私の足を舐めなさい!   作:足でされたい

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相変わらずシリアス苦手マン


クリスマスに向けて⑤

『もしもしエレナ?今大丈夫?』

 

「えぇ、大丈夫よ。滝さんの件かしら?」

 

『うん』

 

時刻は23日の10時。私は、客間でプロポーズの言葉をどうしようかと頭を悩ませていた。シンプルに結婚して下さいでいいのか、それとも少し変化を加えた方がいいのか、などで頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。早いものでクリスマスパーティはもう明日に迫っていた。考えが決まらないと悩んでいたところで詩織から電話がかかってきた。

 

「なんだって?」

 

『私同伴で会ってくれるって、エレナの今の現状は包み隠さず話したわ。楓ちゃんと恋仲になってることもね。めちゃくちゃ驚いてたわよ。一体何が起きてるかわからないって。薬でも使ったんじゃないの?って言われてるぐらいよ。それでも行くの?向こうからのエレナの信頼は0どころかマイナスよ。いいの?』

 

「大丈夫よ。それは分かってる。それでも私は絶対やらなきゃ行けないことだと思うから……」

 

『そう……なら今から迎えに行くわ。準備だけしておいてね。辛くなったらやめていいんだからね?』

 

詩織らしくもない心配の言葉。きっと電話で詩織も何か言われたんだろうな……ごめんね私のせいで……

 

「大丈夫よ。ありがとね詩織」

 

『いいのよ。それじゃね』

 

「うん」

 

そう言うと電話は切れた。詩織の事だ。きっと30分もしないうちに私の所へ来るだろう。急いで準備しなくっちゃ。

 

「出かけるの?」

 

ノックもせずにジェシカが顔を見せていた。きっと電話の最中に暇になって来てみたら私が電話をしていたから声をかけづらかったんだろう。

 

「ええ。ちょっと昔のメイドのとこにね」

 

「大丈夫?顔色悪いよ」

 

「大丈夫よ。私を誰だと思ってるの……ジェシカ?もう……私は、貴方の恋敵なのよ。そんなに優しくしてどうするのよ」

 

私の顔色がそれほど悪かったのか、直感できつい事がこれからあると思ったのかは分からないが、ジェシカは優しく私を抱きしめた。突然こんな事をされて私も動揺せざるを得なかった。

 

「今の月村見てたらこうしたくなったからしただけだもん。頑張って来てね。美味しいご飯ソフィにお願いしておくから」

 

「ありがとう。少しだけだけど元気出たわ。それにしてもこう抱き着かれるとホントに小学生みたいね」

 

「もー!!!早く行きなよ!!!バカ!!!」

 

抱きついていた腕を離すとバタンと音を立てて扉を閉めて出ていった。

 

「私はホントに恵まれてるわね。こんなに周りに優しい子がいるんだもん。さてと……行くわよ月村エレナ」

 

気を引き締め直すと、私は玄関を出て詩織の到着を待った。

 

数分もすると、いつもの35のエキゾースト音がこだまし、詩織が来たことを伝えてくれた。ホントに深夜にあの車走ってたら近所迷惑で通報されかねないわね……

 

「ごめんちょっと待たせたかな?」

 

「大丈夫よ。行きましょ」

 

「うん」

 

私が助手席に乗り込むやいなや、すぐに詩織は車を出した。

 

「緊張してるかと思ったらそうでもないみたいね。顔色普通だもん。流石エレナって感じだね」

 

「ちょっとお姫様から施し貰ったからね。それに助けられたわ」

 

「お姫様?ジェシカから何か貰ったの?」

 

「ふふ、あの子らしくもないことよほんとに。私の顔色がよっぽど悪かったんでしょうね。優しいハグだったわ」

 

「可愛いじゃん。何で私にはしてくれないんだろ」

 

「胸が邪魔でハグしずらいんじゃない?」

 

「全く。まぁ元気みたいで良かったわ。後数分もしたら着くと思うから、言葉少しは考えときなさいよ」

 

