【完結】ピンクの悪魔よ、この忌々しい世界に制裁を!   作:Mk-5

10 / 17
恐らく次回以降は設定ブレイカーが加速するものと思われます…。
ついでに季節の変わり目なせいで、体調崩してます(;^ω^)
引き続き以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ


第10話 蛇の邪神?と大砲の戦士?

ある日のこと、ボクは王都で武器屋の主人と談笑中。

 

「なるほど~カービィさんの所では、エクスカリバーはそのように伝わっているんですか」

「うん」

 

始めはちょっとした世間話で終わらせるつもりだったんだけど、主人もボクも伝説の武器に興味があるってことで会話に花が咲いちゃったんだよね。

あ、因みにガンバって名前なんだって。

 

「どうせですから、他にも色々聞かせてくださいよ」

「別にいいけど、店の方は大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。うちの従業員は王都一優秀ですから」

「そう?ならいいんだけど…そうだな~『デュランダル』も捨て難いんだよね」

「ほう、それはどのような剣なんですか?」

「通称“不滅の剣”。あれを人の手で破壊するのは多分不可能。大岩に叩きつけても岩の方が真っ二つになって、刃こぼれすらしないらしいから」

「何と!岩を切って刃こぼれなしとは……もし実在するなら、世界中のクルセイダー達が血眼になって探すことでしょう」

「ボクもそう思う。しかも片手剣だから、両手剣スキルが必要ないってのも嬉しいよね。あ、そうそう!ガンバさん『グラム』って剣は知ってる?」

「グラム……そういえば聞いたことありますな。確かカービィさんが『グランドスラム・コロッセオ』の決勝戦で破った対戦相手…『魔剣の勇者』と呼ばれていた男の剣の名前でしたよね」

「やっほー、何してんの?」

 

話に割り込む形でやって来たのは…何とクリス(エリス様)だった!

ボク達が話してたのは店の最上階で、その中でも一番目立たない場所なのに…。

 

「あ、クリス!キミこそどうしてここに?」

「ん?別に大した理由はないよ。何気なしに足を運んでみたら、たまたまカービィの話声が聞こえてさ…で、何の話してたの?」

「ああ、伝説の武器の話だよ」

「ええ。私も彼もそう言ったものが好きでして、ちょうど今『魔剣グラム』についての話を聞こうとしていたところです。どうです?お暇ならあなたも聞いてみては?」

「そうだな~、じゃそうしようっと!」

「それじゃ続きね。まずボクが聞いたお話の中では、グラムは魔剣じゃないんだよ」

「え、魔剣じゃない!?」

「うん。扱われ方が雑だったりするところはあるんだけど、あくまで聖剣の仲間なんだよグラムは」

「ほほう!それは興味深い。詳しくお話して頂けませんか?」

「あたしも気になるな~」

「そう?まぁ詳しい内容は省くけど、まずそのお話には『オーディン』って言う神々の最高権力者が登場するんだ。何でも神の世界における最終戦争で自分の派閥が勝利するには“勇者の魂”がたくさん必要になるとかで、そのために特別な剣を誰かに与えて勇者に仕立て上げようと計画したんだよ」

「なるほど、その特別な剣というのが…グラムなんですか」

「そうだよ。で、具体的な内容は確か…まずオーディンは人間のおじいさんに変装して、ある国の王様の結婚式会場を訪れたんだ。で、大木の幹にグラムを突き刺して『この剣を引き抜けた者こそが剣に選ばれし者である』と予言したんだって。勿論色んな人が引き抜こうとしたんだけど、最終的に引き抜けたのは『シグムンド』という人…王様の婚約相手のお兄さん。その後、シグムンドは様々な苦難を乗り越えて、遂に勇者と称えられるまでになったんだけど……」

「…けど?」

「…ここで再び、オーディンが動き出すんだ。シグムンドが勇者と呼ぶに十分な存在となったことを確認すると、敵国の兵士に変装してシグムンドに致命傷を負わせたのさ。当初の目的である“勇者の魂の回収”のためにね……おまけにグラムも真っ二つにした!」

「な、何ですって!?仮にも自分の持ち物だったのでは?」

「そうだよ!っていうか何なのそのオーディンとかいう奴は!?いくら戦いに勝ちたいからって、人のことを散々利用しといて最終的に殺すとか…悪魔がすることとほとんど変わらないじゃん!」

「クリスもそう思うよね。でも神様がやることなんて、お話によってさまざまだから…。少なくともこのお話では、神々の間でも詐欺・強盗・殺し、な~んてものが日常的に行われてる設定なんだよ。分かりやすく言えば…神様皆、アクシズ教の女神と同類って感じかな?」

「………まさに鳥肌ものですな」

「どんな世界観だよそれ…それでよく神様やっていけるよね…」

「アハハ……で話を戻すけど、致命傷を負わされたシグムンドは死ぬ前に、折れたグラムを知り合いの鍛冶職人に渡して自分の息子に渡してくれと頼んだんだって。因みに、その剣が『グラム』と名付けられたのはまさにこの時。そして…問題はここからなんだよ」

「ここから?…では今までの話は単なる序章だと…?」

「うん。さっき話に出た鍛冶職人だけど、彼にはお兄さんがいるんだ。その人ね、お父さんの財産目当てにお父さんを殺したんだよ。しかも何処で学んだのか知らないけど、ドラゴンに変身して誰にも奪われないようにしたらしい」

「……随分と飛躍した話ですな。人がドラゴンに変身するとは…」

「で、その鍛冶職人はグラムを引き取りに来たシグムンドの息子に『グラムを鍛え直すから父の敵を討ってほしい』って話を持ち掛けたわけ。そして鍛え直されたグラムは、川に垂直に立てれば流れてくる羽毛が刃に触れただけで真っ二つになるほどの切れ味になったのさ」

「ほ~、確か実際のグラムは“選ばれた持ち主が扱えば大抵何でも切れる”でしたかな…そう考えれば、カービィさんのお話に出てくるグラムも、その時に同程度の切れ味を得たと…」

「ま、そんなとこかな?」

 

一通り話し終えたわけだけど、今度はクリス(エリス様)が口火を切った。それも身を乗り出して…。

 

「そうだ!グラムが魔剣じゃないって言うならさ、カービィが知ってる魔剣ってどんなのがあるの?」

「魔剣か…剣限定となると『ダーインスレイヴ』くらいかな?」

「だ、ダーイン…スレイヴ?」

「そう、通称“血を求める魔剣”」

「ち、血を求める?……それはまた物騒な…!」

「だよね~。一度抜くと血を吸うまで鞘に戻らないらしいから。しかもそこらのモンスターの血じゃダメ。人間の血じゃないとダメらしい」

「に、人間の血じゃないとダメって…」

「まぁ、これだけだったらまだ良い方だよ」

「ほ、他にどんな…」

「ダーインスレイヴの攻撃で受けた傷はね、例外なく“呪われた傷”になるんだ。つまりその切り傷は…どんなことをしても絶対に癒えないってこと」

「絶対癒えないって……恐ろしすぎる…!」

「確かに……っとそういえばカービィさん、確か魔剣の説明に入る前『剣限定となると』と言ってましたけど、剣以外でも呪われた品を知っているということですか?」

「…鋭いねガンバさん。そうだよ、剣じゃなくて刀の方なんだよね」

「カタナ?…とは一体??」

「…あっ、そういえばアクセルの武器屋にも、剣はあっても刀は無かったな。ってことは…そこから説明しないとダメか。えーと、刀ってのは“剣と似て非なる武器”だよ」

「似て非なる…ですか」

 

…やっぱし口で言うより、実物見た方が早いよね。

ボクは口から模造品の剣と刀を取り出す。

 

「まず『剣』は両側に刃が付いてるわけだけど、それ自体は薄手。だから切ることより突き刺す方面に優れてるわけ。対してこっちの『刀』は、見ての通り片側だけに刃があって尚且つ反り返ってるでしょ?これは相手を切るのに理想的なの。その反面、頑丈さを稼ぐために分厚くしたから突き刺し辛くなったわけだけど…」

「ほほう、このカタナとやらはそういう武器ですか。見た目からして重厚感が溢れていますね」

「あたしもこんなの見たことないよ!」

 

ガンバさんとクリス(エリス様)が興味津々で模造刀を凝視したり触ってみたり…。

その間にボクは、新たに2つの模造武器を取り出す。

 

「そしてそんな中…剣と刀双方に、切ることと突き刺すこと、両方に対応できる武器が生まれたんだ」

「両方に対応!?…まさか今出してきたのが?」

「そうだよクリス。まず切る能力を伸ばした剣が『バスタードソード』。盾と併用するなら片手剣として、攻撃力を求めるなら両手剣として扱えるんだ。といっても、普通の剣とは勝手が違うから、扱えるようにするには特別な訓練が必要でさ~。それにさっき切る能力を伸ばしたって言ったけど、正確には切るというより力で叩き割ってる感じなんだよね。そういう意味では『力を求める武器』…とでも言うのかな?」

「な、何か慣れないことを無理矢理やらされてる感が凄まじいね…」

「だね。でこっちの突き刺す能力を伸ばした刀が『日本刀』。ボクが持ってるこれは形を模しただけのものだけど、本物は刃先が硬く、芯に向かうほど徐々に柔らかくなってるんだ」

「何だってそんな構造に?」

「刃で受けた衝撃を和らげるためさ。この構造のおかげで日本刀は『折れず・曲がらず・よく切れる』を両立できたんだよ。ついでに普通の刀より反りを減らして尚且つ先端にいくほど細くなるようにしたから、突き刺すのにも優れてる。とはいえ、もともと刀だから力より『技を求める武器』なわけ。バスタードソードと同じく片手でも両手でも扱えるけど、基本は片手。手首のスナップとかを駆使して変幻自在に刃の軌道を変え、相手にパターンを読ませないことを日本刀は求めるんだ」

「何とも奥深い武器ですな…ところでそのカタナが話題に挙がったということは…」

「分かった?これから話すのは、魔剣に似て非なる呪われた刀『妖刀』だよ!」

「ヨウトウ?」

「そう。日本刀を作ってる地域ではモンスターのことを“妖怪”って呼ぶらしくて、妖怪じみた力を持つ刀のことを『妖刀』と呼ぶんだ。ボクが知ってるのは『村正』って言う刀だね」

「それはどのようなカタナなんですかねぇ?」

「まず切れ味は相当なもんだよ。川に突き立てたら、流れてきた木の葉が真っ二つだったんだから。ま、これだけならグラムと大差ないだろうけど、その木の葉ってのが村正に引き寄せられるように流れたって言う話なんだ。しかも何度も、色んな位置から流しても木の葉は必ず、村正に引き寄せられて真っ二つ」

