【完結】ピンクの悪魔よ、この忌々しい世界に制裁を!   作:Mk-5

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カービィが異世界転生したらどうなるのか?お楽しみに!
※ここでのカービィは頭脳明晰で真面目な感じです。
読むにあたって以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ


第01話 異世界に来ちゃった

ボクはカービィ。プププランド出身だよ。

どういうわけだか知らないけれど、今ボクの目の前には青い髪の女の人がいる。

 

「えっと…まず貴方は何者なの?」

「ボク、カービィだよ!」

「へぇ…そう。で、どうやってここに来たの?」

「分からないよ。リンゴを取ろうとして崖から落ちて、いつの間にか来ちゃったんだ」

「なるほど、そして私の頭の上に落ちてきたと…」

 

女の人は頭をさすっている。そんなに痛かったのかなあ?

 

「それで、キミは誰なの?」

「おっと、自己紹介してなかったわね。私はアクア。ここを取り仕切ってる女神よ」

「ふ~ん…」

「いや、『ふ~ん』ってそれだけ!?もっとさこう…敬おうとかそんな感じにならないの!?」

「いきなりそんなこと言われても、実感湧かないし…」

 

女神を自称している「アクア」という人はボクの言葉にショックを受けていた。

けれど、いきなり女神を自称する人に会ったとしても、それを一発で真に受ける人っていないと思うな。

 

「ところで、アクアはここで何してるの?」

「何って…不幸な事故で若くして死んだりしている子に異世界転生という道を与えてるの!」

「イセカイ…テンセイ?」

「そう!天国には娯楽がなくて一日中のんびりお話するだけ。普通の転生だと記憶を失ってしまう。そこで記憶そのままに転生できる異世界転生の出番ってわけ」

「そうなんだ…それじゃ、ボクはどうなるの?まだ死んでないと思うんだけど」

「それにつきましては私がお答えします」

 

今度は背中に羽を生やした人が来た。多分天使なんだろうけど。

 

「実は、その異世界というのが、少し困ったことになってしまって…」

「困ったこと?」

 

その人が言うには、異世界では「魔王」が暴れてて、死んだ人はトラウマから転生を拒否してしまい、魂の総量が減ってヤバい状況らしい。そこで試験的に他の世界の住人も転生できないか試していたんだって。

どうやらボクは、その実験に巻き込まれて、生きたままこっちに来ちゃったらしい。

 

「こんなことに巻き込んでしまって申し訳ないのですが、どうか魔王を倒すのに力を貸してはいただけないでしょうか?」

「力を?」

「そう!もし倒せたら何でも願いをかなえてあげるわよ」

「何でも!?」

 

ボクはこれでもプププランドの危機を何度も救ってるから、魔王倒すとかは別にどうでもいい。何でも願いをかなえてくれるのか。

食べ物に困らない生活は必須だよね。あと元の世界に戻ることも必要だし、それから…

 

「あの…夢を膨らませているところすみませんが、叶えられる願いは1つだけですので、念のため…」

「え~、1つ?そこをなんとか2つにできない?」

「そういわれましても、そういう決まりですから…」

「なにそれ!ボクは被害者なんだよ!?何かしら責任取るもんでしょ!?神様なら皆の見本になるべきじゃないか!!」

 

ボクがちょっとキツく言うと、アクアはビビッて座っていた椅子ごと後ろに倒れた。

こんなことでそこまで驚くなんて…本当に女神なの?

天使はしばらく思案顔になり、アクアは立て直した椅子の陰に隠れて成り行きを見守っている。

 

「…ではこうしましょう。異世界転生するにあたり、転生特典を2つ差し上げます」

「特典?」

 

ここでアクアが椅子の陰から出てきて座り直し、さっきと同じ感じになった。

 

「そう。異世界転生するといっても、素の状態じゃ何もできないでしょ?だから特別な武器やアイテムを特典として与えるの。これが特典の載ってるカタログだから、決まったら教えてね」

 

アクアはカタログを乱暴に投げてきた。扱いが雑すぎるよ…。

しかもスナック菓子食べ始めたし。

それにいきなり選べと言ったって…アドバイス聞こうにも、アクアは当てにならないな。

 

「ねえ、天使さん。おすすめとか無いの?」

「オススメですか?そうですねー…」

「何選んだって一緒よ。早く選んでよね」

 

真剣に選ぼうって時にアクアが水を差してきた。

というか何なのあの投げやりな態度。

あんなのが女神でいいの?

 

「カービィさんは武器と装飾品、どちらを優先しますか?」

「装飾品って?」

「簡単に言えば、身に付けるタイプの魔法アイテムです。戦闘の際に能力補助や魔法に特殊効果を付けたりもできます」

 

そうか…。

ボクには「コピー能力」があるから攻撃は後回しでもいいか。

 

「じゃあ装飾品のおすすめは?」

「これなんていかがでしょう?『流星の腕輪』。素早く動けるようになりますし、物理・魔法全般の攻撃も速くなります。更に魔力消費を4割ほど抑え、軽めですが状態異常耐性も付きます」

「ん~じゃそれ貰おうかな」

「承りました」

「あ、でもボク腕短いけど…大丈夫かな」

「問題ありませんよ、ホラ」

 

天使がボクの左腕を指さすので見てみると、いつの間にか腕輪がはまっていた。

流れ星があしらわれた腕輪…「星の戦士」と呼ばれたボクにはぴったりだ。

ボクが満足感に浸っていたら、またアクアが水を差してきた。

 

「ほら、早くもう1つも選びなさいよ~」

 

流石にカチンときた。

 

「何でキミはいつも適当なんだよ!カタログ渡すだけ渡してオススメも何もせず、急かすことしかしないなんて!」

「だから何選んだって同じって言ったじゃな~い。アンタ人の話聞こえてないの?耳悪いの?プークスクス」

「そんな態度でやってるから転生したい人が出ないんだよ!こんな女神の面汚しなんかのせいで下らない実験に巻き込まれるなんてジョーダンじゃない!!」

 

ボクはアクアに殴り掛かった。

アクアは泡食って逃げようとしたけれど、ボクはすぐに追いつけた。身長差はあるのに…これは腕輪のおかげかな?

