「両チーム整列!礼!!!」
「「宜しくお願いします!!!」」
ついに運命の第2種目がスタートした。先行は綾小路さんのチーム。後攻が私達となった。
ちなみに綾小路さん達のチームはこんな感じのスターティングメンバーになっていた。()内は経歴。
1番センター 西山麻里奈
(中学生時代全国大会出場)
2番セカンド宇田恵子
(中学生時代全国優勝)
3番ピッチャー綾小路由紀
(中学生時代全国優勝)
4番キャッチャー乾梨花
(中学生時代全国優勝)
5番ファーストパティ・ソフィ
(西山と同じ。留学生)
6番サード阿部智代
(中学生時代県大会準優勝)
7番ショート大園小春
(阿部と同じ)
8番ライト雨谷奏
(未経験者)
9番レフト青松かなみ
(未経験者)
1番から7番まではガッツリ経験者であった。それも経験者の人の大多数が全国レベルで天音様が悩むのも無理ないなと思った。対する私達のスターティングメンバーは、
1番ショートさゆり
2番キャッチャー天音
3番ピッチャーエレナ
4番センタージェシカ
5番ファースト楓
お嬢様と天音様を除けばほとんどが初心者と変わらないレベルだった。でも私達だってこの短い期間みっちり練習したんだ。勝てる確率が0.1%でもあるなら絶対に負けない。諦めたらそれまでだもん!
『先行チーム。1番センター西山さん』
ウグイス嬢から1番バッターのコールが入った。左の西山さん。確かクラスで1番足が速かったはず。
「麻里奈!手加減いらないからね!1回であいつの心折ってコールドにしちゃお!!!」
向こうのベンチからも大きな声援が聞こえてくる。向こうも本気みたいだ。
「それじゃ初回!!!皆しばっていくよ!!!」
一同「おぉ!!!」
「プレイボール!」
主審の濱田先生から投球開始の合図が出された。気になるお嬢様の初球は……
「ストライク!ワン!」
「ナイボー!」
外角低めのストレートから入ったみたいだ。ちなみにお嬢様のMAX球速は135キロ。球種は縦に曲がるスライダー、フォーク、シュート、スローカーブの4球種と天音様から聞いた。ホントに素人が投げれる球じゃないよね。
相手の西山さんもお嬢様の直球の速さにびっくりしていたみたいだった。
そして第2球……お嬢様が投じたのは外角低めのボールからストライクになるシュート。
その時西山さんのバッドが縦から横に変わった。セーフティバントだ。
「楓!動かないで!!!私が捕るからベースに!!!」
「はい!!!」
一塁線へのセーフティバント。内野が薄い所を狙うのはセオリーだろう。でもこれは読めていた。絶対何処かで狙われると思って練習していたのだ。
「アウト!!!」
お嬢様が一塁線へのゴロを綺麗に捌いて一塁へ素早く送球してアウトとなった。
「ワンアウト!」
一同「ワンアウトォ!!!」
大きな大きなワンアウトだと私は思った。このメンバーでもアウトはしっかり取れるという事実が分かっただけでもとても大きい。
『2番セカンド宇田さん』
「恵子!!!ちょっと来なさい!!!』
突然、ネクストの恵子さんを綾小路さんが呼んだ。なんだろう……とても嫌な予感がする。
考える間もなくお嬢様は、セットポジションに入った。初球を投げた!
「!?また!?楓!」
「はい!」
また相手打者は、セーフティバントを試みたようだ。
「アウト!」
しかしこれもアウトとなる。それに2番の宇田さんは、西山さんより走力は劣っていたはず……なんでわざわざアウトカウント献上するようなこと……
『3番ピッチャー綾小路さん』
今回はないよね……しかし、私の嫌な予感は的中した。カウント3ボール2ストライクまで綾小路さんは一球たりとも振らなかった。そして第6球目。
コン………
「っ!楓!」
「はい!!!」
3者連続一塁線へのセーフティバント。それもわざとお嬢様に取らせるような打球。アウトは取れてるが、お嬢様の消耗はあからさまだった。
「スリーアウトチェンジ!!!」
三者凡退したというのに向こうのベンチには余裕が見えた。それもそうだろう。まだ確信はないが、綾小路さん達は確実にお嬢様を潰しに来てる。
ベンチに戻るとすぐにお嬢様に相手チームの意図を伝えようとしたのだが……
「わざわざ私潰そうとしてアウトカウントくれるなんてあの子も優しいところあるじゃない。このまま21アウト貰って7回完封しようかしらね」
「あんたね……倒れてもらったら困るんだからきつくなったら言いなさいよ。こうなったらなんとしても先制点取るしかないよ。相手慌てさせて普通に攻めてもらわなきゃ」
「ですね」
「うん」
「私も頑張るよ!」
とにかく先制点を。皆の意識はこれだけだった。仮にお嬢様が潰されたら試合が9割決定したと言っても過言ではないだろう。
『1番ショート伊集院さん』
「それじゃ行ってくる」
「さゆり頑張れ!!!」
「さゆり先頭大事だよ!!!」
「さゆりお願い!」
ベンチの皆から声が飛ぶ。お嬢様は、タオルを額にあててベンチで休んでいるようだった。ホントに大丈夫だろうか……
「エレナ大丈夫?」
「大丈夫よ。逆にアウトカウントをくれる今がチャンス。向こうはわざわざ与えなくていいアウト与えてるんだからね。ほら、私の事はいいからさゆりちゃんの事応援してあげなさい」
「わかった……」
お嬢様の事は心配で仕方がなかったが、お嬢様にそう言われてはさゆりの方に意識を向ける他ないだろう。
中学生時代の綾小路さんのデータは、ストレートは120キロとそこまで速くはない。けれども5種類の変化球を完璧にコントロールして、打者を打たせてとるタイプのピッチャーだった。確か球種はツーシーム、スライダー、チェンジアップ、シュート、スローカーブだったかな。
「ストライク!ワン!」
インローのスライダーだろうか、厳しい所に決まりワンストライクとなる。
「打てない球じゃないよ!」
綾小路さんの第2球。
カキーン!!!