「つまり…あ~…言うなれば“斬ることに飢えている”と」

「そうだね。勿論ダーインスレイヴと同じく、血にも飢えてるよ。しかも種類が違うけど、呪いの力も相当なもの。聞いた話では、ある王族の家系を200年にわたって呪い続けたらしいし…」

「に、200年!?」

「しかもその呪いを解くには、生贄みたいな感じで誰かを斬り殺さないといけないんだ。更に凄いのは、“どんな相手でも一撃で斬り伏せる”ことだよ」

「どんな相手でも一撃で!?何その無敵仕様は!?」

 

とまぁこんな感じで、ボク達3人は結構長々と伝説の装備について語ったわけ。

その途中、偶然にして意外な収穫があった。

それは、敵を追う投げ槍『グングニル』と万能の防御『イージスの盾』もとい『聖盾イージス』は実在するらしいってこと。

ボクの体型的に合わないかもしれないけど、もしかしたらボクのコピー能力強化に役立つかも。

なんてことを考えながら、ボクはクリス(エリス様)と一緒に店を出た。

そしてボクは、何となくバニルの力を発動。

かつてクリス(エリス様)を全裸にした大泥棒タックは、未だ捕まってない。

それどころか、他の街でも手当たり次第に盗みを働き、王都にも時々足を運んでるらしい。

……取り敢えず、今のところタックの存在は確認できない。

 

「…カービィ、あんまりそういうことすると目立つよ。あたしは平気だからさ……」

「クリスは平気でも、盗まれた家の人達は大丈夫じゃないじゃん!」

「あ、そうか…」

「ん~、じゃ次はアルカンレティアに行こうかな?」

「へ?何でいきなりアルカンレティアなの?」

「まさかクリス知らないの?教会が襲撃されたって話」

「…『ポンッ』ああ、冒険者新聞に載ってたアレね。カービィの旧友が起こしたって言う」

「うん。一応現状を確認しておこうかと思って」

「そう。あたしも暇だし付いて行こうかな?」

 

というわけで、クリス(エリス様)と一緒にテレポート。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

以前泊まった宿の前に着いた。

そこから一直線に教会へ。

どうやら修理は既に終えてるみたい。

ランディアの火炎弾による穴は塞がってはいる。

塞がってるんだけど……雑だな~。

どう見ても完成急いで手抜き工事してるよ絶対。

壁の色とか全然違うし、形状もいびつだし……。

バニルの力で見通してみたら、案の定手抜き工事だった。

 

「仮にも自分達が崇める神様の教会なのに、修理が雑過ぎる……もしボクがこの教会の神様だったら……ハァ……」

 

てなことを大きからず小さからずな声でぼやいてみると、その辺を歩いてたアクシズ教徒達がピシッと固まる。

いやそこはもっと早く気付こうよ。

流石は「救いようのない、この世の終わりの化身たる、人でなし集団」……無常識・無教養・無秩序の3拍子揃ってるね、見事なまでに。

買い出し途中の宿の従業員に偶然出くわしたんだけど、その人も現状に呆れ返ってるらしい。

で、散策ついでに再度バニルの力でタックがいないか確認すると……タックはいなかったけど、代わりにとんでもない奴が来てると知った。

ボク達の前から歩いてくる、赤毛のショートヘアに猫みたいな黄色い瞳の女性。

ボクはすれ違いざまに彼女のスカートを掴んで半ば強引に引き留める。

 

「…魔王軍幹部がこんな所に何の用なの?」

「あら、そういうあなたは『伝説の戦士』と名高いカービィかしら?」

「そうだよ、ウォルバク」

 

魔王軍幹部と聞いてクリス(エリス様)が食って掛かろうとするのを引き留め、ボクは話を続ける。

 

「あらら、よく見たらその仮面ってバニルの物よねぇ?……倒した奴らの力を取り込んでいると聞いてはいたけれど、まさか本当だったなんて。それならバニルの力を通じて、もう分かってるのよね?私が有給とって温泉巡りしに来ただけだって…」

「そうだよ、だから丁度いい機会だったんだ。キミと話さなきゃならないことが“2つ”あるから」

「2つ?」

「うん。ここじゃ目立つから、場所を変えよう」

 

バニルの力で最も人通りの少ない…というよりほぼ無い場所を見つけて、3人揃って移動。

 

「…それで、話って何かしら?」

「……本題について話す前に、まず1つ目はあの事からってことにしよう」

「あの事?」

「キミの封印を解いた“アイツ”のことさ」

「…ああ、あの子がどうかしたの?」

「どうもこうもないよ!キミが余計なことを吹き込んだせいで、アイツはボクや仲間達…それに行く先々の人達に迷惑かけてるんだから!いまや『3匹の迷惑者』の参謀役…みたいな感じかな?」

「へ?え?ど、どういう事なの!?……ま、まさか!?」

 

全てを悟ったウォルバクは顔から血の気が引き、足腰は今にも崩れ落ちそうなほどに震えまくってる。

 

「ま、まままさか…そんな……あ、あの噂…ほ、本当だったって言うの!?」

「如何にも、そのまさかだよ…」

 

その瞬間、ウォルバクは崩れ落ちた。

そんな彼女に、ボクは皮肉を込めて一言。

 

「流石は邪神……意識してなくても厄を振り撒けるなんて、1周回って凄いことだよ」

「ど、どうも……」

 

ウォルバクはもはや、力のない投げやりな返答しかできない状態。

…ま、その方がこの後の流れ的には有り難いんだけどね。

 

「で、2つ目である本題はまさに、それを踏まえてのことなんだよ『エンジェルカービィ』!」

 

途端に正気に戻ったウォルバクは、ボクの姿を見て目を丸くする。

…猫なら普通は目を細めるもんだけど。

 

「ど、どうしたのよカービィ…急に天使になっちゃって…」

「キミにあることを問いたいからさ。もしも…邪神から、ちゃんとした女神に転職できるとしたら、キミは転職を望む?」

「んん!?」

 

ボクの質問が予想外過ぎたのか、言葉が出ないウォルバク。

後ろでクリス(エリス様)も同じ状態になってるのは言うまでもないことだろうけど…。

 

「……あの~、話の意図が掴めないんだけど…どういうことなのかしら??」

「アルカンレティアの現状を見れば分かるでしょ?」

 

そう言われて辺りをキョロキョロと見るウォルバクに対し、ボクは続ける。

 

「この街を牛耳ってるのは『女神の皮を被った邪神界の帝王』ことアクア……彼女が広めた邪教は、人間界の最大の汚点と言わざるを得ない!」

「女神の皮を被った…邪神界の帝王……」

「それに比べれば、キミはちゃんと良識を持ってるし、少しだけど女神としての素質がある。この街の温泉が大好きなら…少なくとも悪い選択じゃないと思うよ?そして勿論、アイツにちゃんと恩返しするためにもね!」

「ちゃんと…恩返し?」

「そうさ。バニルの力で見通せたんだよ。“今のままじゃ、恩返しなんて叶わぬ夢。叶えたいなら、ちゃんとした女神になるしかない”ってね」

「…それ、本当なの?」

「当たり前だよ。こんなところで嘘ついて何になるのさ?」

 

そう言って、ボクはクリス(エリス様)の方に向き直る。

 

「…いかがでしょう、エリス様?」

「…………!!」

「ええ!?何よエリス様って……まさか、その子って女神エリスなの!?」

 

クリス(エリス様)は暫く迷ってたけど結局観念したらしく、きまり悪そうな顔をしつつ本来の姿に戻る。

 

「……どんどん調子狂ってきたわ」

「奇遇ですね、私もです……カービィさん、無暗にカミングアウトするのは止めてください!今後の活動に支障が出るじゃないですか!」

「仕方ないでしょう、このことはアナタにも少なからず関係があるんですから!それにどのみち、アクアに関する追加報告をせねばなりません故」

「追加報告…ですか?」

 

ボクは最初の報告以降のアクアに関する全てを語ったうえで、マクスウェル討伐の際に言いそびれた“ダクネスの願い” に対する文句も付け加えた。

語り終えてふと振り返れば、ウォルバクが可哀想なものを見る目でエリス様を見つめてる。

 

「…あんたも大概だと思ったけど……あんな先輩の傍にいたのなら、まぁその~…多少は仕方ないの…かな?」

 

肯定したくはないんだろうけど、かと言って否定することもできないエリス様は、無言で棒のように突っ立って、ただただ滝のように冷や汗をかくばかり。

話が進みそうになかったので、ボクは口を開く。

 

「それで、まだ答えを頂いてないわけですが……いかがでしょう、ボクのアイディアは?」

「……っ…い、今は何ともっ言えません…!」

「そうですか…しかし、この件は是非とも前向きに検討して頂きたい」

「………私からもひとつ」

「「!?」」

 

そう言ってウォルバクが深々と頭を下げる。

 

「私は邪神…だけど、良識はある方だと自負しているわ。私が教えたモノのせいで、あの子が間違った道を歩んでいるとなると……カービィの言った事にも凄く説得力があると思うの。私が邪神だから、何を言い何をやっても…結果的には人を陥れることになる。もしちゃんとした神になれば、恩返しも過去の間違いの清算もできるのなら……私、喜んで足を洗うわ。それに……ハンスがこの街でやろうとしていたことは、温泉好きとして反対だったし」

「……ということだそうですが、いかがです?」

 

エリス様は腕組みし、眉間にしわを寄せて思案六法。

その間、まるで降り続く雨の如く、顔や手から汗が滴り落ちる。

そして再び目を見開くと、半分投げやりに吐き捨てるように言い放った。

 

「…分かりましたよ!結果は保証できませんけど、上司に相談だけはしてみます!」

「いいお返事を期待しております、エリス様」

「期待されても困ります!」

「もし許可が下りたら、真っ先に私に伝えて頂戴。辞表は何時でも用意できるから」

 

エリス様はフンっと鼻を鳴らして天界に帰還した。

それを見届け終わると、ボクは元の姿に戻る。

 

「……教えて頂戴。何故私を助けようなんて考えたの?」

「ん?ボクもアルカンレティアの温泉は好きだよ。温泉“は”ね…」

「ふぅ…よく分からないわ。あなたの考えることって…」

 

そう言い残してウォルバクは人ごみの中に消えた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

その後は何事もなく、平和な月日が流れていく。

まぁ、王都にて例の商売が未だに繁盛してるらしく、コックカワサキがお礼の意味を込めて仕送りしてきたり、あるえ(?)とかいう紅魔族からの手紙の内容(※小説の一部らしい)を鵜呑みにしたゆんゆんが、ダストとかいうチンピラと子作り志願したりとか、何気なしに冒険者カードを確認して「ハルバードモード」で倒した敵の経験値からレベルが17になってたとか…ゆ~ことはあったけどさ…。