怒りに任せてアクアをボッコボコにして泣かせたボクだけど、まだ怒りが収まらずに思わず叫んだ。

 

「もーいい、決めた!!2つ目はこの女神の面汚しだ!こんなのが女神として居座ってるなんて納得できない!追放の意味でもコイツを連れて行く!」

「その要求、確かに承りました!」

「「ええ!?」」

 

ホントにいいの?冗談のつもりだったのに…。

ボクの足元に青い魔方陣が出現し、天使がアクアを引っ張ってくる。

 

「ちょっと離してよ!女神の私にこんなことするなんて!」

「今まで散々人をバカにしてきた報いよ!これに懲りたらちゃんと仕事するよう努めなさい!」

「…一応確認なんだけど、ホントに大丈夫なの?」

「勿論です。彼女の後輩であるエリス様が代理を務めますので」

「そう。じゃいっか」

「いっかじゃないわよ!ふざけんじゃないわよ!!」

「で、転生した後はどうすればいいの?」

「まずは冒険者ギルドに向かうことです。場所はすぐにわかりますよ。それでは、カービィさんが魔王を打ち倒すことを祈ってますよ!!」

 

その声と同時に周りを光が包んだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

気が付くと、ボクとアクアは街の中にいた。

アクアと同じような背格好の人たちがいっぱい。

建物もプププランドのとは全く違う。ホントに異世界に来たんだ。

幾多の冒険をしてきたボクにとっては、異世界に来た不安よりワクワク感でいっぱいだ。

 

「ああ…あああ…」

 

力の無い声が聞こえた方を振り向くと、アクアが絶望したような顔で立ちすくんでいる。

仕事は適当みたいだけど、神様なら何かしら役に立つんじゃないかな。ボクはそう思うことにした。

 

「ちょっとカービィ、何てことしてくれたのよ!この…この私をこんな…!」

「日頃の行いが悪いんだよ!さあ早く『冒険者ぎるど』ってとこに案内してよ!」

「え、いや、案内って言われても…場所わかんない」

「はあ?」

「しょうがないでしょ!そこまで細かいことは見てないし!」

「ったく、アクアはどこまで適当なんだよ!ボクみたいなのが最初にどこ行ったらいいかぐらいちゃんと把握しておくべきじゃないか!転生させる側だったんならなおさらだよ!」

 

何かしら役に立つと思ったけど、見込み違いだったらしいや。

もう自分で探そう。その方が手っ取り早い。

アクアはボクの後を追いながら聞いてきた。

 

「ちょっと~!どうして武器を選ばなかったわけ~!」

 

ボクは立ち止まってアクアの方を向いた。

 

「それは『コピー能力』でどうにかするよ」

「コピー能力?」

「そう、ボクには生まれつき特殊な能力が備わってるんだけど、それを発動するには能力に関係する敵や物を吸い込まないといけないんだ」

「能力に関係?吸い込む?」

「う~ん、街の人とか見てるとやっぱり『ソード』を多用すべきなのかな…」

 

そんなことを考えた瞬間、アクアが叫んだ。

 

「ええええ!?姿が変わった!?」

 

最初ボクには何のことか分からなかったけど、すぐに異変に気付いた。

背中に手をやると、いつの間にか剣を背負っていた。

しかも頭に帽子をかぶってる。

 

「あれれ?『ソード』が発動してる!一体どうして…」

 

と思いきや元の姿に。

 

「あ、もどった」

「ね、ねえカービィ、何なの今のは?」

「……もしかして」

 

試しに今度は「ファイアー」になることを頭に思い浮かべてみた。

すると「ファイアーカービィ」になれた。

 

「やっぱりだ!」

「ねえねえ、だからどういうことなの??」

「…今のが『コピー能力』だよ。どうやらこっちに来てからは無条件で能力が使えるようになったみたい!」

 

ボクの眼下に希望の光が下りてきたのを感じた。

これでいくらか苦労が減るはずだ。

ボクは意気揚々と冒険者ギルド探しを再開した。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

通りすがりの人に聞いてみたら結構あっさり教えてくれたので、そう時間はかからずにギルドに着いた。

受付の飛び出た部分に飛び乗って、とりあえずそこにいた受付嬢と思しきお姉さんに挨拶する。

当たり前かもしれないけれど、ボクを見て戸惑っているような顔をした。

 

「え~、どちら様ですか?」

「ボクはカービィ。魔王を倒すという使命を受けてきたんですが、ここが『冒険者ぎるど』ですか?」

「はい、そうですけど…もしかして冒険者希望の方ですか?」

「冒険者って…魔王とか怪物倒したりする人のこと?いやボク、そういうこともろくに知らされないままよこされちゃって…」

 

受付のお姉さん曰く、冒険者はモンスターを倒してお金を稼ぐ人のことらしい。

とはいえ、同じ冒険者でも何種類かの職業に分けられていて、それによって異なる種類の「スキル」を習得できる。

で、「スキル」を得るにはモンスターを倒すことで得られる「経験値」が必要になる。

そしてそれらの情報は全て「冒険者カード」と呼ばれるものに記録されるとのこと。

ボクは指示に従って書類を書き、カードに手を触れた。

因みに先にやったアクアは幸運度と知力以外が高いらしく、「アークプリースト」とかいう上級職を迷わず選んだ。

何故迷わず選べたんだろう。いや、知力が低いということは多分何も考えてないんだろうな。

どうもスキルには「初期ポイント」とかいうものが存在し、それがあると最初からある程度習得が可能なんだとか。

アクアはその初期ポイントが大量だったようで、アークプリーストが使える魔法は全て覚えたうえで「宴会芸スキル」とかいうのもとっていた。

女神とは名ばかりのアクアの考えはホントに分からない…。

 

「な、何ですかこの異常なほどの魔力と幸運度は!?敏捷性も次いで高いうえに他のステータスも平均よりずっと高い!」

「そ…そうなんだ」

「それに、スキルの欄に見たことないものが載ってるんですが、この『コピー能力』って一体!?」

「あぁそれね。それはカービィだけが使える特殊なスキルなのよ」

 

あ、ホントだ。ということは、この世界では「コピー能力」は魔法の一種として扱われるのか。

いや待てよ…もしそうなら、能力を発動するのに「吸い込み」は不要になったけど、代わりに「魔力」を消費するってことじゃないか。

どの程度魔力を消費するかわからないし、あとで吸い込みも有効かどうか確かめてみようっと。

 

「そ、それじゃその…ちょっとこの場で見せて頂けませんか?」

「うん、いいよ。それじゃあ…『ソードカービィ』!」

「ええ!?け、剣が出現した…それにステータスが変化してますけど!?」

 

冒険者カードを見てみると、確かに変わってる。

剣を振るうのに関係するステータスが上昇していた。

 

