「よし……頑張れ楓。しっかりジェシカに言うんだから」
私は朝早く起き、シャワーを浴びて今日のジェシカへの告白をしっかりする事を決意してお嬢様を起こしに行ったのだが……
「エレナ……何その格好……」
寝息を立てて幸せそうに寝ていたお嬢様は服を着ていなかった。前に私、寝る時何も身につけないのよ。って言われてから風邪を引かれると困るので私が今度からちゃんと着て寝てねって言ったのに……1日一緒に寝ないだけでなんでこうなるの……
「ちょっと起きて!朝だよエレナ!」
「ん……すぅ……すぅ……」
ビクともしなかった。昨日いったい何時まで起きてたんだろ……普段なら軽くゆするだけで起きるのに。
「ちょっとエレナ!間に合わなくなっちゃうって!」
お嬢様には申し訳ないが強く揺すって起こす事にした。遅刻はしたくないし、遅れてクラスに入ると目立つからやなんだよね……
「んん……あ、さ……?」
「そうだよ朝。ご飯作ったから早く起きてよ、冷めちゃうよ?」
「待って……身体が動かないのよ昨日遅くまで起きてたせいで……」
「もー、1日一緒に寝てないだけでダラダラしちゃダメだよ。何してたの?」
「えっと……まぁ色々やることあったのよ」
「後、裸で寝ないでよ?って言ったよね私。風邪ひかれたら困るって」
「その、好きで裸で寝てたわけじゃないんだけど……」
その言い訳は無理があるでしょ……それに何故かお嬢様の顔が少し赤くなっているのも気になった。もしかしてほんとに風邪引いたんじゃないよね?
「エレナ顔赤いよ?ほんとに風邪ひいてないよね?」
「え、楓何するの?」
「いいから動かないで、今見てあげるから」
私はお嬢様のおでこに自分のおでこを合わせて熱を測った。
「よかった。熱はないみたいだよ?ん?なんでそんなに真赤なのエレナ?」
「それ天然でやってるのは恐ろしいわね……なんでもないわ。じゃあ朝ご飯頂くわね」
「ん?はいはーい」
眠たい目をこすりながらお嬢様は、ようやくベッドから抜け出しリビングへと向かった。
「ちょっと服!いつまで寝ぼけてんの……」
「あーごめん……着るの忘れてたわ……」
どうやらまだ目が覚めていないみたいだった。ほんとに夜遅くまで何をしていたんだか……
私達は朝ご飯を食べ終え各自支度を済ませると学校へと向かった。
「ほんとに私ついていかなくていいの?」
「うん。だってジェシカもソフィ連れてこないで1人で私に言ったんだよ?それなら私もしっかり返事返さなきゃ」
「それもそうね、頑張ってね」
「ありがと」
ダラダラ歩いてるうちに気付けば大学は目の前だった。
「どーしよ、緊張する……」
私は教室の前で足が止まってしまった。昨日までならドアを開けてお嬢様をエスコートする事なんて簡単だったのに……
「ちょっと楓?どうしたの?」
「いや、ちょっと入りづらくて……」
「もー、緊張する事ないわよ。ジェシカなら多分堂々としてると思うわよこういう時」
「まぁそうだろうけど……わかりました。お嬢様どうぞ」
私は意を決して扉を開けた。すると……
「あ、楓おはよ!」
1番に私の方に挨拶をしてくれたのはジェシカだった。昨日の事なんて無かったかのような可愛い笑顔だった。
「お、おはよジェシカ」
「講義始まっちゃうよ、早く座りなよ」
「そーだね」
私はジェシカとの会話の時ちゃんと笑えていただろうか、そんな事ばかり考えてしまっていた。席に着くと私はジェシカに昨日の事で声をかけた。
「ジェシカ、昨日の返事なんだけどね」
私は誰にも聞こえないような小さい声で後ろの席のジェシカに話しかけた。
「うん」
「今日の放課後同じ場所で待ってるから来てもらってもいいかな?」
「わかった」
ジェシカは顔色一つ変えずに返事をした。とても昨日赤面しながら話していたジェシカと同一人物には見えなかった。これがお姫様のキモの座り方なんだろうか……
それから講義中、休み時間もジェシカと話すことは無かった。私は、ただ放課後の事で頭がいっぱいでお嬢様のエスコートすらしっかりする余裕すらなかったのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
キーンコーンカーンコーン
私の受ける講義が全て終わった。お嬢様には先に帰っていてもらい、私は1人ジェシカとの待ち合わせの場所の河川敷へと向かった。
「綺麗……こんな綺麗な夕焼け久しぶりに見たかも」
私はジェシカを待つ間、橋からの夕焼けを眺めていた。今日の天気は快晴で雲ひとつなく、太陽が沈んでいく様子がしっかりとわかった。
「ほんと綺麗だよね。私も初めて月村の家行った時の帰りにここからの眺め見てびっくりしちゃったもん」
「ジェシカ……」
気が付けばジェシカは私の横に立ち、同じように夕焼けを眺めていた。それから何分経っただろうか。気が付けば完全に日が落ちて辺りは暗くなっていた。
