私と天音様
私は物心つく前から緒方家のメイドとして働くことが決まっていて、今年小学4年生に上がり、今はまさにその特訓中だった。
「さゆり!何回言ったらわかるの!食事を出したりする時は物音を立てないの!カチャカチャ音立ててみっともないわよ!」
「ごめんなさい……」
私のお母さんは緒方家の当主の飛鳥様のメイドと言うこともありとても厳しく私にメイドとしてはどーたらかーたらやらうんたらこーたら毎日のように言われ心身疲れ果ててしまっていた。夜は眠れずずっとうなされている状態、だからほとんど寝ていない状態で毎日の稽古をこなしていた。今の食器を運ぶのだって疲れが溜まっていてまともに右手が使えないからだった。
「もういいわ、今日はここまで。自分の部屋に戻ってなさい」
「はい、お母様……」
もう死にたい。私の精神状態はそこまで悪化しているぐらいに酷かった。今日は早く終わって良かったなぐらいに思いながら私は自室へと戻った。小学生ながら一人部屋を与えてもらった私は毎日そこで1人本を読むのが唯一の楽しみだった。
「はぁ……ほんと何でやりたくもないことやらなきゃいけないのよ」
「うわ!?びっくりした!!」
「え?」
何故か私の部屋に私と同い年ぐらいの子供がベットに転がりながら漫画を読んでいた。
「ねぇ!名前なんて言うの!?私は天音!」
自分の事を天音と言った少女は言動のせいか私より歳下に見えた。もしくはそれが年相応なのかもしれないが……私は、小学校でもメイドの勉強をしているせいで友達はいなく周りのことに関心を置かないせいで全くわからなかった。
「私はさゆり、天音は何歳なの?」
「さゆりって言うんだ、宜しくね!10歳だよー。小学4年生」
天音は指を4本立ててにたーっとこっちに笑顔を向けていた。笑顔か……私最後に笑ったのいつだったかな……
「じゃあ同級生だよ、宜しくね天音。それで何で私の部屋にいるの?飛鳥様のお客様の子供かな?」
「宜しく!え?飛鳥は私のお母さんの名前だよ?お屋敷の中お散歩してたらなんか可愛い部屋があるから入ったらさゆりが来たの」
え、飛鳥様の子供……ってことは次期当主じゃん!!!私タメ語使っちゃったよ何してんの!!
「す、すみません!次期当主とは知らずになれなれしくタメ口聞いてしまって……」
「別に大丈夫だよ、同い年なんだよ私達?丁度お屋敷の中暇だったから遊び相手欲しかったの!だからこれから遊んでねさゆり!」
「すみませんありがとうございます。わ、私なんかでよければ宜しくお願いします」
「もータメ語でいいのに……まぁいいや。じゃあまた明日来るね!ばいばい!」
「はい!お待ちしてます!」
太陽みたいな子だったな……笑顔がとても素敵だなって思った。私もいつかあんな風に笑えたらいいな……
次の日から天音様は約束通り毎日私の部屋に遊びに来てくれました。2人でお人形さん遊びをしたり時には外に出てキャッチボールをしたり本当に楽しかった。天音様のお陰か今まで全然寝れていなかったのが嘘のように寝付けるようになった。本当に太陽みたい……セミロングの茶髪は天音様にとても似合っていてより1層その輝きを強めている気がした。私は気付かないうちに天音様に友情と言うよりは恋をしていた。初めて自分に優しくしてくれた人。私を太陽みたいに照らしてくれて、それでいてメイドの稽古の愚痴を真剣に聞いてくれて同性とは言え本気で好きになってしまった。
天音様と遊ぶようになって1年たったある日、それなりに1人前とは言えないが半人前ぐらいのメイドになった私は、お母様に思い切って相談をしていた。
「お母様お話があります」
「貴方からそういった話は珍しいわね、どうしたの?」
「もし、もしですよ……!私がお母様に認められるようなメイドになれたら……その……天音様の専属のメイドになりたいんです!もちろん天音様が私でいいならって言ってくれればですけど……」
「そう……確かに最近仲良く遊んでいるものね。でもそれは無理な話よ。天音様のメイドは私なの。今もね。貴方には悪いけど専属は厳しいわ」
「そうですか……」
まぁそりゃそうだよね……私なんてペーペーが次期当主の専属なんて……
「なんでよ!!」
突然稽古部屋の扉が開かれてそこには天音様が仁王立ちをしていた。
「天音様!?どうしてここに?」
「いつもの時間にいないからここかと思って迎えに来たのよ。ってかなんでダメなの?さゆりに私の専属メイドになってもらえたらってずっと思ってたのよ。そしたらさゆりがなりたいって言ってくれてて本当に嬉しかった。なのにそれを亜里沙は邪魔するの?」
え、天音様も私にメイドやって欲しいって思ってくれてたんだ……私もすんごい嬉しい。好きな人の側にずっといれたらとても幸せだろうなと思って専属のメイドになりたいなんて言ったんだけど天音様もそんな気持ちでいてくれたらなんて思うけどそんなことあるわけないよね。
「天音様がそう仰られるのでしたら……しかしさゆりはまだまだ半人前で今は天音様につけられませんよ?」
「何言ってんの?別に私はメイドとしての能力なんて気にしないよ。ただ私は人としてさゆりが好きなの。だから私の側にいて欲しいからこう言ってるのよ」
「ですが……天音様が友達として好いてくれるているのは本当に私としてもさゆりとしても嬉しいことだと思います。しかし飛鳥様がどう言うか……」
「亜里沙はほんと硬いんだから。お母様の許可はもう取ってあるよ。さゆりが1人前になる間は複数のメイドつけるからって。それに私は友達としてさゆりを好きなわけじゃないよ」
え……好きじゃないって……
「あの、それってどういう……」
私は思い切って天音様に聞いてみた。
「もー!なんで1年も絡んでてわかんないの!こういうこと!」
「ん……」
私は夢を見ているのかと思った。天音様は私のいるところまで走ってきてそのまま私の唇を奪った。唇が触れるだけのキスだったかふわっと甘い香りに包まれてとても幸せだった。
「じゃあ改めて私の恋人になってよさゆり、もちろんメイドも!」
「も、もちろんです!私も天音様の事大好きです!」
私は恥ずかしくてキスのお返しは出来なかったけど天音様に思いっ切り抱き着いた。
「これからずっと一緒だからねさゆり」
「はい……」
お母様は気付けば部屋からいなくなっていた。あの人なりに気を使ってくれたみたいだった。これから毎日が楽しくなりそうな気がして一時的に死にたいなんて思ってたのが本当に馬鹿らしく感じた。