「ふっふっふっ、これくらいで驚いちゃいけないわ。他にも色んな姿があるみたいだから」

「それってつまり…あらゆる状況に対応可能ってことじゃあないですか!物凄い才能をお持ちなんですね、カービィさんは!」

「そうかもね…あ、でもこれ、魔法も別に習得できるじゃん。コピー能力と同時に発動したら威力アップするかな…」

「そりゃするでしょ!…まさか全部に対応する能力があるとか!?」

「う~ん、この『盗賊スキル』ってのは対応できる能力がパッと出ないんだよな…」

 

逆に言えば他は割と大丈夫なんだよね。

氷属性なら「アイス」か「フリーズ」、雷属性なら「スパーク」か「プラズマ」、炎属性なら「ファイアー」か「バーニング」、風属性なら「トルネード」か「ウイング」ないし「ジェット」でもいけるかな…。

光属性は「ライト」か「エンジェル」ってことで、クルセイダーのスキルは「ストーン」や「メタル」に、アーチャーのスキルは「スナイパー」や「レーザー」にでも。

そうだ、「エンジェル」にアーチャーのスキルとアークプリーストのスキルをつけられたら最高じゃないか。

よし、そうと決まれば早速試そう。おっと、職業をまだ選んでなかった。

 

「それで、ボクはどんな職業になればいいの?」

 

お姉さんが職業一覧を見て「ソードマスター」とかいう職業を指さしたんだけど、直後に何かを2度見した。

どうしたんだろうと思っていると。

 

「え、こ、これは…」

「どうしたの?」

「い、いや。いつの間にか新たな職業が一覧に追加されてたもので…」

「新たな職業?」

 

見てみるとそこには「オールラウンダー」とあった。

説明書きによると、「冒険者」という最弱職の上位版らしい。

最弱職同様にあらゆるスキルや魔法を習得可能だが、最大の違いは本職同様の「職業補正」が得られること、そして「他人から教えてもらう」必要がなくポイントの増加も無い点だ。

 

「今までこの職業はなかったの?」

「はい!昨日の時点では少なくとも…!」

「今までこういうことってなかったの?」

「そんなのあるわけないじゃないですか!初めてですよこんなこと!」

 

どういうことなんだろう。ボクが来る直前にでも追加されたのかな?

だとすると、この職業はボクが来た影響で?

まいっか。今はお金稼がなきゃ。おなか空いてきたし。

 

「そう。ま、とりあえずこのオールラウンダーでお願いします」

「か、かしこまりました…」

 

何はともあれ、無事に職業が決まったぞ。

まずは初期ポイントを使って一通り習得だ。

宴会芸とかはどうでもいいや。戦闘関連を最優先。

ボクも初期ポイントが多かったおかげで最初から狙ってたのは全部習得できた。

アークプリーストのに関しては浄化と蘇生以外にした。アクアが習得してるだろうからね。

ついでに片手剣と両手剣、物理・魔法・状態異常耐性に身体的スペックの上昇っと。

あとは斬撃飛ばしに振って、残りは全部「切れ味アップ」に費やした。

「ソード」メインでいくつもりだけど…お金に余裕が出てきたら武器も買ってみよう。

 

「よし、早速モンスター倒しに行こうっと!」

 

ボクがギルドを出ようとしたら

 

「あ、待ってくださいカービィさん!」

 

お姉さんに呼び止められた。

 

「モンスターを倒すのでしたら、こちらの討伐依頼をこなした方が良いですよ」

 

どうやら冒険者のルールとして、討伐依頼に沿ってモンスターを倒す必要があるらしい。

ボク達はジャイアントトードを5匹倒すというものを勧められたので、それを請けることに。

お姉さんの話では、ジャイアントトードは打撃に対し耐性があるんだって。

食用で、倒したのをギルドに持ってくれば引き取り料も貰えるらしいから、とりあえずソードでやってみよう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「思ったよりデッカイな~」

「ねえカービィ、本当に大丈夫なの?」

「大丈夫でしょ、こういう大きな敵とは何度もやり合ってるし」

「貴方今までどんな人生歩んできたのよ…」

 

何故か呆れているアクアはほっといて、ソードで斬撃を飛ばしてみた。

蛙は見事すぎるくらいあっさりと縦に真っ二つ。思ったより脆い。

 

「な、何よその切れ味は!?何で剣より大きな斬撃が出るのよ!?」

「そんなの知らないよ…あっそうだ!」

「え、今度は何?」

 

閃いた。

ボクがこの姿で使える技「ソードビーム」と斬撃飛ばしを掛け合わせれば、物理・魔法同時攻撃できるぞ。

威力もアップするだろうし、よし、やってみよう。技名は…これだ!

 

「『ブレードビーム』!」

 

斬撃形の光線が飛び、その先にいた3匹の蛙を次々に切り裂いた。

ビームを含んでいるせいか、切り裂く瞬間に爆発が起きちゃって蛙の体が砕けてるな。

引き取り料のためにも、少なくとも蛙に対してこの技は控えた方が良いね。

とはいえこの世界の魔法、思ったより使い勝手がいいぞ。

この調子で今後もいろいろ試していこう。

 

「え~とカービィさん、今のは何かしら?」

「何って、ボクがこの姿で元々使える技と斬撃飛ばしを掛け合わせただけだよ?」

「だけだよ?じゃない!最初から反則性能なのにどうして反則度合いに拍車をかけるのよ!?」

「反則反則って…そんなこと言ってたら、今までボクの故郷を襲った相手には手も足も出ないよ?」

「いやおかしい、絶対におかしいから!」

「それよりアクアも何かしてよ。さっきからボクだけが攻撃してるじゃないか。…まさかとは思うけど、アクアってそんなに弱いの?」

「よわっ!?そ、そんなことないわよ!確かにアークプリーストは後方支援メインで、アンデッドや悪魔関連にしか有効な攻撃はできないでしょうけど、私は女神!あんなの倒すぐらいわけないわ!!」

 

そういって飛び出していったアクアは、指折り数えて3回蛙に食べられ泣きじゃくっていた。

攻撃の際に「ゴッドブロー」とか叫んでたようだけど、カッコよく言ってるだけで単なるパンチなんじゃ…?