インハイのストレートを綺麗に叩きつけての、三遊間をやぶるレフト前ヒットなった。
先頭打者が出た!天音様!!
「ナイスバッティング!!やるじゃん!!」
さゆりは、一塁上で小さくガッツポーズをしていた。恐らくインハイのストレートで体を仰け反らして外角に逃げるスライダーでも投げようとしたのかもしれないけど、さゆりがそうはさせなかったのかな。いきなりランナーが出ると思わなかった私達は、一気に声援のボルテージがMAXになった。
「ったくヒット1本でギャーギャーうるさいのよ。梨花、もう面倒くさいからあの球使うわ。あいつら黙らせるよ」
「了解です。でもいいんですか?早すぎる仕掛けは相手に立ち直らせるチャンスを与えかねませんが」
「いいのよ。月村さえ潰せばこっちの勝ちは揺るがないわ。私達に喧嘩を売ってきたこと後悔させてやるわ」
先頭が出たところでキャッチャーの乾さんがマウンドへと駆け寄っていった。なんで?サインの確認だろうか。嫌な予感がする。
『2番キャッチャー緒方さん』
「天音様!!!お願いします!!」
「任せて!あんな遅いボールいくらコントロールが良くても怖くないよ」
こちらにブイサインを見せて天音様がバッターボックスへと入っていった。
「さてと、天音なら心配いらないだろうし私もネクストに入らなきゃね」
「無理しないでよ」
「大丈夫よ。絶対先制点取るわよこの回」
お嬢様は、ネクストバッターズサークルにゆっくりと腰を降ろしていた。しっかりピッチャーの綾小路さんから目を離さずに観察しているようだ。
天音様への初球。
「ボール!」
スライダーが外側へ外れてワンボール。よし。天音様は見えてる。これなら連打でお嬢様に回せるかも!
「全国レベルがそんな球なわけないよね?そんなんじゃ私達がコールド勝ちしちゃうよ?」
「あんま大きな口叩かない方がいいわよ緒方天音。貴方は、いえ、ここから先ランナーが出ることはないわ」
「そんなへなちょこ球で言われてもね」
「まぁ見てなさい」
ベンチからでは、何を言っているか分からないが、何やら天音様と綾小路さんとの間で会話が行われていたようだった。
そして第2球を投げる直前だった。ネクストに座っていたお嬢様が突然声を上げた。
「天音!それを振らないで!!!」
ボール!チェンジアップだろうか、遅い玉がホームベース後方でワンバウンドし、ツーボールとなる。
「っ!?サンキュエレナ。もう少しで振ってたよ」
私目線だと何が起きているかわからなかった。ベンチにいるジェシカも何があったの?といった表情をしていた。
「よく見たじゃない。今のは褒めてあげるわ」
「そんな球投げれるなんて聞いてないわよ」
「私が野球から完全に手引いたと思ってたら大間違いよ。次行くわよ」
何が起きたかわからないまま、綾小路さんは第3球を投げた!
「ストライク!ワン!」
また遅い球。こちらから見たら真ん中付近の甘い球に見える。しかし、何故か天音様は表情を曇らせていた。
「エレナ!なんであんなに天音様は、追い込まれたような雰囲気になってるの?それにさっきなんで声を上げたの?」
「ナックルよ。あれは、ただ遅い球ってだけじゃないわ」
「ナックル……?それってどんな変化球なの?」
「どんなって言われると難しいわね……ようは、無回転ボールなのよ。空気抵抗の影響をほとんど受けないから、揺れるように落ちたりする。下方向には曲がるけどそれからは、投げた本人もキャッチャーも最終的にはどこに来るかわからないの。それにあの子のナックルは急造されたものじゃない。洗練されてるわ。ストライクゾーンに入れるのだって相当な練習が必要よ。もちろん並の投手に投げれる球じゃないからね」
「そんな……」
「でも必ずチャンスはくるわ。なんとかして突破口を見つけましょう」
「うん」
そして第4球を投げた!