アクセルには人知れず噂を広めるプロがいるくらいだし…気にしたら負けだよね、きっと。

そんなこんなで暑さが和らぎ、秋の訪れを感じるようになったある日、ゆんゆんとめぐみんが里帰りしたいと言い出した。

何でも、魔王軍との戦いが熾烈化してるらしい。

どうせだからということで、ボクも話題を切り出す。

 

「どうせ紅魔の里に行くなら、あの人も連れて行こうよ」

「「「「あの人?」」」」

「忘れたの?デストロイヤーの設計者」

 

あの人の白骨は今も、デストロイヤーの操縦席部分と一緒に、機能停止したあの場所に置かれてる。

たまたま来た方角がジャイアントトードの平原とは異なってたので、ランディアとの戦いの影響を受けなかったわけ。

 

「しかしなカービィ、連れて行くといっても、具体的にどうするつもりなんだ?」

「どうするって…普通にそのまま運ぶつもり」

「そのままって、あのデカブツごとですか!?それは無茶でしょう、いくらなんでも!」

「でもボクとしてはそっちの方が良いと思うんだよね。あの人だけ運ぶにしても、既に骨だけだからすぐバラバラになっちゃうだろうし、そうなったら元通り組み立てられる自信もないし…」

「だとしても、デストロイヤーは頭部だけでもかなりの大きさがあるんだぞ?大丈夫なのか?」

「兎に角、やるだけやってみよう」

 

ということで、デストロイヤーのとこまで来たボク達。

 

「『ファイターカービィ』!」

 

まずはシンプルに筋力で。

 

「ふんぬっ……!!」

 

…かなり重いけど、運べない事はない。

と一瞬思ったけど…

 

「……おととっと」

 

バランスが悪いらしく、すぐ後ろに傾いちゃう。

一応ボクが持ってる所は底面の一番後ろなんだけど、デストロイヤーの頭部って横から見ると平行四辺形なんだよね。

しかも後ろの斜辺及びそこ付近に何か重い装置が積み込まれてるらしい。

ボクはデストロイヤーを降ろした。

 

「う~ん…持てはするけど、バランスが悪いな~」

「そうみたいですね…」

「それじゃ次は『エスパーカービィ』!」

 

念力で浮かしてはみたけど……

 

「…どうにしろバランスの悪さは変わらないみたい。となると…吊り下げて運ぼうか」

「吊り下げる?」

 

下準備として長いロープを用意して…

 

「『バルーンカービィ』!」

「うわっ!?カービィの体が膨らんだ!」

 

正直言って長さが足りるか分からなかったけど、3本のロープに「バインド」をかけてみたらギリギリ届いて、ボクとデストロイヤーを固定することに成功。

だけど、やっぱし重い!

全然持ち上がんないんだもん。

 

「この方法もダメらしいな」

「…あそうだ!カービィさん、あれを使ってみたらどうですか?ロボボアーマーの、え~と…そう、『ハルバードモード』!」

「それはいくら何でも無茶だよ、ゆんゆん。ハルバードモードは荷物を外付けできるような構造してないし、括り付けるにはロープの長さが足りないし…」

「た、確かに」

「……仕方ない、こうなったらあの手でいくしかないね」

「あの手?」

「一旦このまま里に行って、テレポート欄に登録してから運ぶの」

「なるほど、確かに現時点ではそれが一番確実だな」

 

ということで、自宅に戻って打ち合わせタイム。

紅魔の里へはアルカンレティアを経由しないといけないらしい。

リビングのテーブルに広げられた地図を見ながら、皆で検討する。

 

「う~ん里までは、アルカンレティアから徒歩で約2日といったところだな…」

「徒歩?馬車じゃなくて?」

「残念ですがカービィさん、馬車は通ってないんですよ。何しろ里までの道中には、危険なモンスター達が溢れかえる危険地帯ですので…」

「ふ~ん、それじゃ明日の朝一番でロボボアーマーを使おう」

「ああ、例の『ホイールモード』ね!それなら安心できるわ!」

「…ま、早々とレベルがカンストしてるなら、安全を優先するのは当然だよね?」

「バカにしてんの!?」

「馬鹿にするも何も、未だに知力低いままなんでしょ?」

「ん~~~~~~…!」

「みなさ~ん、夕食の準備ができましたよ~!」

 

エプロン姿のミュイが、お玉片手にそう言った。

ミュイは料理の腕が相当優れてるし、掃除だって申し分ない。

言い方悪いかもしれないけど、雑用係としては超優秀だと思う。

何はともあれ、明日に向けて腹ごしらえ。

ミュイ特製のラージバーグをあるだけ詰め込むと、即行で歯磨きと入浴を済ませてベッドに潜り込む。

少なくともゆんゆんはボクと同じ考えだったらしく、そんなに間を置かずにベッドにダイブ。

そして自称女神の寝言が聞こえないという幸福の中で、2人揃って静かに眠りについた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

翌日もボクとゆんゆんは起きるなり即、身支度を整える。

ダイニングに「3匹の迷惑者」が集ったのは、ボクとゆんゆんがミネストローネを飲み干す直前のこと。

それも眠い目をこすりながら。

 

「おはよう、随分遅かったね」

「済まない、また寝過ごしてしまった…」

「里のことが心配で寝付けませんでしたよ…全く」

「そんなことより、早く朝食を済ませてくださいよ。起こしに行こうかと思っていたんですからね!あ、それと余分に作った分は既にカービィさんのお腹の中ですから、今ある分で最後ですよ」

 

ミュイが頬を膨らませながらそう言った。

ボクが起きるより結構前から仕込みしてたのかな?

取り敢えずゆんゆんと一緒に歯磨きと荷造り、あと“例の件についての最終打ち合わせ”を手早く済ませ、ボクはロボボアーマーの準備。

ゆんゆんに急かされる形で3人も荷造りを済ませ、「ホイールモード」のロボボアーマーに固定し終えたら早速出発。

それに際して不安なことが1つ。

アルカンレティアの教会を見たいと、邪神の帝王が言い出すかもしれないってね…。

でもそこはコックカワサキの一件で記憶を飛ばした実績のある彼女。

今度はランディアとの激戦のショックで記憶を飛ばしたらしく、特に興味を示さない。

ダクネスのナビゲーションのもと、再び走り出したわけだけど…ここから先は危険なモンスター達が溢れかえる危険地帯。

何時出くわしてもいいように、「フォーメーション・バニル」で警戒しつつ運転する。

道中出てきたモンスター達は…ボクのレベルが上がってるのも原因なんだろうけど、そこまで強くもなかったのでシンプルにロボボアーマーではね飛ばすことに。

そんな中、ボクが少女のような姿をしたモンスターをはね飛ばした時には皆が驚きの声をあげた。

 

「ちょっと待てカービィ!今…人をはね飛ばさなかったか?」

「人?ひょっとしてさっきの少女みたいなののこと?あれもモンスターだよ。『安楽少女』とかいう一番質の悪いモンスター」

「一番質の悪いモンスター?」

「なるほど……確かにお前にとってはそうかもな。何でも安楽少女は、神経に異常をきたすだけで栄養皆無な実を食べさせて衰弱死させると聞く」

「そうさ、全くもってとんでもないよ!」

 

なんて会話をしてたせいで注意散漫になったボクは、オークとか言うモンスターが砂煙を上げながら接近していたことに気付けなかった。

ボクが前を向くのとほぼ同時に、道の脇からオークが飛び出す。

 

『ドッカアアアアアアアァァァァァァァァン!!』

 

ブレーキをかけようにも到底間に合わず、オークと正面衝突。

オークは10メートル近く吹き飛んだ。

ゆっくりと立ち上がるオークのどてっぱらに、ロボボアーマーの先端の棘が深々と突き刺さった跡が見受けられる。

かなりのダメージを負ったみたいだけど、すぐまた走り寄ってくるオーク。

 

「ったく酷いわ!思い切りぶつかってくるなんて!」

「いきなり脇から飛び出しといて何言ってるの!?」

「……あら、あなたって男なの?それとも女?」

「こっちが聞きたいよそんなこと!ていうか、キミと遊んでる暇はないの、どいてくれない?」

 

ボクがそう言ってクラクションを2回鳴らしてみたけど、どくつもりはないらしい。

ボクは“例の構え”をとる。

 

「どいてほしいなら食べ物を置いて」

「『バニル式殺人光線』!」

「ギャアアアアアア……!!!」

 

殺人とか付く技だけど、大型のモンスターにも効果抜群……これが大悪魔の力…か。

何故か戦々恐々としてるめぐみんはさておき、ボクはロボボアーマーから降りて身構える。

 

「あ、あの…カービィさん?」

「皆も準備して!オークの叫び声でモンスター達が集まってきてる!」

 

それを聞いて、ゆんゆん達は一斉にロボボアーマーから降りると、まるでロボボアーマーを守るように円陣を組む。

移動手段を失いたくないからなのか、これまでの経験のもと、無意識のうちにやったのか……。

どっちにしても、ボク一人でっていうパターンにはならないだろう。

え~結論から言うと、駆け付けたオークは100を優に越す規模。

その他のモンスター達に関しては、少なくともその3倍はいたと思う。

コピー能力には大して魔力を必要とせず、魔法を纏わせない限り能力発動時の技に魔力が要らないという点は、こう言う時に大きなアドバンテージとなる。

ボクが使った攻撃手段はただ1つ…「バーニング・カッター」で両手剣を投げまくっただけ。

今までのそれとの違いと言えば、剣が何かに当たるまで、魔法を帯びた斬撃飛ばしが何度でも発動できるということだ。

レベルが15を越してたこともあってか、基本的に魔力が有り余ってるからね。

戦い終わって、ピンピンしてるのボクだけだし。

 

「お、レベル18だ!」

 

なんて言っても、ゆんゆん達は声も出ないほど疲労が溜まってたらしく、静かなものだった。

ボクは仕方なく「ファイター」で皆をロボボアーマーに乗せ込んで、再び出発。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

今までの戦いが嘘のように、何事もなく里の入り口に到着。

ロボボアーマーはいつも通り、自動追尾モードに設定する。

門には警備員の姿が見えない代わりに、グリフォンの石像が置かれていた。

めぐみん曰く、石化魔法をかけられた本物のグリフォンらしい。

ボクの背後から解除魔法使いたいとか言う声が聞こえた気がするけど…気のせいだよね?