何より、アクアが蛙の唾液まみれで臭いので終始距離を置くことにした。

倒した蛙は「ファイター」で運べば楽ちんだ。ボクが降り立った街「アクセル」には銭湯があるらしいから、アクアにはそこに行ってもらって、ボクはギルドに向かった。

 

「凄いですねカービィさんは。これだけのジャイアントトードを1人で倒して、おまけに全部ここまで運んでくるなんて!」

「うん。ホントは5匹で済ませるはずだったんだけど、連れのアクアってのが3回も蛙に食べられてさ…結果的に7匹倒しちゃった」

「たべ!?」

「で、いくら貰えるの?」

「あ、そうでした!ではこちら、12万8千エリスになります」

「ありがとうございます。けどなんか半端な額だな…」

「ええ、冒険者への登録料が千エリスほどかかりますので、今回の報酬及び引き取り料から2人分差し引かせていただきました」

「そうなんだ」

 

登録料いるのか…アクアこのことも多分知らなかったな。

ギルドには酒場兼小料理屋的なのが併設されているみたいなので、そこで蛙のステーキを注文した。

値段の割においしいし、この量じゃ足りないと思ったので、アクアの分も含めて9人前追加注文した。

ちょうどその時、銭湯からアクアが戻ってきた。

 

「何この大量のステーキ…」

「さっき注文したんだ。はいこれ、アクアの分」

「あ、ありがと…ってそうじゃない!いくら何でも注文しすぎでしょ!こん…な…」

 

おなか空いてたからアクアの話は無視して食べ始めた。

これでも足りないけれど、今後のことも考えたら貯金した方が良いだろうと思って我慢することに。

食べ終わった時、向かいに座っていたアクアが呆然とした顔で固まっていたけど、どうしたんだろう。

よく見たらステーキに手をつけていない。

 

「どうしたの?ステーキ食べないの?」

「…ハッ、い、いやそうじゃないのよ。カービィの食べっぷりに呆気にとられちゃって」

「???」

「ってかアンタが食べたものは一体どこ行ってるのよ!?」

 

冷めかかったステーキを食べながらアクアが聞いてきた。

 

「そんなのおなかの中に決まってるじゃないか」

「いやだからおかしいって、その量食べたら絶対体膨らんだりとかするはずでしょ!?どうして何の変化も無いのよ!」

「そういう体質だからじゃないの?」

 

何でアクアはどうでもいいことにそんなに食いつくんだろう。

他に話題に出すべきことはいっぱいあるのに…。

向こうは言いそうにないし、こっちから話題を振ろう。

 

「そんなことより、今後の生活の方が重要じゃないか」

「今後の生活?」

「生活用品とか着替えとか、どうする気なの?さっきからその服、蛙臭いし」

「蛙臭いって言わないで!!でも確かにそうね!考えてみれば歯ブラシとかパジャマとか何も無いわ!早いとこ買い揃えないと!それに仲間も!」

「仲間?」

「そうよ。いくら貴方が色んな状況に対応できるといっても、1人でやれることには限りがあるでしょ?それにアークプリーストは戦いに不向きな支援職だから、いざという時には守ってくれる人が必要なの」

「そこまで分かってて、どうして3回も蛙に食べられに行ったのさ…」

「蒸し返さないでよ恥ずかしい!!」

「おかげでこっちは余計な苦労しかしない気がしてならないよ…頼むからこれ以上足引っ張んないでよね!あ、ボクは討伐依頼やるからその間、アクアはケガ人の治療なり宴会芸なりで資金調達しといてね!」

 

アクアの返事を待たずに追加で討伐依頼を請けに行った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

次はジャイアントトードを10匹倒すもの。

行ってみると、複数の蛙が一所に密集しているのが見えたので、ボクは閃いた。

 

「『カッターカービィ』!」

 

もしこれで斬撃を飛ばしたらどうなるのか試そうと思い、カッターを投げてみる。

するとどうだろう。カッターがボクの手から離れている間、何度でも斬撃が飛ばせるではないか。

これは使える。問題は斬撃飛ばしのコントロールだ。

そこまで固まってなかったせいか、半分近くハズれた。牽制には十分だろうけど、どうせやるんなら確実に当てたいな。

練習しようっと。

蛙を狩り終わり「ファイター」で運ぼうとした時、大きな爆発音が聞こえた。

音のした方を見てみると、大きな黒い煙が立ち上っている。

ボクは何となく冒険者カードを確認してみた。習得した魔法の中に「爆裂魔法」というのがある。

 

「もしかして今のが…?」

 

だとしたら桁違いの威力だ。「クラッシュ」ほどではないけれど、組み合わせればもっと派手な爆発になるだろう。

ただこの魔法、発動に大量の魔力がいるらしい。

今のところ「コピー能力」による魔力消費は大したことないし、「クラッシュ」の方が威力的にも消耗度合いでも勝ってることになる。

少なくともこの世界ではボクの能力は色んな意味で格上なんだな。

ギルドに戻ってお金を貰い、アクアがいないかと思って周りを見渡した。

すると、片隅でトランプタワーを作っている女の子を見つけた。

興味本位でボクが向かいに座ると、何が起きているのかわからないといった顔でボクを見ている。

 

「へえ~、こんなに高いトランプタワー初めて見た」

「え…ほ、ホントですか!?」

 

何となく言ってみただけなのに、彼女はすごく明るい顔をした。

褒められたことが無いのか、それとも話す機会自体が無いのか分からないけど、雰囲気が和んでるみたいだしいっか。

 

「それはそうと、キミは何でこんなところにいるの?依頼とか請けなくていいの?」

「あぁ、依頼なら友達が請けてます…」

 

何故かその子は急に暗い顔をしたけれど、どうしたんだろう?