カキッ…!
「やば!」
アウトローのナックルに強引に食らいつくが、バットの根元に当たり、力のない打球がサード前方に飛んだ。
「ファースト!!」
「アウト!」
打球の勢いが死んでいた事が幸いして進塁打となった。これでワンアウト2塁。スコアリングポジションにランナーを置いてお嬢様との対決になる。
「ごめんエレナ任せた!想像以上にやっかいよあのナックル」
ベンチへと戻ってきた天音様が、お嬢様に声をかけていた。でもお嬢様ならきっとやってくれる。私は、信じてバッターボックスに向かっていくお嬢様を見つめていた。
『3番ピッチャー月村さん』
「キャーーーーーーー!!!エレナ様ぁぁ!!!」
一塁側頭上に陣取っていたお嬢様のファンの人達からも歓声が大きく上がっていた。お嬢様お願いします。
いつまで経っても綾小路さんは、セットポジションに入らず、どうしたんだろうと思っていたら、お嬢様がバッターボックスで構えた瞬間に綾小路さんが右手を上げた。
「濱田先生!そいつ敬遠します!申告敬遠!わかりますよね?」
「え!?あぁ!はい!じゃあ月村さん一塁へ」
「っち。私がそんなに怖いのかしらね」
「別に。セオリーでしょ。わざわざ経験者と勝負する必要がどこにあるのかしら」
「天音様なんでエレナが一塁に?」
「最近できたんだけど申告敬遠ってルールがあってね。審判に告げれば打者は四球扱いになって一塁に強引に歩かされるのよ。まぁエレナと勝負して打たれるリスクが少しでもあるなら確かに正しい判断ね……」
「そんな……ジェシカ!!!頑張って!!!」
動揺していたのだろうか、ジェシカはネクストバッターズサークルであたふたとしていた。とにかくワンアウトランナー一二塁。チャンスには変わりないんだ。私かジェシカでなんとかしてさゆりを返す!
『4番センタージェシカさん』
「ジェシカ!ナックルは捨てなさい!自分が打てると思った球だけ打つのよ!!」
一塁上のお嬢様からも声が飛ぶ。そうだ無理にナックルを狙わなくてもいいじゃないか。
第1球をセットポジションから投げた!
「ストライク!ワン!」
「速い!?球速はそんなんじゃないって聞いてたのに!?」
綾小路さんが投げたボールはお嬢様と同じぐらいのスピード。球場のスピードガンでは137キロを計測していた。
「だからこれ以上打たせないって言ったでしょ!!!」
「ストライクバッターアウト!!!」
「ナイスピッチング綾小路さん!ツーアウト!!!」
ジェシカは、結局1度もボールに触れることなく3球三振となった。
「楓ごめん……」
「大丈夫。お嬢様ぐらいのスピードなら打てないこともないと思うから」
『5番ファースト橘さん』
絶対打つ。大丈夫。お嬢様のボールを1番見てきたのは私だ。そのぐらいの球速なら打てるはず。
「楓!!!頑張って!!!」
「絶対打つよ」
私は、主審の濱田先生に一礼して打席に入った。勝負は初球。きっと直球にタイミングが少しでもあってると思われた瞬間変化球で責めてくるだろう。そうなれば打つのは容易ではないだろう。
綾小路さんが初球を投げた!!!
ストレート!!アウトロー!!
「お願い!!!」
カキーン!!!
「当たった!?」
打球は快音残して右中間を破っていった。
「はぁ!?センター!バックホーム!!!」
2塁のさゆりがホームインして、1塁ランナーのお嬢様も3塁ベースを蹴って本塁に突っ込んだ!
センターからセカンドへ、そしてセカンドが本塁に送球しようとした時には悠々お嬢様は、本塁に到達していた。
「楓!!!大好きよ!!!ナイスバッティング!!!」
打てた……あの綾小路さんから。私は、嬉しさのあまり2塁上で大きくガッツポーズをして一塁側のベンチの皆へ笑顔を送った。
尚、ツーアウト2塁で打席にはさゆりが立っていた。
「さゆり打てるよ!!!」
しかし、そう上手くはいかず……
「ストライクバッターアウト!!!スリーアウトチェンジ!!!」
ナックルは、投げてないにしても変化球と速い直球の組み合わせでさゆりは、空振り三振に倒れた。
ベンチへ戻るとお嬢様が右手を出して迎え入れてくれた。
「ナイスバッティングだったわ楓。これで後は私に任せて頂戴。守備頼むわね。きっとまたあの戦法で来るはずよ」
「わかった。エレナも無理しないでね」
『2回の表、先行チームの攻撃は、4番キャッチャー、乾さん』
まだ試合は始まったばかり。ここから綾小路さん達の逆襲が始まるとは、この時は誰も知らなかった。
カービーさん最高評価ありがとうございます!ホントに嬉しいです!
感想、評価など宜しくお願い致します!!!
日間ランキング浮上もとても嬉しかったです!