 

「カービィさん、そろそろ……」

「あ、うん」

 

手筈通り、ボクは「フォーメーション・バニル」で歩を進める。

それで分かったことは…手紙にあった魔王軍との戦いに関する内容は嘘っぱちと言っても過言じゃないということだ。

現に里は、どう見ても戦いが熾烈化してるとは思えないのどかさ。

戸惑うゆんゆん達を尻目に、ボクは当初の作戦を続行。

バニルの仮面が紅魔族の感性をくすぐる何かを持ってるのは本当らしい。

道行く人が1度は必ずボクの方を見る。というより凝視してくる。

でもボクは前だけを見て、決して周りに目をやらなかった。

バニルの力のおかげで見る必要が無いってのもあるけど、誰とも目を合わさず口もきかなければ、向こうから近付いて話を切り出すしかない。

作戦実行中は、この雰囲気作りが必要なんだよね。

右斜め後ろにいたゆんゆんが左に移ってダクネスの陰に隠れたのとほぼ同時に、1人の女性がボクに近付いてくる。

短めの縦ロールに蝙蝠の羽型の髪留め、そしてめぐみんのと似た眼帯……間違いない、彼女だ…!

 

「あの~すみません!」

 

横に並んで話しかけてきた。

ボクはあえて無視して歩き続ける。

すると今度は、ボクの目の前に移動して立ち塞がりながら、再度口を開く。

 

「あなたはカービィさん…ですよね!?」

 

仁王立ちする彼女の股の下をくぐって、ボクは歩き続ける。

ま、そのままじゃくぐれないから右足を持ち上げたわけだけど。

それでも彼女は食い付いてくる。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!!」

 

彼女がボクを掴むより先に、ボクは彼女の腕を掴んで振り返る。

 

「そういうキミは…あるえ…だね?」

「え?は、はい。そうですけど…」

「『カースド・ダークネス』」

「きゃああああああああああ!!」

 

最初から分かってたことだけど、一応名前を確認した後でバニルの呪いを至近距離で発動。

呆気にとられる「3匹の迷惑者」を尻目に、ぼくはゆんゆんの方を向く。

 

「…これでいいの、ゆんゆん?」

「はい…ありがとうございますカービィさん!」

 

ゆんゆんが深々と頭を下げる。

あるえは…まだ状況が理解できない様子。

 

「え?え?私、何をされたの?いやそれより、ゆんゆん、さっきのは一体?」

 

その言葉に、ゆんゆんは怒りに満ちた顔で例の手紙をあるえに見せつけて一言。

 

「…よくも私に大恥を掻かせてくれたわね!」

 

ゆんゆんの言葉にポカンとするあるえ。

どうやら彼女はほんの軽い冗談のつもりで手紙を送っただけで、その内容を鵜呑みにするとは夢にも思ってなかったらしい。

そのせいで面食らって頭が回らなくなってる…というのが今の彼女の現状だ。

 

「ゆ、ゆんゆん!あなた手紙のこと、まだ根に持ってたんですか?」

「当然!おかげでこっちは危うく人生を棒に振るところだったのよ!?本当なら記憶なくなるまで殴りたかったけど…」

「き、記憶なくなるまで!?」

「…カービィさんに頼んで呪いをかけてもらったの、『スランプになる呪い』をね!これで当分、あんなふざけた手紙は書けないでしょう」

「え…ええええええええ!!??」

「さ、行きましょう!」

 

周りの紅魔族と「3匹の迷惑者」が戦慄く中、ゆんゆんに押される形でボクは歩を進めた。

改めて里を見てみると、観光名所と思しきものがいくつかある。

けど…武器の材料調達の口実として「金の斧銀の斧」に似た作り話が囁かれるただの泉だの、「アーサー王の伝説」に似た作り話のもと、引き抜く動作を1万回しないと抜けない魔法がかけられた普通の剣だの…。

ぼったくりもいいとこだよ…。

まぁそれは置いといて、暫く散策してデストロイヤーの頭部を置くのにちょうどいい場所をテレポート欄に登録。

その後は真っ直ぐ、族長の家へ向かう。

まさかゆんゆんが族長の娘なんてね…。

でも、これは絶好のタイミングだと思った。

今なら手紙の件と一緒に、めぐみんのアレについてもカミングアウトできそうだから。

これまたバニルの力で分かってたことだけど、魔王軍との戦いに関する手紙は紅魔族の挨拶みたいなもので、大袈裟に書いてただけらしい。

実の父親である族長からそのことを聞かされたゆんゆんは、再び怒りに満ちた顔になって族長にビンタを食らわす。

それも張り倒す勢いで…。

頬を押さえる族長は、あるえと同じく訳が分からないといった顔で口を開く。

 

「な、何をするんだゆんゆん!親を叩くとは」

「叩かれて当然よ!こんなふざけた手紙送りつけといて!今まで私がどれだけ心配したと思ってるの!!本当なら上級魔法の1発や2発食らわしたいくらいよ!!」

「じょっ!?ほ、本当にお前に一体何があったというんだ!?」

 

族長の視線は、呆れ返るボクの方に向く。

今はノーマルだけど、この後のことはバニルの力を使わなくても大体分かる。

 

「そうか、そいつだな!?そいつが娘に変なことを」

「全く…イグニスさんもそうだったけど、みんな自分の子供のこと知らなすぎだよ!」

 

溜息まじりで吐き捨てるようにボクがそう言うと、族長は再び訳が分からないといった顔になる。

 

「ゆんゆんはね、そこらの紅魔族とは違うの!里の外にいるごく普通の人達と同じ感性を持ってるの!分かる?普通の人達の感性からすれば、この手紙の内容は冗談で書いていいレベルのものじゃないんだ!絶縁状叩きつけられても文句は言えないくらいのものだよ!!もしボクがゆんゆんの立場だったら、家ごと爆破してるかもね!!」

 

それを聞いた族長は、信じられないといった顔で凍り付く。

ダクネスが小声で「冗談に聞こえないから止めてくれ」とか言ってきたけど、ボクはありのままに言っただけさ。

 

「どうせ、魔王軍侵略も嘘なんでしょ?」

 

ゆんゆんの苛立った声で、族長が我に返る。

 

「いや、それは嘘じゃない!手紙にも書いたと思うが、幹部だって何度か来ているんだ」

 

そんな父親の言葉に、ゆんゆんは疑いの目を向ける。

険悪なムードが漂う中、今度はめぐみんが口を開く。

 

「ま、まあまあ…その~、里帰りしたってことでいいじゃないですか。久しぶりの顔合わせですし」

「姉ちゃん、来てるの?」

 

めぐみんの声に反応して部屋の奥から姿を現したのは……こめっこ。

そう、めぐみんの妹だ。

駆け寄って来たこめっこはボクを見つめると…

 

「何これかわい~~!」

 

と言って抱きついてきた。

 

「お前、何処に行っても子供にウケるんだな」

 

ダクネスの言う通りなんだよね。

実際、アクセルでも子供達がよく遊びに誘ってくれる。

いつかの王都における宴会芸対決でも子供ウケ良かったし。

ま、それはさておき……

 

「ホントにめぐみんそっくり……ここからじゃ想像できないよね、ニートのお姉ちゃんにタカられてたなんて」

「「「へ!?」」」

「…………!!」

 

予想外のカミングアウトに、皆お互いを見つめ合う。

心当たりしかない1名を除いて。

 

「タカるって何?」

「人にモノをねだったり、脅かして奪い取ったりすることだよ。キミ、お姉ちゃん養うためにパンの耳や残飯とかを漁ってたんでしょ?」

「うん!」

 

一切迷いがなく、尚且つ力強い返事で嘘じゃないと知ったゆんゆん達は、めぐみんを見つめたまま固まった。

当のめぐみんは、意味不明なジェスチャーを交えながら必死に弁明しようと試みる。

 

「たたたったたったたたかってませんって!ち、ちゃんとちゃ、やることはやってましたから!」

「姉ちゃん、嘘ばっかり!」

 

元ニートの、必死に弁明しようとするその努力は、腕組みして仁王立ちする妹の一言に一掃された。

その姿からは、とても5歳になったばかりとは想像できない。

今からでも独り立ちできるんじゃないか…と思えるくらいのたくましさがにじみ出てるんだもん。

 

「因みに、どれくらいの間タカられてたの?」

「1年くらい」

「…見事な穀潰しね」

「飲んだくれのキミが言う?」

「誰が飲んだくれよ誰が!!以前ならともかく、最近は全然飲んでないわよ!!」

「でも飲もうとしなかった日はないじゃん。ってことはさ、『無駄遣いできない呪い』がなかったら確実に飲んでるでしょ?」

「ヴ……」

 

とここで、ボクとこめっこの腹の虫が鳴く。

まさか同じボリュームとは…。

 

「…そういえば、お昼まだだったね」

「いやそれより、朝早かったとはいえ、アクセルからここまで昼前に来れたんですよね…本来は数日かかるのに」

「ゆんゆん、それがロボボアーマーの実力だ。それでいいじゃないか」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

この短時間の間に色々な驚きがあったせいで色々どうでもよくなってる感じの族長から料理屋の場所を聞いたボクは、こめっこと一緒にお喋りしながら料理屋を目指す。

そんな中、一食で二百数十人前平らげたことを話題に出したら、こめっこが憧れの目でボクを見る一方、ゆんゆん達は見事にドン引き。

 

「か、カービィさん……そ、それ…本当なんですか!?」

「うん」

「だとしたら今までの食事って…満腹には程遠いじゃないですか!!」

「まぁ確かに…だけどさ~、それだけの量食べられる機会なんてそうそう無いじゃん?だから故郷でもこれくらいが普通だよ」

「普段からよく食うと思っていたが……実際は相当我慢して食費を切り詰めていたわけか。恐れ入ったよカービィ…私だったら、とてもそこまで食費を削れる自信は無い…」

 

よく見れば、アクアは開いた口が塞がらず、めぐみんは終始恨めしそうな顔でボクを見てくる。

ただ、恨めしそうな一方で羨ましさも感じられる。

妹との再会が自然にスルーになったことを引きずってるのかな?