「ジェシカ、いいかな?」
「うん、ごめんね。悩ませちゃって……」
「ううん、びっくりしたけどジェシカからの気持ちはほんとに嬉しかったよ。私今まで告白された事とか無かったしさ、それで返事なんだけど…………ごめんなさい。やっぱり私の事好きなままでいるのはダメだと思う」
「え!?なんでよ!?月村にも迷惑かけないようにするから!お願い楓……じゃないと私……私……ぐすん……」
ジェシカは先程までの冷静な態度とは打って変わって動揺しているのがわかった。目には涙も見えるぐらいだった……
「ごめんね、でもダメなの!だって私はエレナが好きなの。今だけじゃなくてこれからもずっと、この気持ちは変わることがないと思うって言いきれるぐらい好きなの。ジェシカが私の事を好きなままだったら絶対傷付いちゃうと思うんだ。私もわかるんだもん。好きな人が誰かと一緒にいただけで胸がズキズキするし、なんで私には見せないような顔見せるのって……」
「……そこまで考えてくれたんだ。ほんと優しすぎるよ楓……」
「ジェシカ?」
ジェシカは私に倒れるように体を預けてきた。
「ごめん。ちょっとだけこのままでいさせて」
「わかった」
それから少しするとジェシカは私から身を引きこちらを向き直した。
「はぁ……なんで私叶わない恋なんてしちゃったんだろうね。覚えてなさい楓!あんたが振った事絶対後悔させてあげるから!それじゃまた明日!また友達として仲良くしてよね?」
ニコッといつもの太陽の様な笑顔を向け、ジェシカはピースマークを作って言った。
「うん!また明日!」
これでよかったんだよね?なんだか疲れちゃった……人から告白されるってこんなにも大変だなんて知らなかったよ。お嬢様に昨日冷たい態度取っちゃったし、今日は少し構ってあげようかな。なんて考えながら私はお屋敷へと戻った。
◇ ◇ ◇ ◇
「もしもし香織?ジェシカだけど」
『遅いよー!心配したんだからね!?』
私は家に戻ると真っ先に香織に電話をかけた。今回の結末を聞いてもらうためだった。まさか好きでいてもいいですか?って言ってダメです。なんて言われると思わなかったよ……でも、それも楓が私を傷つけたくないから選んでくれた選択だっていうのがわかってとても嬉しかった。どうせ好きでいていいのも今日までだったし、私は思い切って楓に身を預けた。私の心臓はもうバクバクで破裂しちゃうんじゃないかなと思ったぐらいにうるさかった。でも楓の胸に手を置いてみても心音は一定だった……やっぱり私は恋愛対象じゃないんだなって思ってそこできっぱり諦めようと決めた。これ以上駄々をこねても楓を困らせてしまうだけだしね。
「ごめんね香織。でももう大丈夫!私新しい恋探すから!また手伝ってよね香織」
『無理してない?もちろんあーしはジェシカのためなら何でもするからさ』
「ありがと、ほんとに大丈夫だから。でも月村が本気で羨ましく思っちゃった。私の知らない楓の表情とか知ってるんだろうなぁとか思うと悔しいよね。まぁもう終わった事!とりあえずヤケ食いしたいかも!明日空けといてね香織!それじゃ!」
『え!?ちょっとジェシカ!?』
私は携帯をオフにしてベッドへと放り投げた。
短い初恋だったなぁ……でもこんなに真剣になったのっていつ以来だろ……
「え……どうして……」
私は気付けば涙を流していた。
「なんでよ……もう終わったんだよ。なんで涙が出てくるのよ……ソフィ!いるんでしょ!」
「どうかしましたかお嬢様?ってお嬢様!?どうしたんですか!?」
ソフィは私の泣いている表情なんて見たことが無かったんだろう。いつものソフィからは考えられない慌てぶりだった。
「わからないのよ!ただ失恋しただけでどうしてこんなに涙が出てくるのよ……もうわかんない!」
私は駄々をこねるようにソフィに感情をぶつけた。それをソフィは全てを受け止めようとするかのように、私を優しく抱きしめた。
「お嬢様、ここはお嬢様の部屋で他のものは何一つこの事を知りません。だから泣きたい時は思いっ切り泣いていいんですよ。私はお嬢様の気の済むまでここにいますから」
「ぐず……うわぁぁぁん!!ソフィ!!ダメだったよおお!!」
それからどれだけ泣いただろう。もう人生でこれほど泣く日は無いかもしれないと私は思った。涙を出し切り疲れたのか私はソフィに抱きしめられたまま眠気で意識が遠のいていくのがわかった。
「ここで寝ては風邪を引きますよ。今お運びいたしますね」
「ごめんねソフィ……ありがと」
「お嬢様のメイドなんですから当たり前ですよ。おやすみなさい」
「おやすみ」
私は精一杯の笑顔をソフィに向けて言った。
ジェシカ編終了です。失恋の描写とか初めて書いたんで至らぬ点があるかもです……次回からはまた楓とエレナ中心に書いていくと思いますので宜しくお願いします!