 

「どうかしたの?」

「いや、実は…」

 

その子はボクの方に乗り出し気味に迫ってから、小声で話し始めた。

 

「その友達というのが、爆裂魔法の使い手で…」

「爆裂魔法って、あの大爆発するやつ?」

「そうです」

「それ使えることが何か問題なの?」

「いえ、それしか使えないのが問題で…」

「それしか?他に使えないの?」

「使えないんです。知っての通り爆裂魔法は魔力消費が激しいので、1日に1回しか使えません。しかも使った後は立つことさえままならないんです」

「何その清々しいほどの役立たず加減は…」

「ええ、加えて喧嘩早いので小競り合いは日常茶飯事。依頼を達成しても爆裂魔法の損害賠償で報酬が差し引かれたりして大変なんですよ」

「どうしてそんなのと友達付き合いしてるの?別れた方が良いんじゃない?キミが一方的に損してるだけのように思えるんだけど…」

 

すると彼女は椅子に座りなおしてうなだれた。

 

「どうしたの…まさか、ソイツに弱み握られてるとか!?」

「違いますよ!そうじゃありません!」

「ならどうして?」

「……実は私、他に友達ができたためしが無いんです…」

 

なるほど、彼女は友達付き合いが苦手なのか。

思えばここはギルドの中でも目立たなそうな場所…無意識のうちに人目を避けてるのかな。

 

「そっか…ボクと同じで苦労が宿命みたいな感じなのか」

「『僕と同じ』?」

「実はボクのとこにはアークプリーストがいるんだけどさ、態度ばかりデカくてロクに役に立たないんだ。さっきだってジャイアントトードに3回も食べられたんだよ」

「さ、3回!?」

「そう。普通さ、1回でも食べられたら懲りるもんじゃない?あ、そうか。確かアイツ知力が平均以下だったっけ…『ポンッ』ってことはまさか、懲りるってものが無いのかな?」

「いや、それは流石にあり得ないと思いますよ!?」

「そうかなぁ、でもひょっとしたら…と噂をすれば影ありだ」

 

アクアが見えた。暗い感じの服装の人が多いから全身青のアクアは結構目立つ。

 

「それじゃこの辺で。苦労者同士、機会があったらまた会おうね」

「は、はい!」

 

名も知らぬその子に別れを告げてアクアのもとへ行った。

見るとアクアは泣いている。

 

「うぐっ…ひぐっ…カービィ…」

「何で泣いてんのさ?今度は何があったの?」

「うっく…実はね…カービィの言いつけ通りにね…怪我した人の治療とかしてね…3万エリスくらい稼げたんだけど…」

「けど?」

「…うう…その帰りにね、酒屋のそばを通ったの…そしたら…私の体質で…店の外にあった酒樽の中の酒をね…うっかり水に浄化しちゃったの…それで…」

「あ~、つまりこういうこと?その酒の弁償代が3万エリスだったってこと?」

「うん…」

「え~…」

 

これってまさか、さっきまで話してた子の友達と同じパターン!?

だとしたらホントに何の役にも立たないの?

いや待った。そう言えばアークプリーストの魔法の中には悪魔やアンデッドに有効なものがあったぞ。

ということは、そっち方面限定で攻撃役になれるってことか!

もしかしたら女神としての力もそっちに偏ってるだけかもしれないし、そっちに期待するか。

ふと受付に目をやると、魔法使い風の格好をした女の子が受付のお姉さんと言い争いをしていた。よく見ると左目に眼帯をしている。

その子は何やら疲れ切った様子で、ギルドの奥へ向かった。

もしかしてあの子が言ってた「爆裂魔法しか使わない友達」って…。

いや、そんなことより今夜の寝泊まり先を決めなきゃ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

受付のお姉さんにオススメの宿を聞いて、そこで宿代を払った後は日用雑貨店と服屋に行った。

その帰り、アクアがボクに聞いてきた。

 

「ちょっとカービィ、そういえば貴方、日用品とか全然買ってないじゃない!」

「ボクは買う必要ないし」

「何でよ!歯ブラシとかなかったら歯磨きできないでしょ!?」

「ここにあるもん」

 

ボクは口の中から歯ブラシを取り出してみせた。

それを見たアクアは再び呆気に取られていた。

 

「…ホントにカービィのおなかの中はどうなってんのよ」

「『備えあれば憂いなし』っていうじゃないか」

「いや全然関係ないから今の!ていうかそういうことなら私、買い物した意味ないんじゃない!?」

「いやボクが生活する用だから、アクアの趣味には合わないものだってあると思うよ?例えば歯ブラシの色とか…」

「あ~そういうことか」

 

割とあっさり納得してくれた。知力が低いのも時には便利なんだな。

この後夕食と入浴を終えて宿に向かう途中、アクアが景気づけに一杯やろうとか言い出したけど、なんだかんだで残金が少ないことを理由に断って宿に直行。

ベッドが2つある部屋に戻って歯磨きを済ますとボクは寝る準備をした。

 

「じゃあそろそろ寝ようか」

「いやまだ早くない?宿についてまだそんなに経ってないし…」

「明日は早く起きて討伐依頼請けるの!それじゃお休み。『スリープカービィ』!」

 

ボクはコピー能力で素早く眠りについた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

翌朝、軽く朝ご飯を済ませて一撃熊とかいうモンスターの討伐依頼を請けた。

蛙だと経験値的な実入りが少ないからレベルアップに時間がかかるし、スキルポイントも集まらないから新しいスキルや魔法の習得ができない。

ボクはアクアを連れて、一撃熊が暴れているという畑に向かった。

一撃熊は主に畑の作物を荒らすらしいのだけど、熊って確か肉や魚を食べるよね。どういうことだろう?

小高い丘のふもとに一撃熊が見える。ボク達はその丘の頂上にいる。

 

「さてと…」

「早速殴り込みね!支援魔法なら自信あるからバンバンやっちゃって!」

「いや、今回は遠距離戦を試したいんだ」

「え、遠距離戦?」

「うん、せっかくアーチャーのスキルも習得してるし、使わないと損じゃないか」

「へ~え、どんな能力を使うのかしら?」

「今回はこれでいく。『レーザーカービィ』!」

「ええ!?何その明らかに未来チックなゴーグルは!?」

 

いちいちどうでもいいことに突っ込んでくる女神の面汚しを無視して攻撃準備を進める。

 

「『千里眼』アンド『狙撃』」

 

スコープには一撃熊の姿が至近距離レベルで見え、尚且つロックオン済みだ。

あとはレーザーの出力を調整してっと。

 

「照射!」

 

高出力のレーザー光線が一撃熊の頭を貫通する。

ボクはそのまま照射位置を少しずつずらしていき、最終的に一撃熊は蛙同様縦に真っ二つになった。

 

「い、一撃熊を文字通り一撃で…貴方の能力ってホントにえげつないわね」

「う~ん、ダメだ。まだレベルが上がらない」

 

相変わらずボクのレベルは1。

そういえば受付のお姉さん曰く、素質が高いとそれ相応にレベルが上がりにくくなるそうな。

てことはもっと強い奴じゃないとダメってことか…。

とりあえず一撃熊を引き取ってもらうため、ギルドに持ち帰ることに。

その途中、誰かが倒したのであろうジャイアントトードの死体を通り過ぎようとした時、背後から茂みを掻き分けるような音が聞こえた。

振り返ってみると、茂みから黒い獣が現れた。

ボクらを見るなり唸り声をあげる。

シルエットは猫っぽいが一撃熊と同等の大きさだ。

もしかしたら一撃熊より強いかも。

なんてことを考えていたらアクアが震える声で言ってきた。

 

「か、か、カービィ…ど、どうする…!?」

「う~ん、そうだな…よし、せっかくだから『アレ』を試そうかな」

「アレって?」

 

そう、「獣」なら使えるはずだ…!

