まぁなんで過去回書いたか今回でわかります。
「あ、もしもしジェシカ?どうしたの?」
『どうしたの?じゃないわよ!何も連絡無しに休むんだもんびっくりしちゃったじゃない』
時刻は15時。ほんとうなら私達が大学に行って講義が終わる時間だった。ジェシカは私が何も連絡無しで、休んだのを心配して電話をしてくれたみたいだった。
「普通に寝坊しちゃったんだよね……明日はちゃんと行くから」
『もー、しっかりしなさいよね!じゃあまた明日ね!』
「うん、また明日ね」
「ジェシカから?」
「うん、わざわざ電話してくれるなんて優しいよね」
「ジェシカは貴方にぞっこんだからよ。そーいえばお砂糖切らしちゃったんだよね。これから買い物行かない?」
「私買ってこようか?」
「ううん、私も行くわ」
「わかった。じゃあ着替えて玄関に集合ね」
「りょーかい」
私は部屋着から適当にジーンズとTシャツにパーカーを羽織って玄関へと向かった。一方のお嬢様は、色を黒で統一したコーディネートだった。スラットしたスタイルに合う黒いズボンに少しだけ胸元が空いているシャツを着ていた。
「カラスみたいだよエレナ」
「この方が一般人に見えるのよ。変にオーラ出して2人一緒にいるとこ見られる方がまずいでしょ?手だって繋ぎたいし」
「オーラって……まぁせっかく一緒に出かけるなら手ぐらい繋ぎたいのは私もかな。じゃあついでにこれもつけてよ」
私が渡したものは、前にお嬢様が付けていた紅い眼鏡。もう付けることはないかもって事で私が預かっていたのだった。
「まぁいいけど……楓そのメガネほんと好きよね。もしかしてメガネフェチ?」
「うーん、そういうわけじゃないよ。ただエレナによく似合ってるからさ」
「ありがと、それじゃあ行きましょうか」
「うん!」
私とお嬢様は駅前のスーパーを目指して歩き始めた。行く途中に私達を変な目で見る人がいたけれども、気にせずに恋人繋ぎをしながら歩いた。やっぱり同性で恋人繋ぎは周りから見たらおかしいって考えが普通だもんね……だから学校とかでは、私達は絶対に付き合ってるってバレないようにしているんだけどね。
「やっぱり見られるわね」
お嬢様も同じ事を思っていたのか小声で私に耳打ちしてきた。流石に月村エレナだということはバレていないと思うけど気まずいよね……
「うん……仕方ないねこればっかりは……」
私達は少し沈んだ気持ちで目的地のスーパーへと辿り着いた。
「あれ……」
「どうしたの?」
「勘違いかも知れないけどあの金髪のおっぱいって……やっぱり!詩織さん!!」
私はお嬢様の手を払って駆け出した。お嬢様は何が起こっているのかわからないような顔をして、私のあとをついてきた。
「え?もしかして楓ちゃん!?」
「はい!楓です!お久しぶりです!」
「うわぁ久しぶりだねぇほんと。背少し伸びたんじゃない」
詩織さんは久々の再開からか私を抱きしめて、自分が最後に見た時の私と今の私を比べているようだった。
「そりゃ最後に会ったの中学二年生ですよ?少しは伸びなきゃ困りますよ」
「ふふ、それもそーだね。そちらの方は?」
「え?お嬢様ですよ詩織さん」
それを言った瞬間詩織さんの表情が変わった。
「まだあそこにいるの楓ちゃん……あれだけ辞めた方がいいって言ったじゃない……だってひとりぼっちのメイドさんなんだよ?どれだけ仕事押し付けられるかわからないじゃない……ごめんねほんとひとりぼっちにして……」
詩織さんは目に涙を浮かべながら再び私を抱きしめ、髪を撫でた。
「全く、私も悪く言われたものね」
お嬢様は先程までしていたメガネを外し、こちらに歩んできた。
「あんだけ私達をいたぶってよくそんな事が言えたわね。滝さんなんて鬱になって大変だったんだから……楓ちゃんにまだそういう事してるなら絶対に許さない。それと私が楓ちゃんを引き取る」