それはともかく、料理屋をはしごして太鼓みたいなお腹のこめっこは満足そう。

昼食後は、運搬に向けての下準備だ。

ゆんゆん達には適当に散策しといてと言って、「エスパー」でテレポート。

目的地は、港町ドック。

そこのギルドで、ボクの像を作ってくれた石工師の情報を集める。

全員この町にいて、しかも同居してるんだとか。

早速その家に向かい、例の紙2枚を保存できる水晶製の展示台の作成を依頼した。

一応どんな形にするかは考えてたし予算が潤沢だから、特急料金追加で手早く仕上げてもらった。

因みにあの紙に書かれてた文字は、この世界では古代文字として扱われてるので予め翻訳した文章を書き込んである。

展示台が完成したので、ボクは「エスパー」のテレポートを使って紙を展示台に埋め込んだ。

当然だけど石工師の人達、驚いてたな。

この世界のテレポートは単なる移動手段だもんね…。

取り敢えず彼らに礼を言ってから、里の置き場所へテレポート。

念のため邪魔にならない所に置いてから、今度はアクセルに戻って「ファイター」でデストロイヤーの頭部を持ち上げる。

……そういえば、「エスパー」以外の時にテレポート使うのは今回が初めてだよね。

でも特に問題なく移動できたわけで。

ボクはデストロイヤーの頭部をドスンと置いてから、展示台をその前に移動させた。

倒れないように下半分を地面に埋めてね。

置いた時の音で、近くにいた紅魔族とゆんゆん達がやって来た。

 

「終わったんですか、カービィさん?随分かかりましたね…」

「うん。色々下準備してたから」

「下準備?…というか、この台は何ですか?見たところ水晶のようですが」

「そう、水晶製の展示台だよ。ドックの石工師さんに頼んで作ってもらったんだ。ただ置くだけじゃ何なのか分からないと思ったから、説明書きをね!」

 

と言ってボクの指さす先を見た皆は仰天。

 

「こ、これは……設計者が遺した記録!?カービィさん、持ってきてたんですか!?」

「うん」

「しかも古代文字を翻訳してある…これなら我々にも読めるぞ!」

「左側がデストロイヤーの記録…右が紅魔族の記録ですか…」

 

紅魔族の記録と聞いて何のことだと紅魔族達が群がる。

そして自分達の出生に関する真実を知り、驚きを隠せない様子。

まぁ、それはさておき……

 

「よし、じゃ次は買い物ついでに、めぐみん家におじゃましようかな?」

「へ?な、何故唐突に私の実家へ?」

「だって、めぐみんのことで言いたいこと、まだ沢山残ってるんだもん」

「ちょ、ちょっと待ってください!私までダクネスと同じように辱めるつもりですか!?」

「辱める?何言ってんのめぐみん、真実を伝えに行くだけさ!」

「さ、させませんよ!させませんからねそんなこと!!」

「こめっこ、食材確保が終わったら家まで案内してくれる?」

「うん、いいよ!」

「こめっこ!!」

 

抵抗するめぐみんを組み伏せてから、食料品店へ向かう。

食欲にそそられて、お肉全部買い占めちゃった♪

因みにゆんゆんは一緒じゃない。

今は親との時間を過ごしたいんだって。

にしても、「夕食後あたりでまた会いましょう」とか言ってたけど…どういうことだろう?

道中ダクネスが武器屋に寄りたいと言い出したけど、最初に見通した際に目ぼしいものが見つからなかったと言ったら、割と素直に引き下がった。

その後も幾らか買い物を済ませ、バランス的な意味で「ファイター」じゃ持てない分をダクネスに持たせて、一同めぐみん家へ。

両親は留守らしい。

質素な平屋だけど、買ってきた食料を全部おける程度のスペースはあったので一安心。

ついでに「フォーメーション・バニル」で追加の情報収集をしてから、夕食に向けての下準備。

ダクネスとめぐみんも一緒にね。

アクアにはこめっこの遊び相手を任せてある。

 

「…お前、いつかの『コックカービィ』にならなくても料理できたのか」

「そりゃそうだよ。いちいちコピー能力発動して調理って不便じゃない。今はともかく、以前はコピーの素がなきゃ使えなかったんだから」

「そう言えばそうだったな」

 

ついでに「料理スキル」も取ってるから、以前より少しくらい上手くなってるはず。

ボク達が調理してるその後ろで、こめっこがちょくちょく出入り口の陰から様子を見に来てる。

今も仮面付けたままだから、真意はすぐ分かる。

どうやら隙を見て味見したいらしい。

ボクはひき肉を少々使って小さなハンバーグをこしらえた。

 

「ん?カービィ、どうしたんです?その小さなハンバーグは…」

「ああ、こめっこが味見したいらしくてさ」

 

そう言って振り返った瞬間、こめっこが数センチ跳び上がるくらいビクついた。

何で分かったの?って言いたげだけど、ボクがお皿に乗ったハンバーグを差し出すと、添えてあったフォークを取らずにそのまま豪快に1口。

…予想通り、顔を赤くしてハフハフと口から湯気を吐き出す。

出来立てなんだから少し冷ましてもいいのに……当人は口を押えて絶対に出そうとしない。

暫くすると冷めてきたのか顔の赤みが取れ、それと同時に笑顔がこぼれる。

 

「おいし――これ!」

 

熱いことに関して文句の1つでも言うかと思いきや、美味しければ何でもいいらしい。

…そういえば、アクアはどうしたんだろう?

探ってみると、こめっこを寝かしつけて一緒に寝ちゃったみたい。

そんな中、ボクがこれ以上こめっこと仲良くなってほしくないらしいめぐみんは、対抗するべく“自信作”と称する料理を勧める。

プププランドにはない料理だから上手い下手の判定はできないけど、1口食べたこめっこの返答は……

 

「普通」

 

これまた迷いのない一言。

ショックを隠せないめぐみんは、またしても弁明を始める。

 

「し、仕方ないんですよ!カービィがあんな超絶カッコイイ仮面つけて料理しているせいで、こっちはマトモに集中できなかったんですから!」

「いや、めぐみんが作り始めたのってボクが作り終わった後じゃないか!」

「よ、余韻が残るんですよあの手のものは!」

「仮にそうだとしても、その程度で集中が乱れたらこの先どうすんの?めぐみんの言う“超絶カッコイイ(?)仮面”付けた奴が現れるたびに先制攻撃許すの?」

「ぬあああああああああ!!」

 

突然キレためぐみんがボクのほっぺを引っ張ってきた。

 

「何なんですかねあなたは!!口を開けば十中八九悪口じゃないですか!!フルコースですか!?悪口のフルコースなんですか!?」

『ゴンッ!!』

「どふぉっ!?」

「悪口のフルコースってさ~……だとしても注文したのはめぐみん自身じゃないか!自分で注文しといて、今更キャンセルできるとでも思ったの!?」

「そうだそうだ!!自分でたのんどいて残すなんてどうかしてるよ!!」

 

絶妙なタイミングでこめっこが合の手を入れる。

これが効いたらしく、めぐみんはうつ伏せのままで小刻みに震えてる。

よく見れば顔が真っ赤だし。

動かないのをいいことに、こめっこはめぐみんの背中に馬乗りして茶化し始める。

ダクネスがそれを引き離そうとした時、ふと出入り口の方を見れば、めぐみんの両親…ひょいざぶろーとゆいゆいがいつの間にか帰ってきてた。

でもって、ボクとめぐみんだけで話したいと言うので調理は一時中断し、ダクネスにこめっこを任せた。

取り敢えずその場にペタンと座ると…ひょいざぶろーは、あの時の様子からボクとめぐみんが恋愛関係にあるんじゃないかと疑ってるらしい。

複雑な顔なのは、ボクの噂を聞いてるから下手すると里ごと消し飛ばすんじゃないかと警戒してるかららしい。

ついでにボクの仮面が例に漏れず紅魔族の感性に触れたために調子が崩れてるみたい。

ゆいゆいは……今は深入りしない方が良いぞこれは。

ひょいざぶろーは腕を組んだまま口を開く。

 

「…それで、あんたは娘とどんな関係なんだ?」

「どんな関係って決まってるでしょ!?問題児と保護者の関係以外にどんな関係があるって言う気?」

「「えっ!?」」

「ちょっ……!」

 

3人の反応は気に留めず、ボクは話を続ける。

 

「めぐみんはね、とにもかくにも爆裂魔法撃つことしか頭にないの!爆発で食材確保のためのモンスター狩りに支障が出たとか、危うく巻き込まれそうになったとか、そんな苦情が来てもお構いなし!『爆裂制限の呪い』がなかったらどうなってたことか…。おまけに、爆裂魔法単体じゃマトモに活躍は不可能だってこと今という今まで散々言って言われてきたのに未だ学習しないんだよ!まるで売れない作品しか作らない職人みたいに………んんっ!?」

 

ボクはわざとらしく、ひょいざぶろーの顔を食い入るように凝視。

そして手をポンッと叩いて続けた。

 

「ああ、そういうこと!?最初会った時にボクがこの例え…いや、これとよく似た表現した時にめぐみんが妙に過剰な反応してたけど、その理由がやっと分かったよ。なるほどね、お父さんがまんま“売れない作品しか作らない職人”だったからか~。お父さんの悪いところが似ちゃったんだね。うん、納得いった!」

 

ボクの言葉にひょいざぶろーは怒りをあらわにし、めぐみんはボクの口を塞ごうとしたけど、ボクはめぐみんを組み伏せて話し続ける。

 

「そんな顔したって無駄だよ、ひょいざぶろーさん?キミが売れるものを作らないせいで、今もこめっこは年中飢えてるんだから。めぐみんを養わずに済んでる今でも!こめっこが本当に『目に入れても痛くない』と思ってるなら、そんなこめっこに不自由させない為にも売れるものを作れるよう努力するもんだよ!それなのにキミと来たら、くだらない安物の自尊心ばかり守って“本当に守りたいもの(家族)をその身で抱いて守ってやるのが一家の主”ってことを分かってないなんて!それでよく父親ぶれるよね、悪い意味で感心するよ!キミには恥ってものが無いの?」

「黙れ、人の仕事に口出しするのは止めてもらおう!それに、作品にはいつでもロマンというものは必要なんだ!どうだ、違うかね?」

「見事な0点満点だね!!ロマンなんて二の次だよ!実用性抜きにロマンだけ込めたって買われやしないよ!!一部の特殊な感性持ってる人は別としてね!そんなイカれた感性持ってたら、そりゃめぐみんを魔王軍幹部を復活させた犯人に仕立て上げといて涼しい顔してられても不思議じゃないよね!!?」

「な、何ぃ!?」

 

何ぃ、じゃないよ!自分でやっといて…。

しかも魔王軍幹部と聞いてダクネスとこめっこが駆けつける。

 

「お、おいカービィ!今、魔王軍幹部が復活したとか言わなかったか!?」

「あ、ちょうどいいとこに来たねダクネス。それにこめっこも。折角だからこめっこにも聞いて欲しいな。キミのお姉ちゃんが仕出かしたとんでもないことについて…」

「とんでもないこと?」

「まぁ兎に角、座って座って」

 