周囲の空気を震わすほどの咆哮をあげて黒い獣は突進してきた。

今がチャンス!

 

「『ズゴォォォォォォォォォ』」

「グルルアアアアアアア!?」

 

ボクはいつも通りに吸い込みを開始した。

獣の方もボクの意図に気付いたのか急いで後退しようとしたけど、もう遅い。

ボクのおなかの中に獣が収まる。

その瞬間、使えることが分かった。何となくできると確信した。

ボクは、今となっては懐かしく感じる方法で能力を引き出す。

 

「『アニマルカービィ』!」

 

成功だ!通常の方法でも「コピー能力」が使えるんだ。

しかも……。

 

「カービィさん、とりあえず何が起きたか説明してくれない?」

「前にも言ったじゃないか。コピー能力を使うには能力に関係する敵や物を吸い込まないといけないんだ。つまり、これが本来の『コピー能力』ってわけ」

「あ、そういうこと…」

 

アクアは付いていけないので考えるのをやめたって感じだけど、ボクは構わず続けた。

 

「しかも今気付いたけど、こっちの方法だと魔力消費が発生しないみたい」

「ええ!?それってすっごくお得なことじゃない!」

「そうだね。おっと、この場合は倒したことになるのかな?」

 

恐る恐るカードを確認してみる。

 

「あ、倒したことになるみたいだ!へ~『初心者殺し』駆け出し冒険者の天敵かあ…」

 

さぞ経験値がいっぱい貰えるだろうと期待していたんだけど…1のままだ。

 

「これでもダメなんだ…」

「うっそ!まだレベル上がってないの?」

「うん…」

 

流石にそろそろ上がってほしい…。

失意のままギルドに戻ってきた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

その時お姉さんから聞いたけど、依頼したモンスター以外を討伐した場合、他の冒険者が正規に請けた依頼対象の討伐を防ぐ意味でも報酬が安くなるらしい。

まぁ何も無いよりマシだけど…。

何だかんだで270万エリス手に入った。食費を抑えればしばらく持ちそうだ。

そろそろ仲間を増やすべきかな…。

独り言でそう呟いていたらアクアが任せなさいと言って飛び出していった。

何をする気なのやら…。

しばらくすると、アクアが張り紙をギルドの掲示板に貼った。

 

《一緒に戦ってくれる上級職の仲間を緊急募集! 当方、強くてかわいい新職オールラウンダーが一名、超優秀な美人アークプリーストが一名》

 

超優秀って…百歩譲ってアークプリーストとしての力がそうだとしても、中身が大問題じゃないか。

あ~頭痛い…。

ボクはその張り紙から逃げるように初心者殺しの討伐依頼を請けた。まさか3件も依頼があるなんて…。

討伐はあっという間に終わり、報酬を貰ってアクアと合流した。

 

「そろそろ武器を買おうかな…」

「いきなり何よ。『ソードカービィ』ってのになれば済むじゃない」

「そうだけどさ、やっぱり普段の状態でも戦えるようにしときたいんだよ。それに、もしかするとそういった装備がボクの能力に良い影響を与えてくれるかもしれないし」

「装備が影響を?」

「そう。例えば良さげな剣が手に入れば『ソード』の攻撃力が上昇するかもしれないし、鎧なら防御主体の能力と相性良いかもだし」

「でもさ~、貴方の体型及び身長に合う装備ってあるかしら?」

 

そこなんだよね問題は。見たところボクと同じような背格好の人なんていないようだし…。

 

「オーダーメイドという手はないかな…」

「できるかもしれないけど、値段が張ると思うわよ?」

「ん~、ま、とりあえず覘くだけ覘いてみよう。考えるのはそっからで」

 

というわけで武器屋に向かったわけだけど、どれもボクには長すぎる…。

念のために店長さんに聞いてみた。

 

「う~ん、君の身長に合わせるとなると…やはりナイフぐらいしかないねえ…」

「じゃあ、1番長いやつ見せてくれない?ナイフ」

 

ボクが食い下がると、店長さんは店の奥から古ぼけた箱を持ってきた。

中にあったのは、俗にダガーナイフと呼ばれるものだった。

試しに手にとってはみたけれど、やっぱりしっくりこない。

ボクが扱う剣より明らかに短い。

ただ、悪いものでもない感じだ。長さは足りずとも手にはよく馴染んでいる。

 

「…それじゃあこれ買います。補助武器としては使えそうだし…いくらですか?」

「あぁ、お代は結構だよ」

「え?どうして?」

「箱を見ての通りだよ。冒険者達が求めるのはあくまで『剣』なんだ。ナイフなんて買う者はまずいない。買おうとするのは『盗賊』ぐらいのものさ。だがその職業は成り手が少ないからねえ…」

 

在庫処分に困ってたわけか。

とはいえ、運よく(?)無料で武器が手に入ったし、よしとするか。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

いい加減レベルを上げたいボクは、ギルドに着くなり受付のお姉さんに相談した。

すると、近いうちに大物の悪魔を倒しに行くという冒険者一行が同行してくれる仲間を募集していると教えてくれた。

悪魔と対をなす存在故なのか、アクアが異常なまでに食いついた。

そしてそのまま、ボクを無理矢理引っ張って冒険者のもとに向かった。

全く、乗り気じゃなかったらぶん殴ってるところだよ!!