「そうするわ」

 

表面上は、余裕っぽく見せてはいるが、内心は心臓が破裂するんじゃないか?っていうぐらい緊張していた。一体どういう風に謝罪をすればいいのか、私の顔を見て滝さんはどう思うのか気になって仕方がなかった。

 

「着いたよ。ここが今は滝さんの住んでるところ」

 

「普通の一軒家ね」

 

詩織が車を止めた目の前には、何の変哲もない一軒家が建っていた。滝さんの家は住宅街の一角にあった。

 

「エレナは下がってて。1回私が出るわ」

 

そう言うと詩織は、玄関の門の前にあるチャイムを鳴らした。

 

ピンポーン……ピンポーン……

 

『滝ですが』

 

久々に聞いた滝さんの声。何年も聞いていないかったがすぐに滝さんだとわかった。

 

「詩織です。エレナも一緒に来ています」

 

『今開けるわ。ちょっと待ってて』

 

数秒もすると玄関の扉に人影が映っていた。久々の再会。いつも通り普通の顔をしなきゃ……そう思っていても顔は強ばる一方だった。

 

「久しぶりね詩織。それにエレナ様。寒かったでしょ?暖房入れて置いたから早く」

 

「ありがとうございます。何突っ立てんのよ、行くよエレナ」

 

「え、ええ」

 

私は滝さんの家に足を踏み入れた。中はそれなりに広く人がすれ違う分には全く問題ないぐらいの廊下が目の前にあった。廊下を真っ直ぐ進んだ先がリビングだろうか。扉を開け、滝さんは中に入って行った。

 

「そこに座って。今温かいものいれるから」

 

「ありがとうございます」

 

私は、素直に椅子に腰掛け滝さんを待った。詩織も同じように私の隣に腰を下ろした。

 

「お待たせ。二人ともコーヒーで良かったかしら?」

 

「はい」

 

「私も大丈夫です」

 

「それじゃ詩織、それにエレナ様」

 

私と詩織の前にマグカップが差し出された。わざわざ温かいものまで入れてくれるなんて……と感動していたのだが……

 

「え、滝さんこれってお湯じゃ……」

 

「何詩織?貴方にはお湯に見えるの貴方に渡した物も、エレナ様に渡したものもコーヒーよ。そうですよねエレナ様?」

 

「間違いないです。頂きます」

 

間違いなく詩織に出された飲み物はコーヒーだった。しかし、私の前に差し出されたのはただのお湯だった……このぐらいはされるよね……私がやってきたことなんてこれの何倍も酷かったんだし。

 

「お口に合いましたかエレナ様」

 

「えぇ。わざわざありがとうございます。心遣いに感謝します。もう私はお嬢様ではないので、様なんて付けなくてもいいですよ」

 

「それもそうね。じゃあ単刀直入に聞くけど何しに来たの?正直に言うけど貴方の顔なんて見たくなかったわ。貴方の下について仕事をしていた時間はホントに無駄だったと思う。何をしても怒られ、納得のいかないことがあるとすぐに八つ当たりで私や詩織や楓ちゃんに当たっていたわよね?確かに丸くなったんでしょうよ。今貴方の隣に詩織がいることが全てそれを証明していると思うわ。でもね、私は貴方を許す気はないわ。帰って頂戴」

 

「滝さん!そんなに言わなくても!」

 

「詩織は黙ってて!いくら丸くなろうが月村エレナは月村エレナよ。許せるわけがないじゃない」

 

「滝さん……」

 

滝さんは、椅子から立ち上がると私を睨みつけながら激昂していた。詩織が止めに入るもその勢いは止まるどころか加速していく一方だった。

 

「だいたい何よ同性婚って!しかも相手は楓ちゃん?冗談じゃないわよ!昔から楓ちゃんには時々甘いと思ってたとは思ってたけどそういう事だったわけ?一体楓ちゃんに何したのよ!ねぇ!答えなさいよ!何かの薬でも飲ませたんじゃないの!?黙ってないで喋りなさいよ!!!」

