貴方は小さい時にここに拾われてメイドになったじゃない? だから血の繋がってない姉妹も同然なのよ!!」
大きな声で宣言するエレナお嬢様。こうなるとお嬢様は聞かない。自分の意見を第一にお持ちの人で、一度決めたら絶対に曲げない。
「本当に宜しいので……? 私としてもお嬢様とお姉妹の関係になれたらとても嬉しくは思います。ですが学校などではやはりお嬢様として接させて頂きます。それで大丈夫ですよね? お屋敷ではお姉様とお呼びさせて頂きたいと思いますので」
「相変わらず楓は頑固だねぇ、お母様がきつく指導するからあんなに可愛かった楓がこんなお固くなっちゃったじゃないまったく。後、お姉様じゃなくてお姉ちゃん!」
自分の聞き間違いだろうか。今お嬢様が私の事を可愛いって言った? え!? あの外見だけはモデル級のお嬢様から可愛いって!?
「あ、あのあのお嬢様が私を可愛いっておっしゃられました?」
「言ったけど?」
「失礼ですけどあの、視力落ちてるようなら眼科に行かれることをオススメします…」
その直後バン!とテーブルを叩いたお嬢様が立ち上がりこちらにやってくる。やばい…気が動転してて失礼なこと言いすぎたかもどうしよ…
「もーう!謙遜してる楓もかわいい!」
待って待ってごめんほんとにわかんない。なんで私はお嬢様に抱きつかれてるの!?そこはビンタして月村家次期当主になんてこと言うの!!じゃないの!?
「え、えっとあのお嬢様、これはどういう…」
「あのね、私が嘘をつかないことぐらい楓だって知ってるでしょ。貴方は私から見ても可愛いの。自信持ちなさいな、今までずっと我慢してたんだからね私。ほんとは堅苦しい話し方も嫌だったしね。お嬢様っていうよりは姉妹って感じで仲良くやろうよ楓。貴方は私がどんなことをしても最後まで付いてきてくれた。そのご褒美でもあるの。メイドから解放されるのよ?」
メイドから解放されてエレナお嬢様の姉妹になる?確かにそれはとても魅力的な話だった。
「えっと姉妹の件は了承しました。私としてもえっと、エレナお姉ちゃんとは仲良くなりたいですし、でもやっぱり家柄というものはありますし、えっと他の方が来られた時に友達口調はやっぱりあれで、それにキツめな性格のお姉ちゃんも私は好きなんです!!って今のは違うんです!気が動転しててえと、あの、ほんとに違くて!ごめんなさい!お食事片付けます!!!」
「ちょっと楓!」
何言ってんだろ私のバカバカ!なんとかお嬢様に納得して貰うような言い方ないだろうかって話しながら考えてたら変なこと言っちゃったよぉ!!これじゃ私がメイドとして残ったのはドMで綺麗なお嬢様に罵ってもらうためだとか思われちゃうじゃん!これからどう接っしたらいいかわかんない!
「楓入るわよ」
「ひゃい!」
どうやら私に逃げ場はないらしい…
楓ちゃんはアホの子