こめっこはボクの隣…要するにめぐみんと対になる位置に陣取ってペタンと座り、ダクネスはこめっこの隣に正座する。

 

「それで?姉ちゃんどんな大失敗したの??」

 

期待に胸を膨らませて目を輝かせるこめっこ。

自分の姉の失敗談が楽しみって…。

 

「え~とまず、ウォルバクは知ってる?」

「ウォルバク……というとアレか?魔王軍幹部に属している邪神のことか?」

「そうだよ。で、そのウォルバクなんだけど…本来は魔王軍幹部になんて成り得なかったんだ。この里に封印されてたんだから」

「この里に封印…ってちょっと待て!ということはつまり…」

「そう。ウォルバクの封印を解いた犯人がいるってこと。そしてその犯人こそが、他ならぬめぐみんなのさ!」

「「はぁっ!?」」

「「「…………!!」」」

 

声をあげたのは勿論こめっことダクネス。

両親はさっきのカミングアウトのショックを引きずってたらしく、声も出ない。

出来たことといえば、震えながらめぐみんに視線を送ることだけ。

 

「姉ちゃん…何てことしたの!悪い子だ!」

「カービィ、もっと詳しく聞かせてくれるか?ことによっては警察ないし騎士団に引き渡さなくてはならない…」

「ちょっと待ってください、ストップストップ!!さっきのカービィの言い方じゃ、まるで私がワザと復活させたみたいじゃないですか!私だってやりたくてやったんじゃないんです!あの出来事は最悪でも、事故の範疇ですから!!」

「事故だと?」

 

話の進行が一旦落ち着いたところで、めぐみんは一呼吸おいて語り始めた。

 

「…あれは忘れもしない10年前のこと。当時の私は4歳、魔法のことなんて右も左も分からないような時分でした。6月のある日、私は父さんから『ある魔法』を教わりました。この時点では、私はその魔法がどのようなものか知りませんでしたし、聞いても教えてくれませんでした。そこで私は、自力でそれを確かめるべく動き出します。勿論、幼いなりに被害が小さくて済みそうな場所を選んで、魔法を試しました」

「ふむ、それで?」

「…その時、“2つの偶然”が重なったのです!」

「2つの…偶然?」

「そうです。1つ目の偶然は“父さんから教わった魔法が『封印解除の魔法』だった”こと。2つ目は“被害が小さくて済みそうな場所として選んだ場所の近くに、ウォルバクが封印されていた”ことです。これらの偶然が重なり、結果的に私の魔法はウォルバクの封印を解いてしまったのです……」

「…なるほど、それが正しければ、復活させたのがめぐみんだったとしても結果論としては…」

「そうだよダクネス、めぐみんは“自分のお父さんの手によって犯人に仕立て上げられた”ようなものなんだ。いくらしつこくねだられたからって、ロクに考えもせずに『封印解除の魔法』を教えるなんてどうかしてるよ!『クリエイトウォーター』とかなら、まだ事故になる可能性低いじゃん!」

 

ひょいざぶろーは冷や汗ダラダラで身を震わし、心ここにあらず。

ゆいゆいはそんなひょいざぶろーを、これまた冷や汗ダラダラで見つめつつ、この後どうなるのかと心配してるらしい。

そんな中、こめっこは腕組みして大きく何度も頷く。

まだ5歳だけど魔法に関する知識が幾らかあるので、今までの話は大体分かったみたい。

これだけ話が分かるなら、今のうちに言っとこう!

 

「ねえ、こめっこ。お父さんの部屋は分かる?」

「え?うん、分かるよ」

「じゃあ、お父さんの部屋のタンスは知ってる?」

「うん、見たことあるもん」

「なら、そのタンスの一番下の戸棚の中、右側の一番奥を見てごらん。キミの冒険者カードがあるはずだよ」

「え、こめっこのカード!?なくしたと思ってたのに!」

「キミのお父さんが隠し持ってたんだよ、カードを手にした日のお昼ごはんの時に盗み取ってからずっとね」

「ええっあの時に!?」

 

そこまで言うと、こめっこはひょいざぶろーをキッと一睨み。

すぐさま冒険者カードの在処へと猛ダッシュ。

両親は止めるどころじゃないらしいので、ボクは一安心。

 

「ふ~、これで最悪の未来は回避された」

「最悪の未来だと!?一体誰の未来なんだ?」

「こめっこに決まってるじゃん。もしこのまま両親のもとに居続けたら、めぐみんを超えたダメダメな役立たずと化すんだよ!そして……何処とも分からない場所で…ボロ布みたいに朽ち果てる…って未来が…。でもよかった。これで少なくとも親離れの口実はできたから、ボクが見た未来が訪れるリスクは間違いなく減った」

 

なるべくまとめたけど……実際は言葉に表せないくらい悲惨なもの。

ボクにとっては口にすること自体、凄まじい抵抗を覚えるほどの内容。

自分ながらよく最後まで言えたもんだって思うよ。

ひょいざぶろーはさておき、ゆいゆいはボクの話を聞いた途端に顔が絶望に染まって血の気が引く。

一方めぐみんは複雑な表情。

相変わらず他人のアシストがなきゃマトモに活躍できないことを理解してないみたいだけど、少なくとも妹の将来の方を優先すべきであることは分かってるらしい。

そうこうしてるうちに、こめっこがカードを両手で持ちながら駆け戻ってきた。

 

「あった!あったよカードが!」

「よかった、見つけられたみたいだね」

「でもどうして分かったの?カードがあるって」

「それはね、この仮面のおかげさ」

「仮面?」

「そう。この仮面が付いてる間、ボクは色んなことを見通せるんだ。他人の考えてることや、その人の過去や未来…兎に角色んなことが分かるんだよ。だからキミのお父さんがカードを隠したことだって、出会った時から既に知ってたんだ」

「へ~すご~い!」

 

その瞬間、ボクとこめっこの腹の虫が鳴った。

こめっことは、食いしん坊同士で仲良くしたいな。

 

「ふぅ…じゃ、続きはまた後で」

「まだ続ける気ですか!?」

「まだ山ほど残ってるもん」

「な、なんですとおおおおぉぉぉぉぉ!!??」

「あ、それと…ゆいゆいさん、ボクはアナタの計画に乗る気はないからね、そこんとこ宜しく」

「っ、け、計画ですって?」

「誤魔化してもダメだよ。ボクの貯金目当てにめぐみんとイチャイチャさせようとしてるんでしょ?全部分かってるから!」

「…………そうですか…」

 

それはさておき、夕食の準備を早く済ませよう。

一連の流れの余韻が残ってるダクネスとめぐみんをキッチンまで引っ張り、大急ぎで支度する。

ゆんゆんが何時来るか分からないしね。

取り敢えずステーキとハンバーグを大量にこしらえる。

意外なことに焼き肉はあっても、すき焼きは無いらしい。

醤油やみりんに料理酒といったものは普通にあるのに…。

あ、そうそう。これも意外なことに、白滝の材料になる白こんにゃくも普通にあるんだよね。

ま、この世界じゃ海の幸が滅多に入ってこないから、海藻が混ぜられた“一般的なこんにゃく”は出回らないだろう。

ちなみに『芋固め』という商品名で、痩せた土地でも育つ不思議芋(要するにこんにゃく芋)から体にいい部分を取り出し固めた非常食って売り文句が付いてる。

すき焼き鍋はボクの中にあるから問題なしっと。

他の肉料理作る片手間、こっそりとすき焼きを用意。

ささやかながら、すき焼きに合う野菜も少々。

勿論白滝も用意した。

白滝を肉の傍に置いとくと肉が硬くなるってのがデマだってことは知ってたし、適当に混ぜても問題なしだね。

結果的にめぐみん家のテーブルには乗せ切れないほどの大量の食事ができたため、全て床に直置きすることが決定。

ボロ布を縫い合わせた大きなシートの上に大量の皿が並ぶ様は、大金持ちのピクニックに見えなくもない……かな?

火属性魔法を帯びた金属板…要はこの世界におけるカセットコンロで加熱・保温の準備も万端。

取り敢えず何時でも作れるようにしといて、最後に出すって感じにしよう。

 

「皆いいですか?カービィは一食で二百数十人前を平らげることもあるほどの超食いしん坊です。恐らくこれらの肉料理は基本的に自分用でしょうから、兎に角自分の好きなものは片っ端から取ってください。じゃないとすぐに独り占めされてしまうでしょうから…!」

 

な~んてめぐみんが家族に忠告してるのを尻目に、ボクとダクネスついでにアクアはいただきますして食べ始めた。

それを聞いためぐみん達が慌てて食べ始めるけど……

 

「ズルいですよカービィ!吸い込みながら食べるのは止めてください!!」

「どう食べようがボクの勝手じゃん!」

「めぐみん、そんなことを言ってる暇があるなら少しでも多く肉を取っておけ…。カービィが、食べ物に関しては品も遠慮もないことは分かり切ったことじゃないか」

 

そう言ってダクネスは野菜中心に食べ進める。

予めすき焼き用の野菜を別にしといてよかった。

でもってアクアはというと…終始無言で、黙々と食べ進めてる。

こめっこに振り回されて空腹だったのか、それとも何か喋って駄目出しされるのが嫌なのか……と思ったけど、ずっと寝ててボク達のやり取りをマトモに聞かなかったせいで現在の状況が把握できないので、考えるのを止めたってだけらしい。

そして山ほどあった料理がもうすぐ無くなるってタイミングで、野菜を浸したすき焼きダレが良い具合に煮立ってきた。

後は肉を入れるばかり。

 

「なあカービィ、さっきからお前の後ろで煮立っている鍋は一体何だ?」

「何って…この辺じゃ『すき焼き』って言う料理が無いみたいだったから、折角だし作ろうと思ってね」

「すきやき…?」

 

ボクは鍋を前に移動させて、手際よく肉を投入。

白滝も忘れずにっと。

 

「なるほど、その薄い生肉はこのために取っておいたわけか」

「そう。赤身がなくなったら食べ頃だよ♪」

「で、さっき肉と一緒に入れた長細いのは一体何なわけ?」

「これは白滝と言って、白いこんにゃくを細切りにしたもの。これもまんべんなく色が付いたら食べ頃だよ」

 

そう言ってるうちに肉の両面から赤身が消えた。

ボクは肉を2枚ほど取り皿によそって、こめっこに渡す。

一瞬警戒したみたいだけど、沸き立つ良い香りに耐え切れず、豪快に1口。

 

「んまああああ♡」

 

赤くなった両頬に手を置いて目を輝かせるこめっこ。

するとそこへ、ゆんゆんが入ってきた。

 

「カービィさ…っと、お邪魔でしたね」

「いやいや、むしろ丁度良かったよ。これから『すき焼き』って料理を振舞おうとしてたとこさ。どうせだからゆんゆんも味見くらいしてってよ」

「???」

 

肉1枚に白滝少々、野菜も適当に入れた取り皿をゆんゆんに渡す。

ゆんゆんはお肉を一口食べるや否や、これでもかというほど目を見開いた。

 

「おいしい!これ一体どうやって作ったんですか?」

 

ボクは待ってましたとばかりにレシピを記した紙をゆんゆんに手渡す。

一応オリジナルはプププランドで使われてる文字だからね、翻訳したものを別に用意したんだ。

で、用意した肉を一枚残らず投入して皆で平らげた後、ゆんゆんが口を開く。

 

「それじゃカービィさん、そろそろ…」

「ああ、そうだね。ちょっと待ってて!」

 

ボクはそう言うと、アクアに例のヤツを装着する。

そう、「救いの首輪」を。

 

「ちょ、ちょっと!何でこれを付けなきゃいけないわけ!?」

「だってキミにこめっこを任せても居眠りするだけでしょ?万が一にもめぐみん家で迷惑かけないようについて来てもらうの!」

「だからってこの首輪いる!?」

「念には念を入れて、ね?」

 

そんなわけでボク達は鎖を引きつつ、ゆんゆんの案内のもとで夜道を進む。

いつの間にかダクネスとめぐみんも後ろからついてきた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

到着したのは…地下倉庫みたいだ。

バニルの力を使って内部を探ると…中にとんでもないものが!

