はぁ……楓もやっぱりもう高校生なんだなぁ。まさかエレナちゃんとあそこまで進んでるなんて思わなかったよ。天音ちゃんとさゆりちゃんも恋人同士だって言うし、最近の恋愛事情はわからないや。私も今年で34だしそろそろ再婚とか新しい恋見つけたいな……
私は今月村邸から徒歩で10分ほど離れた住宅街にある一軒家に住んでいる。それもエレナちゃんのおばあちゃんのおかげで家賃も払わなくていいっていうありがたい待遇を受けている。今日は1日仕事も無く暇なので朝から月村邸にお邪魔しようと思う。
◇ ◇ ◇ ◇
月村邸に着くと私はエレナちゃんから預かっている合鍵を使ってお屋敷へと入った。
「お邪魔しまーす、楓起きてる?」
寝室から返事がないのでまだ寝ているんだろう。昨日はお楽しみだったみたいだしね。
やる事もないので洗濯カゴに2人の洗濯物が入れてあったのでそれをさくっと洗濯してテレビでも見ていようとしたのだが……
ピンポーン……ピンポーン
ん?誰だろう。居留守するのもあれだし一応出ようかな。それでエレナちゃんに用なら今疲れて眠っているから、って言って後にしてもらえばいいし。
「はい、どちら様でしょうか?」
『朝早くにすみません。聖チェリチョウ学院の校長の観月と言います。月村さんと橘さんにお話が会って来たんですが会えますでしょうか?』
え!?ええ!?校長先生来ちゃったよ!どうしよう……話って絶対大学の事だよね……
「えーと……まだエレナと楓は寝てまして……先生余り時間取れないですよね」
『もしかしてお母様ですか?そうですね、余り時間は無いので少しお話をしにこようとしたんですが……』
「はい、橘の母です。でしたら私だけでもお話聞いて2人に話しましょうか?」
『ほんとですか!是非お願い致します』
「はい、今玄関開けますね」
なんていうかエレナちゃんと楓から聞いていた印象が違うなぁと私は思った。クールで冷徹のイメージだったんだけど今の嬉しそうな『ほんとですか!』に少し子供らしさも感じられたような気がする。
「どうぞ」
「失礼します、わざわざお母様がお話を聞いてくれるとは思わなかったので私としてもとても嬉しい限りです」
「い、いえいえ」
何この綺麗な人……それが観月先生の第一印象だった。校長先生だって言うからそれなりの年齢だと思ったら、私より絶対歳下でしょこの人……
長い黒髪は毛先まで整っているみたいにサラサラしてそうだし、目はぱっちり二重でその瞳に吸い込まれそうになるぐらいだった。エレナちゃんが大人になったらこのぐらいの美人になるんだろうなぁと思った。
◇ ◇ ◇ ◇
話は昨日の夜に戻ります。
「あぁ!もう!なんで私が大学のじじぃやばばぁにペコペコしなきゃなんないのよ!!」
私、観月佳奈は今年で29になる聖チェリチョウ学院の校長だ。なんで若いのに校長をやっているのかと良く聞かれるがそれは私の母親が前の校長をやっていたからだった。母は私が27の時に病気で他界。それで継ぐ人がいなく私がやる事になった。まぁやってみたらめちゃくちゃ忙しくて普通にOLやっておけばよかったってすんごい後悔してるけどね……それに突然の上からの成績最優秀者の飛び級申請。しかもその最優秀者は飛び級拒否。なんでこうも上手くいかないのか……まぁとりあえず上へ頭下げてなんとか最優秀者の月村エレナが飛び級する条件の橘楓の同伴はクリアしたのだが、電話で言うのもあれだから直接家に行って言って来いとかいうのも面倒くさい。だって世の中は夏休みよ?合コンだって行きたいし早く恋人とかだって作りたいのになんでそんな日に生徒の家に行かなきゃいけないのよ……私は、手早くスーツを着て軽く化粧をして月村邸へと向かった。
◇ ◇ ◇ ◇
「なんだこのお屋敷……流石有名なグループのお嬢様ね……」
家の前につくと私はそのお屋敷の大きさにとても驚いた。しかも聞いた話だとこのお屋敷には2人しか住んでないらしいじゃない。橘さんのお母さんがちょくちょく出入りしてるっていうのは七咲先生から最近聞いたけど……まぁいいや言うこと言ってとっとと帰ろ。
ピンポーン…ピンポーン
『はい、どちら様でしょうか?』
あれ、月村さんの声じゃない気がする。橘さんのお母さんかしら?