詩織さんの表情は鬼のようだった。両手の拳を力いっぱい握り、怒りに震えているようだった。
「ここじゃなんだからお屋敷に1度顔を出してもらえない?流石にこんな所で言い争いはごめんだわ」
「いいわ。楓ちゃんも何か買いに来たんでしょ?それ買ったら3階の駐車場に来て。お屋敷まで私が送っていくわ」
「それは助かるわ」
お嬢様の言葉を聞く前に詩織さんは買い物かごをつんだカートをレジの方へと動かしていった。
「ちょっといいの!?詩織さん本気で怒ってたよ?」
「いいわよ。私が招いた事だから楓は何も口出ししないでちょうだい」
「でも……」
「でももくそもないの。とにかくお砂糖早く買っちゃいましょう」
「うん……」
私は目当ての砂糖を買い終えるとすぐに駐車場へ向かった。
「楓ちゃんこっちこっち!」
「あ!今行きます!」
駐車場の奥の方から声がして、そこに行ってみると……
「うわ、なんですかこの車!?昔テレビでやってた走り屋が乗ってるような車ですよねこれ?」
「そう!R35!かっこいいでしょ!お金だけは無駄にあったから買っちゃった。さ、乗って乗って」
「お嬢様どうぞ」
「ありがと」
私はお嬢様を後ろの席へエスコートすると、詩織さんの希望で助手席に座ることとなった。それからお屋敷に着くまでは誰一人として口を開かなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
「うええ………酔った……」
「そーいえば楓ちゃん乗り物酔い酷かったんだったごめんね」
「い、いえ。すみませんご迷惑おかけして……」
ほんとこの乗り物酔いの弱さなんとかならないかな……
「詩織、入っていいわよ」
「どーも。お邪魔します。……何も変わってないわね」
詩織さんはリビングへ入ると、周りを見渡して、働いていた頃のお屋敷と見比べていたみたいだった。
「ええ、貴方がいた時から何も変わってないわ」
「早速本題だけど、まだ楓ちゃん虐めてるの?私達をいたぶったように。言っとくけど貴方の言葉は信用しない。楓ちゃん、悪いんだけど真実を教えてくれる?悪いけどこの人の言うことの10割信じられないの」
お嬢様の顔が少しだけ引きつったように見えたが気の所為だろうか……ここまで言われて黙っているお嬢様を見るのは初めてだった。それほど自分のしたことに反省しているんだろう。今私がお嬢様が変わったことを証明しますから待ってて下さい。
「いいよねエレナ?」
「楓……そんな話し方したら……」
「いいの。私はこれ以上エレナが傷付くのを見たくない」
もう詩織さんには誤魔化しながら話すのは無理だと思い、私は包み隠さず言うことを決めた。
「楓ちゃん……?今お嬢様をエレナって……どういう事なの?」
詩織さんも信じられないと言った顔をしていた。それはそうだろう。皆が恐れていた月村エレナ様を呼び捨てで読んでいるのだから。
「詩織さんと滝さんから出て2年間弱の間私はひとりぼっちでした。その間ももちろんお嬢様の罵倒が止むことはなかったです。何回も何回も、辞めよう。って思ったことはもちろんありました。でも、私はお嬢様の優しさに気付いてしまったんです……これはお嬢様には言ってませんでしたが、高校の帰りに捨て猫を見つけて拾った事があるんです。今は緒方さんの家にいますけどね。その時のお世話をするお嬢様の顔はとても優しく微笑んでいました。だから根はとても優しい人なんです。それを知ってしまった日から私はお嬢様に、この笑顔を私にも向けて欲しい。その気持ちだけで仕事をしていました。そう祈り続けたら願いは叶ったんです。ある日突然お嬢様から今までの行いを謝られました。メイドももうやらなくていいと……そして今は……エレナ、こっちに来てもらえる?」
「え、ええ」