 

「カービィさん、古代文字が読めるなら…これも操作できますよね?」

 

ゆんゆんがそう言いながら指さしたのは…大掛かりなコンピューターらしきもの。

それも、倉庫の扉の制御装置らしい。

プププランドで馴染みの文字が並んだキー、そしてその上には……丁寧に解除方法まで書いてある。

 

「できるよ。解除方法までデカデカと書いてあるし……中にあるのは『魔術師殺し』みたいだね」

「魔術師殺し?」

「うん、何でも魔法を完全に無効化できる装置らしいよ。魔王軍幹部もこれが目当てで里を襲撃してるらしいし」

「ま、魔法を完全に無効化だと!?そ、それは本当なのか?」

「そうだよ。因みにあれも、デストロイヤーの設計者が作ったやつみたい」

「また例の設計者が!?」

「…ん?か、カービィさん、背中の剣が…!」

「え?」

 

何と、剣がまた青く光ってる!

しかも倉庫の扉の方に向けると、剣はより青々と光る。

 

「…まさか、アイリス王女の時と同じく、魔術師殺しも『カービィを進化させる存在』だと言うのか!?」

『ピイピピピイッピピピッピピピピイッピピピピピ』

「えちょ、カービィさん!何してるんですか!?」

 

……よく分からない。

でも何となく体が動いた。

本能的にボク自身も『それ』を求めたのかな?

とにもかくにも…扉の向こうにあったのは、蛇を模った機械。

これが「魔術師殺し」か…。

そう思った瞬間、ボクはその機械を吸い込んだ。

 

「か、カービィ!?」

「ちょっと大丈夫なの!?そんな大きなものまで吸い込んで…」

「別に問題ないよ。毒があるわけじゃあるま………うっ……!」

「ど、どうしたんです?」

 

何だろう、この感覚は……。

こんなの知らない…!

ドクン……ドクン……ドクン!……ドクン!!……ドクン!!!……

……暫くすると、それは治まった。

 

「……何だったんだろう、今のは?」

「もう何ともないのか?」

「うん、見たところコピー能力とかではないみたいだし…何か変わったのかな?」

 

見える範囲で体を見てみたけど、特に異常は無い。

ふと冒険者カードを見てみると……

 

「…アレ?」

「ど、どうしました?」

「何かスキルが変なことになってるよ。見てこれ!」

 

ボクが指さす「耐性スキル」の欄を見た皆はビックリ。

 

「な、何よこれ!?『魔法無効』とか書いてあるんだけど!?」

「これ…順番的には『魔法耐性』が来るはずですよね?」

「魔法…耐性…ってまさか、さっきカービィさんが吸い込んだ『魔術師殺し』のせいじゃ!?」

「なるほど、ゆんゆんの言う通りかもしれないな。『魔術師殺し』を取り込んだことで、今のカービィには魔法が効かなくなったのかもしれない」

「ああ、確かにその可能性もあるね……そうだ!ゆんゆん、ちょっとこの場でさ、ボクに魔法当ててみてよ!」

「え、ええ!?ここでですか?」

「うん、何でもいいからさ」

「な、何でもと言われても……」

「ならこっちで決めるよ。じゃあ『ファイヤーボール』で!」

「は、はぁ……い、いいですか?『ファイヤーボール』!」

 

ゆんゆんが放った魔法は、ボクに触れた瞬間弾き返された。まるで光が鏡で反射するようにね。

ボク自身には何の抵抗も衝撃もない。

魔法が勝手に返ってったみたいに感じる。

 

「うわ~、ホントにノーダメだ…」

「ちょっとこれ凄すぎません!?いくら中級魔法と言えど、あんな簡単にはね返すなんて…!」

「もしこれが魔王軍の手に渡ったとしたら……間違いなく史上最大の脅威となっただろうな…」

「まぁ何はともあれ、この件はこれにて一件落着ってことで!」

 

その後は特に何もなし。

普通にめぐみん家に戻って、その日のうちに両親に話したいこと全部話して、あとは寝ただけ。

とは言え、めぐみんが王都の武器屋で買った杖で(ピ―――)してた話は流石にカミングアウトすべきじゃなかったかな……?

寝床不足でめぐみんと相部屋になったのはどうにも腑に落ちなかったけど、取り敢えず「スリープ」で眠りについた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

翌朝はのっけから驚き。

だってボクが寝てる傍で、めぐみんのお母さんが誰かにボコボコにされた状態で寝てる……というより気絶してるんだもん。

バニルの力で探ってみれば、彼女はボクとめぐみんが寝てる間に……いわゆる「夜の営み」って感じのやつを偽装しようとしたみたいだけど、それをボクが寝ぼけてボコボコにしちゃったらしい。

取り敢えずめぐみんを起こして現在の状況について説明。

でもって、そっとしとくことに決めた。

朝食後は1人でその辺を散策することに。

相も変わらず、目に触れるモノの多くが変な趣味の塊みたいなものだけど、笑いを誘うものに関しては有ってもいいかな~と思う。

特にあの神社のご神体とか…。

まぁね、紅魔族の価値観からすれば、アレもご利益ありそうな雰囲気がするんだろうね…。

そんなことを考えながら適当に歩いてたら、何かいつの間に人気がなくなっちゃった。

里のはずれにでも来ちゃったのかな?

取り敢えず「フォーメーション・バニル」で現状を探ると……現在地以前に凄いことが分かった。

魔王軍幹部が来てる…!

茶色い長髪に下級悪魔の革で作った赤いドレスを着た長身の女性(?)…2人の上級悪魔をお供に連れてるその幹部は、グロウキメラとか言うモンスター。

何でも自分の身体に武器などを取り込むことで強くなるらしい。

ここからそう遠くないし…様子見ぐらいはしとこうかな?

一旦能力を「ホイール」に変えてから背後にある岩の陰まで移動。

再度バニルの力を使って、今度は詳細を探ってみた。

…思った通り、「魔術師殺し」目当てで里を襲撃していた幹部みたい。

よし!思い切って声かけてみようっと!

ボクは背後からそっと近づく。

 

「魔王軍幹部がこんな所で何してるのかな~?」

 

ボクの声に3人はビクつき、そして振り返る。

思ったより警戒してたらしいや…。

 

「…あら、この辺じゃ見かけない坊ちゃんね。変な仮面まで付けちゃって」

「ん?幹部なのにこの仮面見て何も思わんのかね?ホースト!アーネス!お主等は当然分かるな?この仮面のこと…」

 

その場の思い付きでバニルの喋り方をマネてみたんだけど…予想以上に効果があったみたいで、2人の上級悪魔は滝のように冷や汗をかいて足を震わせる。

 

「「バ、バニル様……!?」」

「ん?バニル?…ああ、そう言えば確かに!…ホースト、アーネス、少し落ち着きなさい。バニルは既に討伐されているのよ、忘れたの?」

 

幹部の一言で2人の上級悪魔はハッとなる。

 

「それも目の前にいる彼の手でね!名前は確か、カービィ…でよかったかしら?」

「…ご名答だよ。魔王軍幹部にして強化モンスター開発局局長、シルビア『君』」

「く、『君』!?『さん』でしょ!『さん』を付けなさいよ!!」

「悪いけど、ボクはオカマに『さん』付けする趣味無いんだ」

「おっ……!」

 

一発で真実を看破されたことによってシルビアは一瞬の動揺と怒りに苛まれたみたいだけど、直ぐに我に返って再度口を開く。

 

「フ…フフ……幹部達の力を自らの力として取り込んでるって聞いてはいたけど…どうやら本当みたいね」

「いやいや、“取り込む”ってだけならキミだって同じようなもんじゃないか!グロウキメラってそういうもんじゃないの?」

「広い意味でなら確かにそうだけどさ、私の場合はあなたの能力に比べたらその~……つまりは『自然さ』がないわけ!」

「自然さ?」

「そうよ!あなたの場合は元々能力自体が完成されてるというのもあるかもしれないけど、取り込んだところでそんなに違和感が無いじゃない!今だってバニルの能力を取り込んだと言っても、仮面が付いただけだし!試しにベルディアも試してみてよ!」

「へ?別にいいけど…『フォーメーション・ベルディア』!」

「そら見たことか!鎧とかジャストフィットじゃない!それに比べたら私は……単に自分の身体の一部にするだけ!サイズ感とか一切調整できないのよ!しかも出したり引っ込めたりとかも、あなたほど自由に出来ないし…だから私、羨ましくてしょうがないのよ!!」

 

…そんな泣くほど羨ましがられても。

あ、バニルに戻しとこっと。

 

「ま、まぁ確かに…それだったら仮に『魔術師殺し』取り込んだとすると……正直気色悪い見た目になるかも」

「そうそう、取り込んだ暁にはどんな姿になるかなんて想像できな……ってちょっと待って!今、『魔術師殺し』って言ったかしら?」

「うん。だってキミ、それが目当てで里に来てるんでしょ?」

「そ、そうだけど…」

「なら残念だけど、ボク先に貰っちゃった♪」

「はぁ!?先に貰った!?」

「そうだよ。これが証拠」

 