 

「はぁ~い!悪魔を倒したい冒険者さ~ん!」

「ん?何だお前は?」

 

アクアのコギャルみたいな呼びかけに勇者っぽい格好の人は淡白な反応をする。

そりゃそうだよね。

 

「何だはないでしょ!悪魔を倒そうとしてるんでしょ貴方は」

「そうだが…役に立てるのかお前…」

 

その気持ちわかるな…とてもそうは思えない。

 

「大丈夫よ!私を誰だと思ってるの!冒険者登録したその日に全てのスキルを習得した超優良アークプリーストのアクア様よ!そんじょそこらのプリーストと一緒にされちゃ心外だわ!」

「…だとしてもさっきからお前の連れが浮かない顔してるぞ」

 

そういわれてようやくアクアがボクの方を向いた。

 

「とりあえず離してよ!」

「あ、ゴメンゴメン」

 

地に足をつけたボクは、その人の向かいに座った。

 

「さてと、確認だがコイツの言うことは本当なのか?」

「まぁ、能力そのものは…ね…」

「なんだその意味深な物言いは?」

「だって中身が大問題なんだよ?」

「えちょっ……!」

 

ボクの発言が予想外だったのか、アクアが軽く混乱していたけど、ボクらは無視した。

 

「中身ってどこが問題なんだ?」

「どこもかしこもだよ。まず態度がデカいでしょ、しかもアークプリーストが戦闘向きでないことを知りながらモンスターに突っ込んでいくんだ!現にこれまで計3回ジャイアントトードに食べられてるし。何でこんなことになってるかと言えば…」

 

そう言ってボクはアクアから冒険者カードを取り上げて、知力の欄を見せた。

それを見た連れの人が目を丸くしている。

 

「なんじゃこりゃ!知力がすげえ低いじゃんか!」

「そう。つまり能力はあってもそれを生かす頭が無いの!だから常に見張ってないと、暴走して何しでかすか分かったもんじゃないよ!?今だってボク、強引に連れてこられたんだから!」

「ん~~~~~~…!」

 

アクアが涙目のふくれっ面をしているけど、自業自得としか言いようが無い。

 

「それにぶっちゃけ、アンデッドとか悪魔とかに会うの今回が初めてだから、アクアの実力がどの程度かは見るまで分からないんだよね」

「なるほど…ところでお前さんは何者なんだ?俺はミツルギ、『魔剣の勇者』と呼ばれている」

「あ、そういえば自己紹介してなかった。ボクはカービィ、オールラウンダーやってるんだ」

「何!?オールラウンダーってあの最近できたという…本物なのか?」

「本物ってどういうこと?まさか偽者が横行してるとか!?」

 

ミツルギさん曰く、オールラウンダーはある一定以上の素質がないとなれない職業で、素質の無い者がオールラウンダーになろうとしても「ミミックオールラウンダー」という職業名になってしまうんだって。

ボクは念のためにカードの職業名を確認してからミツルギさんに見せた。

 

「おっ、こりゃ…間違いなく本物だぞ!」

 

連れの人が次々覗き込む中、ミツルギさんは更に驚愕した。

 

「ど、どういうことだ!?レベル1なのにこんなに大量の魔法やスキルを習得して…しかも初心者殺しを4頭も討伐したのか!?」

「うん、だけどちっともレベルが上がらないんだ…受付の人は素質がどうとか言ってたけど…」

「なるほど、それで強い敵と戦いたいというわけか…」

「そうだよ。悪魔ってそこらのモンスターより強いんじゃないの?」

「ああ強いぜ。よっし決まりだ!お前達は最前列においてやろう!」

「ホントに!?やった~!」

「明後日出発の予定だから遅れるなよ?」

「うん!」

 

ようやくレベルアップできると期待に胸を膨らませていると、背後から声がした。

 

「仲間募集の張り紙を出した方ですね?」

 

振り向けば、そこにいたのはあの眼帯の子と、以前お喋りしたあの子がいる。

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操りし者!」

「わ、我が名はゆんゆん!アークウィザードにして、中級魔法を操りし者!」

「…やっぱりキミだったのか!『爆裂魔法しか使わない問題児』は!」

「も、問題児とは何ですか問題児とは!いきなり失礼が過ぎますよ!?」

「だっていっつも喧嘩と爆裂魔法しかしないせいで報酬がろくに貰えないって以前そこの…ゆんゆんだっけ…って子から聞いてるよ」

 

めぐみんって子はすかさずゆんゆんを睨みつける。

するとゆんゆんはめぐみんを睨み返す。

その姿には以前の内気な感じが見られない。

ちょっと見ない間に何があったんだろう。

 

「何よその顔、全部事実じゃない!依頼請けるたびに爆裂魔法の賠償請求が一緒にきて、そのせいで私達常に金欠で、昨日だって馬小屋にすら泊まれなかったでしょう!!」

「フン、被害云々の条件を付けとかなかった方が悪いんですよ!!我が爆裂魔法の偉大さを理解できぬ愚か者の考えなど知ったことじゃありません!」

「それのどこが偉大なの?」

 

今のやり取りでめぐみんって子がアクアと同じようなレベルの奴だと直感したけれど、このままじゃゆんゆんが可哀そうだ。これ以上彼女が辛い思いしないようにボクが助け舟になろう。

 

「はい?」

「だから、爆裂魔法しか使えないことのどこが偉大なのかって聞いてるんだけど?」

「よろしい、分からないならお教えしましょう!爆裂魔法、それはこの世界における最強の魔法!ひとたび唱えれば、いかなる敵をも粉砕します!そんな魔法を極めた存在こそ、最強の魔法使いと呼ぶにふさわしい!そう、爆裂魔法を極めるべく活動するこの私こそ、最強の魔法使いを名乗れる唯一の存在なのです!」

「でも1日1発ぽっきりでしょ?使用後はジャイアントトードにすら勝てない雑魚と化すんでしょ?それのどこが『最強』なの?ボクに言わせれば本当の『最強』ってのは、あらゆる魔法を習得してあらゆる状況に対応できる奴のことを言うんじゃない?ぶっちゃけ爆裂魔法しかできないって、売れない作品ばかり作る職人みたいに思えるんだけど…」

「う、売れない…職人…!?」

 

職人の部分で何故かショックが一番大きかっためぐみん。

何か嫌な思い出でもあるのかな?