私はお嬢様を横に呼んでそっと抱き寄せた。
「私の自慢の彼女なんです。それ以来罵倒された事もありませんし、常にお嬢様は私を第1優先で考えてくれるとても優しい人ですよ。もうあの頃の月村エレナはいません。私からは以上です」
「嘘……嘘よ!そんなの有り得ない!楓ちゃん言わされてるんでしょ!じゃなきゃおかしいよ!それに女同士で恋愛なんて有り得ないって!」
詩織さんの言葉に胸がチクチクと痛むのがわかった。女同士で恋愛は有り得ない……か。それはそうだよね……普通の人の価値観ならそう言われても仕方がない。
「でもそれが真実なんです。受け入れてもらうしかありません」
「もういいよ楓ちゃん。なら月村。土下座して私に謝って。そうしたら今までの事も水に流すとは言わないけど楓ちゃんに免じて少しは許してあげる」
「貴方がそう言うなら私はもちろんやるわ」
「エレナ!?ちょっとそんな事しなくても!」
「いいのよ。これは私の過ち。皆の人生めちゃくちゃにしたのは私なのよ……」
お嬢様は泣いていた。私以外の人前では滅多に見せない涙を浮かべて詩織さんの前に立つと……
「本当にごめんなさい……私がした事は到底許されることじゃないと思う。でも私には謝ることしかできないのよ……本当にごめんね詩織」
お嬢様の涙はカーペットを濡らしていた。見ている私まで泣きそうになる……詩織さんの反応は……
「なんでよ!なんで今更……もう遅いわよ……こんなはずじゃなかったのに!あんたは今までの横暴なあんたでいなきゃダメでしょ!そしたら楓ちゃんだって自由にしてあげてあんた困らせようとしたのに!なのに……どうしてよ……」
詩織さんもその場に崩れてしまった……どうやら本当にお嬢様に土下座させる気はなかったみたいだった。
「ごめんなさい……今更改心したって言っても遅いわよね……」
「もういいわよ!なら私もここに復業する」
「え……?どうして……もう貴方は自由なのよ?わざわざ嫌いな人のお世話をする理由なんて」
「勘違いしないで。私がお世話するのは楓ちゃんよ。それでたまたまあんたのお世話をしちゃった場合は仕方ないわ」
「詩織……戻って来てくれて本当に嬉しいわ。また宜しくね」
「ふん、ただ車をチューニングするお金が欲しいだけよ」
「詩織さん!また一緒に働けるんですね!やったぁ!!」
私は子供のようにはしゃいだ。好意を持っていた先輩とまた一緒に仕事出来るのは本当に嬉しいからだ。
「それに楓ちゃんのお世話するんだから今日は久々に一緒にお風呂入ろっか。懐かしいなぁ。小さい頃膝の上に乗せてあげてたっけ」
「ホントですか!?じゃあまた膝の上に乗りますね」
「あらあら、甘えん坊なんだから。エレナは1人で入ってよね」
「え、でも楓とは毎日一緒に入ってたし……」
「ダメよ。付き合ってるのは分かってるけど私の目がある間はイチャイチャなんてさせないからね。健全に付き合ってもらうから」
「そんなぁ……詩織それだけは許して……」
「絶対やだ。じゃあ楓ちゃんお風呂行こっか。バイバイエレナ」
「はい!行きましょう!それじゃねエレナ」
「ちょ、ちょっと待ってよぉ!」
結局駄々をこねるお嬢様を無視して私達はお風呂場へと向かった。
詩織さんのプロフィールをサクッと書いておきますね。
中村詩織.27歳
楓が6歳の頃にメイドとしてお屋敷に入る。
楓の事を実の娘のように可愛がり、楓はあつい信頼と好意を抱いていた。詩織自身も楓の事が大好きで寝る時もお風呂に入る時も常に一緒だった。外見はメイドには見えないような明るい金髪。働いてる時もメイド帽は身につけておらず、それなりに自由に仕事をしていたようだ。これを見て見ぬふりしていたエレナは、やっぱり優しかったんじゃないかな……元レディースの頭だったなんて噂もある。ちなみに楓や天音以上の巨乳。自称Fカップらしい。