ボクは冒険者カードの「魔法無効」スキルを指さした。

それを見た上級悪魔2人はお互いを見つめ合いながら何かを語り合っていて、シルビアは涙目で力なく笑う。

 

「ハ…ハハ……アハハハハハハハハハ……もういい…こうなったら、アンタごと取り込んでやるんだからああああああああ!!!」

 

叫びながら、シルビアがボク目掛けて突進。

普通に避けてもいいんだけど……そうだな、折角だし“例の悪魔”の力を使ってみよう。

危うく忘れるところだったし。

 

「『フォーメーション・マクスウェル』!」

 

…な~んか悪魔のコスプレしてるだけのような気が……まいっか。

取り敢えずシルビアの突進コースを捻じ曲げてみた。

思ったより簡単に成功し、シルビアは軌道がそれた際にバランスを崩して盛大に転倒。

 

「ふぎゅっ!?」

「な、何だ今のは!?…それに、マクスウェルって…」

「ま、まさか……!」

「そう、『辻褄合わせのマクスウェル』だよ!」

 

その瞬間、ズッコケたシルビアを含めた全員が絶望に染まった顔で目を見開きボクを凝視。

同時にボクは、どうせだからもっと色んなものを捻じ曲げてみようと思いつく。

 

「それっ!」

 

手始めに周囲の重力を捻じ曲げてみた。

すると当たり前だけど、周囲の抉れた地面や岩が風船みたいに空中に浮き上がる。

更に重力の向きを自在に捻じ曲げることで、それらをシルビア達目掛けて飛ばすこともできる。

やってるうちに何だか少し楽しくなってきた。

 

「それそれっ!」

 

調子が出てきたボクは、偶然目についた雨雲を引き寄せると幾分か大きくし、シルビア達の周りにだけ雨が降るように仕向けた。

 

「「「うギャアアアアアアああああああああ!!!」」」

 

突然の異常気象にどうしていいのか頭が回らなくなった3人は、ただ逃げ惑うばかり。

こんなの、たかが雨じゃないか。

何であんなに慌ててるんだろう?

上級悪魔2人は聖水を連想したとかそんな感じだろうけど、シルビアは………。

バニルの力で探ってみると、この短時間に色々予想外のことがありすぎたせいで単純にパニック起こしてるだけらしい。

それにしても魔王軍幹部をこうも簡単に手玉に取れるなんて…何というか、流石は大悪魔だね。

何故か益々面白くなってきたよ。

 

「前だ 後ろだ 中だ 外だ 皆追っかけろ~♪ グルグル回って 体を乾かそう♪ Hey! 後ろが前で 外が中 下が上さ~♪ 回れば頭も尻尾もないSa! 跳ねたり飛んだり フリフリポンポン 陽気で愉快だぞ HeyHey! 始めは明日で終わりは昨日~♪ グルグル回る どんどん回る 何時までも~♪ 始めと終わりはピッタンコSa!」

 

…気が付いたらこんな歌詞を無限ループで歌ってた。

これ、何て言う曲だったっけ…?

まいいや、それはともかくとして…こんなことを暫く続けて、ようやくゆんゆん達が合流。

…ゆんゆんとは昨晩倉庫で別れて以来なんだけど…めぐみんが呼んできたのかな?

 

「……え、え~とこれは…どんな状況なのかしら?」

「いや私に聞かれても…というか、カービィさんのあの姿は初めて見ますけど……もしかして、マクスウェルですかね…?」

「お、恐らくそうだろうな。でなければ、あの雨雲の奇妙な挙動は説明できない…」

「あ、皆遅かったね」

「遅かったね、じゃありませんよカービィ!それより何だったんですか、さっきの意味不明な歌は!?」

「さっきの?ああ、気が付いたら口ずさんでたの」

「で…あそこで大混乱に陥っているのは、魔王軍…でいいのか?」

「うん。あの茶髪で赤いドレス着てるのが幹部のシルビアで、あとの2人は上級悪魔だよ」

「本当に魔王軍幹部が来ていたんですね…ということはやっぱり…」

「そう、例の『魔術師殺し』を手に入れようとしてたみたい」

 

そう言った瞬間、シルビアが我に返る。

 

「魔術師…殺し…!そうよ、こんなことしてる場合じゃなかったわ!あんた達!いつまでやってんの!」

 

シルビアに引っ叩かれたホーストとアーネスがハッとなる。

そして3人ともボクの方に向き直った。

 

「と、取り敢えずこの雨雲を消してくれないかしら?」

「いいよ」

 

ボクがちょっと念じれば、雨雲はあっという間に消滅。

 

「い、意外とあっさり消してくれるのね…」

「だってあの雲自体ボクの~…その場のテンションがおかしな方に行った結果だし」

「そ、そう……」

「…まさかとは思うがカービィ、お前まだバニル戦でのダメージを引きずってないか?」

「いや、それは無いよ。仮に引きずってるとしたらむしろ、クレアの一件だと思う」

「あ、あぁ…それもそうか」

「と、とと、とにかくよ!この私を差し置いて『魔術師殺し』を取り込むなんて許せない!」

「は?別にキミの許しなんて必要ないじゃん!元から誰のものでもないんだから」

「いや、そういう問題じゃなくて…!」

「それはそうとカービィ、今回は一体どうするつもりです?」

「そうだな~…よし!折角上級悪魔がいることだし、バニルの時に使った“アレ”でいこう!」

「「「アレ?」」」

「キミ達は知らないんでしょ?ボクがどうやって、大量の残機を持つバニルを討伐したのか。だから教えてあげる『ビッグバンカービィ』!」

「な、何なのその姿…」

『ズゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォ……!!!』

「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

「いやああああああぁぁぁぁぁ!!何よこれええええええ!!??」

「…これが『ビッグバン』の力だ、シルビア。この能力発動中に吸い込まれた者には死以外待ってはいない!かつてバニルも、この吸い込みで全ての残機を一瞬にして消滅させられたうえで、その命も奪われたのだ…。その証拠に…冒険者カードにある通り、バニルは9回連続で討伐されたことになっている。それもたった1度の吸い込みで、だ」

 

てな感じでダクネスが説明してる間に、2人の上級悪魔はボクの口の中へ。

 

『ゴゴオオオオオオオォォォォォォォ……!!!』

「やああああああぁぁぁぁぁ………!!」

 

そしてそう間もなく、シルビアも無事収まりましたとさ。

 

「やりましたね、カービィさん!」

「うん………それじゃ、最後にあそこへ行こうかな?」

「あそこ?」

「それじゃ早速、レッツらゴー!」

 

というわけで、手綱を引きつ……じゃなかった。鎖を引きつつやって来たのは里の一角。

そこにあったのは、物干し竿として使われてる全長約3mの物体。

 

「…本当に物干し竿代わりにされてるし」

「カービィさん、これが何か分かるんですか?」

「これは『レールガン』と言って、魔力を吸収して破壊光線として発射する武器だよ。魔術師殺し暴走のための備えとしてね」

「ま、魔力を吸収!?」

「そうだよアクア、山も砕くほどの破壊力があるみたいだし。まぁ、発射するには最低でも爆裂魔法1発分の魔力が必要らしいけどさ…」

「そうなの!?…ちょっと待って。ってことはさ、今のところはこれを1人で扱えるのはカービィだけってことじゃない?」

「だろうな…最初に王都を襲撃した魔王軍を撃退した時はお前、爆発系の魔法を全部同時に発動していたからな」

「いやいやそれ以前に、あの時はレベル4だったんですよ!カービィ、今のレベルはいくつでしたっけ?」

「19」

「聞きました!?格段に上がってるんですよ!もしかしたら今なら、爆裂魔法2発…いや、3発撃てるかもしれません!」

「かもね」

「あ、あの~…さっきから気になってはいたんですが、カービィさんの背中の剣がまた光ってますよ?」

「え?……あっ、ホントだ」

「ということは、このレールガンとやらもカービィを強化する存在なのか?」

「かもしれない…どっちみちこれを1人で扱えるのってボクぐらいしかいないんでしょ?」

 

というわけで、魔術師殺し同様にレールガンも吸い込んだ。

すると………

 

「うぐぁっ……!」

「ど、どうしました?」

 

突然、全身に激痛が走る。

 

「うぐうううううぅぅぅぅぅぅ………!!」

 

特に左腕が痛むのに気付いたボクが左腕を見ると…何故か左腕がボコボコと、まるで沸騰したお湯みたいに体内で泡立ってるかのような状態になってる!

しかも、次第に左腕の形が変わっていくのが分かる。

でも何より……物凄く痛い!!痛すぎる!!

 

「ああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

叫ばずにはいられないほどの激しい激痛。

こんなの味わった覚え無いよ!

そして暫く後、不意にボクは左腕を高く上げた。

 

『ドギュオオオオオオオォォォォォォォンン……!!』

 

直後に聞こえた異様な発射音。

そして、いつの間にかさっきまでの激痛が消えてる。

見れば、左腕はコンパクトサイズ(?)のレールガンになっていた。

加えて上空にはポッカリと大穴の開いた雲が見える。

しかも左目には、ご丁寧に照準スコープまで。

 

「か、カービィ……さん?」

「ねえ、あの穴ってさっきので?」

「あ、ああ…そうだ」

「今度もまた凄まじいコピー能力ね…」

「いや、これは多分スーパーコピーの類だよ。『レーザー』の強化版みたいな。名付けるならそうだな…『ハイパーレールキャノン』にするか。あ、あと思ったのは…これ左腕がかなり重い!」

「言われてみれば確かに、明らかに左腕だけごつくなってますもんね…」

「…まいっか。使いどころさえ間違えなきゃ有用だろうし」

 

そんなわけで、この日の夜はゆんゆんの実家に泊めてもらうことにした。

まともな友達がいなかったせいなのか、泣いて喜んでたな…。

それはともかく、その後は何事もなく気持ちいい朝を迎えられた。

テレポートで帰宅しようとした時…何とこめっこがいつの間にやら付いて来てたのでビックリ。

曰く、学校行く年になるまでは帰らないという体の置手紙をして家を出てきたらしい。

魔法に関してはボクとゆんゆんから教わりたいんだって。

最初のうちは断ったけど、あんまり必死に頼むので仕方なく承諾することに。

その間、姉であるめぐみんとは一言も会話しようとしなかった。




次回予告
暫く平和な時間が過ぎたある冬、
カービィは雪精にいじめられている双子の妖精を保護する。
しかし、雪精をいじめたとして冬将軍が牙をむく!
果たしてカービィは妖精たちを守れるか!?
次回「冬将軍と妖精の危機」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。