 

「っ……!!!」

 

「滝さん!!!」

 

滝さんは、私の方に向かってくると髪を引っ張りあげ、私の頬を叩いた。人から思いっきり叩かれたのなんていつ以来だったかな……

 

「詩織いいのよ。滝さんを離して上げて」

 

「でも!」

 

「いいの。これは私が受けなきゃいけないことだから」

 

「そりゃそうよね!人の事を散々好き勝手にしてくれた挙句に突然謝りたい?ふざけるのもいい加減にしなさいよ、ね!!!」

 

「本当に人生をめちゃくちゃにしてしまってすみませんでした。許して貰おうとは思っていません。本当にすみませんでした」

 

「うるさい!!!」

 

それからも滝さんは、私をぶつ手を止めなかった。私は、ひたすらに床に頭を付け謝り続けた。

 

「はぁ……もういいわよ。詩織、その人を連れて帰って」

 

「はい……エレナ、もういいよね?」

 

「えぇ……滝さん。失礼します」

 

「二度と顔を見せないで」

 

そう冷たく言い放つと滝さんは、リビングから出ていった。

 

詩織の車に戻ると、私は、叩かれた頬や腕を、詩織の車に積んであった救急箱から湿布を取り出して冷やしていた。

 

「派手にやられたわね。やっぱり止めた方がよかったんじゃないの?綺麗な顔腫れちゃってるじゃん。明日その顔でプロポーズする気?」

 

「別に大丈夫よ。1日冷やしてればこのぐらいの腫れすぐに引くわよ。まぁでも……ちょっとここまでやられるとは思わなかったかな……詩織、ここから先は何も見なかったことにして欲しいんだけどいいかしら?」

 

「分かった。ここからジェシカの家に帰るまでは、エレナがいないことにするわ」

 

「ありがと……ダメだった……楓ごめんね。ホントに私ダメなお嬢様だったよね……っ……」

 

私は泣いた。内心どうにかなると思っていた所もあった。一生懸命謝ってどうにかなるわけないのにね。何年間滝さんを苦しめていたのかと思うと、ホントに自分の行った行為が頭の中で何回も再生され、更に苦しくなった。

 

「これは、私の独り言。楓ちゃんからエレナの愛は間違いなく本物よ。私と再会した時に強く分かったわ。私に怒鳴られるエレナを守ったのは誰?楓ちゃんだっだでしょ?仮に楓ちゃんとエレナが偽りの恋愛ごっこをしていたのならそんな風には守れないと思う。だから自信持ちなさい。滝さんは怒りに我を忘れて酷いこと言っただけよ。楓ちゃんにはエレナ。エレナには楓ちゃんが1番お似合いなんだからしっかりしなさい。独り言終わり」

 

「詩織……ありがとう」

 

私は、詩織の肩に頭を寄せ、そのままジェシカの家に着くまで身体を預けた。

 

「エレナ、いつまでくっついてるのよ。私が楓ちゃんに怒られるじゃない」

 

「ごめんなさい。着いたのね?」

 

「うん。それじゃ明日までに顔の腫れ治してきなさいよね」

 

「ありがと。絶対明日成功させて見せるから期待してね」

 

「はいよ」

 

そう言うと、詩織は楓が待っているであろう我が家へと戻って行った。

 

「さてと……この顔どうジェシカに説明しようかしらね……」

 

この後ジェシカに顔を見られ、屋敷中に響くような甲高い声で「誰か!!!エレナが怪我してる!!!早く!!!」なんて言うものだから、お屋敷が一時騒然となった。まぁその悲鳴のお陰で、メイドさん達に顔や腕に湿布を巻いてもらったり、付きっきりで手厚い介護を受けたおかげで腫れは深夜には収まっていた。いよいよ明日運命の日。待っててね楓。

 

 




次は日にちを少し戻して楓視点になります。

最終話まであと少し。もう少しだけお付き合いして頂けると嬉しいです。
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