「朝早くにすみません。聖チェリチョウ学院の校長の観月と言います。月村さんと橘さんにお話が会って来たんですが会えますでしょうか?」
『えーと……まだエレナと楓は寝てまして……先生余り時間取れないですよね』
まだ寝てるのあの二人……結構私生活はゆっくりなのかしら。分かってるじゃないお母さん!そーなの!時間ないのよ!早く帰りたいの!
「もしかしてお母様ですか?そうですね、余り時間は無いので少しお話をしにこようとしたんですが……」
『はい、橘の母です。でしたら私だけでもお話聞いて2人に話しましょうか?』
「ほんとですか!是非お願い致します」
よかった!これでちゃっちゃっと話して帰ろ。お母さん私の気持ち察してくれそうだしこれならすんなり話進むかも。
玄関を開けてもらい橘さんのお母さんとの初めてのご対面だったのだが……
顔を合わせたのはほんとにこの人子供産んだの?ってぐらい綺麗な人だった。私とそんなに歳変わらないんじゃないかって思うぐらいには見えた。作り笑顔だとは思うけどとても優しそうな笑顔で私を迎え入れてくれてドキッとしてしまった。肩の上まで綺麗に揃えられた茶髪、服の上からでもわかる大きな胸は同性の私ですら目がそこに行ってしまうぐらい魅力的だった。って橘さんのお母さんに見とれてる場合じゃないでしょうが!とにかく話をしなきゃ。
「えっと、月村さんと橘さんから大学への飛び級のお話は聞いていますか?」
「はい、存じております」
「なら良かったです。その件なんですが、橘楓さんの飛び級が大学側に認められました。後日入学案内などを郵送させて貰う予定です」
「ほんとですか!楓も喜ぶと思います!ありがとうございます観月先生!」
やばい……めちゃくちゃ可愛いんだけどお母さん。クールな感じかと思ったら声大きくして娘の進学喜ぶとかギャップ萌えだわこんなん。じゃなくて!
「い、いえ。私としてもとても嬉しいです」
「楓までの進学は大変だったと思います……本当に先生にはご迷惑お掛けしてすみませんでした。私なんかに手伝えることとかあったらなんでも言ってくださいね」
聖母か。まさか何か批判されることがあっても同情されたり感謝の言葉言われるとは思わなかった……そして私は感情の高ぶりのあまり、
「あの……良かったらこの後お食事でもどうですか?学校での娘さんの話とかお母さんに聞いてもらおうかなとか……い、いや迷惑とかだったらいいんですけど!」
わ、私何言ってんだろ、今まであんまり人からこんなに優しくされたことなくてつい食事に誘っちゃったよ……流石にいきなりは失礼だったよね……
「ほんとですか!私学校での楓の事はよく知らないので是非!それに観月先生ともゆっくりお話してみたいなって今日会って少し思っていたので。ちょっと着替えてくるので外で待っててもらってもいいですか?」
「は、はい!わかりました!」
いいのぉ!?どうしようどうしよう……私軽くしか化粧してないし……こんなことならもっとしっかり化粧してくればよかった……
10分もすると橘さんのお母さんは恐らく仕事用のスーツに身を包んでいた。化粧をして身なりをしっかりすると更に綺麗な人だなぁ……
「それじゃ先生行きましょうか」
「はい!あと良かったら外で先生はお堅いので観月さんか、佳奈さんって呼んでほしいです……」
もうこーなったらグイグイ行ってやる!普通にお友達になりたい!私はそんなふうに思っていた。
「じゃあ佳奈さん、でいいですか?私の事も紅葉さんでいいですよ」
佳奈さん……佳奈さん……自分の名前を呼んでもらってこんなに嬉しかった事があっただろうか。それに下の名前教えて貰っちゃった……
すっかり早く帰りたいなんて思いは消えていた観月佳奈だった。
エレナ「ちょっとちょっと、校長先生人変わりすぎでしょ」
楓「美しさの前に人は変わるっていうしね。学校にいる時もこのぐらい感情表に出してくれたらもっと生徒に人気出るのに……」
さゆり「まぁ不器用なんでしょ」
天音「そんなことよりお腹すいたよ、楓ちゃん朝ごはんまだなの……」
楓「あーちょっと待っててください!今作りますんで!」
天音「はーやーくー」
エレナ「ダメ主人どーにかしなさいよさゆり」
さゆり「0に何かけても0ですから……」
エレナ「それもそうね……」
天音「おい!!」