 

「ハッハッハッ、カービィ君、君は正しい!全くもって正論だ!『売れない作品ばかり作る職人』、君なかなか例えのセンスが良いじゃないか!」

 

ミツルギさんはボクの意見に賛成してくれている。

ついでに時々、見下したような視線でめぐみんをチラ見している。

 

「そ…それを言うならあなたはどうなんですか!?」

「ボク?ボクは別に何かを極めようなんて思っちゃいないよ。敵を倒せればそれでいいと思ってるし、それにホラ!」

 

自分の冒険者カードにある習得済み魔法の一覧の、爆裂魔法の項目を指した。

 

「な、お前爆裂魔法も習得してたのか!?」

「しかもその下位互換的な魔法も習得済みって…!」

「え、本当に…あっホントだ。それに加えてこんなにいっぱい魔法を習得してるなんて…!!」

「そういうことさ。あ、ゆんゆんにまだ自己紹介してなかった。ボクはカービィ。苦労者同士、これからもよろしくね!」

「は、はい!!」

 

やっぱりゆんゆんとは気が合うみたいだ。ボク達は両手で固く握手した。

 

「オイ、さりげなく私を除け者にするのはやめてもらおうか」

「いやいや、爆裂魔法だけの人はお呼びじゃないから。さりげなくないから」

「なお質が悪い!」

「大丈夫だって。代わりにこのアクアって子と仲良くすればいいじゃないか。迷惑者同士、気が合うと思うよ?」

「「め、迷惑者!?」」

 

2人とも予想外といった顔してるけど、何でこんな簡単なことも分からないんだろう…。

あとでめぐみんの知力も確認してみよう。

 

「そういえば、ゆんゆんの目ってどうしてそんなに赤いの?」

「あぁ、私とめぐみんは『紅魔族』といって、生まれつき魔法の才能に長けた種族なんです。この紅い目はその証です」

「へー。でさ~、ジャイアントトード討伐の時にデッカい穴ぼこが2、3あいてたのを見たんだけど、あれってもしかしてめぐみんの爆裂魔法?」

「ええそうですとも!どうですか?素晴らしいでしょう!!」

「イマイチ」

「「「「え?」」」」

 

今のリアクションは大体想像できたよ。めぐみんの言うとおり、爆裂魔法はこの世界では最強の攻撃力を誇るだろう。

でもボクには…ね。

 

「ま、まさか…あれを超える威力を誇るコピー能力が!?」

 

ショックから立ち直った女神もどき、もといアクアがようやくマトモに口を開いた。

同時にボクの能力を知らないミツルギさんが食いついた。

 

「『コピー能力』って何だ?」

「簡単に言っちゃうと、『吸い込んだ敵や物の能力を吸収する』能力だよ。因みにこっちに来てからは、吸い込む対象がなくても魔力を消費して好みの能力を発動できるようになったんだ」

「ってことは、『変身』に近くなってるってことか?」

「う~ん、魔力を消費する場合はそうなるかもね」

「ほう、じゃあ試しにこの場で1つやってみてくれよ」

「いいよ。それじゃあね…よし、今回はこれにしよう『アイスカービィ』!」

「おおう!体が水色になって、冷気を帯びてる!?しかも氷型の冠みたいなのを…」

「夏場に重宝しそうな能力ですね」

「そう?もちろん敵を凍らせたりできるよ!それ!」

『ゴオォォォォォ!』

「あっ…!」

 

ボクの冷気に当たっためぐみんは一瞬で氷ブロックと化しましたとさ。

 

「うわあああああ!めぐみ~~ん!!」

「ハッハッハッ、カービィ君にとっては迷惑者も敵の範疇なのかな?」

「あわわわわわ……」

 

ミツルギさんの言葉にアクアが動揺して今にも崩れ落ちそうなまでに震えている。

ここでゆんゆんがボクにすがりつくように懇願してきた。

 

「カービィさ~ん、お願いですからめぐみんを助けてあげてくださ~い!」

「え、いいのゆんゆん?そんなことしたらまた迷惑が降りかかりそうだけど…」

「いやあの…それでもホラ、囮くらいなら何とか…ね?」

 

それっぽい理屈は付けてるけど、明らかにめぐみんを見捨てきれないといった感じだ。

良くも悪くもゆんゆんはすっごく優しいな。

 

「『ファイアーカービィ』!」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ミツルギさんに別れを告げてからめぐみんの氷を溶かすと、受付のお姉さんが親切にもお湯を張った金ダライを持ってきてくれた。

当然ながら、両足をお湯につけたまま椅子に腰かけているめぐみんは、治まらない寒さに身を震わしている。

 

「ヘ、ヘ、ヘックシ!!ヴヴヴヴヴ…ひひひ酷いですよカービィさん!いいいきなり私を、こここ氷漬けにすすするなんて…てへ、ヘイックシュ!!」

「そう?囮役する時にはアレ、結構使えると思うよ?」

「具体的にどうするんです?」

「氷は滑りやすいからね、あの状態でチョット押してやればそのままスーって行くよ。その先にモンスターがいればスピードに応じて直撃ダメージが入るはずさ。名付けて『カチコチ体当たり』!」

「あそっか!カービィさん頭いい~!」

「えへへ…」

「えへへじゃないわよカービィ!何で貴方はそんなキレイな目でえげつない発言ができるのよ!?」

「そそそそうですよ!なななんてことをいい言うんですかかか…!ゆんゆんもお、何をかかか感心してるんですか、あ、ア、アッギシュッ!」

「だって基本的にそれぐらいしか役に立てそうにないじゃん」

「「ね~!」」

「「『ね~!』じゃない!!」」

 

改めて迷惑者同士、苦労者同士、仲良くできそうな気がした瞬間だった。

明くる日、ボクは明日の悪魔討伐に向けて1人で特訓することに。

ゆんゆんには討伐依頼でレベルアップしておくことを進言しておいた。

やっぱり基本は「ソード」だ。斬撃飛ばしに色んな魔法を付加してみよう。

まずはとりあえず、光魔法の斬撃「ライト・オブ・セイバー」から。

技名はそうだな…「ライト・セイバー」だとしっくりこないな…よし!

 

「『フラッシュセイバー』!」

 

うまくいった!斬撃飛ばしの形に「ライト・オブ・セイバー」が圧縮されてる。

そんなわけで、他の属性も次々と試す。

 

「『インフェルノセイバー』!『トルネードセイバー』!『ライトニングセイバー』!『アースセイバー』!『ウォーターセイバー』!『クリスタルセイバー』!」

 

うん、威力も精度も上々だ。特に「アースセイバー」は地上のモンスター限定だけど、地割れが起きるほどの衝撃波が発生するのは結構凄まじい。

反対に「ウォーターセイバー」は何となく威力不足といった印象を受ける。

今度アクアからもっと強力な水属性魔法がないかどうか聞いてみようっと。

明日が待ち遠しいな。




次回予告
遂に悪魔と対峙することとなったカービィ。
だが脅威はこれだけではなく、夜の墓場にはアンデッドの王リッチーが現れる。
そして再び、新たな迷惑者となりうる存在までも…!
次回「悪魔とリッチーとクルセイダーの面汚し」
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